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第一章 巻き込まれたその日は『一粒万倍日』
1-66 忠実なる者へ
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「ひゅう、こいつはなかなか早いな。それに快適だあ。よくやったフォリオ」
「おそれいります」
時速二十キロは出ているだろうか。六段変速のシテイサイクルでぶっとばすと、大体このくらいのスピードじゃないかな。
俺は自転車道の百メートル標識を使って腕時計で測ったら時速二十二キロくらいは出ていたようだった。
体感的にはかなり早く感じるし、まだ自分で自動車を普通に運転して幹線道路を流している方がゆっくりと感じるのではないか。
この周辺はフォミオが暇を見ては地道に平らに慣らして大きめの石なんかもどけてくれてあるのでわりと平らだ。
今度、収納で土を水平に削り取って整地できないか試してみるか。整地一つでこんなに快適なんだとは。
ただ、そのパラダイスもいつまでもは続かず、みるみるうちに速度は落ちて行ったが、乗り心地は比較的キープされている。
「いやあ、アルフ村とベンリ村の間だけでも整備してみたいな。今度お前に俺を運んでもらいながら道を進んで、目視収納で道にあるでこぼこ部分の土を削ったり大きな石などの障害をどけたりする土木作業をやってみたいもんだね」
「それはいいでやすね~。そうすれば、もっと早く往復できるようになりやすよ。お嬢様方もきっとお喜びになるでやしょう」
こいつも結構子煩悩なんだよな。なんか魔物と戦うのも馬鹿馬鹿しくなってきた気がする。
そして、またでこぼこ道を揺られながらも快適に進んでいった。今は時速七キロといったあたりか。
もう少し速度は上げられると思うが、それをやると快適さが足りなくなるのでフォリオもあえて速度は抑えていた。この心配り気配りみたいなものって、魔王軍では絶対に評価対象外だよなあ。
時計で時間を測っていたが、二時間四十分といったところか。子供なんかを乗せていると、このスピードは出せないかもしれないが、俺がちょっと用足しに行くとかショウが来ていないか見に行く程度なら十分な速さだ。全面的に街道を整地すれば、往復二時間で行けるのではないだろうか。
今日、行商人のショウが来る予定になっているのだが、まだ時間は早いので、まずは靴屋の親父さんの店へと向かった。
「どうだい、親父さん、こいつの靴は」
「ほっほう、そう焦るでないわ。あれから図面を引き直してな、再検討しておるところじゃ。ところで相談なんじゃがな、どう想定してもそいつの図体に耐えられる素材を使うと大幅に足が出てしまってなあ」
「あっはっはっはっは。いやあ、やっぱり俺の従者は半端じゃねえなあ。で、いくらかかりそうなんだい」
「むう、安い材料を使ってあと金貨三十枚、いい物を使えばおおよそあと金貨九十枚にもなる」
彼は難しい顔をしていたが、俺は余裕で笑い飛ばした。
「そいつは仕方がねえ。だって俺の従者は世界一なんだからよ」
俺は金貨を九十枚数えて彼に渡した。
「むう、お主も張り込むのお」
「こいつは使える奴なんでな。何よりも、この俺に忠実な、この世界で唯一の仲間なんだからよ。いい靴くらいは履かせてやりてえじゃないか」
あんな勇者やその一党は俺の仲間なんかじゃない(宗篤姉妹は別)、このフォミオだけが俺の仲間さ。俺がドンキホーテならこいつがサンチョ、さしずめ韋駄天壱号がロシナンテってところか。
「そうか、ならわしも全力を尽くそう、そこの忠義者のためにな」
そう俺達に言われてとても嬉しそうな、人間でも滅多な事では拝ませてはくれないような笑顔を披露してくれている魔物がいた。
魔物って一体何なんだろうな、本当に人間の敵なのか。そもそも魔王自体が元人間、しかも日本人らしき黒髪黒目じゃねえかよ。
日本人のくせに、あんまり人に御世話をかけるなやと言いたいところだが、この話は妙にキナ臭いのでまだまだ裏があるのかもしれない。ますます人間の王国を信用できないねえ。
どっちかっていうと、魔王の言い分を聞いてみたいくらいさ。だが身内のエレの警告は無視しない方針なので、おそらく俺が魔王に会う事にはならんだろうな。それから俺達は女将さんの宿へと向かった。
「あら、カズホ。それに、おっきいの」
フォミオの奴は女将さんから新しい称号をいただいたようだった。
「じゃあ、座ってちょうだい、あんたはそこの丸太へね」
店の隅っこには俺が置いていった丸太の椅子が置かれていて、今日は酒の空き瓶が何本か置かれていた。もう店内の一部であるオブジェと化しているな。
「そら、あんたが来る頃だと思って焼き締めておいてあげたわよ」
そう言って女将さんは焼き締めたてほやほやの、隣村焼き締めパンを特製スープと一緒にフォミオの前に出してくれた。
「いやあ、美味しそうだなあ。いただきます」
さっそく嬉しそうに齧り付くフォミオ。
うんうん、それはいいんだ、それは。だけど、女将さん。何故俺の前にも同じ料理があるんだい? 今日はショウが来るから、例のカナッペが出るかと思って期待していたんだけどな~。
「おそれいります」
時速二十キロは出ているだろうか。六段変速のシテイサイクルでぶっとばすと、大体このくらいのスピードじゃないかな。
俺は自転車道の百メートル標識を使って腕時計で測ったら時速二十二キロくらいは出ていたようだった。
体感的にはかなり早く感じるし、まだ自分で自動車を普通に運転して幹線道路を流している方がゆっくりと感じるのではないか。
この周辺はフォミオが暇を見ては地道に平らに慣らして大きめの石なんかもどけてくれてあるのでわりと平らだ。
今度、収納で土を水平に削り取って整地できないか試してみるか。整地一つでこんなに快適なんだとは。
ただ、そのパラダイスもいつまでもは続かず、みるみるうちに速度は落ちて行ったが、乗り心地は比較的キープされている。
「いやあ、アルフ村とベンリ村の間だけでも整備してみたいな。今度お前に俺を運んでもらいながら道を進んで、目視収納で道にあるでこぼこ部分の土を削ったり大きな石などの障害をどけたりする土木作業をやってみたいもんだね」
「それはいいでやすね~。そうすれば、もっと早く往復できるようになりやすよ。お嬢様方もきっとお喜びになるでやしょう」
こいつも結構子煩悩なんだよな。なんか魔物と戦うのも馬鹿馬鹿しくなってきた気がする。
そして、またでこぼこ道を揺られながらも快適に進んでいった。今は時速七キロといったあたりか。
もう少し速度は上げられると思うが、それをやると快適さが足りなくなるのでフォリオもあえて速度は抑えていた。この心配り気配りみたいなものって、魔王軍では絶対に評価対象外だよなあ。
時計で時間を測っていたが、二時間四十分といったところか。子供なんかを乗せていると、このスピードは出せないかもしれないが、俺がちょっと用足しに行くとかショウが来ていないか見に行く程度なら十分な速さだ。全面的に街道を整地すれば、往復二時間で行けるのではないだろうか。
今日、行商人のショウが来る予定になっているのだが、まだ時間は早いので、まずは靴屋の親父さんの店へと向かった。
「どうだい、親父さん、こいつの靴は」
「ほっほう、そう焦るでないわ。あれから図面を引き直してな、再検討しておるところじゃ。ところで相談なんじゃがな、どう想定してもそいつの図体に耐えられる素材を使うと大幅に足が出てしまってなあ」
「あっはっはっはっは。いやあ、やっぱり俺の従者は半端じゃねえなあ。で、いくらかかりそうなんだい」
「むう、安い材料を使ってあと金貨三十枚、いい物を使えばおおよそあと金貨九十枚にもなる」
彼は難しい顔をしていたが、俺は余裕で笑い飛ばした。
「そいつは仕方がねえ。だって俺の従者は世界一なんだからよ」
俺は金貨を九十枚数えて彼に渡した。
「むう、お主も張り込むのお」
「こいつは使える奴なんでな。何よりも、この俺に忠実な、この世界で唯一の仲間なんだからよ。いい靴くらいは履かせてやりてえじゃないか」
あんな勇者やその一党は俺の仲間なんかじゃない(宗篤姉妹は別)、このフォミオだけが俺の仲間さ。俺がドンキホーテならこいつがサンチョ、さしずめ韋駄天壱号がロシナンテってところか。
「そうか、ならわしも全力を尽くそう、そこの忠義者のためにな」
そう俺達に言われてとても嬉しそうな、人間でも滅多な事では拝ませてはくれないような笑顔を披露してくれている魔物がいた。
魔物って一体何なんだろうな、本当に人間の敵なのか。そもそも魔王自体が元人間、しかも日本人らしき黒髪黒目じゃねえかよ。
日本人のくせに、あんまり人に御世話をかけるなやと言いたいところだが、この話は妙にキナ臭いのでまだまだ裏があるのかもしれない。ますます人間の王国を信用できないねえ。
どっちかっていうと、魔王の言い分を聞いてみたいくらいさ。だが身内のエレの警告は無視しない方針なので、おそらく俺が魔王に会う事にはならんだろうな。それから俺達は女将さんの宿へと向かった。
「あら、カズホ。それに、おっきいの」
フォミオの奴は女将さんから新しい称号をいただいたようだった。
「じゃあ、座ってちょうだい、あんたはそこの丸太へね」
店の隅っこには俺が置いていった丸太の椅子が置かれていて、今日は酒の空き瓶が何本か置かれていた。もう店内の一部であるオブジェと化しているな。
「そら、あんたが来る頃だと思って焼き締めておいてあげたわよ」
そう言って女将さんは焼き締めたてほやほやの、隣村焼き締めパンを特製スープと一緒にフォミオの前に出してくれた。
「いやあ、美味しそうだなあ。いただきます」
さっそく嬉しそうに齧り付くフォミオ。
うんうん、それはいいんだ、それは。だけど、女将さん。何故俺の前にも同じ料理があるんだい? 今日はショウが来るから、例のカナッペが出るかと思って期待していたんだけどな~。
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