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第一章 巻き込まれたその日は『一粒万倍日』

1-63 従者の大足、幼女の小足

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「これを履いてごらん」
 そう言って彼は可愛らしい革製の子供、女の子用の靴を二足出してくれた。ちょうど二人に合いそうなサイズだった。

「いつかプレゼントしてやろうと思って作っておったんだが、なかなか忙しかったのもあってな。あの子が死んでしまったのも足が遠くなった要因の一つだったかもしれん。渡そう渡そうと思いつつ、今日になってしまった。

 そっちの小さい方は元々、お姉ちゃんの方に作ってやったものなのだが、もう妹の方に合いそうじゃのう。いや月日が経つのは早いもんじゃ。油断するとまだ赤ん坊だと思っていた奴が、もう自分の赤ん坊を抱えておるでな」

「ありがとー、ブートン叔父さん」
「ありがとーなのです」

 求道的精神で仕事に邁進し過ぎて、少し世間の流れから取り残されている感じのブートン叔父さんは満足そうに頷き、今度は俺のブーツを出してきてくれた。

「さて、今度はお前さんのブーツじゃが、一応サイズ合わせしておこうかの。元の寸法通りできておるはずじゃが」

 合わせてみると、どれもいい感じだった。スレイプニール弐号のα号・β号・Γ号と名付けよう。

 鞄の中に入っていたマジックで一応名前を書いてやっておいた。名前は大事なものだ。

 フォミオは名前を付けたら、何かこう万能従者みたいな凄い感じになったしな。生憎な事にブーツ達は名前をつけても光ってくれなかったが。

「あと、すまないんだが、こいつ用の靴をいくつか頼めないだろうか」
 そう言われて、靴屋の親父さんのブートン叔父さんは座った位置からだと雲突くようなフォミオを見上げた。

「うーむ、そのでかぶつの靴か。なんというか、凄い大男じゃの。そやつ人間ではあるまい。しかもその足のでかさときた日には、地の果てにある魔の山スレードに棲むと言う大足並ではないのか。これはまた作りでがあるのお」

 嫌だな、そんな物騒な山があるのかよ。そこって何かいい物でもあるのかなあ。勇者軍団のパーティとなら登ってもいいけど、一人じゃ絶対に行くのは嫌だ。

「あはは、こいつは何かの魔物なんですが、安心してください。俺が名前をつけたので絶対に俺を裏切ったりしない忠義者ですよ。魔王軍の幹部魔物どもが魔王を裏切らないのと同じ理屈でね」

「そうか、じゃあ一足金貨三枚で請けおおう。さすがに材料代だけでも大変なもんだ」

「わかりました。じゃあ一足金貨五枚で、更にしっかりとした素材と縫製で予備の分も入れて二足お願いします。今、こいつには車を引かせているんで、このあまり整備されていない荒野の街道を引かせるのならかなり丈夫な靴でないとね。また遠くまで引かせたいと思っておりますので」

「はっは、また難儀な注文じゃのう。だが引き受けよう。久しぶりの大仕事じゃわい」

「わあ、叔父さんがフォミオの靴を作ってくれるのー」
「楽しみなのですー」

「そうそう、お前達の新しい靴も作っておかんとな。またすぐ大きくなるし、傷むじゃろう」

「あー、じゃあ御代を」
「この子達の分はよい、わしの身内じゃ。金はそっちのでかぶつの分だけもらおう」

 そして金貨十枚を払い、フォミオは採寸のために置いていく事にした。店の表に大きめの丸太をぶった切った椅子を置いて。

「生半可な椅子だと潰れちゃいますんでね。なんといってもこれが一番」

「はっは、豪快な奴じゃのう。では靴も気合を入れて素材選びから頑張るか。靴底からして、その体重での激しい運動に耐えねばならんのだな」

「じゃあ、次は洋服屋さんで、次は雑貨屋さんね」
 それから、初めて自分でお洋服を選び買い物をするとあって、うんうんと唸っている幼女様方。

 俺は自分の普段着を買っていない事に気づいて探していた。フォミオがある程度は作ってくれるが、やはり元がないと作れないし、地球素材で作ると何かこう違和感がある。

 あまり目立った感じもよくないので、普通の服を揃える事にしたのだ。毎日サラリーマン風の格好だったものな。

 スーツやカッターもスキルで増やしたので着替えにだけは困らなかったのだが、冬になった時とか困る。

 幼女様方が頑張って俺の分まで選んでくれようとしたが、センスがいまいちなので自分で選んだ。あの格好とかあまり気にしないお父さんを基準に選んでくれるからね。
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