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第二章 探索者フェンリル
2-3 塔を目指して
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「それで、ピンキー」
「誰がピンキーですって」
「おっと、つい心の声が」
昔から俺ってこうなんだよね。ついつい本人の前で勝手につけた仇名で呼んじまうんだ。これが上司だったりすると、結構俺がピンチーになるのだが。
「まあいいわ、そこにお座りなさい。って、そうか犬だったか」
いわゆる、犬のお座りの格好で可愛らしく座っている俺を見て、カウンターの前の椅子に座らせるのは諦めたピンキー。
「ちなみに、あたしの名前はアネット・ブランドーよ」
ブランドーか、大昔の最初にテレビで放映された『テレビまんが』に出てきたロボットか何かのキャラにそういう名前の奴がいたような記憶がかすかに。
「俺はスサノオだ。異世界の暴れん坊だった神の名から取られたものさ。そして大暴れした結果、出雲という国中の神々が集会を開くようになった場所の大将になった奴なんだ。本当の名は荒神という。暴れ者の神という意味だが」
「どっちにしろ、一緒じゃないの。まあ、あんたにはぴったりな名前ね」
彼女はカウンターのこちら側で書類を出した。
「あんた、サインはできるのかしら。一応、サイン以外のところは記入してあげたけれど」
俺はさっと書類をひったくると、ルーン文字でスサノオと書いて、親切にも上にカタカナでルビを打ってやった。本当にこの前足は器用だぜ。しかも筆跡は荒神武の頃のまんまだ。
「ああ、器用な前足をしているわね。さすがは神の子というか。ルーンは読めるけど、上の字は何? 何かの記号みたいね、読めないわ」
「ふふ。そいつが読めたら、たいしたものさ」
ちなみにルーンを普通に使っているわけではない。この世界にはこの世界の文字が国ごとにあるのだ。
とはいっても、この地域の国々は似たような言語を元にしているため、細かいスペルは違っていても大体意味がわかる。
魔法などは呪文が違っていると発動しないため、ルーンを用いるのが普通だ。
ちなみに俺の首輪は高性能なもので、ルーンは雰囲気だけで形によりロキの紋章だとわからせて、なおかつ地域によって各地の文字の表示機能が装備されているのだ。
それらは地理によって自動で切り替わる高性能な仕様で、黒小人どもがボヤいたものだが、そこは報酬の酒で釣りまくってやったので問題はない。
そのためにアポックス、アポート召喚ボックスを最初に作らせたのだから。
「それで、塔に入って何がしたいの?」
「いや、俺って高いところが好きだからさ。結構な眺めだという話じゃあないか!」
「おバカねー。景色を楽しみに行くだけに上る奴なんていないわよ。これだから神の子は」
「あと王女様や王子様を連れていってやる約束したんだよ。ピクニックにさ」
「そうだったか。あまり王族向けのところじゃないんだけどな」
「騎士団も行くし、行くのは外からドラゴンに乗ってだから大丈夫さ」
「ああ、この間のファフニールね。この王都にお前らみたいなのが、たくさんうろうろしているかと思うと眩暈がするわ」
「いいじゃないの、ピンキーは別に騎士団とかじゃないのだから」
「アネットって言いなさいよ、この駄犬!」
「へーい。それでもうダンジョンへ行ってもいいのかなあ」
「いいけど、中で揉め事を起こさないでよ。いろいろわからなかったら中の冒険者に聞きなさい。はい、入場章。普通は首にかけるものなんだけどね。あと、そいつをどこかで見かけたら回収しておいてちょうだい。死亡確認に使いたいから」
「ふふ。冒険者死して屍拾う者無し」
「嫌な事を言うわね。まあその通りなんだけどさ。特に若い冒険者の仕事場を荒らすんじゃないわよ、あの子達の場合はあんたと違って生活かかっているんだから。あんた、別にお金が欲しいわけじゃあないでしょう」
「ふっふ、イエスマム。じゃあいってきまーす」
