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第二章 はずれスキルの冒険者
2-12 村長屋敷
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そして、街中と言ってしまってもいいような村並みの中、俺達は村長の屋敷に案内された。
中世ヨーロッパの家並みのように美しい白壁と木材で彩られたその家は、なんと三階建てで、この世界で初めてお目にかかる高層の建物だった。
確かに日本でも高層建築は溢れちゃいるが、一般の住宅はせいぜい二階建てで三階建て以上は珍しい。
アパートだって三階にすると階段が大変なので借りる人に敬遠されちゃうからな。それくらいなら少し古くてもエレベーターがついたマンションにでも住んだ方がマシだし。
これまでは、あのベンリ村の女将さんの宿の二階建てが最高だった。あの宿が今までで一番大きかった家だったし。
もちろん、ここでも村長の家が群を抜いて大きく、後は平屋か二階建てだった。おそらく、後は村長の家に匹敵するのは、王様一行が泊まっただろう宿しかないはずだ。
それも全部は泊め切れないだろうから、村長の家や他の有力者の家に分散して泊まったかもしれない。
勇者が五十九人も増えたからな。兵士などは天幕だったかもしれない。こんな立派な家に住む村長さんも、いざ有事になれば完全武装で先頭を切るのか。異世界というのは物凄いもんだな。
「いやあ、これは立派な家だなあ」
「いや村長たるもの、大事な村のお客様をお迎えする事もありますのでな。まさか王様がこの村を訪問なさるとは想定しておらなんでしたが。
これも聖戦の地アルフェイムの近くに村を構えるものの宿命といえましょうか。本日の魔物の件も含めて。わしの先祖もあの戦いには趣き、そして勇猛に戦って国を守り戦死いたしました」
なるほど、その誇りを汚さぬように、子孫もあのように勇猛であるわけだねえ。
うちのご先祖ってどんな感じだったんだろうか。少なくとも、きっと子孫にまで遺伝で伝わるほど子煩悩なお方だったのに違いない。
しかし、さすが大きな家だけあって天井が高くて助かるな。フォミオを上の階に泊めてもらって床が抜けてもいかんので、その事を話すと一階の空いていた部屋を用意してくれた。
フォミオ用の、大変頑丈な本人が自作したベッドを収納から出すと酷く驚かれたが、彼は感心したように言った。
「やはり、あなた様も勇者様なのですな。その黒髪黒目の御姿、魔物を全滅させられる力に、素晴らしい収納の能力。何故あなただけがご一行の後からやってきなさるのか知りませんが、あなた様も立派な勇者様でございます」
「ははは、恐れ入ります」
まあ、ハズレでも勇者は勇者、そういう事にしておくさ。
「昼食までまだ時間がありますから、村を見に行って来られては。ショウが案内してくれるでしょう」
「じゃあ行きますか、カズホさん。ここは、ここまで来る間で一番大きな村ですから」
お言葉に甘えて、俺は村の様子を見に行く事にした。何、ガイドさんを連れて、お買い物に行くだけだ。
フォミオは今日も頑張って馬車を引いてくれていたので、休憩がてらにお留守番だ。明日からも頑張ってもらわないといかんので。
それに放っておけば何か工作でもしてくれている事だろう。背中にも荷物を背負っているし、荷馬車にもいろいろ積んであるのだ。
俺に預けておくと好きな時に出せないからな。うーん、フォミオのための収納がもう一つ欲しい。
通りには、いろいろな物が売っていた。ベンリ村よりも垢抜けた洋服はやはり値段が高い。
あっちは基本的に村内で生産から消費までが循環しているので、農家のおばさんの内職的な内容が色濃いようだった。
あれでも中には可愛い物なんかはあったのだが、俺があの子達に買った良い物などは、この村から仕入れたのだろう。
ここで作られる、あるいは販売されているものはこの世界で初めて出会う職業的な洋裁の成果なのだ。
洋服はよさそうな物を適当に買い込み、道具屋を覗いてみたが、かなり大きめの道具などがあったのでフォミオ用に一通り揃えていった。
あの子はいつも弘法筆を選ばずといった感じに作業しちまうんだけど、まああればあったで役には立つはずだ。
おやつなども売っていたが、そう珍しいものはない。あればショウが仕入れてきているだろう。素朴なクッキーのような焼き菓子とか、あと何かこう瓦煎餅っぽい物があった。パス。
「えー、買わないの。せっかくだからそいつも買おうよ」
「ちょっと待て、エレ。これこそまさに焼き締め煎餅と言ってもいようなものなのだがな」
「それ食べてみたいな~」
「いいけど、こいつは多分甘くないよ」
「いや、それでもいいからさ」
つい根負けして買ってしまった、異世界の瓦煎餅。
さっそく俺の肩に陣取り、がっしりと抱え込んで齧っているエレが言った。
「いやあ、通の味ですね」
俺も齧ってみたのだが、やっぱり瓦煎餅のしかも劇的にマズイ奴だったので、俺の心に激しい衝撃が巻き起こった。
