上 下
154 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-66 精霊レストラン?

しおりを挟む
 そんな会話をしている間に、七合目まで着いてしまった。

 この高さから見下ろす眼下の景色は最高だった。

 祈りの塔から眺める聖都の超どアップの街並みとはまた違った大パノラマの景色だった。

 雲海の切れ目から聖都が見下ろせた。

 やはり、ここから見ても祈りの塔は結構目立つな。

 人間がゴミのようにしか見えない状況でも一目で判別できるのだ。

 あの聖都で一番目立つランドマークだからなあ。

 この山はかなり標高が高いので、ここも空気はかなり薄い。

 実は風魔性が使えないと苦しい場所なのだ。

 だから、ここへやってくる人というのは、実はそれなりの人だけだったりする。

 俺は『蒼穹のアイドル・ライトリー・ウインディア』様にお願いして、周囲の空気を濃くしてもらってあるのだ。

 リナは優秀な魔法使いだから自力でそいつがやれる。

 この山は険しく、また七合目は相当高いので、ここまで来るのにへたすると体力のない人なんか歩いて何日かがかりなのだ。

 まあ俺達みたいに強引な真似をする人も少なくないはずだ。

 観光登山客を除けば、ここへ登るのは修行中の神官や、息抜きに来た冒険者も多いのだし。

 こんな山は絶好の修行場だからね。

 大昔はそういう方以外は大概寄り付かないような場所だったらしい。

 俺達はズルして登ってきちゃったけどな。

 別に普通に登れる力はあるんだけど、ランチの時間の件があるから。

「うわあ、景色が綺麗ねえ」

「しまったな。
 最初は自分の足で歩いてくれば、きっと大感動物だったのに」

「それじゃ今日のランチに間に合わないじゃないのさ」

「まあそうなんだけどね」

 実はそれでも俺だけだったら間に合ったりするのだが、それは言いっこなし。

 そして昼食には早すぎる時間なのに行列している店を見つけた。

「あ、あそこじゃない」

「本当だ。早く行こう。
 きっと山小屋に宿泊していた人が来てるんじゃないかな」

「朝遅めの時間からランチ目当てで登ってくるなんて、あたしらくらいじゃないの?」

 俺達は近くまで行ってから狼から降りて、頭を撫でて労ってやってから消しておいた。

「霊獣って便利ねえ」

「うん、狼は頭もよくて忠実だから助かるよ。
 蜘蛛の追い込み猟にも使えるし」

「でも霊獣なんて本当は、ありがたい滅多にいないような存在なんじゃないの?」

「さ、さあ。
 俺も霊獣については詳しくはないから、よく知らないな」

 そして列はもう二十人以上並んで待っていた。

 みんな二列の木の柵で区切られた通路の中に並んでおり、あと数人で締め切りだから係員が客の人数を数えていた。

 みんな観光客の人ばかりだった。

 神官は修行に来ていて、せっかく登ってきてもすぐに山を下ってしまって往復しているんだろうし、今は冒険者もダンジョンでお宝捜しに血眼なんだろうから、こんな観光地にはいないはずだ。

「うわあ、ぎりぎり間に合ったくらいねー」

「本当だ、噂通り人気のランチなんだなあ」

 俺達が着いて三分後に列は締め切られ、高山に咲く花を模したカラフルな布製の飾り紐で最後尾が仕切られた。

 そこから、のんびり話をしていたら、一時間くらいあっという間に過ぎてしまった。

 前後に並んでいた人にも話を聞いてみたが、特に山に異変は無さそうだった。

 まあ聞き取り調査の相手は、観光登山で物見遊山の方々だったけれど。

「うおお、待ちくたびれた~」

「ちょうど、お腹が空いてきたね」

「今度は自分の足で登ってこようよ。
 汗をかいて、お腹を空かせてきたら、きっとランチが美味しいよ」

 そして出されたものは、まず美味しい果実水が水差しごと一人ずつに出される。

 食事は豪華なお盆のセットで、聖山野菜の聖なるサラダ、聖山胡桃パン、聖山の様々な材料を奢った精進スープ、聖山山羊のパイ包み、メインは聖山鳥の蒸し煮の聖山胡桃ペースト仕立て、デザートは聖山で採れる果実の干果のリトルキューブと聖山プリン。

 これで銀貨三枚は結構お値打ち。
 人気になるのもわかるわあ。

 何故か一緒に精霊用という事で小皿にあれこれと並べてくれた。

「ありがとう」


「いえいえ、精霊様に来ていただけるのは光栄ですから。

 しかも精霊様が五名もまとめてご来店は開店以来初めてですよ。

 精霊様の分は店の奢りですから」


 なんだかよくわからないのだが、精霊は聖山では、かなりありがたいものだったらしい。

 精霊にとってもランチプレートはありがたいものなのらしかったが。

 みんな、夢中で被り付いていた。
 そして世界のアイドル様が叫んでいらした。

「聖山プリンはいつ食べても最高~」

 それにしても、ランチは最高に美味かったぜ。

 おっと、頼まれていた仕事があったのを忘れそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...