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第一章 巻き込まれたその日は『一粒万倍日』
1-64 お祭りへの期待
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洋服屋でかなり時間を食ったので、お楽しみの食堂でご飯を食べるのにちょうどいい時間になった。フォミオには採寸が終わったら来いと言っておいたが、時間がかかっているようだ。
今までかつてないような注文だからなあ、親父さんももう『ああでもないこうでもないモード』なのだろう。
「先に食べていようか、その後でお店の方を覗きに行こう。もういい時間だからね」
「お腹ぺこぺこー」
「ご飯食べるのですー」
村の大通りの向こうから、ゲイルさんが歩いてきて手を上げて挨拶してくれた。
「やあ、お陰様で無事に会合は終わったよ。もう夏になったからね。秋の収穫祭を二つの村で一緒にやれないかという話をしていたのさ。この辺境は街に比べて催しも少ないし、合同で少し賑やかにやれないものかとね」
「へえ、それは面白いですね」
そいつはまた、異世界飯のデビューには相応しいイベントじゃないか。
砂糖は持っている。蜂がよく飛んでいるのは見かけるので、ハチミツもどこかにはありそうだ。フォミオにはお菓子作りなどでいろいろ活躍してもらうとしよう。
何か音楽を用意できないものだろうか。オルゴールは複雑すぎて村の鍛冶屋さんにはまず作れないだろうなあ。
何かの楽器を作って、みんなで地球の曲でも演奏するか、いっそ盆踊りでもいいかもしれん。ああ料理は麺料理なんかもいいかもな、今度うどんでも試作用に打ってみるか。
うちには無敵のフォミオ君がいるのだから、どんな料理でも材料さえあればなんとかしてくれるはずだ。
いっそ、村で夏祭りをお試し開催してみるのもどうだろう。こっちの村の人も招待して見てもらうのだ。
魔王退治なんかしているよりは、その方がよっぽど気が利いている。どこかでトウモロコシを栽培していないものかな、やっぱり祭りには焼きトウモロコシは欲しいところだ。フォミオに頼んで、薪式の屋台も作らせてみるかな。
そうだ、水風船を作ろう。お祭りのヨーヨーという奴だ。『ゴム風船』を開発しよう。実は天然ゴムの主成分と同じ物を入手する事が俺には可能だ。
それは植物が呼吸する時に微量だが排出されるのだ。天然ゴムというのは、それを大量に生成する植物がゴムの木として呼ばれ、樹液として液体の天然ゴムを採集できるようになっているのだ。
システム的に普通の植物も生成しているはずなのだが、本来はただのプロセス上の都合で発生するもので、植物がわざわざ蓄える必要はない。そして確か人間の呼気の中にも含まれる。
だが問題はそれが微量の気体として排出されるものなので、確保するのは相当難しいし、砂糖なんかと同じで元がそのような微量な物だとなあ。
そこまで考えて俺は、はたと気が付いたのだ。ゴムあるじゃん。パンツのゴム、そして財布に忍ばせた『コンドーム』もラッテクス製だった。何しろ別名、『ゴム』と呼ばれるような製品なのだから。
こんなところじゃあ、まったく使い道がないんで存在そのものを忘れていた。う、硫化が必要なゴムという物質である限りは、こいつらにも確か硫黄も含まれていたんだよなあ。
まあ微量だから取り出しが困難だったかもしれないが。いっそ、コンドームをそのまま水風船にするか、いや膨らませた時に丸くないと駄目だな。
ロケット風船遊びはできるんだが、うっかりとおチビさん達にあれで遊ばせておいて、後でカイザにそれが何なのかがバレたなんていったらぶち殺されそうだ。まあゴム関連はまた、おいおいに考えて試してみよう。
「これ美味しいよねえ」
「うまうまなのですー」
今日のランチメニューはお嬢様方にも大好評のようだった。女将さんも初めての可愛いお客さんに向けて、にこにこして言ってくれる。
「そうかいそうかい、気に入ってもらえたのかい。それはよかったことだ」
本日、女将さんが出してくれたメニューは、ランチコース。まずスープは野菜の浮いた肉スープだった。そして香りの高い野草と村で栽培した葉野菜のサラダだ。
塩と食用オイルに何か刻んだ野菜を入れた調味オイルがかかっている。僅かだが何かの香辛料のような物が入っているようだ。それからいつものパンと、メインディッシュの鳥の香味焼きだ。
それから店先で軽く悲鳴が上がった。ああ、やっと来たな。俺は奴を迎えにいった。
「おお、採寸は終わったのかい」
「ええ、今終わりやしたが、どうやら村の方を驚かしてしまったようでやして」
見るとびっくりしたような村人達が数人若干遠巻きにしていた。
「ああ、すいません。彼は俺の従者でフォミオです。別に恐ろしい者ではありません、体はちょっと人よりも大きいですがね」
「ちょっと?」
「うん、ちょっと!」
俺は笑顔のサムズアップで力強く言い切った。
世の中には力押しする方がいい事もあるのだ。女将さんの店もなんとか中に入れるので、頭に気をつけるように言ってフォミオを店の中に招いたが、女将さんは陽気な声で出迎えてくれた。
「おやおや、これはまた大きな人がきたね。さあさあ中へ入ってやっとくれ」
こうしてフォミオも女将さんの店にめでたく客として認められたのであった。めでたし、めでたし。
なんというかね、うちの従者にここで料理を学ばせないでどうするという話なのだ。
それから、とにかく皆で隣村ツアーを楽しみまくって、終いにはついに轟沈した幼女様方を韋駄天壱号に積み込んで、俺達一行は御土産と共に焼き締めパン村へと凱旋したのであった。
今までかつてないような注文だからなあ、親父さんももう『ああでもないこうでもないモード』なのだろう。
「先に食べていようか、その後でお店の方を覗きに行こう。もういい時間だからね」
「お腹ぺこぺこー」
「ご飯食べるのですー」
村の大通りの向こうから、ゲイルさんが歩いてきて手を上げて挨拶してくれた。
「やあ、お陰様で無事に会合は終わったよ。もう夏になったからね。秋の収穫祭を二つの村で一緒にやれないかという話をしていたのさ。この辺境は街に比べて催しも少ないし、合同で少し賑やかにやれないものかとね」
「へえ、それは面白いですね」
そいつはまた、異世界飯のデビューには相応しいイベントじゃないか。
砂糖は持っている。蜂がよく飛んでいるのは見かけるので、ハチミツもどこかにはありそうだ。フォミオにはお菓子作りなどでいろいろ活躍してもらうとしよう。
何か音楽を用意できないものだろうか。オルゴールは複雑すぎて村の鍛冶屋さんにはまず作れないだろうなあ。
何かの楽器を作って、みんなで地球の曲でも演奏するか、いっそ盆踊りでもいいかもしれん。ああ料理は麺料理なんかもいいかもな、今度うどんでも試作用に打ってみるか。
うちには無敵のフォミオ君がいるのだから、どんな料理でも材料さえあればなんとかしてくれるはずだ。
いっそ、村で夏祭りをお試し開催してみるのもどうだろう。こっちの村の人も招待して見てもらうのだ。
魔王退治なんかしているよりは、その方がよっぽど気が利いている。どこかでトウモロコシを栽培していないものかな、やっぱり祭りには焼きトウモロコシは欲しいところだ。フォミオに頼んで、薪式の屋台も作らせてみるかな。
そうだ、水風船を作ろう。お祭りのヨーヨーという奴だ。『ゴム風船』を開発しよう。実は天然ゴムの主成分と同じ物を入手する事が俺には可能だ。
それは植物が呼吸する時に微量だが排出されるのだ。天然ゴムというのは、それを大量に生成する植物がゴムの木として呼ばれ、樹液として液体の天然ゴムを採集できるようになっているのだ。
システム的に普通の植物も生成しているはずなのだが、本来はただのプロセス上の都合で発生するもので、植物がわざわざ蓄える必要はない。そして確か人間の呼気の中にも含まれる。
だが問題はそれが微量の気体として排出されるものなので、確保するのは相当難しいし、砂糖なんかと同じで元がそのような微量な物だとなあ。
そこまで考えて俺は、はたと気が付いたのだ。ゴムあるじゃん。パンツのゴム、そして財布に忍ばせた『コンドーム』もラッテクス製だった。何しろ別名、『ゴム』と呼ばれるような製品なのだから。
こんなところじゃあ、まったく使い道がないんで存在そのものを忘れていた。う、硫化が必要なゴムという物質である限りは、こいつらにも確か硫黄も含まれていたんだよなあ。
まあ微量だから取り出しが困難だったかもしれないが。いっそ、コンドームをそのまま水風船にするか、いや膨らませた時に丸くないと駄目だな。
ロケット風船遊びはできるんだが、うっかりとおチビさん達にあれで遊ばせておいて、後でカイザにそれが何なのかがバレたなんていったらぶち殺されそうだ。まあゴム関連はまた、おいおいに考えて試してみよう。
「これ美味しいよねえ」
「うまうまなのですー」
今日のランチメニューはお嬢様方にも大好評のようだった。女将さんも初めての可愛いお客さんに向けて、にこにこして言ってくれる。
「そうかいそうかい、気に入ってもらえたのかい。それはよかったことだ」
本日、女将さんが出してくれたメニューは、ランチコース。まずスープは野菜の浮いた肉スープだった。そして香りの高い野草と村で栽培した葉野菜のサラダだ。
塩と食用オイルに何か刻んだ野菜を入れた調味オイルがかかっている。僅かだが何かの香辛料のような物が入っているようだ。それからいつものパンと、メインディッシュの鳥の香味焼きだ。
それから店先で軽く悲鳴が上がった。ああ、やっと来たな。俺は奴を迎えにいった。
「おお、採寸は終わったのかい」
「ええ、今終わりやしたが、どうやら村の方を驚かしてしまったようでやして」
見るとびっくりしたような村人達が数人若干遠巻きにしていた。
「ああ、すいません。彼は俺の従者でフォミオです。別に恐ろしい者ではありません、体はちょっと人よりも大きいですがね」
「ちょっと?」
「うん、ちょっと!」
俺は笑顔のサムズアップで力強く言い切った。
世の中には力押しする方がいい事もあるのだ。女将さんの店もなんとか中に入れるので、頭に気をつけるように言ってフォミオを店の中に招いたが、女将さんは陽気な声で出迎えてくれた。
「おやおや、これはまた大きな人がきたね。さあさあ中へ入ってやっとくれ」
こうしてフォミオも女将さんの店にめでたく客として認められたのであった。めでたし、めでたし。
なんというかね、うちの従者にここで料理を学ばせないでどうするという話なのだ。
それから、とにかく皆で隣村ツアーを楽しみまくって、終いにはついに轟沈した幼女様方を韋駄天壱号に積み込んで、俺達一行は御土産と共に焼き締めパン村へと凱旋したのであった。
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