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第二章 はずれスキルの冒険者
2-38 歓迎会
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「はいはい、そこのフルチン冒険者ども! もう料理ができたから、机の上からおりなさーい。あと、これ以降の狼藉は許さないわよ。この勇者青山泉の名にかけて、たった今からこの場所はフルチン禁止ですからね!」
パンパン、パンパンと、裸踊りに夢中な冒険者(自分の彼氏含む)を追い立てるように両手を鳴らしながら、厨房からワゴンに載せた料理の数々を押してきたフォミオとショウを引き連れて泉がやってきた。
「そのフルチン野郎の中に、お前の彼氏である勇者カズホも混ざっているんだがな」
「はいはい、そこ文句を言わなあい。今更この歳で、彼氏のフルチンに動揺するほど、おぼこ娘じゃありませんので大丈夫よ。
いいからお前ら、生きたまま皮を剝かれたくなかったら一匹残らず今すぐ服を着ろ。そして、そこの蟷螂頭。足でぐりぐりと踏まれてハリガネ虫をケツから吐き出す羽目になりたくないんだったら、あんたもね」
ビシっと、主の彼女に指を差され、大人しく服を着始める元魔王軍の魔将軍。
「おお、おお、怖いねえ、女勇者さんは」
「よくあんな怖い女とつきあっているもんだな」
そして首を竦めてボヤきながら服を着て、料理にかぶりつく冒険者達。俺はそれを楽しく眺めながら、傍らの男に訊いてみた。
「パウル、お前って東部のなんとかいう地方の出身なんだって?」
「ああ、ムアンだ。もう随分と帰っていないな。ああ懐かしい、そこにあるのはムアン名物のムアン・ソーセージじゃないか。熱々で嬉しくなるな。
こいつがまた美味いんだ。お、ムアン料理の代名詞とも言われた、このムアン・マスタードもあるぞ。いいねえ、やっぱりピリっとくる本場のこいつがなくっちゃよ」
懐かしい故郷の味に、堅物そうなこの男も思わず顔が綻んだようだ。
「ほら全裸野郎ども、はいどうぞ」
泉は手慣れたように、先程までの裸男祭りは銀河の果ての出来事であったかのようになかった事にして、お酒を注いで回っていた。
「いやー、さすが勇者はこの程度の事には動じないな」
俺が褒めると、泉は笑い飛ばして酒を注いでくれた。
「へへん、こう見えても綺麗処の受付嬢ですからね。何かあると忘年会とか、偉い人のいそうなところには連れていかれちゃうんだ。まあ、あの痴態に慣れていればね。あんたこそ、さすが元営業。男芸者っぷりが堂にいっているじゃないのさ」
「ふ、この程度やれなくっちゃ、辺境の勇者も営業社員も務まらねえんだよ、ひゃっはー!」
「まあ、実際にその二つを見事にこなして兼ねているアンタにそう言われちゃ、納得せずにはおれないけどね」
だが、不屈がソーセージにブスリと、武骨な丈夫なだけが取り柄ですといった趣のフォークを突き立てながら訊いてきた。
「お前は冒険者となって何がやりたいのだ?」
「いや、特に何も」
「なにい?」
「ああ、ギルマスに誘われたから来ちゃったけど、以前は試験や条件が面倒そうなんでパスするつもりだった。なってみたいという気持ちは激しくあったんだがな。
今、俺の目の前にいる面倒そうな奴のせいで、特別枠のはずだったのに試験っぽい感じになっちまったんだが。第一、俺はこの街の住人じゃあないから、毎日出勤はできないぞ」
不屈、パウルは呆れたような顔で、まるでフランクフルトのように太いソーセージにガブリと齧りつき、グイっと酒で飲み下した。
「じゃあ、ギルマスはどうやってお前に連絡を付けるつもりなんだ?」
「さー、そんな事はギルマスに訊けよ。なんか考えくらいあるんだろう」
「相変わらず適当だな、あのギルマスは。まあいい、お前の村まで早馬でも飛ばせばすぐに着く」
「でも途中の村に替えの馬なんているのか?」
「何を言っている。そんな物は回復魔法で癒すのに決まっているだろう。人間様の方が休憩しないと持たないからな。何故その程度の事も知らん。って、そういやお前は勇者なんだったな。勇者の国ではどうしているんだ?」
回復魔法か、フォミオがいないのだったら頑張って習得して馬の練習でもするんだが、馬は乗り慣れていないと落馬事故が怖い。
回復魔法は欲しい気もするな、ポーションよりもあれこれと使い勝手がよさそうだ。
俺もその鉄板皿に乗ってジュウジュウとまだ音を立てているムアン名物とやらにフォークを伸ばして突き刺すと、ムアン・マスタードをたっぷりと上に乗せてから説明してやった。
「そうだな。俺の村からここまで二百キロ。移動するのなら通常は電車、そのくらい離れていたら高速鉄道を使うのが一般的じゃないか。
新幹線も昔は東京大阪間しかなかったが、今は南北にぐいっと伸びてる。あまり離れていると飛行機になるが、東京名古屋間くらいなら飛行機も海外へ行く時の乗り継ぎくらいしか使わないな。
ああ、リニヤ中央新幹線に乗って見たかったなあ。あれで出張に行くのが夢だったのによ。他に都市間長距離移動は夜行バスという手もあるが、あれはキツイので俺は使わない。
昔は夜行列車というものもあったが、高速鉄道の新幹線や高速道路の普及に伴ってすたれてしまったな。
まあ自由にあちこち行きたいというのであれば、高速道路に乗って車でお出かけか。俺は車を持っていないから、現地でレンタカーかな。
あと同じ地域内なら地下鉄での移動が便利だし、その他の細かいところは市バスだな。俺は仕事で回る先は近場が殆どなので地下鉄と市バス、後は僻地に行く時や荷物がある時は営業車使用といったところだな。
出張は基本新幹線だ。あと連絡は電話、今は主にスマホかな。自分のスマホもあるが、俺は営業職だったから、会社からもビジネス用の物を一つ支給されていたよ」
「うーん、お前が何を言っているのか、まったくわからん」
「当り前だ、この世界には何一つない代物よ。そもそも、俺の世界で馬なんかに乗れるのは一部の、金を持っていてさらに馬に興味のある特別な奴だけだ。
あと馬車なんて酔狂な物には大金持ちだって乗っていやいないさ。あれこそ観光用の代物だ。うちの人力車と同様にな」
生憎な事に、うちの人力車は観光用ではなくて、これしかないというメインの交通手段なのだが。おチビさん達にとってはアトラクション的な要素もあるな。
「そうか、よくわからんが勇者の国は便利そうだな」
俺は冒険者どもが地下鉄やバス、新幹線や高速道路などで現場に向かう光景を想像して、少し酒を吹いてしまった。
「だが、ザムザ1が手に入ったので、空を行く事も可能になった。まあ基本は一人乗りなのだがな」
「羨ましい事だな。俺達は基本的に馬での移動だ。冒険者に回復魔法は必須だぞ」
「へえ、俺にも覚えられるかな」
「まあ、やってみろ」
パンパン、パンパンと、裸踊りに夢中な冒険者(自分の彼氏含む)を追い立てるように両手を鳴らしながら、厨房からワゴンに載せた料理の数々を押してきたフォミオとショウを引き連れて泉がやってきた。
「そのフルチン野郎の中に、お前の彼氏である勇者カズホも混ざっているんだがな」
「はいはい、そこ文句を言わなあい。今更この歳で、彼氏のフルチンに動揺するほど、おぼこ娘じゃありませんので大丈夫よ。
いいからお前ら、生きたまま皮を剝かれたくなかったら一匹残らず今すぐ服を着ろ。そして、そこの蟷螂頭。足でぐりぐりと踏まれてハリガネ虫をケツから吐き出す羽目になりたくないんだったら、あんたもね」
ビシっと、主の彼女に指を差され、大人しく服を着始める元魔王軍の魔将軍。
「おお、おお、怖いねえ、女勇者さんは」
「よくあんな怖い女とつきあっているもんだな」
そして首を竦めてボヤきながら服を着て、料理にかぶりつく冒険者達。俺はそれを楽しく眺めながら、傍らの男に訊いてみた。
「パウル、お前って東部のなんとかいう地方の出身なんだって?」
「ああ、ムアンだ。もう随分と帰っていないな。ああ懐かしい、そこにあるのはムアン名物のムアン・ソーセージじゃないか。熱々で嬉しくなるな。
こいつがまた美味いんだ。お、ムアン料理の代名詞とも言われた、このムアン・マスタードもあるぞ。いいねえ、やっぱりピリっとくる本場のこいつがなくっちゃよ」
懐かしい故郷の味に、堅物そうなこの男も思わず顔が綻んだようだ。
「ほら全裸野郎ども、はいどうぞ」
泉は手慣れたように、先程までの裸男祭りは銀河の果ての出来事であったかのようになかった事にして、お酒を注いで回っていた。
「いやー、さすが勇者はこの程度の事には動じないな」
俺が褒めると、泉は笑い飛ばして酒を注いでくれた。
「へへん、こう見えても綺麗処の受付嬢ですからね。何かあると忘年会とか、偉い人のいそうなところには連れていかれちゃうんだ。まあ、あの痴態に慣れていればね。あんたこそ、さすが元営業。男芸者っぷりが堂にいっているじゃないのさ」
「ふ、この程度やれなくっちゃ、辺境の勇者も営業社員も務まらねえんだよ、ひゃっはー!」
「まあ、実際にその二つを見事にこなして兼ねているアンタにそう言われちゃ、納得せずにはおれないけどね」
だが、不屈がソーセージにブスリと、武骨な丈夫なだけが取り柄ですといった趣のフォークを突き立てながら訊いてきた。
「お前は冒険者となって何がやりたいのだ?」
「いや、特に何も」
「なにい?」
「ああ、ギルマスに誘われたから来ちゃったけど、以前は試験や条件が面倒そうなんでパスするつもりだった。なってみたいという気持ちは激しくあったんだがな。
今、俺の目の前にいる面倒そうな奴のせいで、特別枠のはずだったのに試験っぽい感じになっちまったんだが。第一、俺はこの街の住人じゃあないから、毎日出勤はできないぞ」
不屈、パウルは呆れたような顔で、まるでフランクフルトのように太いソーセージにガブリと齧りつき、グイっと酒で飲み下した。
「じゃあ、ギルマスはどうやってお前に連絡を付けるつもりなんだ?」
「さー、そんな事はギルマスに訊けよ。なんか考えくらいあるんだろう」
「相変わらず適当だな、あのギルマスは。まあいい、お前の村まで早馬でも飛ばせばすぐに着く」
「でも途中の村に替えの馬なんているのか?」
「何を言っている。そんな物は回復魔法で癒すのに決まっているだろう。人間様の方が休憩しないと持たないからな。何故その程度の事も知らん。って、そういやお前は勇者なんだったな。勇者の国ではどうしているんだ?」
回復魔法か、フォミオがいないのだったら頑張って習得して馬の練習でもするんだが、馬は乗り慣れていないと落馬事故が怖い。
回復魔法は欲しい気もするな、ポーションよりもあれこれと使い勝手がよさそうだ。
俺もその鉄板皿に乗ってジュウジュウとまだ音を立てているムアン名物とやらにフォークを伸ばして突き刺すと、ムアン・マスタードをたっぷりと上に乗せてから説明してやった。
「そうだな。俺の村からここまで二百キロ。移動するのなら通常は電車、そのくらい離れていたら高速鉄道を使うのが一般的じゃないか。
新幹線も昔は東京大阪間しかなかったが、今は南北にぐいっと伸びてる。あまり離れていると飛行機になるが、東京名古屋間くらいなら飛行機も海外へ行く時の乗り継ぎくらいしか使わないな。
ああ、リニヤ中央新幹線に乗って見たかったなあ。あれで出張に行くのが夢だったのによ。他に都市間長距離移動は夜行バスという手もあるが、あれはキツイので俺は使わない。
昔は夜行列車というものもあったが、高速鉄道の新幹線や高速道路の普及に伴ってすたれてしまったな。
まあ自由にあちこち行きたいというのであれば、高速道路に乗って車でお出かけか。俺は車を持っていないから、現地でレンタカーかな。
あと同じ地域内なら地下鉄での移動が便利だし、その他の細かいところは市バスだな。俺は仕事で回る先は近場が殆どなので地下鉄と市バス、後は僻地に行く時や荷物がある時は営業車使用といったところだな。
出張は基本新幹線だ。あと連絡は電話、今は主にスマホかな。自分のスマホもあるが、俺は営業職だったから、会社からもビジネス用の物を一つ支給されていたよ」
「うーん、お前が何を言っているのか、まったくわからん」
「当り前だ、この世界には何一つない代物よ。そもそも、俺の世界で馬なんかに乗れるのは一部の、金を持っていてさらに馬に興味のある特別な奴だけだ。
あと馬車なんて酔狂な物には大金持ちだって乗っていやいないさ。あれこそ観光用の代物だ。うちの人力車と同様にな」
生憎な事に、うちの人力車は観光用ではなくて、これしかないというメインの交通手段なのだが。おチビさん達にとってはアトラクション的な要素もあるな。
「そうか、よくわからんが勇者の国は便利そうだな」
俺は冒険者どもが地下鉄やバス、新幹線や高速道路などで現場に向かう光景を想像して、少し酒を吹いてしまった。
「だが、ザムザ1が手に入ったので、空を行く事も可能になった。まあ基本は一人乗りなのだがな」
「羨ましい事だな。俺達は基本的に馬での移動だ。冒険者に回復魔法は必須だぞ」
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「まあ、やってみろ」
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