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第四章 公爵令息の作戦 準備編
作戦9 再び情報を共有する
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ヴィオリアさんとディークが話している間に、エマローズさんと僕はお茶を入れ、ソファーに6人が揃った。
「ヴィオリアさん、婚約白紙にできて、よかったですね。お二人は、どうでしたか?」
「わたくしは、シェンの助けもあって、両親と話ができましたの。」
「母さんなんて、『どうして今まで言わなかったのぉ?』なんて、泣いてたぜ。」
「もう、シェン、恥ずかしい話はしないでっ。
早速次の日の夜、お父様お母様お二人でシャーワント公爵邸へ行ってくださいましたの。
あちらのご意向もあて三月ほど、イリサス様のご様子を見ることになりましたの。あちらのご両親は、これから説得するそうですわ。」
僕は、心の底からがっかりしたけど、顔に出さないようにした。
「本当は卒業までって、いうのを父さんが怒って三月しか待てないっていったらしい。
父さんを、見直したよっ。」
と、笑顔のロンと苦笑いのイメルダリアさんだった。
「わたくしは、まだ未定ですわね。エンゾラール様次第というところでしょうか。」
「え?そうなの?エマローズ様はそれでいいの?」
ヴィオリアさんがたずねる。
「わたくし、男女の…なんというか気持ちとかよくわかりませんの。
それより、自分で領地経営をできるという楽しみで。元々、わたくしたちは、結婚しても、王都の研究所と領地とで分かれて暮らす予定でしたし。私の領地は、兄の子供に譲ればいいですし。
白い結婚でいいかなぁって。」
なるほどと思うべきなのかも悩む。
これって、姉上の考える義務に似てるけど、子供がいらないってところで少し違うんだろうな。
「でも、問題はお金ですの。メノール様に随分とお使いになっているらしくて、研究所に請求書が届きますのよ。サンドエク家に払える額ではありませんの。なので、まだ、サンドエク家に言えてなくて。」
「そうでしたか。
僕は姉上の報告を。やはり、贈り物とお茶会は、やってるみたいです。先日は、王妃殿下のお茶会に殿下のエスコートで参加されたそうです。メノール嬢については、母上に聞いてもらいました。『貴族の義務を果たす』ことが大事だと言っていたようです。」
なんとなく、場が沈んでしまった。
「じゃあ、僕らからも報告ね。市井のココロールに、エンゾラールさんと例の彼女が入って行くのを見ました。」
ディークがいつもの調子で報告する。
「それは、いつ頃ですの?」
エマローズさんの感情が読めない。
「三週前の週末の昼過ぎですね。買い物したあとに、ですね。」
「わかりましたわ、確認させてもらいますわね。」
「確認ですか?」
ディークは、疑われたと思ったのか、少し軽さがなくなった。
「ええ、残念ですけど、皆さんは学生ですから、わたくしは信じますが、父を信じさせられるかは別問題ですの。ごめんなさいね。
ですが、それだけ正確な時間がわかれば確認もとれやすいですわ。その情報、キチンと使わせていただきますわ。」
エマローズさんの目が光ったように見えた。
「それが、確認できれば、さすがに父も婚約白紙にさせるでしょうね。血の繋がりがない者に領地を継がせたいわけではありませんし。」
うん、エマローズさん、怖い。穏やかなお姉さんだと思っていてごめんなさい。
「あと、もうひとつ。
イリサスさんの不貞も再確認してきました。」
「え!いつだよっ!誘えよ!俺の姉さんのことだぞ。」
「僕が一人でやるつもりだったんだよ。なのに、ヨアンがしつこくて。」
「なっ!ヨアンは行ったのかよっ!」
「ロンごめんね。いつになるかわからなくて、何度も通うことになるからさ、夜にロンを何度も誘うなんてできなかったんだ。」
ユラベル侯爵邸は、男爵邸とは、町の反対側だ。
「まあ、何度もお手間を取らせてしまったみたいで、ごめんなさいね。
それで、そ、その再確認とは?」
「ハッキリ言えば、不貞行為はあったでしょう。夜中、バルコニーに降り立ったイリサスさんは、例の彼女と熱い口づけをしながら部屋に入って行きました。イリサスさんが部屋から出てきたのは、明け方です。裸にシーツを巻いただけの例の彼女が、イリサスさんのお見送りをしてました、バルコニーから。」
ヴィオリアさんとエマローズさんが青い顔をして、口を手で覆っている。
イメルダリアさんは気を失ってしまった。
「ディークっ!言葉を選べよっ!
姉さん、姉さん、大丈夫かっ?」
「んー、ごめん。お花畑さんのこと考えたら、ついつい。なんか、ムカついちゃって。」
僕は、急いでお水を持ってきてグラスを渡す。
「シェン、大丈夫よ。ヨアン君、ありがとう。
ディーク君もごめんなさいね。
イリサス様がっていうんじゃないのよ。わたくしたちと同じ年齢のご令嬢がって思ったら……。
もう大丈夫よ。自分の価値観だけではダメね。」
イメルダリアさんが少ししょんぼりしている。
うわあ、イメルダリアさん、純情だあ。そして、可愛い。
僕はもう、イメルダリアさんが大好きになっていた。
「このお話があれば、わたくしもすぐに婚約白紙にできるかもしれませんわね。」
是非、頑張ってもらいたいっ!
