119 / 313
第二章 はずれスキルの冒険者
2-46 お米じゃないんですから冷やかすのはやめてください
しおりを挟む
それから、また時間も遅くなってしまったので、このまま泉と部屋に泊っていく事にした。
「ひゃあ、お客さん、今夜はお楽しみですね~」
「うひょお、えっちい」
「あーあ、あたしも男が欲しいなあ。でもあの若い勇者の馬鹿どもは論外だし、おっさん達もあれだし。唯一まともそうな国護のおっさんは見向きもしてくれないしな。こっちの人と付き合うっていうのもなんなんだよなあ。価値観とかがまったく違うし」
「でも帰れないんだったら、こっちの少しはましそうな男を捉まえるしかないよ」
「こっちは行き遅れになるのが早いらしいし、焦るわー」
「ねえ、どうせなら王子様とかどうよ。こっちだって一応は勇者なんだからさ」
「いや、そういうのはへたすると跡目争いで暗殺されちゃいますよー」
「そうだ、あたしらで力を合わせて、あの城で日本から美少年を召喚しようよ」
「くそう、いいなー。泉さん、いいなー。ハズレ勇者でも、あいつらと違って麦野さんって性格がまともそうだもんな」
「ふふ、じゃあ泉さん、ごゆっくりねー。お邪魔虫は退散しますよ。化粧品、ひゃっはー!」
散々俺達を冷やかしながら、連中は姦しく帰っていった。化粧品その他が手に入ったので皆御機嫌だな、特にあの坪根濔刃風(つぼねではかぜ)嬢は。
最後まですっぴんの顔は拝めなかったが、もしも無理やりに見ていたとしたら呪いのデバフが飛んできそうで怖い。
あれはバフ能力を持つ勇者と対をなす能力みたいだからヤバイのではないだろうか。最悪、あの二人がいれば王国側はかなり有利に戦えるはずだ。
特に勇者の小僧と違って裏勇者の方はアグレシッブなイメージだし。戦力均衡の戦い限定ならば王国連合側が圧勝できそうだ。
まあ敵方はザムザのような魔人が無双したらどうなのかはしれないが。
「女の子が集まると、やっぱり賑やかだなあ」
「はは、お蔭で気も紛れるわ。こんな事を言っちゃあなんだけど、やっぱり女の子が大勢いたんで助かったわ」
「そうかもなあ」
やっぱり、こんな世界で寂しいのはアカンのよ。俺も一人だと陰隠滅滅になっちまったもの。
「でも、そんなちっぽけな銃で魔物と戦えるの?」
「ああ、一応試してみたい事はあるんだ。ザムザ達に護衛させればいいようなもんだが、やはり自分で使える有効な武器は欲しいのさ」
「そうかあ、ああ後でディナーに行こうよ。いい店を知っているから」
「さすがに王都は華やかだな。宿の窓から街の灯が見える。都会の夜景なんて見るのは、一体どれだけぶりだろう」
「そういう意味では、王都はいいわね」
「今度から、お風呂だけでも入りにこよう~。ビトーでもお風呂はあったんだけど、王都の物はまた豪勢だなあ」
「こっちの方は魔道具で沸かすからね。厨房の竈なんかもそうよ。そうしないと周り中が禿げ山になってしまうしね」
「そうだよなあ。地球のヨーロッパってそうじゃなかったっけ。俺は竈で作った御飯が美味しいからあっちの方が好きだなあ」
「あ」
「どうしたい」
「王様にエリクサーの納品に行くのを忘れてた」
「いいじゃん、明日で。どうせ、偵察任務の君がここにいるって事は戦いもないって事だよね」
「まあね。一応、報酬は現物と引き換えだからね」
「エリクサー代はタダだったんだから、代金はそのまま着服で!」
「あはは、そうね。むしろ、王様にエリクサーを納品したのにお金を返したらマズイじゃないの。あのごうつくばりの婆さんのところでタダで貰ってきちゃあさ。予算に収まったら御の字って言われていたのよ。まあ領収書を出せとは言われていないしね」
「そいつは確かにな」
マーリン師も人を見て商売してるみたいだから、王様からなら大枚ふんだくるんだろうな。
俺はベッドに腰かけてまったりしている泉に訊いてみた。
「なあ、王様の相場でエリクサーって一本いくらになってた?」
すると、泉はさもおかしそうに口元を押さえて笑いを堪えている。
「聞きたい?」
「後学のためにぜひとも!」
「一本白金貨十枚よ」
「うわっ、勇者にはそれだけポンと金をかけるのに、俺は城に置き去りだったのかよっ」
「その辺は、王様の加減じゃなくて国の予算局でそういう取り決めになっていて、はっきりと線引きらしいのよ。みんなの間では噂しているわ。魔王の正体は、大昔のハズレ勇者なんじゃないかって。王城では、そういう話を知っていて教えてくれる人なんかもいてね」
「ありうる! 毎回ハズレ勇者がいたみたいだしなあ。中にはとんでもない奴がいたんじゃないのか。くそう、俺はこの国の財務省相当のお役所のせいで、あんなに苦労させられていたのか~」
「ふふ、君のやってきた事がバレたら、その噂が信憑性を持って語られちゃいそうね」
