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第四章 公爵令息の作戦 準備編
作戦8 緊急事態に対応する
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週末に徹夜で見張りをしたので、まだダルい。そんな月曜日のお昼前の授業。こんなときに限って、歴史だ。眠い。
そんなとき、ガタンッ!大きな音を立てて、窓際の席のロンが立ち上がった。
「ユラベル君、どうしました?」
「せ、先生、発案者の名前のスペルが間違えているみたいです。」
「ん??あ、本当だ。これはすまない。」
ロンは着席した。
ロンの2つ後ろに座るディークが外を見て、ニヤニヤしている。あれは、ダメな笑いだ。
つまり、ロンはスペルを指摘したかったわけではない。何かがあったんだ。
それなのに先生は、素直に直し、事なきを得た。さすが学年トップ!ロンの天才の部分が見えた。
〰️ 〰️ 〰️
僕たち3人は何も言わずとも、食堂でサンドイッチ入りの箱を購入して、あの芝生へ向かった。
「ロン、何があったのさっ!」
僕はたまらず聞く。
「校舎の裏倉庫から、出てきたんだよ。」
「???」
「あの女とウズライザーさんがっ。」
「だから、何??」
ずっと、クスクス笑ってるディークに交代。
「二人とも顔を赤くして、女のブラウスは、スカートのウエストからはみ出ていたし、ウズライザーさんの胸元ははだけてた。」
ワーハッハッハ!ディークが失神しそうなほど、笑ってる。
「あの中で、ウズライザーさんが一番お花畑かもなっ。」
呟いてまた笑う。ロンは、片手を顔に当ててなんともなんともな顔をしている。
僕は、教室では真ん中の列なので、何も見えなかったけど、想像はできた。
そうこうしていると、イメルダリアさんが僕たちの前に来た。
ディークをディーク君と呼ぶことになったとき、僕たちも彼女たちを『さん』をつけて呼ぶようになった。
「大変なことが、ありましたの。」
「あ、もしかして、さっきの授業の校舎裏ですか?」
と聞いたディークはまた笑いだす。
「ご覧になったの?」
「3階から見たのは、ロンとディークだけです。」
「そうでしたの。では、話は早いですわね。今日の放課後、生徒会室にお願いしますわ。」
〰️ 〰️ 〰️
「なんなの!なんなの!なんなのぉ!」
ソファーに座ってクッションをポスポスと叩きながら、ヴィオリアさんが呟いていた。イメルダリアさんが、背を擦って慰めている。
「あれをご覧になったのですよね?わたくしどもの2階からも、もちろん、見えましたわ。
自習でしたのて、クラスには半分ほど、しかおりませんでしたが、そこにいた者はみんな見ましたの。アリーシャ様がいらっしゃったので、『醜聞は家にも響きますわ。確実でない情報は流さないようにお願いしますわね』と釘を刺してくださって、騒ぎにはならずに済みましたわ。」
エマローズさんが、僕たちに説明してくれた。
「それにしても!婚約が白紙になった後でこんなに恥をかかされるなんてっ!」
ヴィオリアさんの声が聞こえた。
ん?今なんて?
「こ、婚約白紙になったんですか?」
エマローズさんに小さな声できく。
「そのようですわ。でも、わたくしたちが、ハッキリするまで、発表は待ってくれるらしいのです。」
ディークがソファーまで歩き、まだポスポスやっているヴィオリアさんの向かいに座る。
「婚約白紙、おめでとうございます!」
「あ、ありがとう。でも、こうやって恥をかかされてるわ。
誰も婿に来たがらないからって、あれと婚約したのは、本当に失敗だったわ。」
「誰も婿に来たがらないということはないでしょう。」
ディークが慰める。
「とても辺境なのよ。馬車で1週間もかかるんだからっ。」
「貴女の魅力だけで、婿などいくらでも来ますよ。」
「ほんとに、貴方はお上手なのねっ!」
「僕が言っているのではありませんよ。僕は子爵家ですからね、CクラスにもDクラスにもEクラスにも友人がいます。そんな友人たちは、騎士や兵士になるため、鍛練場に通っています。
そんな彼らにとって、貴方は戦乙女だそうですよ。」
「私は強くはないわっ!」
「そのようですね。でも、強さには色んな形があります。辺境伯様の一人娘であることを受け止め、鍛練に励む姿は大変凛々しいと聞いています。」
「ヴィオリアさん、鍛練場に通っているのですか?型ですか?」
僕は思わず聞いてしまった。
「いえ、実演よ。」
鍛練場では、基礎→型→実演と訓練が進んでいく。型とは、対人でゆっくりと剣をぶつけ合う動きの基礎である。
「すごいなっ!僕はまだ基礎なんです。」
ヴィオリアさんは、僕よりずっと強いのだろう。
「辺境伯になるには、まだだめだわ。」
「辺境伯領地に住む以上、女性も武力があるにこしたことはないでしょう。でも、それだけ強ければ充分なのでは?」
ディークが言う。
「だからっ、婿がいなければ、私が辺境伯になって、親戚から子供をもらうようになるのよ。」
「先ほど、僕の友人たちに、モテているって話ましたよね。」
「強くなるかわからない人を待てないわ。」
「ですよね。でも、彼らには兄弟がいます。長男はさすがに領地を継ぎますが、彼らが四男五男なら、その兄は、騎士や兵士にすでになっている者も多いのです。隊長副隊長なら、間違いなくいます。
そして、彼らは兄たちに凛々しい戦乙女の話をしているでしょう。」
「え?」
「断言します。
『かの凛々しい戦乙女の辺境伯の婿』。
その座が空いた、という話がまわったら、貴女は釣り書の多さに辟易するでしょう。直接口説きに来る強者もいるかもしれませんね。」
ディークの自信満々な言葉にヴィオリアはたじろぐ。
「だから、自信を持ってその時を待っていて大丈夫ですよ。」
「な、な………。
変な噂は流さないでよね。婚約白紙はまだ内緒よっ。」
赤い顔したヴィオリアさんは可愛いらしかった。
そんなとき、ガタンッ!大きな音を立てて、窓際の席のロンが立ち上がった。
「ユラベル君、どうしました?」
「せ、先生、発案者の名前のスペルが間違えているみたいです。」
「ん??あ、本当だ。これはすまない。」
ロンは着席した。
ロンの2つ後ろに座るディークが外を見て、ニヤニヤしている。あれは、ダメな笑いだ。
つまり、ロンはスペルを指摘したかったわけではない。何かがあったんだ。
それなのに先生は、素直に直し、事なきを得た。さすが学年トップ!ロンの天才の部分が見えた。
〰️ 〰️ 〰️
僕たち3人は何も言わずとも、食堂でサンドイッチ入りの箱を購入して、あの芝生へ向かった。
「ロン、何があったのさっ!」
僕はたまらず聞く。
「校舎の裏倉庫から、出てきたんだよ。」
「???」
「あの女とウズライザーさんがっ。」
「だから、何??」
ずっと、クスクス笑ってるディークに交代。
「二人とも顔を赤くして、女のブラウスは、スカートのウエストからはみ出ていたし、ウズライザーさんの胸元ははだけてた。」
ワーハッハッハ!ディークが失神しそうなほど、笑ってる。
「あの中で、ウズライザーさんが一番お花畑かもなっ。」
呟いてまた笑う。ロンは、片手を顔に当ててなんともなんともな顔をしている。
僕は、教室では真ん中の列なので、何も見えなかったけど、想像はできた。
そうこうしていると、イメルダリアさんが僕たちの前に来た。
ディークをディーク君と呼ぶことになったとき、僕たちも彼女たちを『さん』をつけて呼ぶようになった。
「大変なことが、ありましたの。」
「あ、もしかして、さっきの授業の校舎裏ですか?」
と聞いたディークはまた笑いだす。
「ご覧になったの?」
「3階から見たのは、ロンとディークだけです。」
「そうでしたの。では、話は早いですわね。今日の放課後、生徒会室にお願いしますわ。」
〰️ 〰️ 〰️
「なんなの!なんなの!なんなのぉ!」
ソファーに座ってクッションをポスポスと叩きながら、ヴィオリアさんが呟いていた。イメルダリアさんが、背を擦って慰めている。
「あれをご覧になったのですよね?わたくしどもの2階からも、もちろん、見えましたわ。
自習でしたのて、クラスには半分ほど、しかおりませんでしたが、そこにいた者はみんな見ましたの。アリーシャ様がいらっしゃったので、『醜聞は家にも響きますわ。確実でない情報は流さないようにお願いしますわね』と釘を刺してくださって、騒ぎにはならずに済みましたわ。」
エマローズさんが、僕たちに説明してくれた。
「それにしても!婚約が白紙になった後でこんなに恥をかかされるなんてっ!」
ヴィオリアさんの声が聞こえた。
ん?今なんて?
「こ、婚約白紙になったんですか?」
エマローズさんに小さな声できく。
「そのようですわ。でも、わたくしたちが、ハッキリするまで、発表は待ってくれるらしいのです。」
ディークがソファーまで歩き、まだポスポスやっているヴィオリアさんの向かいに座る。
「婚約白紙、おめでとうございます!」
「あ、ありがとう。でも、こうやって恥をかかされてるわ。
誰も婿に来たがらないからって、あれと婚約したのは、本当に失敗だったわ。」
「誰も婿に来たがらないということはないでしょう。」
ディークが慰める。
「とても辺境なのよ。馬車で1週間もかかるんだからっ。」
「貴女の魅力だけで、婿などいくらでも来ますよ。」
「ほんとに、貴方はお上手なのねっ!」
「僕が言っているのではありませんよ。僕は子爵家ですからね、CクラスにもDクラスにもEクラスにも友人がいます。そんな友人たちは、騎士や兵士になるため、鍛練場に通っています。
そんな彼らにとって、貴方は戦乙女だそうですよ。」
「私は強くはないわっ!」
「そのようですね。でも、強さには色んな形があります。辺境伯様の一人娘であることを受け止め、鍛練に励む姿は大変凛々しいと聞いています。」
「ヴィオリアさん、鍛練場に通っているのですか?型ですか?」
僕は思わず聞いてしまった。
「いえ、実演よ。」
鍛練場では、基礎→型→実演と訓練が進んでいく。型とは、対人でゆっくりと剣をぶつけ合う動きの基礎である。
「すごいなっ!僕はまだ基礎なんです。」
ヴィオリアさんは、僕よりずっと強いのだろう。
「辺境伯になるには、まだだめだわ。」
「辺境伯領地に住む以上、女性も武力があるにこしたことはないでしょう。でも、それだけ強ければ充分なのでは?」
ディークが言う。
「だからっ、婿がいなければ、私が辺境伯になって、親戚から子供をもらうようになるのよ。」
「先ほど、僕の友人たちに、モテているって話ましたよね。」
「強くなるかわからない人を待てないわ。」
「ですよね。でも、彼らには兄弟がいます。長男はさすがに領地を継ぎますが、彼らが四男五男なら、その兄は、騎士や兵士にすでになっている者も多いのです。隊長副隊長なら、間違いなくいます。
そして、彼らは兄たちに凛々しい戦乙女の話をしているでしょう。」
「え?」
「断言します。
『かの凛々しい戦乙女の辺境伯の婿』。
その座が空いた、という話がまわったら、貴女は釣り書の多さに辟易するでしょう。直接口説きに来る強者もいるかもしれませんね。」
ディークの自信満々な言葉にヴィオリアはたじろぐ。
「だから、自信を持ってその時を待っていて大丈夫ですよ。」
「な、な………。
変な噂は流さないでよね。婚約白紙はまだ内緒よっ。」
赤い顔したヴィオリアさんは可愛いらしかった。
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