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第一章 燃え尽きた先に

1-50 ジズ、その名は

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 それから、俺は愛鳥にテレパシーで話しかけた。

「さて、それでは文ちゃん。
 お前のねぐらの事を考えないといかんな。

 お前、寝床に出来るような亜空間は持っているのか。
 さすがにお前の図体はデカ過ぎる」

 だが、ジズはふるふると首を左右に少しだけ振った。

 お、賢いな。
 もうその図体から起こる他への影響を学んでくれたのか。

「ないよー」
「うーん、じゃあそいつを捜しにいくか」

「でも、こういう事はできるよ」
 そう言って奴はみるみるうちに小さくなっていった。

「おっとお、こいつたまた凄い特技だな」
 そう言って褒めたら、奴は普通の小型の猛禽類のサイズにまで体を縮めた。

「わああ」
「ほお」

 うちの姫様だけでなく、グラッセルまで寄って来た。

 よかったぜ、ここにフローセルの奴がいなくて。
 絶対に解剖させろといって追い回すはずだから。

 通常の小型猛禽サイズになって俺の腕に止まったそいつを見て、皇帝陛下は言った。

「ふむ、亜空間関連の空間魔法の応用か。
 これはたいしたものだな」

 褒められたジズがちょっと嬉しそう。
 契約を済ませたせいか、こういうところが人間っぽくなった気がする。

 こういう事を眷属化というのだろうか。
 テレパシーで、ぺらぺらと喋るようにもなったし。

「あはは、陛下。
 私らの世界には、こういう風に巨獣が小さくなったりする、あるいは逆の概念があるものでして」

「ほう、そいつは興味深いな」

 いやー、どっちかというと子供向けの作品なんですがね。
 もっぱらアニメや特撮なんかの世界ですので。

 この子は、俺から生まれたらしいので最初からそういう概念を持っているのだ。

 まあこれで、こいつの寝床には困らなくなった。
 テレパシーで呼べるから、小さくなっても迷子になる心配はないだろうし。

「ピコーン、騎士ホムラは可愛いもふもふの魔物を手に入れた!」

 そして騎士の主も、そのもふもふの羽毛に夢中で抱き締めており、第一皇女様も頭を撫でていた。

 撫でられている方も愛されているのがわかるのか、ご満悦の様子だった。

 この子は懐っこいから助かる。
 見た目はなかなか可愛いけど、どう見ても猛禽類だしな。

 なんつうのか、鷲や鷹を多少丸っこくデフォルメしたような感じか。

 巨獣のまま飛び回ると畏怖しか覚えないような物だが、どうにも目が可愛いからなあ。

 うちの子は巨獣ではあっても怪物ではないのだ。

 そして何よりも俺は、憧れの『空の足』を手に入れたのだ。

 地球では絶対に乗れなかった飛行機。
 まあ飛行機とは少し違うけれども。

 自分でも多少は飛べるわけだが、『自転車以外の乗物』に乗るという感覚は新鮮なものであったのだ。 

 血の封印を施して隷属は完璧なものになったのだが、元々俺の記憶から誕生したような特別な子なのだ。

 仮に他の魔物を僕として増やしたとしても、それらの魔物とは一線を画する関係だろう。

 誰かに操られていたらしいのだが、他の闇魔法使いや落ち人なんかの命令があったとしても、もう持っていかれてしまう事はないだろう。

 こうしてジズと出会った俺は今、この帝国ではある意味で最強の騎士となった。

 身分的にもそうなのかもしれない。

 今も階級のあれこれはよく知らないのだが、少なくともただの臨時アルバイトの騎士ではなくなったのだから。

 それから家に帰り、彼(暫定で男の子に認定)の能力について確認してみた。

 そして、驚く事に、彼は俺と同じような電撃を発した。
 周囲の空気をパリパリと帯電させて。

 そしてなんとパイロキネシスの炎まで生み出してみせたのだ。
 まあ部屋の中でちょっとした奴を見せてくれただけだけど。

「おやまあ。
 お前ったら、そういうところまで親に似ちゃったのね」

「それでねー、元から強力な羽ばたきのスキルがあるよ、こんな奴ー」

 そう言いながら、ホバーリングしながら軽くバタバタしただけで、木製の重いがっしりとした椅子をあっさりコロンっと倒してみせた。

   おいおい、これ二十キロくらいありそうな重厚な奴なんだけど。

 しかも激しく倒れないように、ふわりっと着地させていた。

 確かにスキルだわ、これ。
 元から使える一種の風魔法のようなものなのだな。

 うわあ、あのでかかった時にこれを全力でやられていたら、この石造りの帝都がバラバラになって何もかも吹き飛んでいたんじゃないのか。

「お前、そういうスキルみたいなのは勝手に使っちゃ駄目だからな」

「はーい。
 それに炎と風の合わせ技もあるのー。
 ここでは危なくてやれなーい」

「そいつはまた強力なスキルだな。
 さしずめ青き超火焔嵐フレイムバーストってところか」

「あとねー、ふふ」

 そう言って彼は、俺譲りの電磁スキルのPK擬きで、見事に椅子をふわりっと起き上がらせると、その背もたれの上に可愛らしく止まった。

 そして!

「おっと、こいつは!」

 そう、歌っていたのだ。

 それも、ただの歌じゃない。
 天上の天使が奏でるような至福の歌であった。

 そうだったのだ。
 このジズには別の名がいくつかあった。

 見る者セクウィ、そして天上の歌い手レナニン。

 これはまだ幼い姫君に仕える騎士の眷属としては最高だな。

 能力は最高だし、俺の代わりに姫の護衛につく事さえ可能だ。

 一緒にいてもテレパシー会話や歌で要人を退屈させないだろうし、絶対に買収されたりしない最高のボディガードだから皇帝家からの信頼も厚いだろう。

 しかも、この子は俺が知っている地球の歌は全部歌えるようだ。
 こいつは楽しい。

 故郷を遠く離れた俺の心をよく慰めてくれる事だろう。

 それにきっとあのグラッセル姉も喜ぶのじゃないのかな。

 彼女がお気に入りだった、俺が描いてやったあのキャラの出てくるアニメの主題歌もレパートリーに入っていたみたいだし。
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