俺はまるで遠足に行くみたいな声を母親にかけるような感じで、ギルマス・アネットの溜息に見送られてギルドを後にした。
肝心の塔なのだが、あれで結構遠いのだと思う。何しろ、でかい。地球のタワーなどとは桁が違う。
バベルの塔のように『ごん太』なデザインではないのだが、その形状はけして細いものではない。強いて言えば、岩石質のジャックと豆の木とでも言うべきだろうか。
外側は美しい鉱石質のもので、とても美しい。王都の街並みと湖と織りなすコントラストは、まさに神の国と言っても差し支えの無いような眺望なのだ。それはもう、俺の大のお気に入りなのだから。
王都から、あちら方面に向かう馬車が多数あって、冒険者や商人などが乗り込んでいる。あそこから産出した物達は、またこの国を豊かに彩る物産となって、また他国へも輸出されていくのだろう。
俺が楽しくそのうちの一台である馬車を追いかけていると、窓から顔を出した金髪ツインテの少女の手からファイヤーボールが飛んできた。
いきなり、そりゃあないよ。俺は鮮やかにそいつを躱すと一瞬の間に間合いを詰めて、窓に詰め寄ると文句を垂れた。
「おい、危ないだろうが。こんなところで魔法なんか、ぶっぱなすな! 俺はこれから塔へ行くところなんだよ」
「うわ、魔物が喋った。ごめーん。てっきり飼い主が面倒見なくて捨てた野良魔物なのかと思って。そういう奴らは人間を恨んでいるから、人を襲う事もあるんで退治が推奨されているのよね」
「ぐはあっ」
なんてひどい事をする奴がいるんだ。俺は故郷に置いてきた、チワワのどんぐり丸を思い出した。犬の虐待をする奴は許さないからな。
「まあまあ、よかったら塔まで一緒に行かない? うちらのパーティと一緒なら間違われる事はないからさ」
「そうか、じゃあ一緒に行こうかな。どうせ、のんびり道行きを楽しんでいくつもりだったしさ」
「そうか、うちらは女の子ばっかりのパーティだから男は駄目だけど、ワンちゃんならいいわよ」
「一応、狼なんですけどね」
タマも一応ついております。タマタマの裏まで真っ黒なのですが。
「誰がピンキーですって」
「おっと、つい心の声が」
昔から俺ってこうなんだよね。ついつい本人の前で勝手につけた仇名で呼んじまうんだ。これが上司だったりすると、結構俺がピンチーになるのだが。
「まあいいわ、そこにお座りなさい。って、そうか犬だったか」
いわゆる、犬のお座りの格好で可愛らしく座っている俺を見て、カウンターの前の椅子に座らせるのは諦めたピンキー。
「ちなみに、あたしの名前はアネット・ブランドーよ」
ブランドーか、大昔の最初にテレビで放映された『テレビまんが』に出てきたロボットか何かのキャラにそういう名前の奴がいたような記憶がかすかに。
「俺はスサノオだ。異世界の暴れん坊だった神の名から取られたものさ。そして大暴れした結果、出雲という国中の神々が集会を開くようになった場所の大将になった奴なんだ。本当の名は荒神という。暴れ者の神という意味だが」
「どっちにしろ、一緒じゃないの。まあ、あんたにはぴったりな名前ね」
彼女はカウンターのこちら側で書類を出した。
「あんた、サインはできるのかしら。一応、サイン以外のところは記入してあげたけれど」
俺はさっと書類をひったくると、ルーン文字でスサノオと書いて、親切にも上にカタカナでルビを打ってやった。本当にこの前足は器用だぜ。しかも筆跡は荒神武の頃のまんまだ。
「ああ、器用な前足をしているわね。さすがは神の子というか。ルーンは読めるけど、上の字は何? 何かの記号みたいね、読めないわ」
「ふふ。そいつが読めたら、たいしたものさ」
ちなみにルーンを普通に使っているわけではない。この世界にはこの世界の文字が国ごとにあるのだ。
とはいっても、この地域の国々は似たような言語を元にしているため、細かいスペルは違っていても大体意味がわかる。
魔法などは呪文が違っていると発動しないため、ルーンを用いるのが普通だ。
