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第一章 燃え尽きた先に
1-47 魔物の秘密
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「魔物についての話?」
「そうです。彼らは、いつもどこにいると思いますか?」
「はて、どこって言われても。ここ?」
俺はそう言ってジズを指差したが、ディクトリウスから苦笑が返ってくるだけだった。
ジズの奴は「主、なあに?」みたいな感じで、円らな瞳でこっちを向いている。
「何でもないよー」と手を振ってやり、話に戻った。
なんか、この子って図体や雰囲気は猛禽なのに、仕草とかって凄く文鳥っぽい気がする。
やっぱ、かわええわ。
「基本的に彼らは二通りの居場所があります。
まず、一つは亜空間」
「亜空間?」
「彼らは、実は元々は古代の技術で作られた兵器なのです。
だから、通常はその巨体が発見されないよう、自らをそこに収納して待機します」
「兵器ねえ」
俺は『文ちゃん』を見たが、相変わらず可愛いだけだった。
「それって収納バッグみたいな物?」
「まあ原理は違うのですがね。
収納バッグは異なる位相の世界のアドレスを設定し、『世界を薄く切り取る』ような技術です。
言ってみれば、我々の世界の裏側にあるようなもう一つの世界を、この世界を疑似的に削ぎ切りにするような形で『設定する』高度な技術です」
「へえ、そいつは凄いな。
世界の仮想化技術といってもいい。
やろうと思えば、仮想世界を丸ごと一つ作って自分が神にもなれるのでは」
いかにも引き籠りだった人間(俺)の考えそうな事だわ。
まあ、自分以外に何もない寂しい世界になってしまうのだろうが。
「はは、それは面白い考えだ。
まあ失敗すると、なんでもかんでも飲み込んでどこかへやってしまうマズイ物に仕上がってしまうので要注意なのですが」
俺は思わず自分の収納バッグを見てしまったが、ディクトリウスは笑い飛ばした。
「ははは、第二皇女フローセル様は天才ですからね。
あの方が作られた物は大丈夫です。
神殿でも数々の作品を頂いております故。
お蔭で今神殿は皇帝家には逆らえませぬ」
「うはあっ」
それ絶対にフローセルが趣味で作った、ただのプロトタイプだろう。
なんというか、収納バッグみたいに発掘されても作るのが難しかった奴とかの。
きっと、神殿の関係者から使った時のデータを収集するように出来ているのだ。
そういう事を考えてフローセルに吹き込む元凶は、きっとボスのあの方か?
そんな話はヤバ過ぎて口に出すのも憚るわ。
お口にチャック!
「一方、魔物は自分の隠れ家的な空間を持つのです。
これはそうたいしたものではないのです。
世界の隙間というか、狭間というか、そういう部分に漂う一種の空間の歪み、あるいは泡のような場所。
そういう場所を好み、なんというかそれ自体を魔物がその空間を捕獲して携帯するというか。
そういう、いわばヤドカリのように空間を持ち歩き、そこを寝床にしているのです」
「それはまた、えらく変わった習性だな。
そんな事が出来るんだ」
「ええ、しかしそこにいてもマナは手に入りますしね。
元々彼らは兵器なものですから、待機している事に退屈したりはしないそうです。
でも中には、あれこれと暇潰しの道具を集める変わり者の魔物もいるらしいのですがね。
古代には、その巣が発見されて物議を醸したものだそうです」
「うーん、ますます変わってる。
それで、もう一つの居場所は?」
「それは遺跡ですね。
それも普通の居場所ではなく、『神の塔』と呼ばれるような特別な場所です。
その中で彼らは『眠っている』のです。
待機ではなく、休眠状態ですね。
あるいは、その兵器の管理者の手によって保管されているのではないかとも言われます」
「魔物は、そういうところからやってくるのだと?」
「まあ、それは古代の文献の内容からの憶測にすぎませんのでわかりません。
ただもう、あまりにも時間が過ぎ過ぎたので、その管理者自体がいなくなってしまっているという、もっぱらの評判ですね」
「へえ、そんな事がねえ。
この子もそこから来たんだろうか」
「それはなんとも。
また神の塔の中には魔物を製造していたプラントと呼ばれる施設もあり、中にはそれがまだ稼働、あるいは休眠しているのだと主張される方もいらっしゃいますが、真実は過去の文献の中に散見されるだけです。
しかも、それらの多くは世界の各地で禁書扱いとされているといいます。
世界には野望のために魔物を動かそうという人間もいますので」
だが魔物は、なんというか実際にそこにいるよな。
そして、もっと来るとも言った。
「という事はディクトリウス、あなたは魔物を持っているらしき連中を知っているんだな」
「まあ、そうなりますかね。ただ、そこにいる子は我が帝国にとって勘定に入っていないのですよ。
ホムラ、その子は一体どこの子なのですか?
鑑定するとジズというのですか。
我々はジズなんて魔物は知りません。
この世界のどこからそんな子が湧いてきたのでしょう」
俺は天を仰いだ。
そんな事を俺が知る訳ないだろう。
なんか、段々とわかってきたな。
敵さん、今帝国に喧嘩を売ってきている奴らは『魔物という兵器を持っている』のだ。
こいつに匹敵するような巨大で強力な奴を。
そして、どこの国がどの魔物を持っているのかもリストアップされているのだろう。
それでいて、うちの子はその勘定に入っていないのだと⁉
「なあ、お前。
お前さんは一体どこから来たんだい?」
「チュピ?」
その可愛い応対に思わず噴いた。
こいつがどこからやってきたのかは知らないが、可愛い奴なのだという事はよくわかった。
まあ、今はそれだけで十分かな。
「そうです。彼らは、いつもどこにいると思いますか?」
「はて、どこって言われても。ここ?」
俺はそう言ってジズを指差したが、ディクトリウスから苦笑が返ってくるだけだった。
ジズの奴は「主、なあに?」みたいな感じで、円らな瞳でこっちを向いている。
「何でもないよー」と手を振ってやり、話に戻った。
なんか、この子って図体や雰囲気は猛禽なのに、仕草とかって凄く文鳥っぽい気がする。
やっぱ、かわええわ。
「基本的に彼らは二通りの居場所があります。
まず、一つは亜空間」
「亜空間?」
「彼らは、実は元々は古代の技術で作られた兵器なのです。
だから、通常はその巨体が発見されないよう、自らをそこに収納して待機します」
「兵器ねえ」
俺は『文ちゃん』を見たが、相変わらず可愛いだけだった。
「それって収納バッグみたいな物?」
「まあ原理は違うのですがね。
収納バッグは異なる位相の世界のアドレスを設定し、『世界を薄く切り取る』ような技術です。
言ってみれば、我々の世界の裏側にあるようなもう一つの世界を、この世界を疑似的に削ぎ切りにするような形で『設定する』高度な技術です」
「へえ、そいつは凄いな。
世界の仮想化技術といってもいい。
やろうと思えば、仮想世界を丸ごと一つ作って自分が神にもなれるのでは」
いかにも引き籠りだった人間(俺)の考えそうな事だわ。
まあ、自分以外に何もない寂しい世界になってしまうのだろうが。
「はは、それは面白い考えだ。
まあ失敗すると、なんでもかんでも飲み込んでどこかへやってしまうマズイ物に仕上がってしまうので要注意なのですが」
俺は思わず自分の収納バッグを見てしまったが、ディクトリウスは笑い飛ばした。
「ははは、第二皇女フローセル様は天才ですからね。
あの方が作られた物は大丈夫です。
神殿でも数々の作品を頂いております故。
お蔭で今神殿は皇帝家には逆らえませぬ」
「うはあっ」
それ絶対にフローセルが趣味で作った、ただのプロトタイプだろう。
なんというか、収納バッグみたいに発掘されても作るのが難しかった奴とかの。
きっと、神殿の関係者から使った時のデータを収集するように出来ているのだ。
そういう事を考えてフローセルに吹き込む元凶は、きっとボスのあの方か?
そんな話はヤバ過ぎて口に出すのも憚るわ。
お口にチャック!
「一方、魔物は自分の隠れ家的な空間を持つのです。
これはそうたいしたものではないのです。
世界の隙間というか、狭間というか、そういう部分に漂う一種の空間の歪み、あるいは泡のような場所。
そういう場所を好み、なんというかそれ自体を魔物がその空間を捕獲して携帯するというか。
そういう、いわばヤドカリのように空間を持ち歩き、そこを寝床にしているのです」
「それはまた、えらく変わった習性だな。
そんな事が出来るんだ」
「ええ、しかしそこにいてもマナは手に入りますしね。
元々彼らは兵器なものですから、待機している事に退屈したりはしないそうです。
でも中には、あれこれと暇潰しの道具を集める変わり者の魔物もいるらしいのですがね。
古代には、その巣が発見されて物議を醸したものだそうです」
「うーん、ますます変わってる。
それで、もう一つの居場所は?」
「それは遺跡ですね。
それも普通の居場所ではなく、『神の塔』と呼ばれるような特別な場所です。
その中で彼らは『眠っている』のです。
待機ではなく、休眠状態ですね。
あるいは、その兵器の管理者の手によって保管されているのではないかとも言われます」
「魔物は、そういうところからやってくるのだと?」
「まあ、それは古代の文献の内容からの憶測にすぎませんのでわかりません。
ただもう、あまりにも時間が過ぎ過ぎたので、その管理者自体がいなくなってしまっているという、もっぱらの評判ですね」
「へえ、そんな事がねえ。
この子もそこから来たんだろうか」
「それはなんとも。
また神の塔の中には魔物を製造していたプラントと呼ばれる施設もあり、中にはそれがまだ稼働、あるいは休眠しているのだと主張される方もいらっしゃいますが、真実は過去の文献の中に散見されるだけです。
しかも、それらの多くは世界の各地で禁書扱いとされているといいます。
世界には野望のために魔物を動かそうという人間もいますので」
だが魔物は、なんというか実際にそこにいるよな。
そして、もっと来るとも言った。
「という事はディクトリウス、あなたは魔物を持っているらしき連中を知っているんだな」
「まあ、そうなりますかね。ただ、そこにいる子は我が帝国にとって勘定に入っていないのですよ。
ホムラ、その子は一体どこの子なのですか?
鑑定するとジズというのですか。
我々はジズなんて魔物は知りません。
この世界のどこからそんな子が湧いてきたのでしょう」
俺は天を仰いだ。
そんな事を俺が知る訳ないだろう。
なんか、段々とわかってきたな。
敵さん、今帝国に喧嘩を売ってきている奴らは『魔物という兵器を持っている』のだ。
こいつに匹敵するような巨大で強力な奴を。
そして、どこの国がどの魔物を持っているのかもリストアップされているのだろう。
それでいて、うちの子はその勘定に入っていないのだと⁉
「なあ、お前。
お前さんは一体どこから来たんだい?」
「チュピ?」
その可愛い応対に思わず噴いた。
こいつがどこからやってきたのかは知らないが、可愛い奴なのだという事はよくわかった。
まあ、今はそれだけで十分かな。
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