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~とある公爵令嬢の回想~
わたくしの婚約者はこの国ナハガル王国の第三王子殿下でございます。
わたくしたちが十三歳の年に、第三王子殿下が我が家に婿入りする約束で婚約いたしました。
わたくしの両親がわたくしの弟でありこの家の後継者となる男子を授かることを半ばあきらめた頃にございます。
すでに十五代も続く王家には分割させる領地もさほどなく、かといって第三王子殿下には国王陛下の補佐をさせるほどの能力もなく、騎士団を任せるほどの統率力もカリスマ性もなく、『持て余していたというのが本音だろう』とお父様が愚痴を溢しておられたことは聞かなかったことにいたしました。
来年には王太子となられる予定の第一王子殿下は大変に優秀な方で国王陛下となられるに相応しく、第二王子殿下は武勇に長けておりすでに騎士団の一部隊長様であられ将来は防衛局長様となられるご予定だとか。防衛局長様は騎士団と地方防衛団をお繋ぎになり時には騎士団を連れ地方の応援などに赴かれたりなさる国全体の防衛を管理されるお仕事でございます。
自惚れているわけではございませんが、わたくしには領地を統べる能力も判断力も知識もございますので、婚姻のお相手がどなたであろうと問題はございません。
わたくしのそのような考えを感じ取られていらっしゃったのかもしれませんわ。
第三王子殿下とは終ぞ歩み寄ることはなく学園への入学となり、第三王子殿下はまたたく間にお一人の男爵令嬢様とお親しい仲になりました。
そしてしばらくしてわたくしがその男爵令嬢様を虐めているという噂が広がりました。
しかしながら、女公爵となるわたくしにとってそれは些末なこと。第三王子殿下が何度か苦情を入れに参られましたが、わたくしには一切関係のないものと説明いたしました。第三王子殿下はご納得をしていらっしゃらないようでございました。
〰️
まさか彼らが、国王陛下が参集なされた集会の席で愚行に及ぶとは……。それも、断罪だけでなく婚約解消宣言まで……。
想像の遥か上の行動をなさいましたわ。
『学園での行動に問題あり』と国王陛下がご判断をなさり、集会の前日にわたくしと第三王子殿下との婚約を白紙にできたことは幸いでございました。
他の皆様のご婚約は各家のご判断というお話でしたが、皆様のご様子ですとすでにお心はお決まりになっているようでした。
「もしも、やつらが集会の席で愚行を始めても、ワシが収めるゆえ我慢してくれ」
「「「かしこまりました」」」
「何もやらかさぬことが一番なのだがな……」
彼らは国王陛下の願いを打ち砕きました。
〰️ 〰️ 〰️
「全くっ! 冤罪まで用意しておったとはっ! 本当に腹立たしい!」
集会の後、お父様は馬車に乗り込むなりお怒りになります。
「お父様。第三王子殿下はその自作自演にお関わりになっておられぬそうですし、男爵令嬢様への行為が捏造されましても、わたくしには何も支障はございませんわ」
「『元』第三王子だ。お前の醜聞にはならぬが、我が公爵家を貶めようとしたこと自体を赦すわけにはいかぬ」
「確かにそうですわね。それは相応の対処をいたしませんと他家に嘲笑されてしまいますわ」
「公爵家として軽んじられてはならない。その点メルド公爵家は落ち目とならざるを得ぬであろう」
わたくしは首肯いたします。そして、次期女公爵として考えが甘かったことを反省いたしました。
「男爵家はもう保つまい。だが、メルド公爵家と侯爵家の二家にはしっかりと賠償してもらわねばならぬ」
「国王陛下が仰っておりました爵位による影響力は、良い面だけを見ておりましたわ」
「うむ。そうだな。あれはワシも身が引き締まる思いだったよ」
お父様は心痛なお顔をされました。
「お父様。わたくし、これからもお勉強させていただきますわ」
わたくしは気持ち新たにお父様からご教授を受けることを決めました。
わたくしの婚約者はこの国ナハガル王国の第三王子殿下でございます。
わたくしたちが十三歳の年に、第三王子殿下が我が家に婿入りする約束で婚約いたしました。
わたくしの両親がわたくしの弟でありこの家の後継者となる男子を授かることを半ばあきらめた頃にございます。
すでに十五代も続く王家には分割させる領地もさほどなく、かといって第三王子殿下には国王陛下の補佐をさせるほどの能力もなく、騎士団を任せるほどの統率力もカリスマ性もなく、『持て余していたというのが本音だろう』とお父様が愚痴を溢しておられたことは聞かなかったことにいたしました。
来年には王太子となられる予定の第一王子殿下は大変に優秀な方で国王陛下となられるに相応しく、第二王子殿下は武勇に長けておりすでに騎士団の一部隊長様であられ将来は防衛局長様となられるご予定だとか。防衛局長様は騎士団と地方防衛団をお繋ぎになり時には騎士団を連れ地方の応援などに赴かれたりなさる国全体の防衛を管理されるお仕事でございます。
自惚れているわけではございませんが、わたくしには領地を統べる能力も判断力も知識もございますので、婚姻のお相手がどなたであろうと問題はございません。
わたくしのそのような考えを感じ取られていらっしゃったのかもしれませんわ。
第三王子殿下とは終ぞ歩み寄ることはなく学園への入学となり、第三王子殿下はまたたく間にお一人の男爵令嬢様とお親しい仲になりました。
そしてしばらくしてわたくしがその男爵令嬢様を虐めているという噂が広がりました。
しかしながら、女公爵となるわたくしにとってそれは些末なこと。第三王子殿下が何度か苦情を入れに参られましたが、わたくしには一切関係のないものと説明いたしました。第三王子殿下はご納得をしていらっしゃらないようでございました。
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まさか彼らが、国王陛下が参集なされた集会の席で愚行に及ぶとは……。それも、断罪だけでなく婚約解消宣言まで……。
想像の遥か上の行動をなさいましたわ。
『学園での行動に問題あり』と国王陛下がご判断をなさり、集会の前日にわたくしと第三王子殿下との婚約を白紙にできたことは幸いでございました。
他の皆様のご婚約は各家のご判断というお話でしたが、皆様のご様子ですとすでにお心はお決まりになっているようでした。
「もしも、やつらが集会の席で愚行を始めても、ワシが収めるゆえ我慢してくれ」
「「「かしこまりました」」」
「何もやらかさぬことが一番なのだがな……」
彼らは国王陛下の願いを打ち砕きました。
〰️ 〰️ 〰️
「全くっ! 冤罪まで用意しておったとはっ! 本当に腹立たしい!」
集会の後、お父様は馬車に乗り込むなりお怒りになります。
「お父様。第三王子殿下はその自作自演にお関わりになっておられぬそうですし、男爵令嬢様への行為が捏造されましても、わたくしには何も支障はございませんわ」
「『元』第三王子だ。お前の醜聞にはならぬが、我が公爵家を貶めようとしたこと自体を赦すわけにはいかぬ」
「確かにそうですわね。それは相応の対処をいたしませんと他家に嘲笑されてしまいますわ」
「公爵家として軽んじられてはならない。その点メルド公爵家は落ち目とならざるを得ぬであろう」
わたくしは首肯いたします。そして、次期女公爵として考えが甘かったことを反省いたしました。
「男爵家はもう保つまい。だが、メルド公爵家と侯爵家の二家にはしっかりと賠償してもらわねばならぬ」
「国王陛下が仰っておりました爵位による影響力は、良い面だけを見ておりましたわ」
「うむ。そうだな。あれはワシも身が引き締まる思いだったよ」
お父様は心痛なお顔をされました。
「お父様。わたくし、これからもお勉強させていただきますわ」
わたくしは気持ち新たにお父様からご教授を受けることを決めました。
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