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第二章 はずれスキルの冒険者
2-75 奇跡の日
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「どうだ、エリクサーレインの効果は。泉、これで駄目だったら、あいつらの事は諦めな! さすがの俺も、これ以上はもう手札がねえ」
女子会や、昨日の祭りで一緒に楽しくやっていた連中の顔が目に浮かぶ。勇者陽彩や国護師匠は本陣にいるはずだから、まだ無事だと思うんだが。
「う、うん。さすがに粉々の塵にされてしまって、今更復活は無理だと思うんだけど……」
友人達のために祈るような面持ちで両手を組み合わせている泉。俺も後ろから腕を回して、それに手を添えた。
何、俺としてはあのヤンキーや脳味噌の腐れたおっさんどもはどうでもいいんだが、女の子達の安否は祈っておいたわけで。
すると、あちこちで人の姿がぼんやりと湧き上がって来た。何かこう燐光を放つような感じで生き返ってきていた!
「嘘!」
「マジかよ~。エリクサーの威力、パネエな」
本当に死んだ人間が再生している? まだ人間だった頃の記憶を持った元素があたりを漂っているからなあ。
本当に駄目元だったんだけど、異世界の奇跡の霊薬、あまりにも凄すぎるわ。
いや、これってほぼ人体錬成なんじゃないのか。ああ、そういや高名な錬金術師が作った秘薬なんじゃないか、一体原料は何なんだよ。賢者の石とかか?
ありえない光景がそこにあり、勇者や兵士達が装備ごと再生されていくのが見えた。その数は数百人あまり、一撃食らっただけで凄い戦死者だったんだな。
これが魔王軍の力なのか。あのザムザやゲンダスだって魔法やスキルを全開でぶっ放せば、殺傷力はこんなものなのだろうか。
「おい泉、なんか、あいつらの服や装備まで元に戻っていくんだけど!?」
「ありえない光景だわねえ」
「さすがエリクサー十万本分の威力だなあ。一キロリットルほどは、ぶちまいたから。あ、一つ大事な事を言うの忘れていたわ」
「え、何を?」
俺は、すーっと思いっきり息を吸い込んで、そして空中から得意のでかい声で叫んだ。
「おーい、てめえらあ。そいつは俺の獲物だ、他の連中は手を出すなよ。俺はビトーの冒険者麦野一穂だ。そいつの破片も体躯も魔核も一欠片残らず俺のもんだ、いいな!」
だが、それを泉は呆れていた。
「あんた、こんな時に何を言っているのよ」
「だってよ、どうせ俺が倒すのに、絶対に素材とか火事場泥棒する奴とかいるに決まっているだろ」
「いや、それはもういいんだけどさ。一体どうするの? あいつ再生力は半端ないのよ」
「まあなんとかなるさ。多分、こいつはな」
俺はザムザの魔核から知れる知識を検索していた。そんな俺の姿を見た王様が何故か激しく驚愕していた。へっ、見たかよ。あんたが見捨てたハズレ勇者のこの雄姿。
◆◇◆◇◆
「あの男は……」
「はっ、ハズレ勇者カズホ・ムギノにございます。アルフ村の騎士カイザの元にいるという話でございましたが、まさかかような形で王都に現れるとは。
現在はビトーの冒険者ギルドに所属している模様です。なお、アルフやビトーにおいて魔人ザムザ並びに魔人ゲンダスを倒したとか。
あと、あのアルフェイムの森に沸いた超特大の、過去にも存在しなかったような最大級のネストを彼が退治したと騎士カイザからの報告にはありました」
「なんだと、何故そのような大事な事をわしに報告せぬ」
「はあ、その……王国は彼にかような仕打ちを与えてしまいましたし、王の御心を乱すかと思い、慎重を期し、報告の時期を測っておりました。ご報告が遅れて申し訳ありません。何せ、あの魔王は……」
それを聞いて顔を苦渋に歪め、胸を詰まらせる国王マネ。
「もうよい。そう、その話があったのでスキル判定神官にはあの場で確認したのじゃが、やはり完璧にランクレスという事じゃったのでな。こうなると、今後はランクレス勇者の扱いについても考え直さねばならぬか……」
「御意」
◆◇◆◇◆
そいつは、なんというか黒鉄を纏った巨大なワームだった。直径は五メートルほどか。
そして地上五十メートルほどに聳え立つ、なんというか巨大なアナゴのような物だ。いや、巨大装甲ミミズか。
だが、やや膨らんだ形状にも見える先端に生え伸びた、そのある種の昆虫のように発達した鉤状の黒光りする大顎を備えた凶悪な姿は、まるで宇宙怪物か何かのようだった。
へたをすると装甲車や戦車でも丸飲みにできそうなほどの大口は、纏めて兵士を何十人も飲み込めるだろう。
女子会や、昨日の祭りで一緒に楽しくやっていた連中の顔が目に浮かぶ。勇者陽彩や国護師匠は本陣にいるはずだから、まだ無事だと思うんだが。
「う、うん。さすがに粉々の塵にされてしまって、今更復活は無理だと思うんだけど……」
友人達のために祈るような面持ちで両手を組み合わせている泉。俺も後ろから腕を回して、それに手を添えた。
何、俺としてはあのヤンキーや脳味噌の腐れたおっさんどもはどうでもいいんだが、女の子達の安否は祈っておいたわけで。
すると、あちこちで人の姿がぼんやりと湧き上がって来た。何かこう燐光を放つような感じで生き返ってきていた!
「嘘!」
「マジかよ~。エリクサーの威力、パネエな」
本当に死んだ人間が再生している? まだ人間だった頃の記憶を持った元素があたりを漂っているからなあ。
本当に駄目元だったんだけど、異世界の奇跡の霊薬、あまりにも凄すぎるわ。
いや、これってほぼ人体錬成なんじゃないのか。ああ、そういや高名な錬金術師が作った秘薬なんじゃないか、一体原料は何なんだよ。賢者の石とかか?
ありえない光景がそこにあり、勇者や兵士達が装備ごと再生されていくのが見えた。その数は数百人あまり、一撃食らっただけで凄い戦死者だったんだな。
これが魔王軍の力なのか。あのザムザやゲンダスだって魔法やスキルを全開でぶっ放せば、殺傷力はこんなものなのだろうか。
「おい泉、なんか、あいつらの服や装備まで元に戻っていくんだけど!?」
「ありえない光景だわねえ」
「さすがエリクサー十万本分の威力だなあ。一キロリットルほどは、ぶちまいたから。あ、一つ大事な事を言うの忘れていたわ」
「え、何を?」
俺は、すーっと思いっきり息を吸い込んで、そして空中から得意のでかい声で叫んだ。
「おーい、てめえらあ。そいつは俺の獲物だ、他の連中は手を出すなよ。俺はビトーの冒険者麦野一穂だ。そいつの破片も体躯も魔核も一欠片残らず俺のもんだ、いいな!」
だが、それを泉は呆れていた。
「あんた、こんな時に何を言っているのよ」
「だってよ、どうせ俺が倒すのに、絶対に素材とか火事場泥棒する奴とかいるに決まっているだろ」
「いや、それはもういいんだけどさ。一体どうするの? あいつ再生力は半端ないのよ」
「まあなんとかなるさ。多分、こいつはな」
俺はザムザの魔核から知れる知識を検索していた。そんな俺の姿を見た王様が何故か激しく驚愕していた。へっ、見たかよ。あんたが見捨てたハズレ勇者のこの雄姿。
◆◇◆◇◆
「あの男は……」
「はっ、ハズレ勇者カズホ・ムギノにございます。アルフ村の騎士カイザの元にいるという話でございましたが、まさかかような形で王都に現れるとは。
現在はビトーの冒険者ギルドに所属している模様です。なお、アルフやビトーにおいて魔人ザムザ並びに魔人ゲンダスを倒したとか。
あと、あのアルフェイムの森に沸いた超特大の、過去にも存在しなかったような最大級のネストを彼が退治したと騎士カイザからの報告にはありました」
「なんだと、何故そのような大事な事をわしに報告せぬ」
「はあ、その……王国は彼にかような仕打ちを与えてしまいましたし、王の御心を乱すかと思い、慎重を期し、報告の時期を測っておりました。ご報告が遅れて申し訳ありません。何せ、あの魔王は……」
それを聞いて顔を苦渋に歪め、胸を詰まらせる国王マネ。
「もうよい。そう、その話があったのでスキル判定神官にはあの場で確認したのじゃが、やはり完璧にランクレスという事じゃったのでな。こうなると、今後はランクレス勇者の扱いについても考え直さねばならぬか……」
「御意」
◆◇◆◇◆
そいつは、なんというか黒鉄を纏った巨大なワームだった。直径は五メートルほどか。
そして地上五十メートルほどに聳え立つ、なんというか巨大なアナゴのような物だ。いや、巨大装甲ミミズか。
だが、やや膨らんだ形状にも見える先端に生え伸びた、そのある種の昆虫のように発達した鉤状の黒光りする大顎を備えた凶悪な姿は、まるで宇宙怪物か何かのようだった。
へたをすると装甲車や戦車でも丸飲みにできそうなほどの大口は、纏めて兵士を何十人も飲み込めるだろう。
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