6 / 18
6
しおりを挟む
宰相が一息つくと、国王陛下が再び口を開く。
「試験と面接の前にまずは申請も不受理がありえる。普段の素行によっては申請を受理せぬこととする」
会場中が息を詰めた。また宰相が引き継ぐ。
「国王陛下の指示の下、現在すでに素行調査が行われております。
ですが、いつでもどこでも生真面目であれというわけではございませんよ。それでは堅苦しくなってしまいますから。
目に余るような行動をなさらないかという程度の調査です」
一同はホッとした。落ち度のない人間などいないのだから。
「学園からそやつらの素行の悪さが報告されておった。冤罪を被せるためにそやつらが自作自演していたことはその一部だ。調査官にとって目に余るものだったゆえの報告だ。
ワシが冤罪であることを知っていたのはそういうわけだ」
『なるほど』と首肯する者が多数いた。
「つまり、彼らが後継者申請してきても受理されることはなかったと思われます」
宰相の生真面目な顔が嘘ではないと語っている。
「ここに集いし子供らは長子が大半であろう。これまでは何がなくとも後継者であると言われていたやもしれぬ。だが、これからは本人の努力なくして後継者にはなりえぬ。
とはいえ、試験を受ける権利を持てるのは当然長子が早い。つまりはお前たちは後継者となる可能性が高いということなのだ。しっかりと精進いたせ」
「「「はいっ!」」」
若々しい声が轟いた。
国王陛下が立ち上がる。会場中が姿勢を正し聞く姿勢を強くした。
「よいかっ! ここ数年、領地の状況に胡座をかき贅沢をすることだけが貴族であるかの如く行動をしている家がいくつも見られる。
知識を持ち民を導けなければ貴族である意味はない。心せよ」
「「「「はっ!!」」」」
皆が頭を下げて了承の意を伝えた。国王陛下が退出しようとする。
「陛下! お待ち下さい」
国王陛下を引き止めたのは騎士団長である。
「いかがいたした?」
いつでも礼節を弁え厳格な男である騎士団長がこのような形で声を出すことは珍しい。それを理解している国王陛下は、『何か大切な用件があるのだろう』と眉を寄せることなくすぐに答えた。
「お呼び止めいたし、申し訳ございません。陛下のご指示を仰ぎたく、お声掛けさせていただきました」
「お主の忠義はわかっておる。気にするな。して、いかがいたした?」
「はっ!」
騎士団長は軽く頭を下げたまま口上する。
「高位貴族のご令嬢を罠にはめ、第三王子殿下の妃を狙い、さらにはその女の愛人になろうなどと!」
「「「ちがっ!!」」」
三人の青年たちが否定しようと口を開くがすぐに兵士に床へ押さえつけられた。
騎士団長は青年たちには一瞥も与えない。
「第三王子殿下を操り、裏から国を牛耳ろうとした疑いがございます。国家転覆罪、国家反逆罪であることも踏まえ、彼らの身を我々騎士団預かりとさせていただきたいのです」
「なるほど」
国王陛下は納得だと首肯する。青年たちは予想もしていない方向に向かっていることに抗うこともできず涙を垂れ流していた。
「少なくとも王族たる第三王子殿下を欺瞞し失墜させたことは明白であります。これは王家にあだなす行為でしょう」
「そうか。ワシにはそこまで考えが至らなかった。さすがに国の治安を守る要の騎士団だ。その長たるお主の意見は頼りになるものだ」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「うむ」
「「「ちぎゃいまひゅ……ちぎゃいまひゅ……」」」
涙と鼻水でボロボロな子息三人は首を左右に必死に振っている。
「試験と面接の前にまずは申請も不受理がありえる。普段の素行によっては申請を受理せぬこととする」
会場中が息を詰めた。また宰相が引き継ぐ。
「国王陛下の指示の下、現在すでに素行調査が行われております。
ですが、いつでもどこでも生真面目であれというわけではございませんよ。それでは堅苦しくなってしまいますから。
目に余るような行動をなさらないかという程度の調査です」
一同はホッとした。落ち度のない人間などいないのだから。
「学園からそやつらの素行の悪さが報告されておった。冤罪を被せるためにそやつらが自作自演していたことはその一部だ。調査官にとって目に余るものだったゆえの報告だ。
ワシが冤罪であることを知っていたのはそういうわけだ」
『なるほど』と首肯する者が多数いた。
「つまり、彼らが後継者申請してきても受理されることはなかったと思われます」
宰相の生真面目な顔が嘘ではないと語っている。
「ここに集いし子供らは長子が大半であろう。これまでは何がなくとも後継者であると言われていたやもしれぬ。だが、これからは本人の努力なくして後継者にはなりえぬ。
とはいえ、試験を受ける権利を持てるのは当然長子が早い。つまりはお前たちは後継者となる可能性が高いということなのだ。しっかりと精進いたせ」
「「「はいっ!」」」
若々しい声が轟いた。
国王陛下が立ち上がる。会場中が姿勢を正し聞く姿勢を強くした。
「よいかっ! ここ数年、領地の状況に胡座をかき贅沢をすることだけが貴族であるかの如く行動をしている家がいくつも見られる。
知識を持ち民を導けなければ貴族である意味はない。心せよ」
「「「「はっ!!」」」」
皆が頭を下げて了承の意を伝えた。国王陛下が退出しようとする。
「陛下! お待ち下さい」
国王陛下を引き止めたのは騎士団長である。
「いかがいたした?」
いつでも礼節を弁え厳格な男である騎士団長がこのような形で声を出すことは珍しい。それを理解している国王陛下は、『何か大切な用件があるのだろう』と眉を寄せることなくすぐに答えた。
「お呼び止めいたし、申し訳ございません。陛下のご指示を仰ぎたく、お声掛けさせていただきました」
「お主の忠義はわかっておる。気にするな。して、いかがいたした?」
「はっ!」
騎士団長は軽く頭を下げたまま口上する。
「高位貴族のご令嬢を罠にはめ、第三王子殿下の妃を狙い、さらにはその女の愛人になろうなどと!」
「「「ちがっ!!」」」
三人の青年たちが否定しようと口を開くがすぐに兵士に床へ押さえつけられた。
騎士団長は青年たちには一瞥も与えない。
「第三王子殿下を操り、裏から国を牛耳ろうとした疑いがございます。国家転覆罪、国家反逆罪であることも踏まえ、彼らの身を我々騎士団預かりとさせていただきたいのです」
「なるほど」
国王陛下は納得だと首肯する。青年たちは予想もしていない方向に向かっていることに抗うこともできず涙を垂れ流していた。
「少なくとも王族たる第三王子殿下を欺瞞し失墜させたことは明白であります。これは王家にあだなす行為でしょう」
「そうか。ワシにはそこまで考えが至らなかった。さすがに国の治安を守る要の騎士団だ。その長たるお主の意見は頼りになるものだ」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「うむ」
「「「ちぎゃいまひゅ……ちぎゃいまひゅ……」」」
涙と鼻水でボロボロな子息三人は首を左右に必死に振っている。
46
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
私の物を奪っていく妹がダメになる話
七辻ゆゆ
ファンタジー
私は将来の公爵夫人として厳しく躾けられ、妹はひたすら甘やかされて育った。
立派な公爵夫人になるために、妹には優しくして、なんでも譲ってあげなさい。その結果、私は着るものがないし、妹はそのヤバさがクラスに知れ渡っている。
そして、彼はいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたとの婚約を破棄するっ!」
王都、社交シーズン終わりの王宮主催の舞踏会。
その会場に王太子のよく通る声が響きわたった。
王太子は婚約者がいかに不出来かを滔々と述べ立てて、だから自分には、将来の王妃には相応しくないと彼女を断罪する。そして心当たりがあり過ぎる彼女は特に反論もしない。
だが自分の代わりに婚約すると王太子が告げた人物を見て唖然とする。
なぜならば、その令嬢は⸺!?
◆例によって思いつきの即興作品です。
そしてちょこっとだけ闇が見えます(爆)。
恋愛要素が薄いのでファンタジージャンルで。本当はファンタジー要素も薄いけど。
◆婚約破棄する王子があり得ないほどおバカに描かれることが多いので、ちょっと理由をひねってみました。
約6500字、3話構成で投稿します。
◆つい過去作品と類似したタイトル付けてしまいましたが、直接の関係はありません。
◆この作品は小説家になろうでも公開しています。
【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた
月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」
高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。
この婚約破棄は数十分前に知ったこと。
きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ!
「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」
だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。
「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」
「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」
「憎いねこの色男!」
ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。
「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」
「女泣かせたぁこのことだね!」
「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」
「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」
さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。
設定はふわっと。
『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる