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第二章 はずれスキルの冒険者
2-24 今夜、僕の部屋に
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「ねー、カズホちゃーん。待ってったらさあ」
お店を出てから泉ちゃんが俺に付きまとって猫なで声を出しまくっていた。
あれからお店で「このごうつくばりの婆あ、もう一本エリクサーを出せ! 王命なんだからさー、あんただってこの国の人なんでしょ。魔王軍と戦う勇者に少しくらい便宜を図りなさいよ。なんでハズレ勇者にばかり便宜を図るのよー」などと叫びまくっていたのだ。
あははは、ハズレ勇者ときたもんだ。泉ってばもう俺に遠慮なくなっているなあ。でも無理だな、多分エリクサーは材料からして超希少で王都にさえ在庫がないのだろう。
だから、飛行能力を持った彼女がこんな離れた街まできて交渉していたのだ。そして、おそらくマーリン師も本当にこれしか持っていなかったはずだ。
「神に誓って他にはない。それは王も知っておるじゃろう。だから一本だけ仕入れてこいと言われておるのだろう?」
「う、確かにそうだけれど」
「欲しければ、あのカズホから買い取るんじゃの。まあ、そやつなら譲ってくれん事もないかもしれんぞ、そやつならば。なあカズホよ」
「あははははは」
やっぱりバレていますわねえ、俺のスキルの内容は。
そこは文字通り笑って胡麻化したのだが、彼女青山泉は実にしつこかった。
「ねえねえ、あんたは特にそれ要らないんでしょう? 魔王と戦うわけじゃあないんだからさ」
「まあそうなんだけど、この世界は油断も隙もないからな、こういう物は俺だって欲しいのさ。えへへ、どうしようっかなー」
別にあっさりと譲る約束をして点数を稼いでおいたっていいのだが、ここは俺好みの美女に恩を売るために、せいぜい勿体をつけておくとしましょうか。
「そう言わないでさー。ねー、お願い」
と泉は腕に抱き着いて胸を押し付けてくる。
うむ、結構なサイズの柔らかいモノが温かさを伴って押し付けられてくる感触。こんな可愛い子にお強請りされて纏わりつかれるなんて、なんていい気分なんだ。
できればもう少し味わいたい気もしたが、そうも言ってられない。あまり意地悪を言っても俺の株が下がる。
「そうだな、王様にというと癪に障るが、まあ泉になら譲ってもいいかな」
「本当⁉」
「ただし、後で。そうだな、今夜俺の部屋でどうだい?」
「えーっ、それって」
彼女が露骨に顔を顰めていたので、俺は笑って否定してやった。
「ははは、安心しろよ、無理に押し倒すなんてしないさ。その時は正々堂々口説いてから合意の上で押し倒すから。
実はちょっと理由があってな、こいつを渡すのなら早くても日付の変わる頃がいいのさ。俺は明日一日この街にいるので、少々時間は遅くても構わない。
ショウも自分の商売用に商品を仕入れたいだろうし。エリクサーは明日渡すという事でも俺としては全然構わないぜ」
俺の提案に彼女も少し迷った様子で、残念ながら深夜の俺の部屋への訪問はなさそうな模様だ。
まあこれだけの女の子なのだ、こっちの世界で付き合っている男だっているだろうしな、こんなに美人でスタイルもいいんだから。だがまだ口説けないと決まったものでもない。
「ああ、うん。そうだね、じゃあ明日にしようかな、ここはアクセサリーで有名な街でさあ。他の子からもあれこれ買い物を頼まれてるんだよねー。お陰様でマージンとして自分の分はロハで手に入るのよ。あんたも御土産が欲しいでしょう、よかったら明日一緒に回らない? 案内してあげるわよ」
やったぜ、わざとワンステップ踏んで高感度を上げたおかげで、すこぶるつきで好みの日本美女から明日の買い物デートの約束を取り付けた。
「宿はどこに泊まっているんだい」
「花の都ホテルよ、王国の世話係の人からのお勧めなの」
「へえ、俺もそこに泊まっているんだ。しかも日本じゃとても俺なんかが泊めてもらえないような極上の貴賓室みたいな部屋だ。ここの役人が俺に便宜を図ってくれてね」
「あ、いいなあ。じゃあちょっとだけ部屋に遊びに行こうかな」
「君みたいな美女の訪問ならいつでも大歓迎さ」
俺達は一緒に宿まで帰り、それぞれの部屋へと戻った。彼女は普通の部屋を取っていたようで、別れ際にこう誘ってくれた。
「カズホ、後で一緒に夕飯食べよ」
「喜んで!」
美女から夕食の誘いを受けてしまったので、とびきりのプレゼントは先に用意しておかないとな。
俺はさっさと部屋に引き籠り、エリクサーと白金貨、そして上級ポーションを四つまとめて袋に入れて本日一粒万倍日のスキルを行使した。
さすがの貴賓室といえども、部屋中がそれでいっぱいになって埋め尽くされてしまった。
実を言うと、魔王軍の幹部が攻めて来たって対抗できる奥の手はもう既に半ば用意してあるので、それがうまく通じる展開になるといいのだが。
だがそいつも訳ありで完全には準備できなかったのだ。まあ、もう時間も遅い、この時間にスキルを使ってしまっても、そう問題はないだろう。
いつもは念のためにスキルを深夜まで取っておいてあるだけなのだ。
「はあ、こういう事だったんですねえ」
あ、いけねえ、部屋にはショウがいたんだった。
奴も俺と同じく、半ば鞄に埋もれてしまって茫然としている。うっかりとヤバいスキルの行使を見せちまったな。
そして彼は、自身をも埋め尽くした鞄の中身に入っていたエリクサーと白金貨を見て嘆息した。
「なるほど、これがあなたの力の一端というわけなのですね。あれこれ納得できましたよ。そうか、さすがはマーリン師ですね。あなたの能力の事など先刻お見通しというわけだ。
いやあ、参ったなあ。でもあなたの力ってこれだけじゃないんでしょうねえ。あ、ご心配なく。大切なスポンサーの秘密は守りますよ」
俺は苦笑してそれらを全て収納すると、十袋ほど白金貨を抜いた物を出して彼に与えた。
「そういう事でこれからも俺と付き合う気があるのなら、これくらいは持っておけ」
今度こそ天を仰いだショウ。エリクサー十本はやたらと人に見せたら、一本につき軽く十回は殺されるレベルの代物だろう。
彼に収納の道具も持たせてないのであれば、俺もショウに渡すのは躊躇われるような代物だった。
彼の返事も実にシンプルだった。
「肝に銘じておきます」
お店を出てから泉ちゃんが俺に付きまとって猫なで声を出しまくっていた。
あれからお店で「このごうつくばりの婆あ、もう一本エリクサーを出せ! 王命なんだからさー、あんただってこの国の人なんでしょ。魔王軍と戦う勇者に少しくらい便宜を図りなさいよ。なんでハズレ勇者にばかり便宜を図るのよー」などと叫びまくっていたのだ。
あははは、ハズレ勇者ときたもんだ。泉ってばもう俺に遠慮なくなっているなあ。でも無理だな、多分エリクサーは材料からして超希少で王都にさえ在庫がないのだろう。
だから、飛行能力を持った彼女がこんな離れた街まできて交渉していたのだ。そして、おそらくマーリン師も本当にこれしか持っていなかったはずだ。
「神に誓って他にはない。それは王も知っておるじゃろう。だから一本だけ仕入れてこいと言われておるのだろう?」
「う、確かにそうだけれど」
「欲しければ、あのカズホから買い取るんじゃの。まあ、そやつなら譲ってくれん事もないかもしれんぞ、そやつならば。なあカズホよ」
「あははははは」
やっぱりバレていますわねえ、俺のスキルの内容は。
そこは文字通り笑って胡麻化したのだが、彼女青山泉は実にしつこかった。
「ねえねえ、あんたは特にそれ要らないんでしょう? 魔王と戦うわけじゃあないんだからさ」
「まあそうなんだけど、この世界は油断も隙もないからな、こういう物は俺だって欲しいのさ。えへへ、どうしようっかなー」
別にあっさりと譲る約束をして点数を稼いでおいたっていいのだが、ここは俺好みの美女に恩を売るために、せいぜい勿体をつけておくとしましょうか。
「そう言わないでさー。ねー、お願い」
と泉は腕に抱き着いて胸を押し付けてくる。
うむ、結構なサイズの柔らかいモノが温かさを伴って押し付けられてくる感触。こんな可愛い子にお強請りされて纏わりつかれるなんて、なんていい気分なんだ。
できればもう少し味わいたい気もしたが、そうも言ってられない。あまり意地悪を言っても俺の株が下がる。
「そうだな、王様にというと癪に障るが、まあ泉になら譲ってもいいかな」
「本当⁉」
「ただし、後で。そうだな、今夜俺の部屋でどうだい?」
「えーっ、それって」
彼女が露骨に顔を顰めていたので、俺は笑って否定してやった。
「ははは、安心しろよ、無理に押し倒すなんてしないさ。その時は正々堂々口説いてから合意の上で押し倒すから。
実はちょっと理由があってな、こいつを渡すのなら早くても日付の変わる頃がいいのさ。俺は明日一日この街にいるので、少々時間は遅くても構わない。
ショウも自分の商売用に商品を仕入れたいだろうし。エリクサーは明日渡すという事でも俺としては全然構わないぜ」
俺の提案に彼女も少し迷った様子で、残念ながら深夜の俺の部屋への訪問はなさそうな模様だ。
まあこれだけの女の子なのだ、こっちの世界で付き合っている男だっているだろうしな、こんなに美人でスタイルもいいんだから。だがまだ口説けないと決まったものでもない。
「ああ、うん。そうだね、じゃあ明日にしようかな、ここはアクセサリーで有名な街でさあ。他の子からもあれこれ買い物を頼まれてるんだよねー。お陰様でマージンとして自分の分はロハで手に入るのよ。あんたも御土産が欲しいでしょう、よかったら明日一緒に回らない? 案内してあげるわよ」
やったぜ、わざとワンステップ踏んで高感度を上げたおかげで、すこぶるつきで好みの日本美女から明日の買い物デートの約束を取り付けた。
「宿はどこに泊まっているんだい」
「花の都ホテルよ、王国の世話係の人からのお勧めなの」
「へえ、俺もそこに泊まっているんだ。しかも日本じゃとても俺なんかが泊めてもらえないような極上の貴賓室みたいな部屋だ。ここの役人が俺に便宜を図ってくれてね」
「あ、いいなあ。じゃあちょっとだけ部屋に遊びに行こうかな」
「君みたいな美女の訪問ならいつでも大歓迎さ」
俺達は一緒に宿まで帰り、それぞれの部屋へと戻った。彼女は普通の部屋を取っていたようで、別れ際にこう誘ってくれた。
「カズホ、後で一緒に夕飯食べよ」
「喜んで!」
美女から夕食の誘いを受けてしまったので、とびきりのプレゼントは先に用意しておかないとな。
俺はさっさと部屋に引き籠り、エリクサーと白金貨、そして上級ポーションを四つまとめて袋に入れて本日一粒万倍日のスキルを行使した。
さすがの貴賓室といえども、部屋中がそれでいっぱいになって埋め尽くされてしまった。
実を言うと、魔王軍の幹部が攻めて来たって対抗できる奥の手はもう既に半ば用意してあるので、それがうまく通じる展開になるといいのだが。
だがそいつも訳ありで完全には準備できなかったのだ。まあ、もう時間も遅い、この時間にスキルを使ってしまっても、そう問題はないだろう。
いつもは念のためにスキルを深夜まで取っておいてあるだけなのだ。
「はあ、こういう事だったんですねえ」
あ、いけねえ、部屋にはショウがいたんだった。
奴も俺と同じく、半ば鞄に埋もれてしまって茫然としている。うっかりとヤバいスキルの行使を見せちまったな。
そして彼は、自身をも埋め尽くした鞄の中身に入っていたエリクサーと白金貨を見て嘆息した。
「なるほど、これがあなたの力の一端というわけなのですね。あれこれ納得できましたよ。そうか、さすがはマーリン師ですね。あなたの能力の事など先刻お見通しというわけだ。
いやあ、参ったなあ。でもあなたの力ってこれだけじゃないんでしょうねえ。あ、ご心配なく。大切なスポンサーの秘密は守りますよ」
俺は苦笑してそれらを全て収納すると、十袋ほど白金貨を抜いた物を出して彼に与えた。
「そういう事でこれからも俺と付き合う気があるのなら、これくらいは持っておけ」
今度こそ天を仰いだショウ。エリクサー十本はやたらと人に見せたら、一本につき軽く十回は殺されるレベルの代物だろう。
彼に収納の道具も持たせてないのであれば、俺もショウに渡すのは躊躇われるような代物だった。
彼の返事も実にシンプルだった。
「肝に銘じておきます」
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