上 下
33 / 71
第四章 公爵令息の作戦 準備編

作戦9 再び情報を共有する

しおりを挟む
 ヴィオリアさんとディークが話している間に、エマローズさんと僕はお茶を入れ、ソファーに6人が揃った。

「ヴィオリアさん、婚約白紙にできて、よかったですね。お二人は、どうでしたか?」

「わたくしは、シェンの助けもあって、両親と話ができましたの。」

「母さんなんて、『どうして今まで言わなかったのぉ?』なんて、泣いてたぜ。」

「もう、シェン、恥ずかしい話はしないでっ。

早速次の日の夜、お父様お母様お二人でシャーワント公爵邸へ行ってくださいましたの。

あちらのご意向もあて三月ほど、イリサス様のご様子を見ることになりましたの。あちらのご両親は、これから説得するそうですわ。」
 僕は、心の底からがっかりしたけど、顔に出さないようにした。

「本当は卒業までって、いうのを父さんが怒って三月しか待てないっていったらしい。
父さんを、見直したよっ。」
と、笑顔のロンと苦笑いのイメルダリアさんだった。

「わたくしは、まだ未定ですわね。エンゾラール様次第というところでしょうか。」

「え?そうなの?エマローズ様はそれでいいの?」
ヴィオリアさんがたずねる。

「わたくし、男女の…なんというか気持ちとかよくわかりませんの。
それより、自分で領地経営をできるという楽しみで。元々、わたくしたちは、結婚しても、王都の研究所と領地とで分かれて暮らす予定でしたし。私の領地は、兄の子供に譲ればいいですし。
白い結婚でいいかなぁって。」
なるほどと思うべきなのかも悩む。

これって、姉上の考える義務に似てるけど、子供がいらないってところで少し違うんだろうな。


「でも、問題はお金ですの。メノール様に随分とお使いになっているらしくて、研究所に請求書が届きますのよ。サンドエク家に払える額ではありませんの。なので、まだ、サンドエク家に言えてなくて。」


「そうでしたか。

僕は姉上の報告を。やはり、贈り物とお茶会は、やってるみたいです。先日は、王妃殿下のお茶会に殿下のエスコートで参加されたそうです。メノール嬢については、母上に聞いてもらいました。『貴族の義務を果たす』ことが大事だと言っていたようです。」

 なんとなく、場が沈んでしまった。

「じゃあ、僕らからも報告ね。市井のココロールに、エンゾラールさんと例の彼女が入って行くのを見ました。」
ディークがいつもの調子で報告する。

「それは、いつ頃ですの?」
エマローズさんの感情が読めない。

「三週前の週末の昼過ぎですね。買い物したあとに、ですね。」

「わかりましたわ、確認させてもらいますわね。」

「確認ですか?」
ディークは、疑われたと思ったのか、少し軽さがなくなった。

「ええ、残念ですけど、皆さんは学生ですから、わたくしは信じますが、父を信じさせられるかは別問題ですの。ごめんなさいね。
ですが、それだけ正確な時間がわかれば確認もとれやすいですわ。その情報、キチンと使わせていただきますわ。」
エマローズさんの目が光ったように見えた。

「それが、確認できれば、さすがに父も婚約白紙にさせるでしょうね。血の繋がりがない者に領地を継がせたいわけではありませんし。」
うん、エマローズさん、怖い。穏やかなお姉さんだと思っていてごめんなさい。


「あと、もうひとつ。
イリサスさんの不貞も再確認してきました。」

「え!いつだよっ!誘えよ!俺の姉さんのことだぞ。」

「僕が一人でやるつもりだったんだよ。なのに、ヨアンがしつこくて。」

「なっ!ヨアンは行ったのかよっ!」

「ロンごめんね。いつになるかわからなくて、何度も通うことになるからさ、夜にロンを何度も誘うなんてできなかったんだ。」
ユラベル侯爵邸は、男爵邸とは、町の反対側だ。