これは、初めてあの焼き締めパンに出会った以上の衝撃だったなあ。いっそ、これの美味い奴を作ってアルフ村の名物にでもしてみるか。あんな最果ての村には誰も買いに来ないけどね。
中世ヨーロッパの家並みのように美しい白壁と木材で彩られたその家は、なんと三階建てで、この世界で初めてお目にかかる高層の建物だった。
確かに日本でも高層建築は溢れちゃいるが、一般の住宅はせいぜい二階建てで三階建て以上は珍しい。
アパートだって三階にすると階段が大変なので借りる人に敬遠されちゃうからな。それくらいなら少し古くてもエレベーターがついたマンションにでも住んだ方がマシだし。
これまでは、あのベンリ村の女将さんの宿の二階建てが最高だった。あの宿が今までで一番大きかった家だったし。
もちろん、ここでも村長の家が群を抜いて大きく、後は平屋か二階建てだった。おそらく、後は村長の家に匹敵するのは、王様一行が泊まっただろう宿しかないはずだ。
それも全部は泊め切れないだろうから、村長の家や他の有力者の家に分散して泊まったかもしれない。
勇者が五十九人も増えたからな。兵士などは天幕だったかもしれない。こんな立派な家に住む村長さんも、いざ有事になれば完全武装で先頭を切るのか。異世界というのは物凄いもんだな。
「いやあ、これは立派な家だなあ」
「いや村長たるもの、大事な村のお客様をお迎えする事もありますのでな。まさか王様がこの村を訪問なさるとは想定しておらなんでしたが。
これも聖戦の地アルフェイムの近くに村を構えるものの宿命といえましょうか。本日の魔物の件も含めて。わしの先祖もあの戦いには趣き、そして勇猛に戦って国を守り戦死いたしました」
なるほど、その誇りを汚さぬように、子孫もあのように勇猛であるわけだねえ。
うちのご先祖ってどんな感じだったんだろうか。少なくとも、きっと子孫にまで遺伝で伝わるほど子煩悩なお方だったのに違いない。
しかし、さすが大きな家だけあって天井が高くて助かるな。フォミオを上の階に泊めてもらって床が抜けてもいかんので、その事を話すと一階の空いていた部屋を用意してくれた。
フォミオ用の、大変頑丈な本人が自作したベッドを収納から出すと酷く驚かれたが、彼は感心したように言った。
「やはり、あなた様も勇者様なのですな。その黒髪黒目の御姿、魔物を全滅させられる力に、素晴らしい収納の能力。何故あなただけがご一行の後からやってきなさるのか知りませんが、あなた様も立派な勇者様でございます」
「ははは、恐れ入ります」
まあ、ハズレでも勇者は勇者、そういう事にしておくさ。
「昼食までまだ時間がありますから、村を見に行って来られては。ショウが案内してくれるでしょう」
「じゃあ行きますか、カズホさん。ここは、ここまで来る間で一番大きな村ですから」
お言葉に甘えて、俺は村の様子を見に行く事にした。何、ガイドさんを連れて、お買い物に行くだけだ。
フォミオは今日も頑張って馬車を引いてくれていたので、休憩がてらにお留守番だ。明日からも頑張ってもらわないといかんので。
それに放っておけば何か工作でもしてくれている事だろう。背中にも荷物を背負っているし、荷馬車にもいろいろ積んであるのだ。
俺に預けておくと好きな時に出せないからな。うーん、フォミオのための収納がもう一つ欲しい。
通りには、いろいろな物が売っていた。ベンリ村よりも垢抜けた洋服はやはり値段が高い。
あっちは基本的に村内で生産から消費までが循環しているので、農家のおばさんの内職的な内容が色濃いようだった。
あれでも中には可愛い物なんかはあったのだが、俺があの子達に買った良い物などは、この村から仕入れたのだろう。
ここで作られる、あるいは販売されているものはこの世界で初めて出会う職業的な洋裁の成果なのだ。
洋服はよさそうな物を適当に買い込み、道具屋を覗いてみたが、かなり大きめの道具などがあったのでフォミオ用に一通り揃えていった。
あの子はいつも弘法筆を選ばずといった感じに作業しちまうんだけど、まああればあったで役には立つはずだ。
おやつなども売っていたが、そう珍しいものはない。あればショウが仕入れてきているだろう。素朴なクッキーのような焼き菓子とか、あと何かこう瓦煎餅っぽい物があった。パス。
「えー、買わないの。せっかくだからそいつも買おうよ」
「ちょっと待て、エレ。これこそまさに焼き締め煎餅と言ってもいようなものなのだがな」
「それ食べてみたいな~」
「いいけど、こいつは多分甘くないよ」
「いや、それでもいいからさ」
つい根負けして買ってしまった、異世界の瓦煎餅。
さっそく俺の肩に陣取り、がっしりと抱え込んで齧っているエレが言った。
「いやあ、通の味ですね」
俺も齧ってみたのだが、やっぱり瓦煎餅のしかも劇的にマズイ奴だったので、俺の心に激しい衝撃が巻き起こった。
これは、初めてあの焼き締めパンに出会った以上の衝撃だったなあ。いっそ、これの美味い奴を作ってアルフ村の名物にでもしてみるか。あんな最果ての村には誰も買いに来ないけどね。
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