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シュケーナ家当主は目を細めて軽侮の意を表した。
「さらにそこで毎日のように商人を呼んで何かしら買い物なさっておいでだと聞いておりますよ。
国王陛下。今おめしになっている真新しいジャケットが大変お似合いですね。
王妃陛下。そのドレスもそのネックレスもとても豪華で素晴らしいものだ。新しいデザインですか?」
シュケーナ家の執事二号がキャビに書類を渡し、キャビがシュケーナ家当主にそれを渡す。
「ほぉ。この半年で、国王陛下がジャケットを含めて服を五十着。指輪を三十個。腕輪を三十個。これはこれは。
いったいいくつお体をお持ちなのです?」
「うるさいっ! 王としての貫禄のためだっ!」
国王陛下が鬼の形相で喚いた。
シュケーナ家当主は次の紙を見た。
「うわぁ。王妃陛下は国王陛下より上ですかぁ。ドレスが百着。イヤリングとネックレスのセットが五十組。指輪と腕輪のセットが五十組。扇が二十本に、ティアラが十個。
お店でも開けそうですね」
「女には身だしなみが大切なのよっ!」
両陛下は反省も謝罪の気持ちもないようで、怒りで顔を赤くしているだけだった。
「この百倍は王宮に保管してありますでしょうに」
シュケーナ家当主は呆れると両手を上げる。
「イエット公爵」
急にシュケーナ家当主に話を振られたイエット公爵は肩を引くつかせる。
「な、何かな?」
「イエット公爵からご覧になって、私は貫禄もなく身だしなみも整っておりませんか?」
「いやいやいや! いつもの通り、佇まいも素晴らしく頼れる姿で、若者たちも憧れると思いますよ」
シュケーナ家当主は耳の後ろをポリポリとかいた。
「そんなぁ。そこまで褒めていただくつもりはなかったのですがね。アハハ」
「なんだっ!? 容姿自慢かっ!」
おデブさんの国王陛下はツバを飛ばした。
「いえ、違いますよ。
私のこのジャケットは傷んだ所を仕立て直して使っておりまして、すでに十年着ております。
妻の節約とセンスが光る一着です。襟の刺繍を入れ直したりポケットのリボンの色を変えたり。襟が切れてしまったときは流石に襟を交換しました。袖口が切れた時にはこうして二重袖にしてくれて、かえってカッコよくなりました。
私はジャケットは三着しか持っていません。ウエストコートも三着。どれも十年たっています。
スラックスは五本。スラックスだけは繕いができない場合がありますので三年ほどで買い替えますがね。
そういうものを着ていても、みすぼらしいとは思われていないようですよ。
貴金属は邪魔なのでつけません」
皆感心のため息を漏らす。
「息子も私と同じくらいしか持ち合わせておりません。妻も娘も季節ごとのドレスを五着ずつ。
幼い頃はすぐに成長しますので、息子も娘も三着ほどしか持っていないようにしましたが、それらをほどいて保管し、ドレスや紳士ジャケットのリメイクに使っています。
貴金属は印象に残してしまうと『また同じものか』と王妃陛下に嫌味を言われてしまうと言い、小ぶりなものばかりを選んでいます。二人合わせて十組ほどですかね。どうやら組み合わせが様々にできるようなデザインの物を買っているようです」
「何が言いたいのだっ!」
「ですから、新しい物を着たからといって貫禄にも手本となる身だしなみにも繋がらないということです。貴方方の服一着で何百袋の小麦粉が買えると思っているのですか?」
「そんなことは知らんっ!」
「それに、この飲食代は何です? ワインが五百本。フルーツにステーキ。毎日毎食十人前を作らせて食い散らかして残す? 本気ですか?」
「ワシらが残した物は使用人が食うだろう!」
「手をつけていないものは食べるでしょうね。でも、彼らは家畜ではないのですよ。お二人が一度でも手をつけたものは口にしないでしょう。つまりはほぼ廃棄です」
