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第七章 魔法家の悩み事
3 異国へ行けるかな?
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「なあ、オーリー、オレとオレの国へ行こう!そうすれば、金持ちなれるぞ。」
「え?本当?」
「オレさ、今、おやじと一緒に世界を回ってる。ここは5ヶ国目だよ。」
「なんでそんなことできるの?」
「オレの部屋に行こうぜ。」
王宮の客室だ。部屋に着くと何やら持ってきた。
「今は、これとこれだな。」
ドライヤーと携帯電話だった。
「これは、ドライヤーな。魔石に火魔法と風魔法を組み込んである。単純だけど、この世界のやつらには思いつかないらしくて、すごく売れてる。」
「すごい。」
「で、これは、携帯電話!
にしたかったんだけど、レベルとしては、トランシーバーだな。魔石を共鳴させてる。中継点とか研究すれば携帯電話にできるかも。でも、王都内とか、領地内とかだったら、充分使えるぞ。」
「グレー!すごいんだねっ!」
「こんなの転生者なら思い付くさ。で、な、これを売り込むためにおやじがいろんな国に行ってて、開発したのはオレだから、こうやって、連れてきてもらってるんだ。」
「だからさ、オレの国で、オレと開発しようぜ。そうすれば、金持ちになれるぞ。金持ちになって、あの子を迎えに来ればいい。」
「そんなことできるかな?」
「オレとお前とならできる。一人だとつまらなかったんだ。オレ、魔力は普通だろ。だから開発進まないし。だから、おやじにくっついて、フラフラしてんだけど。オーリーと会えて、まじうれしいよ。」
「でも、勉強とかあるし。」
「言っただろ。なぜか勉強ができるようになるって。たぶん、転生者として脳が活性化するんだと思うんだ。じゃないと、三歳児の脳が耐えられないだろ?」
「よくわかんないけど。」
「とにかく、テストなんて、前の日に勉強すればできちゃうし、歴史なんて、テスト終わったら忘れても問題ないだろ?生きるために必要な知識はあるんだから。」
「そんなもんかな?」
「転生者の記憶で開発すれば、金持ちになれるぞ!どうしてもなら、うちの国にも学校はある。卒業証書があればいいんだろ?」
「もっと、考えてみるよ。」
〰️ 〰️ 〰️
オーリオダムは、登城しない日は、エマローズの家で勉強する。そんなとき、メイドたちの立ち話をオーリオダムは聞いてしまった。
「お嬢様、最近登城なさってるでしょ?」
「そうなのよ。先日は王子殿下と遊んだらしいわ。」
「まあ!お嬢様、王妃様になるのかしらぁ!」
「王子殿下は、婚約者はいないし、お嬢様は侯爵令嬢だし、きっとそうよう!」
きゃっきゃっとはしゃぐメイドを後目に、オーリオダムは大変なショックを受けた。
実際には、アリーシャが王子の仮婚約者であったが、それは知られていない。この1年後、正式な婚約者となるのだが、この時にはまだ噂もない。
メイドたちの言葉を信じたオーリオダムは、エマローズの元へ走る。
「エマ、エマ、僕はエマを迎えに来るよ。だから僕を待っていて。」
「ダム?どこかへ行くの?わかったわ。けがはしないでね。」
オーリオダムは、これがただの子供の約束だとはわかっていなかった。たとえ、本人たちが本気であっても、大人に了解を得た約束ではないことなど、わかっていなかったのだ。
〰️ 〰️ 〰️
その日から、オーリオダムはグレボウナの国ナタロフ帝国へ留学したいと懸命に父親にお願いした。父親であるジャンバディ・サンドエク伯爵は、伯爵のある考えにより、オーリオダムが留学することには、反対ではなかった。
「ダム、気持ちはよく、わかったよ。だけどね、異国で勉強することは、簡単には決められない。王様に相談してみるよ。」
「父上は、ダメだって思うの?」
「違うよ、ダム。私は行かせてやりたいよ。だが、もしかしたら、お金がものすごくかかるかもしれない。異国だから、いいこととダメなことが違うかもしれない。とにかく、すぐには、わからないんだ。」
「父上が王様にお願いしてくれるの?」
「そうだよ。異国のお客様ともお話しなければならないね。待っててくれるかな?」
「父上、僕、お勉強頑張るから、よろしくお願いします。」
「よし、いい子だ。」
〰️ 〰️ 〰️
サンドエク伯爵の思いは杞憂だった。国王陛下は異国の知識も異国との繋がりも有用だと考えていたし、ナタロフ帝国のイロフスキー侯爵は、息子グレボウナが気に入った子供に大変興味があった。
オーリオダムの留学は、ガーリウム王国が全面的に協力してくれ、イロフスキー侯爵が生活の保証をしてくれ、何の憂いもなく受け入れられた。
この頃、王宮や王城では、「滞在していた異国の天才児が認めた明晰な子供」とか「あの異国の子供を明るく笑わせて楽しんでいた子供」などの噂が流れた。
時を越えて「明晰な子供」「明るい子供」という言葉だけが残っていく。
「え?本当?」
「オレさ、今、おやじと一緒に世界を回ってる。ここは5ヶ国目だよ。」
「なんでそんなことできるの?」
「オレの部屋に行こうぜ。」
王宮の客室だ。部屋に着くと何やら持ってきた。
「今は、これとこれだな。」
ドライヤーと携帯電話だった。
「これは、ドライヤーな。魔石に火魔法と風魔法を組み込んである。単純だけど、この世界のやつらには思いつかないらしくて、すごく売れてる。」
「すごい。」
「で、これは、携帯電話!
にしたかったんだけど、レベルとしては、トランシーバーだな。魔石を共鳴させてる。中継点とか研究すれば携帯電話にできるかも。でも、王都内とか、領地内とかだったら、充分使えるぞ。」
「グレー!すごいんだねっ!」
「こんなの転生者なら思い付くさ。で、な、これを売り込むためにおやじがいろんな国に行ってて、開発したのはオレだから、こうやって、連れてきてもらってるんだ。」
「だからさ、オレの国で、オレと開発しようぜ。そうすれば、金持ちになれるぞ。金持ちになって、あの子を迎えに来ればいい。」
「そんなことできるかな?」
「オレとお前とならできる。一人だとつまらなかったんだ。オレ、魔力は普通だろ。だから開発進まないし。だから、おやじにくっついて、フラフラしてんだけど。オーリーと会えて、まじうれしいよ。」
「でも、勉強とかあるし。」
「言っただろ。なぜか勉強ができるようになるって。たぶん、転生者として脳が活性化するんだと思うんだ。じゃないと、三歳児の脳が耐えられないだろ?」
「よくわかんないけど。」
「とにかく、テストなんて、前の日に勉強すればできちゃうし、歴史なんて、テスト終わったら忘れても問題ないだろ?生きるために必要な知識はあるんだから。」
「そんなもんかな?」
「転生者の記憶で開発すれば、金持ちになれるぞ!どうしてもなら、うちの国にも学校はある。卒業証書があればいいんだろ?」
「もっと、考えてみるよ。」
〰️ 〰️ 〰️
オーリオダムは、登城しない日は、エマローズの家で勉強する。そんなとき、メイドたちの立ち話をオーリオダムは聞いてしまった。
「お嬢様、最近登城なさってるでしょ?」
「そうなのよ。先日は王子殿下と遊んだらしいわ。」
「まあ!お嬢様、王妃様になるのかしらぁ!」
「王子殿下は、婚約者はいないし、お嬢様は侯爵令嬢だし、きっとそうよう!」
きゃっきゃっとはしゃぐメイドを後目に、オーリオダムは大変なショックを受けた。
実際には、アリーシャが王子の仮婚約者であったが、それは知られていない。この1年後、正式な婚約者となるのだが、この時にはまだ噂もない。
メイドたちの言葉を信じたオーリオダムは、エマローズの元へ走る。
「エマ、エマ、僕はエマを迎えに来るよ。だから僕を待っていて。」
「ダム?どこかへ行くの?わかったわ。けがはしないでね。」
オーリオダムは、これがただの子供の約束だとはわかっていなかった。たとえ、本人たちが本気であっても、大人に了解を得た約束ではないことなど、わかっていなかったのだ。
〰️ 〰️ 〰️
その日から、オーリオダムはグレボウナの国ナタロフ帝国へ留学したいと懸命に父親にお願いした。父親であるジャンバディ・サンドエク伯爵は、伯爵のある考えにより、オーリオダムが留学することには、反対ではなかった。
「ダム、気持ちはよく、わかったよ。だけどね、異国で勉強することは、簡単には決められない。王様に相談してみるよ。」
「父上は、ダメだって思うの?」
「違うよ、ダム。私は行かせてやりたいよ。だが、もしかしたら、お金がものすごくかかるかもしれない。異国だから、いいこととダメなことが違うかもしれない。とにかく、すぐには、わからないんだ。」
「父上が王様にお願いしてくれるの?」
「そうだよ。異国のお客様ともお話しなければならないね。待っててくれるかな?」
「父上、僕、お勉強頑張るから、よろしくお願いします。」
「よし、いい子だ。」
〰️ 〰️ 〰️
サンドエク伯爵の思いは杞憂だった。国王陛下は異国の知識も異国との繋がりも有用だと考えていたし、ナタロフ帝国のイロフスキー侯爵は、息子グレボウナが気に入った子供に大変興味があった。
オーリオダムの留学は、ガーリウム王国が全面的に協力してくれ、イロフスキー侯爵が生活の保証をしてくれ、何の憂いもなく受け入れられた。
この頃、王宮や王城では、「滞在していた異国の天才児が認めた明晰な子供」とか「あの異国の子供を明るく笑わせて楽しんでいた子供」などの噂が流れた。
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