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イェリアが伏し目がちでルカナーテに体を向けた。
「ルカ……。監視していたみたいでごめんなさいね」
「リア。スー。ニル。それだけ把握するのは大変だったでしょう。
わたくしは王子殿下の婚約者になった時点で一人になれないことは覚悟できているわ。でも、わたくしを監視する者が貴女たちだったから窮屈な思いをせずに過ごせたのだわ」
ルカナーテが後ろを振り向いた。
「みなさんもこれまでありがとう。わたくし、みなさんのご期待に添えるようこれからも精進してまいりますわ」
会場から拍手と歓声が響く。喜びの嗚咽泣きも聞こえる。
ルカナーテが手を振り、その手を降ろすとそれらも鳴り止む。
ルカナーテは再びメイセットたちと相対した。
「なるほど。これで貴方方が婚約破棄された理由がわかりましたわね」
「「「は?」」」
パーシットとホセカロとビードが顎を突き出してルカナーテの結論に疑問を投げる。
「これだけのみなさんが、わたくし『だ・け』を見ているわけがございませんでしょう?」
「ええ。パーシット・アビネン公爵子息様がその女子生徒と図書室で抱き合っていらっしゃるのを紫会に目撃されておりますね」
パーシットの元婚約者スージーヌ。
「はい。ホセカロ・メイテント侯爵子息様が鍛錬場でその女子生徒に汗を拭いてもらい、頬に口吻させているところを紅会に目撃されております」
ホセカロの元婚約者ニーティル。
「そうですわ。ビード・マッケイ侯爵子息様が中庭の木陰でその女子生徒に膝枕をされ、その女子生徒がお顔に覆いかぶさる姿を青会白会に目撃されておりますわ」
そして、ビードの元婚約者イェリア。
イェリア、スージーヌ、ニーティルが扇で舞台上の女子生徒ベリアナを指した。
「メイセット様はあまりに堂々としておりましたから、ご説明は必要ございませんね」
ルカナーテが微笑む。メイセットとベリアナがイチャついているところを見たことがない生徒はいない。これは薔薇蕾会に所属しているかどうかは関係ないほど知られた事実だ。
四人の男たちは唖然とした。その様子にルカナーテは演技の呆れ顔をする。
「あら?! ご理解なさっていらっしゃらなかったのですか?」
「わ、我々が希望したから婚約解消となっただけです」
パーシットが頬をひくつかせる。
「違いますわ。婚約解消ではなく婚約破棄です。皆様のお父上が非を認めました。多額の慰謝料が発生しておりますのよ」
「嘘だっ!」
ホセカロがツバを飛ばす。
「本当です。先日陛下にも受理されました」
「そ、そんなこと、ルカナーテ嬢が知るわけないじゃないですかっ!?」
ビードがかぶりを振る。
「わたくしは未来の王妃となるべく勉強しております。王家とわたくしの家を含めた八家の当主会議に出席したので存じておりますの。
女性側の報告が大変現実的だったので疑問に思っておりましたが、薔薇蕾会からの情報でしたのね」
ルカナーテが演技でどんぐりまなこにする。
「あら?! そういえば、そんな大事な会議にメイセット様は呼ばれておりませんでしたわね」
「「「「プッ! くふふふ」」」」
会場中から小さな笑いが漏れた。
「メイセット様。もしや、メイセット様とわたくしとの婚約も破棄となったことをご存知ありませんの?」
会場中が小さくざわつく。
「なにっ!?」
「まあ。それででしたのね。先程、メイセット様の方から破棄と仰られたので困り果てておりました。すでに破棄されておりますので、まさか破棄を破棄なさるおつもりかと、肝が冷えましたわ」
「うふふ。せっかくの婚約破棄を破棄されると困りますものね」
イェリアの説明に皆がなるほどと納得し、嘲笑う声があちらこちらからした。
メイセットは怒りで顔を赤くしてワナワナと震えた。
「ルカ……。監視していたみたいでごめんなさいね」
「リア。スー。ニル。それだけ把握するのは大変だったでしょう。
わたくしは王子殿下の婚約者になった時点で一人になれないことは覚悟できているわ。でも、わたくしを監視する者が貴女たちだったから窮屈な思いをせずに過ごせたのだわ」
ルカナーテが後ろを振り向いた。
「みなさんもこれまでありがとう。わたくし、みなさんのご期待に添えるようこれからも精進してまいりますわ」
会場から拍手と歓声が響く。喜びの嗚咽泣きも聞こえる。
ルカナーテが手を振り、その手を降ろすとそれらも鳴り止む。
ルカナーテは再びメイセットたちと相対した。
「なるほど。これで貴方方が婚約破棄された理由がわかりましたわね」
「「「は?」」」
パーシットとホセカロとビードが顎を突き出してルカナーテの結論に疑問を投げる。
「これだけのみなさんが、わたくし『だ・け』を見ているわけがございませんでしょう?」
「ええ。パーシット・アビネン公爵子息様がその女子生徒と図書室で抱き合っていらっしゃるのを紫会に目撃されておりますね」
パーシットの元婚約者スージーヌ。
「はい。ホセカロ・メイテント侯爵子息様が鍛錬場でその女子生徒に汗を拭いてもらい、頬に口吻させているところを紅会に目撃されております」
ホセカロの元婚約者ニーティル。
「そうですわ。ビード・マッケイ侯爵子息様が中庭の木陰でその女子生徒に膝枕をされ、その女子生徒がお顔に覆いかぶさる姿を青会白会に目撃されておりますわ」
そして、ビードの元婚約者イェリア。
イェリア、スージーヌ、ニーティルが扇で舞台上の女子生徒ベリアナを指した。
「メイセット様はあまりに堂々としておりましたから、ご説明は必要ございませんね」
ルカナーテが微笑む。メイセットとベリアナがイチャついているところを見たことがない生徒はいない。これは薔薇蕾会に所属しているかどうかは関係ないほど知られた事実だ。
四人の男たちは唖然とした。その様子にルカナーテは演技の呆れ顔をする。
「あら?! ご理解なさっていらっしゃらなかったのですか?」
「わ、我々が希望したから婚約解消となっただけです」
パーシットが頬をひくつかせる。
「違いますわ。婚約解消ではなく婚約破棄です。皆様のお父上が非を認めました。多額の慰謝料が発生しておりますのよ」
「嘘だっ!」
ホセカロがツバを飛ばす。
「本当です。先日陛下にも受理されました」
「そ、そんなこと、ルカナーテ嬢が知るわけないじゃないですかっ!?」
ビードがかぶりを振る。
「わたくしは未来の王妃となるべく勉強しております。王家とわたくしの家を含めた八家の当主会議に出席したので存じておりますの。
女性側の報告が大変現実的だったので疑問に思っておりましたが、薔薇蕾会からの情報でしたのね」
ルカナーテが演技でどんぐりまなこにする。
「あら?! そういえば、そんな大事な会議にメイセット様は呼ばれておりませんでしたわね」
「「「「プッ! くふふふ」」」」
会場中から小さな笑いが漏れた。
「メイセット様。もしや、メイセット様とわたくしとの婚約も破棄となったことをご存知ありませんの?」
会場中が小さくざわつく。
「なにっ!?」
「まあ。それででしたのね。先程、メイセット様の方から破棄と仰られたので困り果てておりました。すでに破棄されておりますので、まさか破棄を破棄なさるおつもりかと、肝が冷えましたわ」
「うふふ。せっかくの婚約破棄を破棄されると困りますものね」
イェリアの説明に皆がなるほどと納得し、嘲笑う声があちらこちらからした。
メイセットは怒りで顔を赤くしてワナワナと震えた。
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