シュケーナ家当主は両陛下を睨んだ。
「さらにそこで毎日のように商人を呼んで何かしら買い物なさっておいでだと聞いておりますよ。
国王陛下。今おめしになっている真新しいジャケットが大変お似合いですね。
王妃陛下。そのドレスもそのネックレスもとても豪華で素晴らしいものだ。新しいデザインですか?」
シュケーナ家の執事二号がキャビに書類を渡し、キャビがシュケーナ家当主にそれを渡す。
「ほぉ。この半年で、国王陛下がジャケットを含めて服を五十着。指輪を三十個。腕輪を三十個。これはこれは。
いったいいくつお体をお持ちなのです?」
「うるさいっ! 王としての貫禄のためだっ!」
国王陛下が鬼の形相で喚いた。
シュケーナ家当主は次の紙を見た。
「うわぁ。王妃陛下は国王陛下より上ですかぁ。ドレスが百着。イヤリングとネックレスのセットが五十組。指輪と腕輪のセットが五十組。扇が二十本に、ティアラが十個。
お店でも開けそうですね」
「女には身だしなみが大切なのよっ!」
両陛下は反省も謝罪の気持ちもないようで、怒りで顔を赤くしているだけだった。
「この百倍は王宮に保管してありますでしょうに」
シュケーナ家当主は呆れると両手を上げる。
「イエット公爵」
急にシュケーナ家当主に話を振られたイエット公爵は肩を引くつかせる。
「な、何かな?」
「イエット公爵からご覧になって、私は貫禄もなく身だしなみも整っておりませんか?」
「いやいやいや! いつもの通り、佇まいも素晴らしく頼れる姿で、若者たちも憧れると思いますよ」
シュケーナ家当主は耳の後ろをポリポリとかいた。
「そんなぁ。そこまで褒めていただくつもりはなかったのですがね。アハハ」
「なんだっ!? 容姿自慢かっ!」
おデブさんの国王陛下はツバを飛ばした。
「いえ、違いますよ。
私のこのジャケットは傷んだ所を仕立て直して使っておりまして、すでに十年着ております。
妻の節約とセンスが光る一着です。襟の刺繍を入れ直したりポケットのリボンの色を変えたり。襟が切れてしまったときは流石に襟を交換しました。袖口が切れた時にはこうして二重袖にしてくれて、かえってカッコよくなりました。
私はジャケットは三着しか持っていません。ウエストコートも三着。どれも十年たっています。
スラックスは五本。スラックスだけは繕いができない場合がありますので三年ほどで買い替えますがね。
そういうものを着ていても、みすぼらしいとは思われていないようですよ。
貴金属は邪魔なのでつけません」
皆感心のため息を漏らす。
「息子も私と同じくらいしか持ち合わせておりません。妻も娘も季節ごとのドレスを五着ずつ。
幼い頃はすぐに成長しますので、息子も娘も三着ほどしか持っていないようにしましたが、それらをほどいて保管し、ドレスや紳士ジャケットのリメイクに使っています。
貴金属は印象に残してしまうと『また同じものか』と王妃陛下に嫌味を言われてしまうと言い、小ぶりなものばかりを選んでいます。二人合わせて十組ほどですかね。どうやら組み合わせが様々にできるようなデザインの物を買っているようです」
「何が言いたいのだっ!」
「ですから、新しい物を着たからといって貫禄にも手本となる身だしなみにも繋がらないということです。貴方方の服一着で何百袋の小麦粉が買えると思っているのですか?」
「そんなことは知らんっ!」
「それに、この飲食代は何です? ワインが五百本。フルーツにステーキ。毎日毎食十人前を作らせて食い散らかして残す? 本気ですか?」
「ワシらが残した物は使用人が食うだろう!」
「手をつけていないものは食べるでしょうね。でも、彼らは家畜ではないのですよ。お二人が一度でも手をつけたものは口にしないでしょう。つまりはほぼ廃棄です」
シュケーナ家当主は両陛下を睨んだ。
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