157 / 313
第三章 時を埋める季節
3-4 ありえない任務
しおりを挟む
意外な展開になったので、肝心の俺の仕事の話がまったく進んでいない。
「いい加減に仕事の話に入ってくれよ。ダンジョンに行くって聞いたんで、もう俺の中にいる中二病患者のわくわくする脈動が止まらないんだが」
「そのお前が言っている言葉の意味はよくわからんが、まあ初ダンジョン行きにビビっているのではなくて歓喜しているようだから、よしとしよう。勇者たるもの、そうでなくてはな」
ぷふっ。そうか、ギルマスって王都から追放されたんで、あの一人だけ指名召喚された本物の勇者の、へたれ勇者っぷりを知らないんだな~。
これ、陽彩に聞かせてやったら、両手で顔を覆って天井を仰ぐんじゃねえ?
第一、今の俺はザムザ魔核の力を手に入れて無敵モードなのだ、この前水中活動用の魔核も手に入れたんで水攻めを食らっても平気だぜ。
あと予想される困難ってなんだろう。閉じ込められて中から出られない罠や、異空間に放り込まれて出られないなどの罠は困るな。
「ねえ、ギルマス。そのダンジョンってトラップは山盛りかな」
「ああ、通常は行かない深層にまで行かねばならぬので、それなりにあるはずだよ」
「どういうタイプが予想されます?」
「まあ、そうだね。落とし穴やモンスターハウス、爆発する罠、岩、壁面閉じ込め、ミミック、天井からの擬態魔物の襲撃、水攻めもあるかもしれん。まあそこは少々特殊なダンジョンなので予想するのは難しい」
案外と普通だな、爆発が危険の筆頭か? 俺はともかく、他の連中はいきなり襲う即死系の罠にかかると面倒だ。
エリクサーはあるが見せていいものか。まあ、王都でド派手に使っちゃったから、身内で使う分にはいいかな。山で切った木にだって毎日使っていたくらいなんだからさ。
「ようし、準備をしっかりしなくちゃあ」
「いい心がけだが、一体何を準備するのかね」
「決まっている、現地で食べる食事やおやつの準備だよ。あと飲み物も。今回は料理上手な従者を連れていかないからな」
長い探索になるかもしれないから、なるべく食い物のバリエーションは豊富にしておかないと辛い探索になってしまう。
「必要な装備はギルドで用意するぞ。まあ君は強力な収納持ちなんで、私物を持ち込むのは自由だが」
そうか、『会社』として仕事を受けたんだから経費は会社持ちなのか。
「ところで仕事の依頼主は?」
「聞きたいか?」
「一応お願いします」
「国王陛下だ。しかも、君に関しては指名依頼扱いだから、指名ボーナスが出るぞ」
「へえ、そいつはまた豪気な事で。また随分とこのハズレ勇者の評価が上がったもんだ」
「まあ、あれだけ王都で大暴れすればな」
俺はにっこりと笑って光金貨を一枚取り出して見せた。
「またアレくらい美味しい魔獣が出ないもんかな~。王都に来てさ、大暴れしてさ、呼ばれた俺が大活躍の高みの見物で、王様からざっくりと金をふんだくれる展開の奴」
「それは高みの見物なのか、大活躍なのかどっちなんだ?」
「眷属共が蟻のように勤勉に頑張って大活躍して成果を上げるのを、俺は高みの見物しながら、最後にがっぽり大金をいただくという女王蟻のような生活」
「なんだ、そりゃあ。イカサマもいいとこだな」
「そのイカサマを仕込めるようになるまで、ありえねえようなリスクを背負って体を張った勇者が俺なのだが。くそう、まだたいした力もないうちに命を張りまくる破目にはなりたくなかったぜ」
「はっはっは、世の中そうそう美味い話は転がっちゃいないさ。まあいいじゃないか、今は強くなったんだから。ダンジョンでは頼りにしているぞ」
相変わらず豪放に笑うフランコ。筋肉まで笑っているかの様子にチビ達は夢中だ。村にはいないからな、こんなSランクの筋肉。
「おう、任せとけ。それよりも何しに行くんだよ、そんなところまで。王様からの依頼なんだよな」
「ああ、それがまた雲を掴むような話でな。王国に代々伝わる話が元になっているらしいのだが、どうにも眉唾な内容でな。だが任務の成否に関わらず白金貨五十枚、成功報酬はさらに白金貨五十枚がギルドに支払われる。あと参加者には無条件に前金で白金貨十枚ずつ、成功時には同額。カズホ、お前には特別に前金で五十枚、後金で五十枚払われる」
俺はわざと大げさに目を剥いて、ヒュウっと下品な口笛を吹いてやった。
「おい、みんな。どうするんだ、こいつはヤバイ仕事だぜ。報酬が破格なのもほどがあるってもんだ。
俺はギルドへの依頼の相場なんて知りはしないが、それくらいはわかるぜ。俺はこの前大枚稼いだから、さほど大金には思わないが、これは破格の中の破格の報酬だ。
ギルドにあれだけ払ってさらに個人報酬がこの金額だとお⁉
ありえねえ、まるでSランク以上のメンバーが全員殉職するのが前提の葬式代みたいなものじゃないか! もしかして、王都の冒険者ギルドには先に断られたんじゃないのか」
「いい加減に仕事の話に入ってくれよ。ダンジョンに行くって聞いたんで、もう俺の中にいる中二病患者のわくわくする脈動が止まらないんだが」
「そのお前が言っている言葉の意味はよくわからんが、まあ初ダンジョン行きにビビっているのではなくて歓喜しているようだから、よしとしよう。勇者たるもの、そうでなくてはな」
ぷふっ。そうか、ギルマスって王都から追放されたんで、あの一人だけ指名召喚された本物の勇者の、へたれ勇者っぷりを知らないんだな~。
これ、陽彩に聞かせてやったら、両手で顔を覆って天井を仰ぐんじゃねえ?
第一、今の俺はザムザ魔核の力を手に入れて無敵モードなのだ、この前水中活動用の魔核も手に入れたんで水攻めを食らっても平気だぜ。
あと予想される困難ってなんだろう。閉じ込められて中から出られない罠や、異空間に放り込まれて出られないなどの罠は困るな。
「ねえ、ギルマス。そのダンジョンってトラップは山盛りかな」
「ああ、通常は行かない深層にまで行かねばならぬので、それなりにあるはずだよ」
「どういうタイプが予想されます?」
「まあ、そうだね。落とし穴やモンスターハウス、爆発する罠、岩、壁面閉じ込め、ミミック、天井からの擬態魔物の襲撃、水攻めもあるかもしれん。まあそこは少々特殊なダンジョンなので予想するのは難しい」
案外と普通だな、爆発が危険の筆頭か? 俺はともかく、他の連中はいきなり襲う即死系の罠にかかると面倒だ。
エリクサーはあるが見せていいものか。まあ、王都でド派手に使っちゃったから、身内で使う分にはいいかな。山で切った木にだって毎日使っていたくらいなんだからさ。
「ようし、準備をしっかりしなくちゃあ」
「いい心がけだが、一体何を準備するのかね」
「決まっている、現地で食べる食事やおやつの準備だよ。あと飲み物も。今回は料理上手な従者を連れていかないからな」
長い探索になるかもしれないから、なるべく食い物のバリエーションは豊富にしておかないと辛い探索になってしまう。
「必要な装備はギルドで用意するぞ。まあ君は強力な収納持ちなんで、私物を持ち込むのは自由だが」
そうか、『会社』として仕事を受けたんだから経費は会社持ちなのか。
「ところで仕事の依頼主は?」
「聞きたいか?」
「一応お願いします」
「国王陛下だ。しかも、君に関しては指名依頼扱いだから、指名ボーナスが出るぞ」
「へえ、そいつはまた豪気な事で。また随分とこのハズレ勇者の評価が上がったもんだ」
「まあ、あれだけ王都で大暴れすればな」
俺はにっこりと笑って光金貨を一枚取り出して見せた。
「またアレくらい美味しい魔獣が出ないもんかな~。王都に来てさ、大暴れしてさ、呼ばれた俺が大活躍の高みの見物で、王様からざっくりと金をふんだくれる展開の奴」
「それは高みの見物なのか、大活躍なのかどっちなんだ?」
「眷属共が蟻のように勤勉に頑張って大活躍して成果を上げるのを、俺は高みの見物しながら、最後にがっぽり大金をいただくという女王蟻のような生活」
「なんだ、そりゃあ。イカサマもいいとこだな」
「そのイカサマを仕込めるようになるまで、ありえねえようなリスクを背負って体を張った勇者が俺なのだが。くそう、まだたいした力もないうちに命を張りまくる破目にはなりたくなかったぜ」
「はっはっは、世の中そうそう美味い話は転がっちゃいないさ。まあいいじゃないか、今は強くなったんだから。ダンジョンでは頼りにしているぞ」
相変わらず豪放に笑うフランコ。筋肉まで笑っているかの様子にチビ達は夢中だ。村にはいないからな、こんなSランクの筋肉。
「おう、任せとけ。それよりも何しに行くんだよ、そんなところまで。王様からの依頼なんだよな」
「ああ、それがまた雲を掴むような話でな。王国に代々伝わる話が元になっているらしいのだが、どうにも眉唾な内容でな。だが任務の成否に関わらず白金貨五十枚、成功報酬はさらに白金貨五十枚がギルドに支払われる。あと参加者には無条件に前金で白金貨十枚ずつ、成功時には同額。カズホ、お前には特別に前金で五十枚、後金で五十枚払われる」
俺はわざと大げさに目を剥いて、ヒュウっと下品な口笛を吹いてやった。
「おい、みんな。どうするんだ、こいつはヤバイ仕事だぜ。報酬が破格なのもほどがあるってもんだ。
俺はギルドへの依頼の相場なんて知りはしないが、それくらいはわかるぜ。俺はこの前大枚稼いだから、さほど大金には思わないが、これは破格の中の破格の報酬だ。
ギルドにあれだけ払ってさらに個人報酬がこの金額だとお⁉
ありえねえ、まるでSランク以上のメンバーが全員殉職するのが前提の葬式代みたいなものじゃないか! もしかして、王都の冒険者ギルドには先に断られたんじゃないのか」
16
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる