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第二章 はずれスキルの冒険者

2-14 異世界お祭りデビュー

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 それから俺は村長さんからいろいろなお話を聞かせていただき、この世界に対する新鮮な知識を増やしていった。

「とにかく魔王軍は猛威を振るい、今世界中が頭を痛めておるのですよ。そして、このような辺境にも魔物が次々と。勇者様だけが頼りなのです」

「いやあ、今回の勇者はそうではないみたいです。魔王と戦う人間一人一人に力と勇気を与えてくれるようですから。まあそういう事ですので皆さんで頑張るしかないのでしょう。多分、幹部のような強い相手は勇者グループが頑張って倒すのでしょうしね」

 きっとまだまだ魔王軍の幹部なんていくらでもいるんだろうなあ。おそらく、見込みのある奴に魔王が名前を与えれば、そいつが百魔物力で頑張る所存なのに違いない。

 せっかく、のんびりと異世界を満喫しようと思っているのに碌な話がない。魔王め、元は人間なんだからもっとのんびりしろ、働き過ぎは体によくないぜ。

 その辺がやっぱり日本人なんだよなあ、しかも昔気質というか、かなり昔の日本人らしいし。

「そうですなあ、何もかもを召喚された勇者様にお願いするなどという虫のいい事は通らないのでしょうな」

「まあ勇者の人数的にね、細かいところまで対応は無理でしょう。頑張れ人間軍」

 そして夕方には、村の中央にあるかなり大きめの広場でちょっとしたお祭り騒ぎになった。

 魔物蜂の大群に襲われるところが無事に済んだので。最近はイベントもなくて退屈していたものらしく、そして主賓は俺達だ。

 広場にはたくさんの篝火が焚かれ、少しおめかしした村の人達が続々と集まってくる。広場に繰り出した人々はもう数えきれないほどで、物凄い人数になった。

 こいつは少なく見ても千人は軽く越えている。これは思っていたよりも大きな村だな。軽やかなステップで踊る娘達に、陽気に歌い弦楽器を奏でる若者達。今夜は恋も生まれる夜なのだろう。

「皆の衆、こちらが林に沸いた魔物を退治して子供達を助けてくださった勇者様じゃ。今宵は勇者様への感謝と、村の無事を祝って宴を開こう」

 俺が前に出され紹介されるので、恭しく礼はしておいた。あれこれと新調しておいたので、みっともない格好はしていなくてよかったことだ。特に足回りが前のボロ靴だったら目も当てられない風体だっただろう。

「おお、勇者様だ」
「やはり髪や目が黒いのだなあ」

「うちの子を助けてくださってありがとう」
 口々に感想や礼などが俺に贈られる中、昼間の子供達も集まってきて、俺やフォミオを取り囲んだ。

「昼間はありがとうー」
「やっぱりフォミオは大きいなあ」

 そして、俺も子供達のためにお菓子などを供出した。ロッシェやその他のこっちで仕入れたお菓子、異世界へ持ち混んだ箱や袋のお菓子、それにチョコ・キャラメル・ラムネなど。

 御飯物では女将さんのパテやカナッペなども並べて、デザートのフルーツとして異世界のスモモやアケビなどを並べた。子供達は初めて口にするチョコに大はしゃぎだ。

「美味しーい」
「あまーい」
「本当にねー」

「エレ、お前はいつでもチョコを食えるだろうが。村の子供達の上前をはねるんじゃねえ」
「えー、だって食べたいんだもん」

 特にチョコは大評判だったが、まあ本日限りの特典だな。

 フォミオが暇を見て自分で作っていて、鍛冶屋さんに出来合いの薪の釜を取りつけてもらった超大型の屋台を取り出した。

 もちろん作るものはお得意の『焼き締めパンスープ』だった。これがここでも案外と大好評だった。日本でいえば、おこげスープみたいな感覚だろうか。

 そしてフォミオは俺が店番をしている間に、料理の合間に芸を始めた。俺がうろ覚えの、動画サイトなんかで見かけた大道芸を教えてやらせてみたもので、あの幼女様方には大受けだったのだ。

  秋に行われる予定の村の合同祭りなんかでデビューさせようと思っていたのだが、思わぬ場所でのショータイムとなった。

 大道芸の基本であるジャグリングだな。フォミオが木で作ったボーリングのピンのような物、確かクラブといったはずだが、それを軽やかに投げ、まるでそれ自体が何かの命に溢れる生き物であるかのような挙動で中を舞った。

 派手な色合いの染料が手に入らなかったので洋服によく用いられていた藍色に染めたものと、無地のままのものを用意してある。

 あといろんな材料で作ったボールでもやらせていた。ボールは転がすという技ができるし、たくさん投げるとその軌道を眺めているだけでも、なかなか楽しいものだ。

 子供達が自分でもやりたがるので、フォミオが丁寧に教えている。子供達にも遊ばせようと思って子供サイズの道具も作らせてあったのだ。

 とにかく簡単に加工できる物なら万能工作機械のように加工していってくれる従者がいるから便利な事この上ない。大道芸の道具はこの村にも一式置いていこう。

 楽しく村の祭りに身を任せながらも、こんな平和な村にも魔王の脅威は迫っているのだと感慨に耽った。この村には酒の種類も多く、そこからベンリ村も仕入れているようだった。

「酒はあちこちに酒造りが盛んな村や町がありますから、そういったところで作られて、各地へ樽や瓶で売られているのです。大きな街へいけば、もっといろいろと酒は置いてありますよ」

 ほお、地酒各種ありですか。そう聞くと異世界もまた悪くなしと思えてくるな、日本にいたら絶対に味わえなかっただろうし。

「そうかあ、じゃあ是非ビトーの街でもカイザへの御土産に買っていかないとなあ」
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