が、結果はやはり三月待ち。夏休みの間にイリサスさんを鍛え直すとか。
失敗してほしい。本気で。
「ヴィオリアさん、婚約白紙にできて、よかったですね。お二人は、どうでしたか?」
「わたくしは、シェンの助けもあって、両親と話ができましたの。」
「母さんなんて、『どうして今まで言わなかったのぉ?』なんて、泣いてたぜ。」
「もう、シェン、恥ずかしい話はしないでっ。
早速次の日の夜、お父様お母様お二人でシャーワント公爵邸へ行ってくださいましたの。
あちらのご意向もあて三月ほど、イリサス様のご様子を見ることになりましたの。あちらのご両親は、これから説得するそうですわ。」
僕は、心の底からがっかりしたけど、顔に出さないようにした。
「本当は卒業までって、いうのを父さんが怒って三月しか待てないっていったらしい。
父さんを、見直したよっ。」
と、笑顔のロンと苦笑いのイメルダリアさんだった。
「わたくしは、まだ未定ですわね。エンゾラール様次第というところでしょうか。」
「え?そうなの?エマローズ様はそれでいいの?」
ヴィオリアさんがたずねる。
「わたくし、男女の…なんというか気持ちとかよくわかりませんの。
それより、自分で領地経営をできるという楽しみで。元々、わたくしたちは、結婚しても、王都の研究所と領地とで分かれて暮らす予定でしたし。私の領地は、兄の子供に譲ればいいですし。
白い結婚でいいかなぁって。」
なるほどと思うべきなのかも悩む。
これって、姉上の考える義務に似てるけど、子供がいらないってところで少し違うんだろうな。
「でも、問題はお金ですの。メノール様に随分とお使いになっているらしくて、研究所に請求書が届きますのよ。サンドエク家に払える額ではありませんの。なので、まだ、サンドエク家に言えてなくて。」
「そうでしたか。
僕は姉上の報告を。やはり、贈り物とお茶会は、やってるみたいです。先日は、王妃殿下のお茶会に殿下のエスコートで参加されたそうです。メノール嬢については、母上に聞いてもらいました。『貴族の義務を果たす』ことが大事だと言っていたようです。」
なんとなく、場が沈んでしまった。
「じゃあ、僕らからも報告ね。市井のココロールに、エンゾラールさんと例の彼女が入って行くのを見ました。」
ディークがいつもの調子で報告する。
「それは、いつ頃ですの?」
エマローズさんの感情が読めない。
「三週前の週末の昼過ぎですね。買い物したあとに、ですね。」
「わかりましたわ、確認させてもらいますわね。」
「確認ですか?」
ディークは、疑われたと思ったのか、少し軽さがなくなった。
「ええ、残念ですけど、皆さんは学生ですから、わたくしは信じますが、父を信じさせられるかは別問題ですの。ごめんなさいね。
ですが、それだけ正確な時間がわかれば確認もとれやすいですわ。その情報、キチンと使わせていただきますわ。」
エマローズさんの目が光ったように見えた。
「それが、確認できれば、さすがに父も婚約白紙にさせるでしょうね。血の繋がりがない者に領地を継がせたいわけではありませんし。」
うん、エマローズさん、怖い。穏やかなお姉さんだと思っていてごめんなさい。
「あと、もうひとつ。
イリサスさんの不貞も再確認してきました。」
「え!いつだよっ!誘えよ!俺の姉さんのことだぞ。」
「僕が一人でやるつもりだったんだよ。なのに、ヨアンがしつこくて。」
「なっ!ヨアンは行ったのかよっ!」
「ロンごめんね。いつになるかわからなくて、何度も通うことになるからさ、夜にロンを何度も誘うなんてできなかったんだ。」
ユラベル侯爵邸は、男爵邸とは、町の反対側だ。
「まあ、何度もお手間を取らせてしまったみたいで、ごめんなさいね。
それで、そ、その再確認とは?」
「ハッキリ言えば、不貞行為はあったでしょう。夜中、バルコニーに降り立ったイリサスさんは、例の彼女と熱い口づけをしながら部屋に入って行きました。イリサスさんが部屋から出てきたのは、明け方です。裸にシーツを巻いただけの例の彼女が、イリサスさんのお見送りをしてました、バルコニーから。」
ヴィオリアさんとエマローズさんが青い顔をして、口を手で覆っている。
イメルダリアさんは気を失ってしまった。
「ディークっ!言葉を選べよっ!
姉さん、姉さん、大丈夫かっ?」
「んー、ごめん。お花畑さんのこと考えたら、ついつい。なんか、ムカついちゃって。」
僕は、急いでお水を持ってきてグラスを渡す。
「シェン、大丈夫よ。ヨアン君、ありがとう。
ディーク君もごめんなさいね。
イリサス様がっていうんじゃないのよ。わたくしたちと同じ年齢のご令嬢がって思ったら……。
もう大丈夫よ。自分の価値観だけではダメね。」
イメルダリアさんが少ししょんぼりしている。
うわあ、イメルダリアさん、純情だあ。そして、可愛い。
僕はもう、イメルダリアさんが大好きになっていた。
「このお話があれば、わたくしもすぐに婚約白紙にできるかもしれませんわね。」
是非、頑張ってもらいたいっ!
が、結果はやはり三月待ち。夏休みの間にイリサスさんを鍛え直すとか。
失敗してほしい。本気で。
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