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「愚息を廃嫡いたしますゆえ、温情をいただけませんでしょうか?!」
「「我が家も廃嫡いたしますっ!」」
顔を青ざめさせた紳士たちが壇上の豪奢な椅子に座る御仁に必死で許しを請う。
「それに何の意味があるのだ?」
御仁は紳士たちを冷たく見下ろした。
〰️ 〰️ 〰️
ナハガル王国の王城での集いの席でその騒動は起こった。
眉目秀麗な青年たちがか細く可憐な少女を庇いながら麗しき少女たちに代わる代わる罵声を浴びせたのだ。
真っ昼間の王城の大ホールには国中の貴族の領主が集められていた。そして妻帯者はその妻と、さらに子供が十五歳以上であればその家の長子と後継ぎと目される者がこの場にいる。
少女を虐めていたと散々喚き散らした四人の青年たち。そのうち一人が罵声を受けていた少女たちの一人を指さした。
「お前のような性格が醜悪な女と婚姻などできるものかっ! 婚約解消だっ!」
一人がそう言うと他の三人の青年たちもそれぞれに大声で婚約解消を宣言した。
少女たちの瞳は憂いを含むことはなく細められ扇に隠された口元は真一文字に結ばれており、なんとか怒りの声を出さないでいた。そのことを褒めたいほどである。
「相わかった。ワシの権限においてその婚約解消を認めよう」
会場に気持ちよく響くバリトンボイスが少女たちの代わりに答えた。
会場中がその声の主に驚愕し、急いで最礼をした。皆、頭を下げながらもその声の主の動きを敏感に感じている。
声の主は、壇上に用意されていた豪華な椅子に腰掛けた。
「皆の者、面を上げよ」
頭を上げると同時に三組の夫妻が前に出てきて再び最礼する。
「陛下へお話しさせていただくことをお許しください」
三組の内の一人の男性が代表して声を出した。
豪華な椅子に座る声の主はこの国ナハガル王国の国王陛下である。皆は、普段はファンファーレとともに入場してくる国王陛下が突然会場入りしていたことに驚いていたのだ。
「メルド公爵か。よい。申してみよ」
「我が家は婚約解消を望んではおりません」
公爵と呼ばれた男は頭を下げたまま発言した。
「後ろのそなたたちもか?」
「「はい!」」
真剣な眼差しで返事をしたのは侯爵家の当主二人である。
それを聞いた国王陛下はあからさまに大きなため息をついた。
「そうか。だが、覆ることはない。
いや、覆してやろう。婚約解消は無しだ」
三組の夫婦は肩を撫で下ろす。
「四組の婚約は、男どもの有責により婚約破棄とする」
国王陛下は感情がないような冷静な物言いであった。
「「「えっ!!??」」」
「男どもの婚約解消嘆願は却下。令嬢たちの家から婚約破棄の嘆願が出ておるゆえ、その嘆願を受理する」
三組の夫妻はバッと顔を上げてあんぐりと口を開けた。この三組の夫妻は、婚約解消を言い渡した青年たちの両親である。
国王陛下の独断による婚約解消受理だと思っていた夫妻たちは、婚約相手の家も承諾していることに驚きと悲観を隠せない。
「よいか、皆もよく聞け。この婚約破棄において令嬢たちに責任はない。
皆の前で宣言できたことは誠に僥倖だ」
国王陛下の高らかな宣言に令嬢四人が微笑みあう。
当主たちは死んだような目になり、夫人たちはその場で座り込んだ。いつもなら駆けつけるメイドたちもこの場にはおらず、他家の者が国王陛下を無視して助けにいくこともない。
目を泳がせていた公爵が息子を視界に入れ先程の騒ぎを思い出していた。
「し、しかし……。先程の話を鑑みるに、ご令嬢方にも何やら瑕疵があるようですが……?」
確かに息子たちがご令嬢の瑕疵を訴えていたようだ程度に把握している。茶番だと思い込み、そろそろ声を掛けねばと近づいたタイミングで婚約解消宣言と国王陛下の登場だった。
「あぁ~~ それなぁ~」
国王陛下は肘掛けにある右肘を曲げ右手に顎を乗せ、侮蔑の眼差しを青年たちに向ける。
「「我が家も廃嫡いたしますっ!」」
顔を青ざめさせた紳士たちが壇上の豪奢な椅子に座る御仁に必死で許しを請う。
「それに何の意味があるのだ?」
御仁は紳士たちを冷たく見下ろした。
〰️ 〰️ 〰️
ナハガル王国の王城での集いの席でその騒動は起こった。
眉目秀麗な青年たちがか細く可憐な少女を庇いながら麗しき少女たちに代わる代わる罵声を浴びせたのだ。
真っ昼間の王城の大ホールには国中の貴族の領主が集められていた。そして妻帯者はその妻と、さらに子供が十五歳以上であればその家の長子と後継ぎと目される者がこの場にいる。
少女を虐めていたと散々喚き散らした四人の青年たち。そのうち一人が罵声を受けていた少女たちの一人を指さした。
「お前のような性格が醜悪な女と婚姻などできるものかっ! 婚約解消だっ!」
一人がそう言うと他の三人の青年たちもそれぞれに大声で婚約解消を宣言した。
少女たちの瞳は憂いを含むことはなく細められ扇に隠された口元は真一文字に結ばれており、なんとか怒りの声を出さないでいた。そのことを褒めたいほどである。
「相わかった。ワシの権限においてその婚約解消を認めよう」
会場に気持ちよく響くバリトンボイスが少女たちの代わりに答えた。
会場中がその声の主に驚愕し、急いで最礼をした。皆、頭を下げながらもその声の主の動きを敏感に感じている。
声の主は、壇上に用意されていた豪華な椅子に腰掛けた。
「皆の者、面を上げよ」
頭を上げると同時に三組の夫妻が前に出てきて再び最礼する。
「陛下へお話しさせていただくことをお許しください」
三組の内の一人の男性が代表して声を出した。
豪華な椅子に座る声の主はこの国ナハガル王国の国王陛下である。皆は、普段はファンファーレとともに入場してくる国王陛下が突然会場入りしていたことに驚いていたのだ。
「メルド公爵か。よい。申してみよ」
「我が家は婚約解消を望んではおりません」
公爵と呼ばれた男は頭を下げたまま発言した。
「後ろのそなたたちもか?」
「「はい!」」
真剣な眼差しで返事をしたのは侯爵家の当主二人である。
それを聞いた国王陛下はあからさまに大きなため息をついた。
「そうか。だが、覆ることはない。
いや、覆してやろう。婚約解消は無しだ」
三組の夫婦は肩を撫で下ろす。
「四組の婚約は、男どもの有責により婚約破棄とする」
国王陛下は感情がないような冷静な物言いであった。
「「「えっ!!??」」」
「男どもの婚約解消嘆願は却下。令嬢たちの家から婚約破棄の嘆願が出ておるゆえ、その嘆願を受理する」
三組の夫妻はバッと顔を上げてあんぐりと口を開けた。この三組の夫妻は、婚約解消を言い渡した青年たちの両親である。
国王陛下の独断による婚約解消受理だと思っていた夫妻たちは、婚約相手の家も承諾していることに驚きと悲観を隠せない。
「よいか、皆もよく聞け。この婚約破棄において令嬢たちに責任はない。
皆の前で宣言できたことは誠に僥倖だ」
国王陛下の高らかな宣言に令嬢四人が微笑みあう。
当主たちは死んだような目になり、夫人たちはその場で座り込んだ。いつもなら駆けつけるメイドたちもこの場にはおらず、他家の者が国王陛下を無視して助けにいくこともない。
目を泳がせていた公爵が息子を視界に入れ先程の騒ぎを思い出していた。
「し、しかし……。先程の話を鑑みるに、ご令嬢方にも何やら瑕疵があるようですが……?」
確かに息子たちがご令嬢の瑕疵を訴えていたようだ程度に把握している。茶番だと思い込み、そろそろ声を掛けねばと近づいたタイミングで婚約解消宣言と国王陛下の登場だった。
「あぁ~~ それなぁ~」
国王陛下は肘掛けにある右肘を曲げ右手に顎を乗せ、侮蔑の眼差しを青年たちに向ける。
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