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4. 最恐の二人

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ミア嬢と王子が向き合った。
お互いを見つめあい…

ミア嬢がどなった。

「ジョン様。なんで、入れてくれなかったんですか。」
「なんでじゃないだろう。理由が思い当たらないのか? 」
「…」
「やはりな。浮気をしておいてよく来れるな。面の皮が厚いとはまさにこの事だ。」
「…ジョン様。見損ないました…」
「何を言うのだ。それはこちらが言いたい事だ。」
「あなたも浮気をしておいて! ひどいです! 」
「は?何を言っているんだ、お前は。」
「人をお前って呼ばないでください。嫌です。」
「そういう問題じゃないだろう。今の論点は、そこじゃないと分からないのか。」
「そんなん分かりません! でも嫌なものは嫌なんですぅ。」
王子とミア嬢は話始めると止まらなかった。
王子は、くるな来るなと言いながら、ミア嬢と話したかったみたいだ。
自己評価が高い王子は、ミア嬢に浮気されるなんて信じてないだろう。きっと。

「ミア。浮気していたんだな。いつから私に隠していた?純情な女だと思っていたが、とんだ女狐だった訳だ。」
「なんでそんなことを言うんですか!ジョン様はそんなことを言えるんですか?あなただって浮気してたじゃないですか。」
「私は浮気なんぞしていない。」
「なら、これは何なんですかぁ。」

ミア嬢が何枚も写真を取り出した。王子の目の前に写真をつきつけた。

「何なんですかねぇ。」

パラパラと写真をおとしていく。床に写真が落ちていった。

ミア嬢怖いなぁ。目がうつろだった。

「何なんですかねぇ。」
「これは、これは浮気ではない!」

抱きしめあっている男女。様々な角度からとられている。

「これは、スキンシップの範疇だ。これくらいは普通だろ。」
「…そうなん…ですかぁ…」
「そうだ。ミアこそこれを見ろ。」

王子も写真をだした。これは手をつないで微笑んでいる男女。
もちろん女性はミアだ。

「これこそスキンシップの範疇ですぅ!」
「いいや。顔で分かる。」
「分からないですよぉ。顔じゃあ。そういう決めつけるところ、私嫌いです。」
「なんだと?私もお前のそのアホそうな話し方が嫌いだ。」
「だから、お前は、嫌です。さっきも言ったのに忘れちゃうなんてぇ、意外とジョン様もあほなんですねぇ。」
「ふざけるなよ。だが、ミアが事情を説明して謝るなら許してやろう。私は寛大な男だからな。」
「もう許してもらわなくていいです。私は本当にじぶんを愛してくれる人がいいんですぅ。たとえ、浮気を私がしても。」
「なに?」
「そんな人がいるのに浮気なんてするつもりありませんよぉ?ただ、もしもしたとしても浮気する私を愛してくれる人に出会いたいんです!」
「は?」
「白馬の王子様と結婚するのが私の夢でぇ、王子となら物語みたいな素敵な恋ができるかなぁって。ジョン様も私のことがだいすきだって、愛してるって言ってくれたからぁ、この人ならいけると思ったの。でも、私の王子様は人をお前なんて言わないし、どならないしぃ…怒らないの。高圧的に許してやるって言うなんて私の王子様じゃない!」
ミア嬢がまじめに言い出した。 
「私の何が足りないというんだ。私が愛しているといっているんだからそれを信じていればいいんだ。」
「それっておかしいですよぉ。ジョン様が浮気してても全部全部みすごせってことですかぁ?自分が浮気していても見過ごしてほしいですけど、自分はみすごせませんよぉ。愛してる人が他の人のものになるなんて嫌じゃないですか。」
「矛盾しているな。自分が浮気していても何も言わないのは愛されていない証拠ではないのか?」
「そうですかぁ?浮気しているのは嫌だと思いつつ私が幸せならそれでいいと思ってくれる人がいいんですよ。それが理想ですぅ。私がもし他の男が好きだとしても一途に私を愛し続けてくれるくらいの人がいいですねぇ。あと、私自分だけを好きでいてほしいんですぅ。私だけの彼氏でいてほしい。だからぁ、たとえスキンシップでも他の女と触れ合わないでほしいんですよぉ。」
「最低な女だな。自分の事しか考えていない。浮気をしておいて、このようにグダグダと話すなど。ミアの考え方を私にも当てはめると、ミアは文句をいえる立場じゃないだろう?私がたとえ浮気をしていようとも私の幸せを考えて身をひくべきだ。ましてや、私は王族だぞ。王族に他の者は従うべきだろう。それを…王族は自分勝手でもいい。それだけ他の事をしているからな。だが、お前はそれをいう権利はない! 私がそう主張しないのをありがたく思う立場のはずだ。」
「難しくてよくわかりませぇん。とりあえず私が言いたいのは、私が怒っても怒鳴っても浮気をしても…何をしても怒らないけど、私が嫌なことは絶対にしない男が理想ってことですぅ。私のいう事を全部かなえてくれる人がいいな。」


私もよく分からなかった。やばい。私の知能レベルはミア嬢とかわらないのだろうか?
それは嫌だが、王子の話も理解できない。ミア嬢の話もだが。
どちらも自分のことしか考えていなかった。愛しているからと婚約破棄までしたのに。最恐の二人である。
「なんでもいいですけど、私たち別れた方がいいみたいですね。ジョン様とは考え方が違いすぎますぅ。理想の王子様じゃなかったみたいです。さようなら。」
「ま、まってくれ。ミア。もう少し話し合おう。」
「私の気持ちはかわりませんよぉ。それじゃあ。」

ミア嬢は王子にプレゼントされたドレスをきて、靴をはいて、宝石をつけて、王子をふった。こんな女と別れられた事を喜ぶべき王子は呆然としていた。ミア嬢の本性を知ったことより自分がふられたことに衝撃をうけているみたいだった。もしかしたら、すごくお似合いの二人だったのかもしれない。まあ、別れてしまったけど。

つっぷしている王子に私は最後のとどめをさすことにした。
この間違った方向に責任感の強い彼に。


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