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第五章 公爵令息の作戦 遂行編

作戦18 待つことも作戦?

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 贈り物や茶会をゼファーライト殿下が代理をしていたことを、父上が陛下に報告した。
 父上によると、報告の後、王妃殿下が、こっそりと茶会を見に行き、その場で倒れられたそうだ。母親って大変だな。

 陛下は、どうやら姉上を諦めたようだと父上が言っていた。陛下が王妃殿下を説得するのを待つそうだ。


〰️ 〰️ 〰️
 

 時間は過ぎるが、僕たちにはもう何もできない。待つだけだ。

 と思っていたら、アナファルト王子が勝手に落ちた。


 ゼファーライト殿下がタニャード王国へ向けて出発してから数日後、アナファルト王子とメノール嬢が不貞を働いていることがはっきりと確認された。現行を確認しただけで、本人たちには、知らせていないのだそうだ。
 だが、メノール嬢が、どうやって侵入して、どうやってほぼ見つからずに逃走できたのかは不明だった。それを見つけるよりも、王城の警備を強化することが優先であったのだ。
 その甲斐があってそれ以降、メノール嬢の侵入は回避されている。
 このことは、大人たちがどうにかするだろうし、僕たちがどうにかできることではない。


 不貞の現行確認が朝にされて、父上から学園に『帰ってこい』と連絡があり、夜には、不貞現行確認のことを聞いて、次の日には、父上と僕は王城の国王陛下の執務室に朝から呼ばれた。今日は学園を休んでいる。
 夕べ、王子の不貞現行確認のことを聞いた母上は、その場で倒れた。朝にも起きていらっしゃらなかったから、心配だ。


 陛下の執務室のソファーでは、今日は国王陛下と王妃殿下が待っていた。王妃殿下は、どうみてもやつれていらっしゃった。
 挨拶をして、王妃殿下の座る向かい側の二人掛けソファーに、父上と並んで座る。

「ヨアン、ヤンアートから説明は受けているな。」

「はい。」

「ヤンアート、ミーティアには話したのか?」
ミーティアは、僕たちの母上だ。

「はい。昨日から寝込んでおります。」

「ひゅっ。」
王妃殿下が息を飲む声が響く。

「うむ、そうか。これからレンバーグ家に、王家から何ができるか考えるゆえ、ミーティアのことも許せ。すまぬな。」
 父上………また陛下に謝らせるし……。なのに、返事しないし……。

「王家としては、最悪の結果だ。この婚約を白紙にし、それなりの賠償もいたそう。」
 父上は怒ってらっしゃいますね。また、陛下に返事もしない。一応、今日も無礼講とは言われてるけど。

「陛下!アリーシャを……。」
王妃殿下が陛下にすがる。

「アナファルトの不貞がなければ、行動を諌め謹慎させた上でなら、ギルファルトとのことも案としてだせたかもしれぬ。
だが、こうなってしまってはダメだ。これ以上、我々がアリーシャを望むことは、レンバーグ家を手放すことになるぞ。
王妃も、わかってくれ。」
王妃殿下は、僕たちの目の前にも関わらず、ポロポロと泣き、膝に顔を伏せてしまった。
 姉上は、少なくとも、国王陛下と王妃殿下には大切にされていたのだと少しだけ嬉しくなった。

「ご理解いただけて、幸いにございます。」
父上、それってイヤミですよね。怖い。

「それで、すぐにでも公にいたすか?そなたたちの望む通りにいたそう。」

「ヨアン、他のご令嬢はどうなっている?」

「はい、父上。先日の陛下とのお話から変化はありません。」

「そうか。
とのことですので、サンエドク家の報告を待つしかないでしょうな。」

「わかった。

王家としても、アナファルトの処遇を考えねばなるまいな。
そうだな、伯爵位でも与えて、小さい領地の経営でもさせるか。王位継承権を永劫剥奪にして、引っ込ませよう。王都への帰還は、子孫であっても、認めん。」

「王家が伯爵位ですか?」

「こんな醜聞で、公爵位など与えられるものかっ。」
 陛下もご立腹のようだ。王家から臣下になるのに、伯爵位は、重い罰だ。

「御心のままに。」
父上も納得ということだろう。

「おお!そうだ!卒業式の最後に、この4組の婚約白紙を公にし、ワシの名前で、男どもの不誠実が理由であることをきちんと話そう。その上で、やつらには、パーティーへの参加は認めん。

ヨアン、学生としてどうだ?」

「はい。卒業式でしたら、保護者もおりますし、陛下の御言葉をいただけましたら、姉たちの醜聞も少なく済むかと存じます。」

「そうか、そうか。ヨアン、では、そのように学園の準備を頼んだぞ。
こちらの手回しはワシがしておこう。」

「畏まりました。ありがとうございます。」

「アリーシャへの報告は、ヤンアートに任せる。」

「それにつきましては、実は、ゼファーライト殿下から、殿下がタニャード王国より戻るまで、アリーシャには、秘密にするようにと嘆願されております。」

「さすがは、アリーシャだな。手放した瞬間にそうなるか。」
「わぁ、、、」
王妃殿下が更に泣いてしまった。

「悪い話ではないではないか。ヤンアートも前向きなのだろう?」

「いえ、まだわかりません。タニャード王国が何というかわかりませんし、何より、アリーシャの気持ちがまだわかませんゆえ。」

「そうか。アリーシャには、幸せになってほしいからの。」


「ですので、アリーシャは、しばらく今まで通り通わせますので。」

「そうか、わかった。

今日はご苦労であったの。

おいっ。」
陛下がメイドを呼ぶと、籠にオレンジの実が沢山入っていた。

「ヨアン、ミーティアにこれを。食欲がなくともこれなら食べられよう。
ワシが言うのもおかしいが、体を壊すことがないよう、そなたからも見てやってくれ。」

「ありがたき、御言葉。母にも伝えます。」

「うむ、ヨアン、そなたは、しっかり、の。」


〰️ 〰️ 〰️


 その夜、公爵邸の父上の執務室のソファーで、父上と話をした。

「いいか、ヨアン。我が公爵家は、今回のことに関して、賠償は望んでおらん。」

「はいっ。」

「我が公爵家に対して、アナファルト王子の処遇が、適正であるかが、大切なのだ。処分が甘過ぎであれ、厳しすぎであれ、公平に判断して、忠言することが、公爵家の仕事のひとつだ。」

「はいっ。」

「王侯貴族は、爵位を重んじるゆえ、陛下に意見できる者は少ない。だからこそ、公爵家は、しっかりと判断していかねばならない。判断を間違わぬためには、学びが必要だ。お前の学びは、学園で終わることはない。生涯学び続けると思いなさい。」

「畏まりましたっ!」
 僕はいつか公爵の爵位を継ぐ。その時、今日の父上のようにありたいと思う。
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