「まあ、何度もお手間を取らせてしまったみたいで、ごめんなさいね。

それで、そ、その再確認とは?」

「ハッキリ言えば、不貞行為はあったでしょう。夜中、バルコニーに降り立ったイリサスさんは、例の彼女と熱い口づけをしながら部屋に入って行きました。イリサスさんが部屋から出てきたのは、明け方です。裸にシーツを巻いただけの例の彼女が、イリサスさんのお見送りをしてました、バルコニーから。」

 ヴィオリアさんとエマローズさんが青い顔をして、口を手で覆っている。


 イメルダリアさんは気を失ってしまった。

「ディークっ!言葉を選べよっ!
姉さん、姉さん、大丈夫かっ?」

「んー、ごめん。お花畑さんのこと考えたら、ついつい。なんか、ムカついちゃって。」 
 僕は、急いでお水を持ってきてグラスを渡す。

「シェン、大丈夫よ。ヨアン君、ありがとう。
ディーク君もごめんなさいね。
イリサス様がっていうんじゃないのよ。わたくしたちと同じ年齢のご令嬢がって思ったら……。
もう大丈夫よ。自分の価値観だけではダメね。」
 イメルダリアさんが少ししょんぼりしている。

 うわあ、イメルダリアさん、純情だあ。そして、可愛い。
僕はもう、イメルダリアさんが大好きになっていた。

「このお話があれば、わたくしもすぐに婚約白紙にできるかもしれませんわね。」

 是非、頑張ってもらいたいっ!



 が、結果はやはり三月待ち。夏休みの間にイリサスさんを鍛え直すとか。
 失敗してほしい。本気で。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生不憫令嬢は自重しない~愛を知らない令嬢の異世界生活

リョンコ
恋愛
シュタイザー侯爵家の長女『ストロベリー・ディ・シュタイザー』の人生は幼少期から波乱万丈であった。 銀髪&碧眼色の父、金髪&翠眼色の母、両親の色彩を受け継いだ、金髪&碧眼色の実兄。 そんな侯爵家に産まれた待望の長女は、ミルキーピンクの髪の毛にパープルゴールドの眼。 両親どちらにもない色彩だった為、母は不貞を疑われるのを恐れ、産まれたばかりの娘を敷地内の旧侯爵邸へ隔離し、下働きメイドの娘(ハニーブロンドヘア&ヘーゼルアイ)を実娘として育てる事にした。 一方、本当の実娘『ストロベリー』は、産まれたばかりなのに泣きもせず、暴れたりもせず、無表情で一点を見詰めたまま微動だにしなかった……。 そんな赤ん坊の胸中は(クッソババアだな。あれが実母とかやばくね?パパンは何処よ?家庭を顧みないダメ親父か?ヘイゴッド、転生先が悪魔の住処ってこれ如何に?私に恨みでもあるんですか!?)だった。 そして泣きもせず、暴れたりもせず、ずっと無表情だった『ストロベリー』の第一声は、「おぎゃー」でも「うにゃー」でもなく、「くっそはりゃへった……」だった。 その声は、空が茜色に染まってきた頃に薄暗い部屋の中で静かに木霊した……。 ※この小説は剣と魔法の世界&乙女ゲームを模した世界なので、バトル有り恋愛有りのファンタジー小説になります。 ※ギリギリR15を攻めます。 ※残酷描写有りなので苦手な方は注意して下さい。 ※主人公は気が強く喧嘩っ早いし口が悪いです。 ※色々な加護持ちだけど、平凡なチートです。 ※他転生者も登場します。 ※毎日1話ずつ更新する予定です。ゆるゆると進みます。 皆様のお気に入り登録やエールをお待ちしております。 ※なろう小説でも掲載しています☆

憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。 そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!? 個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!? これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥ 小説家になろうでも掲載しております。

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。 妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。 今迄関わる事のなかった異母姉。 「私が、お姉様を幸せにするわ!」 その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。 最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。 ❋主人公以外の他視点の話もあります。 ❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。

チート過ぎるご令嬢、国外追放される

舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。 舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。 国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。 ……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆本編完結◆ ◆小説家になろう様でも、公開中◆

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈 
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...