ちなみに俺の首輪は高性能なもので、ルーンは雰囲気だけで形によりロキの紋章だとわからせて、なおかつ地域によって各地の文字の表示機能が装備されているのだ。
それらは地理によって自動で切り替わる高性能な仕様で、黒小人どもがボヤいたものだが、そこは報酬の酒で釣りまくってやったので問題はない。
そのためにアポックス、アポート召喚ボックスを最初に作らせたのだから。
「それで、塔に入って何がしたいの?」
「いや、俺って高いところが好きだからさ。結構な眺めだという話じゃあないか!」
「おバカねー。景色を楽しみに行くだけに上る奴なんていないわよ。これだから神の子は」
「あと王女様や王子様を連れていってやる約束したんだよ。ピクニックにさ」
「そうだったか。あまり王族向けのところじゃないんだけどな」
「騎士団も行くし、行くのは外からドラゴンに乗ってだから大丈夫さ」
「ああ、この間のファフニールね。この王都にお前らみたいなのが、たくさんうろうろしているかと思うと眩暈がするわ」
「いいじゃないの、ピンキーは別に騎士団とかじゃないのだから」
「アネットって言いなさいよ、この駄犬!」
「へーい。それでもうダンジョンへ行ってもいいのかなあ」
「いいけど、中で揉め事を起こさないでよ。いろいろわからなかったら中の冒険者に聞きなさい。はい、入場章。普通は首にかけるものなんだけどね。あと、そいつをどこかで見かけたら回収しておいてちょうだい。死亡確認に使いたいから」
「ふふ。冒険者死して屍拾う者無し」
「嫌な事を言うわね。まあその通りなんだけどさ。特に若い冒険者の仕事場を荒らすんじゃないわよ、あの子達の場合はあんたと違って生活かかっているんだから。あんた、別にお金が欲しいわけじゃあないでしょう」
「ふっふ、イエスマム。じゃあいってきまーす」
俺はまるで遠足に行くみたいな声を母親にかけるような感じで、ギルマス・アネットの溜息に見送られてギルドを後にした。
肝心の塔なのだが、あれで結構遠いのだと思う。何しろ、でかい。地球のタワーなどとは桁が違う。
バベルの塔のように『ごん太』なデザインではないのだが、その形状はけして細いものではない。強いて言えば、岩石質のジャックと豆の木とでも言うべきだろうか。
外側は美しい鉱石質のもので、とても美しい。王都の街並みと湖と織りなすコントラストは、まさに神の国と言っても差し支えの無いような眺望なのだ。それはもう、俺の大のお気に入りなのだから。
王都から、あちら方面に向かう馬車が多数あって、冒険者や商人などが乗り込んでいる。あそこから産出した物達は、またこの国を豊かに彩る物産となって、また他国へも輸出されていくのだろう。
俺が楽しくそのうちの一台である馬車を追いかけていると、窓から顔を出した金髪ツインテの少女の手からファイヤーボールが飛んできた。
いきなり、そりゃあないよ。俺は鮮やかにそいつを躱すと一瞬の間に間合いを詰めて、窓に詰め寄ると文句を垂れた。
「おい、危ないだろうが。こんなところで魔法なんか、ぶっぱなすな! 俺はこれから塔へ行くところなんだよ」
「うわ、魔物が喋った。ごめーん。てっきり飼い主が面倒見なくて捨てた野良魔物なのかと思って。そういう奴らは人間を恨んでいるから、人を襲う事もあるんで退治が推奨されているのよね」
「ぐはあっ」
なんてひどい事をする奴がいるんだ。俺は故郷に置いてきた、チワワのどんぐり丸を思い出した。犬の虐待をする奴は許さないからな。
「まあまあ、よかったら塔まで一緒に行かない? うちらのパーティと一緒なら間違われる事はないからさ」
「そうか、じゃあ一緒に行こうかな。どうせ、のんびり道行きを楽しんでいくつもりだったしさ」
「そうか、うちらは女の子ばっかりのパーティだから男は駄目だけど、ワンちゃんならいいわよ」
「一応、狼なんですけどね」
タマも一応ついております。タマタマの裏まで真っ黒なのですが。
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