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第二章 はずれスキルの冒険者
2-77 ハズレ勇者【軍団】
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「ねえ、それはいいんだけどさ。あいつらが四体に増えたんだけど、アレは放っておいていいのかな」
「なあに心配はいらないさ」
戸惑うように体をくねらせていた、でっかいミルワームどもがまたしても苦鳴を上げた。
「ぐわあっ。な!」
振り向いた奴の真っ赤な飛び出した丸い目が、奴にとっては信じられない物を発見したからだ。俺の眷属【達】は次々と名乗った。
「我が名はザムザ2」
「我が名はザムザ3」
「我が名はザムザ……」
そしてゲンダス達も同様だった。その大量に湧いた元同僚の群れに驚愕し、その分身も含めてピクリとも動かずに、王都の廃墟に生えた奇妙なモニュメントと化した魔人ミール。
「あんたね……」
泉は、俺の体に巻き付けられた大量のザムザ魔核に目を走らせながら嘆息した。
「ふふ、俺は魔核増殖の儀を行う時に、なんとナンバリング万倍化に成功していたのだ。一体一体に別の固体名があり、それぞれ独立行動が可能な俺の眷属となったのだ。
というわけで、我が眷属共よ。そいつらを切り刻め、ブレスは吐かせるな。そして、あまり数は増やすな、王都が廃墟になるといかん。
そこのもう既に瓦礫の山となったプロレスリングの中にだけ留めさせろ。そして、なるべく長い間そいつを嬲り殺しにして大量の素材をゲットするのだ。
本体はなるべく痛めつけずにブレスを吐かないように牽制するに務めろ。数が減ったら分身を真ん中で切って数をキープしろ。
やれ、絶対に地中には逃がすな。逃げようとしたら細切れにして魔核を抉り出せ」
「あんたねえ、よりによって魔人、いや魔獣相手になんちゅうえげつない事を」
「うわはははは、聞こえねえ、聞こえねえぞ、泉~」
自分の彼女に呆れられ、また王国軍や勇者が茫然としてその俺が遠慮の欠片もなく放つ高笑いを聞いていた。エレだけは俺の頭の上で腹を抱えて、俺と共に笑っていたのだが。
「おのれ、勇者、何という事を。このような真似はあの方にさえ!」
そりゃあそうだろ、『本日一粒万倍日』なんてスキルは世界広しといえども、この俺だけのものなのだから。魔王なんかが持っているもんか。
だが、魔王の野郎は俺と同じように魔人を従えられるんだな、もしかしたら結構能力が俺と被っているのかもしれん。
そして、それ以降は奴も防戦一方で喋るどころではなく、逃げるなどとてもではないができない状態だ。
本体にはザムザとゲンダスが各五十体以上張り付いて、いつでもバラバラにできるような体制になっている。
「エグイ……」
「ひゃっはー。すげえ、高級素材が取り放題の魔人養殖牧場だぜえ~」
「ああ、うん。魔人養殖牧場長就任おめでとう」
「おお! ようし、今夜は酒池肉林だああ!」
俺の浅ましい欲望に満ちた叫びは、上空から王都の存亡を賭けた戦場を隅々まで駆け巡り、勇者陽彩を含む王様が率いる王国軍を沈黙のベールの下に沈めた。
それを見た泉が、隣で一緒に滞空しながら軽く咳払いをしていたが、俺は素材回収にもう夢中で気にも留めていなかった。
「ようし、あいつらにデバフかけていくわよ! おら、そこの勇者陽彩、あんたも気張りなさい。味方の魔人どもに勇者の強化スキルでバフをかけて」
「は、はひい~」
「よっ、裏勇者坪根濔様。今日もお化粧は厚塗りだねっ!」
「ふっ、お陰様でね。って、あんたねえ。呪うわよ、このハズレ勇者!」
「ヒャッハー!」
泉が俺から離れるとブレスの流れ弾が来た時に怖いから、しっかりと彼女の手を握っていたので、俺達の熱愛ぶりも王都中から注目の的のようだ。
コント交じりにバフ・デバフの援軍もきたので更にうちの攻撃は苛烈を極め、さっそく逃げ出そうとした分身の一体を魔人十人がかりでバラバラにしたら、中から巨大な魔核が転がり出た。
「うん? これが疑似魔核とやらか。こいつは魔核もでかいな、直径一メートルもあるじゃないか。なんだか不思議なもんだな。まるでクリスタルのような感じだ」
そしていつものエレ先生のありがたい解説が始まった。
「ああ、そいつは魔力で合成したものだからね。泡のように消えてしまうものではなく、魔道具にも加工できるよいものだよ。
魔獣の大型疑似魔核など滅多に手に入るものではない。しかも、このサイズでこの数だ。たくさん狩っておくといいよ。
これは非常に特殊なものだから、もしかしたら君のスキルでも万倍化できないかもしれないな。本体は万倍化できるとわかるのに実に不思議なものだ」
「ヒャッハー! 聞いたか、我が眷属どもよ。方針変更だ。分身はどんどん増やして、どんどん狩れ。狙いは疑似魔核の収集だ。
奴らの甲殻素材はなるべく大きめに剥ぎ取れ。そしてインターバル討伐で奴の本体をなるべく回復させつつ、少しでも長い間、素材や魔核を奴から絞り取るのだ。
こんなに美味しい魔人、いや魔獣には二度とお目にかかれないかもしれんのだぞ。全員、気合を入れていけー!
ここが稼ぎ処だああああ。やつを嬲れ! 嬲って嬲って骨まで、いや魔核の髄までしゃぶるどころか嬲りつくせー‼」
「ああっ、うちの彼氏が更に鬼畜になっている。これは魔王を越えたかもしれないわあ」
俺と泉のコントをBGMに、またしてもミールの群れが放つ悲鳴と苦鳴が王都の戦場を震わせた。
「なあに心配はいらないさ」
戸惑うように体をくねらせていた、でっかいミルワームどもがまたしても苦鳴を上げた。
「ぐわあっ。な!」
振り向いた奴の真っ赤な飛び出した丸い目が、奴にとっては信じられない物を発見したからだ。俺の眷属【達】は次々と名乗った。
「我が名はザムザ2」
「我が名はザムザ3」
「我が名はザムザ……」
そしてゲンダス達も同様だった。その大量に湧いた元同僚の群れに驚愕し、その分身も含めてピクリとも動かずに、王都の廃墟に生えた奇妙なモニュメントと化した魔人ミール。
「あんたね……」
泉は、俺の体に巻き付けられた大量のザムザ魔核に目を走らせながら嘆息した。
「ふふ、俺は魔核増殖の儀を行う時に、なんとナンバリング万倍化に成功していたのだ。一体一体に別の固体名があり、それぞれ独立行動が可能な俺の眷属となったのだ。
というわけで、我が眷属共よ。そいつらを切り刻め、ブレスは吐かせるな。そして、あまり数は増やすな、王都が廃墟になるといかん。
そこのもう既に瓦礫の山となったプロレスリングの中にだけ留めさせろ。そして、なるべく長い間そいつを嬲り殺しにして大量の素材をゲットするのだ。
本体はなるべく痛めつけずにブレスを吐かないように牽制するに務めろ。数が減ったら分身を真ん中で切って数をキープしろ。
やれ、絶対に地中には逃がすな。逃げようとしたら細切れにして魔核を抉り出せ」
「あんたねえ、よりによって魔人、いや魔獣相手になんちゅうえげつない事を」
「うわはははは、聞こえねえ、聞こえねえぞ、泉~」
自分の彼女に呆れられ、また王国軍や勇者が茫然としてその俺が遠慮の欠片もなく放つ高笑いを聞いていた。エレだけは俺の頭の上で腹を抱えて、俺と共に笑っていたのだが。
「おのれ、勇者、何という事を。このような真似はあの方にさえ!」
そりゃあそうだろ、『本日一粒万倍日』なんてスキルは世界広しといえども、この俺だけのものなのだから。魔王なんかが持っているもんか。
だが、魔王の野郎は俺と同じように魔人を従えられるんだな、もしかしたら結構能力が俺と被っているのかもしれん。
そして、それ以降は奴も防戦一方で喋るどころではなく、逃げるなどとてもではないができない状態だ。
本体にはザムザとゲンダスが各五十体以上張り付いて、いつでもバラバラにできるような体制になっている。
「エグイ……」
「ひゃっはー。すげえ、高級素材が取り放題の魔人養殖牧場だぜえ~」
「ああ、うん。魔人養殖牧場長就任おめでとう」
「おお! ようし、今夜は酒池肉林だああ!」
俺の浅ましい欲望に満ちた叫びは、上空から王都の存亡を賭けた戦場を隅々まで駆け巡り、勇者陽彩を含む王様が率いる王国軍を沈黙のベールの下に沈めた。
それを見た泉が、隣で一緒に滞空しながら軽く咳払いをしていたが、俺は素材回収にもう夢中で気にも留めていなかった。
「ようし、あいつらにデバフかけていくわよ! おら、そこの勇者陽彩、あんたも気張りなさい。味方の魔人どもに勇者の強化スキルでバフをかけて」
「は、はひい~」
「よっ、裏勇者坪根濔様。今日もお化粧は厚塗りだねっ!」
「ふっ、お陰様でね。って、あんたねえ。呪うわよ、このハズレ勇者!」
「ヒャッハー!」
泉が俺から離れるとブレスの流れ弾が来た時に怖いから、しっかりと彼女の手を握っていたので、俺達の熱愛ぶりも王都中から注目の的のようだ。
コント交じりにバフ・デバフの援軍もきたので更にうちの攻撃は苛烈を極め、さっそく逃げ出そうとした分身の一体を魔人十人がかりでバラバラにしたら、中から巨大な魔核が転がり出た。
「うん? これが疑似魔核とやらか。こいつは魔核もでかいな、直径一メートルもあるじゃないか。なんだか不思議なもんだな。まるでクリスタルのような感じだ」
そしていつものエレ先生のありがたい解説が始まった。
「ああ、そいつは魔力で合成したものだからね。泡のように消えてしまうものではなく、魔道具にも加工できるよいものだよ。
魔獣の大型疑似魔核など滅多に手に入るものではない。しかも、このサイズでこの数だ。たくさん狩っておくといいよ。
これは非常に特殊なものだから、もしかしたら君のスキルでも万倍化できないかもしれないな。本体は万倍化できるとわかるのに実に不思議なものだ」
「ヒャッハー! 聞いたか、我が眷属どもよ。方針変更だ。分身はどんどん増やして、どんどん狩れ。狙いは疑似魔核の収集だ。
奴らの甲殻素材はなるべく大きめに剥ぎ取れ。そしてインターバル討伐で奴の本体をなるべく回復させつつ、少しでも長い間、素材や魔核を奴から絞り取るのだ。
こんなに美味しい魔人、いや魔獣には二度とお目にかかれないかもしれんのだぞ。全員、気合を入れていけー!
ここが稼ぎ処だああああ。やつを嬲れ! 嬲って嬲って骨まで、いや魔核の髄までしゃぶるどころか嬲りつくせー‼」
「ああっ、うちの彼氏が更に鬼畜になっている。これは魔王を越えたかもしれないわあ」
俺と泉のコントをBGMに、またしてもミールの群れが放つ悲鳴と苦鳴が王都の戦場を震わせた。
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