「それいいね!」
「ひゃあ、お客さん、今夜はお楽しみですね~」
「うひょお、えっちい」
「あーあ、あたしも男が欲しいなあ。でもあの若い勇者の馬鹿どもは論外だし、おっさん達もあれだし。唯一まともそうな国護のおっさんは見向きもしてくれないしな。こっちの人と付き合うっていうのもなんなんだよなあ。価値観とかがまったく違うし」
「でも帰れないんだったら、こっちの少しはましそうな男を捉まえるしかないよ」
「こっちは行き遅れになるのが早いらしいし、焦るわー」
「ねえ、どうせなら王子様とかどうよ。こっちだって一応は勇者なんだからさ」
「いや、そういうのはへたすると跡目争いで暗殺されちゃいますよー」
「そうだ、あたしらで力を合わせて、あの城で日本から美少年を召喚しようよ」
「くそう、いいなー。泉さん、いいなー。ハズレ勇者でも、あいつらと違って麦野さんって性格がまともそうだもんな」
「ふふ、じゃあ泉さん、ごゆっくりねー。お邪魔虫は退散しますよ。化粧品、ひゃっはー!」
散々俺達を冷やかしながら、連中は姦しく帰っていった。化粧品その他が手に入ったので皆御機嫌だな、特にあの坪根濔刃風(つぼねではかぜ)嬢は。
最後まですっぴんの顔は拝めなかったが、もしも無理やりに見ていたとしたら呪いのデバフが飛んできそうで怖い。
あれはバフ能力を持つ勇者と対をなす能力みたいだからヤバイのではないだろうか。最悪、あの二人がいれば王国側はかなり有利に戦えるはずだ。
特に勇者の小僧と違って裏勇者の方はアグレシッブなイメージだし。戦力均衡の戦い限定ならば王国連合側が圧勝できそうだ。
まあ敵方はザムザのような魔人が無双したらどうなのかはしれないが。
「女の子が集まると、やっぱり賑やかだなあ」
「はは、お蔭で気も紛れるわ。こんな事を言っちゃあなんだけど、やっぱり女の子が大勢いたんで助かったわ」
「そうかもなあ」
やっぱり、こんな世界で寂しいのはアカンのよ。俺も一人だと陰隠滅滅になっちまったもの。
「でも、そんなちっぽけな銃で魔物と戦えるの?」
「ああ、一応試してみたい事はあるんだ。ザムザ達に護衛させればいいようなもんだが、やはり自分で使える有効な武器は欲しいのさ」
「そうかあ、ああ後でディナーに行こうよ。いい店を知っているから」
「さすがに王都は華やかだな。宿の窓から街の灯が見える。都会の夜景なんて見るのは、一体どれだけぶりだろう」
「そういう意味では、王都はいいわね」
「今度から、お風呂だけでも入りにこよう~。ビトーでもお風呂はあったんだけど、王都の物はまた豪勢だなあ」
「こっちの方は魔道具で沸かすからね。厨房の竈なんかもそうよ。そうしないと周り中が禿げ山になってしまうしね」
「そうだよなあ。地球のヨーロッパってそうじゃなかったっけ。俺は竈で作った御飯が美味しいからあっちの方が好きだなあ」
「あ」
「どうしたい」
「王様にエリクサーの納品に行くのを忘れてた」
「いいじゃん、明日で。どうせ、偵察任務の君がここにいるって事は戦いもないって事だよね」
「まあね。一応、報酬は現物と引き換えだからね」
「エリクサー代はタダだったんだから、代金はそのまま着服で!」
「あはは、そうね。むしろ、王様にエリクサーを納品したのにお金を返したらマズイじゃないの。あのごうつくばりの婆さんのところでタダで貰ってきちゃあさ。予算に収まったら御の字って言われていたのよ。まあ領収書を出せとは言われていないしね」
「そいつは確かにな」
マーリン師も人を見て商売してるみたいだから、王様からなら大枚ふんだくるんだろうな。
俺はベッドに腰かけてまったりしている泉に訊いてみた。
「なあ、王様の相場でエリクサーって一本いくらになってた?」
すると、泉はさもおかしそうに口元を押さえて笑いを堪えている。
「聞きたい?」
「後学のためにぜひとも!」
「一本白金貨十枚よ」
「うわっ、勇者にはそれだけポンと金をかけるのに、俺は城に置き去りだったのかよっ」
「その辺は、王様の加減じゃなくて国の予算局でそういう取り決めになっていて、はっきりと線引きらしいのよ。みんなの間では噂しているわ。魔王の正体は、大昔のハズレ勇者なんじゃないかって。王城では、そういう話を知っていて教えてくれる人なんかもいてね」
「ありうる! 毎回ハズレ勇者がいたみたいだしなあ。中にはとんでもない奴がいたんじゃないのか。くそう、俺はこの国の財務省相当のお役所のせいで、あんなに苦労させられていたのか~」
「ふふ、君のやってきた事がバレたら、その噂が信憑性を持って語られちゃいそうね」
「それいいね!」
14
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる