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宰相が一息つくと、国王陛下が再び口を開く。
「試験と面接の前にまずは申請も不受理がありえる。普段の素行によっては申請を受理せぬこととする」
会場中が息を詰めた。また宰相が引き継ぐ。
「国王陛下の指示の下、現在すでに素行調査が行われております。
ですが、いつでもどこでも生真面目であれというわけではございませんよ。それでは堅苦しくなってしまいますから。
目に余るような行動をなさらないかという程度の調査です」
一同はホッとした。落ち度のない人間などいないのだから。
「学園からそやつらの素行の悪さが報告されておった。冤罪を被せるためにそやつらが自作自演していたことはその一部だ。調査官にとって目に余るものだったゆえの報告だ。
ワシが冤罪であることを知っていたのはそういうわけだ」
『なるほど』と首肯する者が多数いた。
「つまり、彼らが後継者申請してきても受理されることはなかったと思われます」
宰相の生真面目な顔が嘘ではないと語っている。
「ここに集いし子供らは長子が大半であろう。これまでは何がなくとも後継者であると言われていたやもしれぬ。だが、これからは本人の努力なくして後継者にはなりえぬ。
とはいえ、試験を受ける権利を持てるのは当然長子が早い。つまりはお前たちは後継者となる可能性が高いということなのだ。しっかりと精進いたせ」
「「「はいっ!」」」
若々しい声が轟いた。
国王陛下が立ち上がる。会場中が姿勢を正し聞く姿勢を強くした。
「よいかっ! ここ数年、領地の状況に胡座をかき贅沢をすることだけが貴族であるかの如く行動をしている家がいくつも見られる。
知識を持ち民を導けなければ貴族である意味はない。心せよ」
「「「「はっ!!」」」」
皆が頭を下げて了承の意を伝えた。国王陛下が退出しようとする。
「陛下! お待ち下さい」
国王陛下を引き止めたのは騎士団長である。
「いかがいたした?」
いつでも礼節を弁え厳格な男である騎士団長がこのような形で声を出すことは珍しい。それを理解している国王陛下は、『何か大切な用件があるのだろう』と眉を寄せることなくすぐに答えた。
「お呼び止めいたし、申し訳ございません。陛下のご指示を仰ぎたく、お声掛けさせていただきました」
「お主の忠義はわかっておる。気にするな。して、いかがいたした?」
「はっ!」
騎士団長は軽く頭を下げたまま口上する。
「高位貴族のご令嬢を罠にはめ、第三王子殿下の妃を狙い、さらにはその女の愛人になろうなどと!」
「「「ちがっ!!」」」
三人の青年たちが否定しようと口を開くがすぐに兵士に床へ押さえつけられた。
騎士団長は青年たちには一瞥も与えない。
「第三王子殿下を操り、裏から国を牛耳ろうとした疑いがございます。国家転覆罪、国家反逆罪であることも踏まえ、彼らの身を我々騎士団預かりとさせていただきたいのです」
「なるほど」
国王陛下は納得だと首肯する。青年たちは予想もしていない方向に向かっていることに抗うこともできず涙を垂れ流していた。
「少なくとも王族たる第三王子殿下を欺瞞し失墜させたことは明白であります。これは王家にあだなす行為でしょう」
「そうか。ワシにはそこまで考えが至らなかった。さすがに国の治安を守る要の騎士団だ。その長たるお主の意見は頼りになるものだ」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「うむ」
「「「ちぎゃいまひゅ……ちぎゃいまひゅ……」」」
涙と鼻水でボロボロな子息三人は首を左右に必死に振っている。
「試験と面接の前にまずは申請も不受理がありえる。普段の素行によっては申請を受理せぬこととする」
会場中が息を詰めた。また宰相が引き継ぐ。
「国王陛下の指示の下、現在すでに素行調査が行われております。
ですが、いつでもどこでも生真面目であれというわけではございませんよ。それでは堅苦しくなってしまいますから。
目に余るような行動をなさらないかという程度の調査です」
一同はホッとした。落ち度のない人間などいないのだから。
「学園からそやつらの素行の悪さが報告されておった。冤罪を被せるためにそやつらが自作自演していたことはその一部だ。調査官にとって目に余るものだったゆえの報告だ。
ワシが冤罪であることを知っていたのはそういうわけだ」
『なるほど』と首肯する者が多数いた。
「つまり、彼らが後継者申請してきても受理されることはなかったと思われます」
宰相の生真面目な顔が嘘ではないと語っている。
「ここに集いし子供らは長子が大半であろう。これまでは何がなくとも後継者であると言われていたやもしれぬ。だが、これからは本人の努力なくして後継者にはなりえぬ。
とはいえ、試験を受ける権利を持てるのは当然長子が早い。つまりはお前たちは後継者となる可能性が高いということなのだ。しっかりと精進いたせ」
「「「はいっ!」」」
若々しい声が轟いた。
国王陛下が立ち上がる。会場中が姿勢を正し聞く姿勢を強くした。
「よいかっ! ここ数年、領地の状況に胡座をかき贅沢をすることだけが貴族であるかの如く行動をしている家がいくつも見られる。
知識を持ち民を導けなければ貴族である意味はない。心せよ」
「「「「はっ!!」」」」
皆が頭を下げて了承の意を伝えた。国王陛下が退出しようとする。
「陛下! お待ち下さい」
国王陛下を引き止めたのは騎士団長である。
「いかがいたした?」
いつでも礼節を弁え厳格な男である騎士団長がこのような形で声を出すことは珍しい。それを理解している国王陛下は、『何か大切な用件があるのだろう』と眉を寄せることなくすぐに答えた。
「お呼び止めいたし、申し訳ございません。陛下のご指示を仰ぎたく、お声掛けさせていただきました」
「お主の忠義はわかっておる。気にするな。して、いかがいたした?」
「はっ!」
騎士団長は軽く頭を下げたまま口上する。
「高位貴族のご令嬢を罠にはめ、第三王子殿下の妃を狙い、さらにはその女の愛人になろうなどと!」
「「「ちがっ!!」」」
三人の青年たちが否定しようと口を開くがすぐに兵士に床へ押さえつけられた。
騎士団長は青年たちには一瞥も与えない。
「第三王子殿下を操り、裏から国を牛耳ろうとした疑いがございます。国家転覆罪、国家反逆罪であることも踏まえ、彼らの身を我々騎士団預かりとさせていただきたいのです」
「なるほど」
国王陛下は納得だと首肯する。青年たちは予想もしていない方向に向かっていることに抗うこともできず涙を垂れ流していた。
「少なくとも王族たる第三王子殿下を欺瞞し失墜させたことは明白であります。これは王家にあだなす行為でしょう」
「そうか。ワシにはそこまで考えが至らなかった。さすがに国の治安を守る要の騎士団だ。その長たるお主の意見は頼りになるものだ」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「うむ」
「「「ちぎゃいまひゅ……ちぎゃいまひゅ……」」」
涙と鼻水でボロボロな子息三人は首を左右に必死に振っている。
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