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第二章 はずれスキルの冒険者

2-46 お米じゃないんですから冷やかすのはやめてください

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 それから、また時間も遅くなってしまったので、このまま泉と部屋に泊っていく事にした。

「ひゃあ、お客さん、今夜はお楽しみですね~」
「うひょお、えっちい」

「あーあ、あたしも男が欲しいなあ。でもあの若い勇者の馬鹿どもは論外だし、おっさん達もあれだし。唯一まともそうな国護のおっさんは見向きもしてくれないしな。こっちの人と付き合うっていうのもなんなんだよなあ。価値観とかがまったく違うし」

「でも帰れないんだったら、こっちの少しはましそうな男を捉まえるしかないよ」
「こっちは行き遅れになるのが早いらしいし、焦るわー」

「ねえ、どうせなら王子様とかどうよ。こっちだって一応は勇者なんだからさ」
「いや、そういうのはへたすると跡目争いで暗殺されちゃいますよー」

「そうだ、あたしらで力を合わせて、あの城で日本から美少年を召喚しようよ」

「くそう、いいなー。泉さん、いいなー。ハズレ勇者でも、あいつらと違って麦野さんって性格がまともそうだもんな」

「ふふ、じゃあ泉さん、ごゆっくりねー。お邪魔虫は退散しますよ。化粧品、ひゃっはー!」

 散々俺達を冷やかしながら、連中は姦しく帰っていった。化粧品その他が手に入ったので皆御機嫌だな、特にあの坪根濔刃風(つぼねではかぜ)嬢は。

 最後まですっぴんの顔は拝めなかったが、もしも無理やりに見ていたとしたら呪いのデバフが飛んできそうで怖い。

 あれはバフ能力を持つ勇者と対をなす能力みたいだからヤバイのではないだろうか。最悪、あの二人がいれば王国側はかなり有利に戦えるはずだ。

 特に勇者の小僧と違って裏勇者の方はアグレシッブなイメージだし。戦力均衡の戦い限定ならば王国連合側が圧勝できそうだ。

 まあ敵方はザムザのような魔人が無双したらどうなのかはしれないが。

「女の子が集まると、やっぱり賑やかだなあ」

「はは、お蔭で気も紛れるわ。こんな事を言っちゃあなんだけど、やっぱり女の子が大勢いたんで助かったわ」

「そうかもなあ」
 やっぱり、こんな世界で寂しいのはアカンのよ。俺も一人だと陰隠滅滅になっちまったもの。

「でも、そんなちっぽけな銃で魔物と戦えるの?」

「ああ、一応試してみたい事はあるんだ。ザムザ達に護衛させればいいようなもんだが、やはり自分で使える有効な武器は欲しいのさ」

「そうかあ、ああ後でディナーに行こうよ。いい店を知っているから」

「さすがに王都は華やかだな。宿の窓から街の灯が見える。都会の夜景なんて見るのは、一体どれだけぶりだろう」

「そういう意味では、王都はいいわね」

「今度から、お風呂だけでも入りにこよう~。ビトーでもお風呂はあったんだけど、王都の物はまた豪勢だなあ」

「こっちの方は魔道具で沸かすからね。厨房の竈なんかもそうよ。そうしないと周り中が禿げ山になってしまうしね」

「そうだよなあ。地球のヨーロッパってそうじゃなかったっけ。俺は竈で作った御飯が美味しいからあっちの方が好きだなあ」

「あ」
「どうしたい」 
「王様にエリクサーの納品に行くのを忘れてた」

「いいじゃん、明日で。どうせ、偵察任務の君がここにいるって事は戦いもないって事だよね」

「まあね。一応、報酬は現物と引き換えだからね」
「エリクサー代はタダだったんだから、代金はそのまま着服で!」

「あはは、そうね。むしろ、王様にエリクサーを納品したのにお金を返したらマズイじゃないの。あのごうつくばりの婆さんのところでタダで貰ってきちゃあさ。予算に収まったら御の字って言われていたのよ。まあ領収書を出せとは言われていないしね」

「そいつは確かにな」
 マーリン師も人を見て商売してるみたいだから、王様からなら大枚ふんだくるんだろうな。

 俺はベッドに腰かけてまったりしている泉に訊いてみた。
「なあ、王様の相場でエリクサーって一本いくらになってた?」

 すると、泉はさもおかしそうに口元を押さえて笑いを堪えている。
「聞きたい?」

「後学のためにぜひとも!」
「一本白金貨十枚よ」

「うわっ、勇者にはそれだけポンと金をかけるのに、俺は城に置き去りだったのかよっ」

「その辺は、王様の加減じゃなくて国の予算局でそういう取り決めになっていて、はっきりと線引きらしいのよ。みんなの間では噂しているわ。魔王の正体は、大昔のハズレ勇者なんじゃないかって。王城では、そういう話を知っていて教えてくれる人なんかもいてね」

「ありうる! 毎回ハズレ勇者がいたみたいだしなあ。中にはとんでもない奴がいたんじゃないのか。くそう、俺はこの国の財務省相当のお役所のせいで、あんなに苦労させられていたのか~」

「ふふ、君のやってきた事がバレたら、その噂が信憑性を持って語られちゃいそうね」
「それいいね!」
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