5 / 19
5
しおりを挟む
「我々から皆さんにお話がありまして、ずっと待っておりました」
そこにはティスナーとヨルスレードとエリドの婚約者とその父親が立っていた。
「ルワン公爵。いかがなさいましたか?」
ボイド公爵は理由がわらないようだ。
「それです! それです! 実はここにいる我々三家は平民となりました。私はすでに公爵ではありません」
「「「「はぁ?」」」」
「娘の卒業とともに平民となったのです。娘に卒業だけはさせてあげたかったのですよ。
平民の我々ですが、これまでの寄付金の金額のおかげで学園長様に入場許可をいただきました」
「そんな……それでは……まさか……」
「ええ。申し訳ありませんが、平民と貴族の婚姻を許されていないこの国では、娘たちの婚約は自然解消となります。ご了承ください」
三人の令嬢は華麗にカーテシーをする。
「なぜそのようなことになりましたの? ご相談いただければ手立てはあったかもしれませんのに……」
キオタス侯爵夫人は悲しげに呟いた。
「お金ですよ。領地を買っていただいたのです」
「そんなっ! 皆さんの領地は潤っているではありませんかっ!」
イエット公爵が大きな声を出す。
「娘の婚約者殿にお高いプレゼントを強請れましてなぁ。こちらからの一方通行なプレゼントであるにも関わらず高額な物を送れと言われ、その金額が大きくて」
ティスナーの元婚約者の父親ネヘイヤ家当主が説明した。
「一方通行などとは何かの間違いでは?! うちは定期的にご令嬢へのプレゼント代金を支払ってきたぞ」
イエット公爵は侮辱されたとばかりに声を荒げた。
「「「二年ほど何もいただいておりません」」」
イエット公爵家だけの問題だと思っていた二家は自分たちの息子の元婚約者もハモっていることに驚く。
「うちではないご令嬢へのプレゼントのお代金だったようですな」
ヨルスレードの元婚約者の父親ルワン家当主は半笑いだ。
「うちでの茶会も前々から準備をしているのに当日キャンセルが続きますと、ただの無駄となりますしね」
エリドの元婚約者の父親ミュリム家当主が首肯しながら言った。
「え!? エリドはそちらへ伺っていないのですか?」
「「「二年ほどいらしておりません」」」
これまた三人のご令嬢の声が揃う。
「だがっ! 観劇や博物館などへ赴いているではありませんか。チケット料金の請求書が届いていますよ」
ボイド公爵が問い詰める。
「「「二年ほど一緒の外出はしておりません」」」
男子生徒の親たちはパカンと口を開ける。そんな金額的には小さな話で家が傾くわけがないという事実より、息子が婚約者を蔑ろにしていたという事実の方が重い。
「それに、息子さんだけでなく、ご家族も婚姻を望んでいらっしゃらないようですし」
「何をおっしゃいますか。私は嫁いで来てくれることを楽しみにしておりましたよ」
ボイド公爵は悲しげに元婚約者のご令嬢を見た。ご令嬢はニッコリと笑う。
「五年前の婚約初期から、公爵夫人はわたくしの顔を見たくないと必ず玄関で追い返されましたが?」
「まさ、まさか……」
ボイド公爵は夫人の顔を見ると夫人は真っ青になって震えていた。
「私の妻は異国人ですからな。確かに娘の肌の色は少しばかり黄色みがかっています。
ですが、私にとって愛しい妻とそっくりな娘は目に入れても痛くない」
ルワン家当主は愛しげに娘の腰を抱いた。まだまだ少数ではあるが、この国も異国人を娶る者が増えてきている。政略結婚として隣国の貴族と婚姻している者もいる。
そこにはティスナーとヨルスレードとエリドの婚約者とその父親が立っていた。
「ルワン公爵。いかがなさいましたか?」
ボイド公爵は理由がわらないようだ。
「それです! それです! 実はここにいる我々三家は平民となりました。私はすでに公爵ではありません」
「「「「はぁ?」」」」
「娘の卒業とともに平民となったのです。娘に卒業だけはさせてあげたかったのですよ。
平民の我々ですが、これまでの寄付金の金額のおかげで学園長様に入場許可をいただきました」
「そんな……それでは……まさか……」
「ええ。申し訳ありませんが、平民と貴族の婚姻を許されていないこの国では、娘たちの婚約は自然解消となります。ご了承ください」
三人の令嬢は華麗にカーテシーをする。
「なぜそのようなことになりましたの? ご相談いただければ手立てはあったかもしれませんのに……」
キオタス侯爵夫人は悲しげに呟いた。
「お金ですよ。領地を買っていただいたのです」
「そんなっ! 皆さんの領地は潤っているではありませんかっ!」
イエット公爵が大きな声を出す。
「娘の婚約者殿にお高いプレゼントを強請れましてなぁ。こちらからの一方通行なプレゼントであるにも関わらず高額な物を送れと言われ、その金額が大きくて」
ティスナーの元婚約者の父親ネヘイヤ家当主が説明した。
「一方通行などとは何かの間違いでは?! うちは定期的にご令嬢へのプレゼント代金を支払ってきたぞ」
イエット公爵は侮辱されたとばかりに声を荒げた。
「「「二年ほど何もいただいておりません」」」
イエット公爵家だけの問題だと思っていた二家は自分たちの息子の元婚約者もハモっていることに驚く。
「うちではないご令嬢へのプレゼントのお代金だったようですな」
ヨルスレードの元婚約者の父親ルワン家当主は半笑いだ。
「うちでの茶会も前々から準備をしているのに当日キャンセルが続きますと、ただの無駄となりますしね」
エリドの元婚約者の父親ミュリム家当主が首肯しながら言った。
「え!? エリドはそちらへ伺っていないのですか?」
「「「二年ほどいらしておりません」」」
これまた三人のご令嬢の声が揃う。
「だがっ! 観劇や博物館などへ赴いているではありませんか。チケット料金の請求書が届いていますよ」
ボイド公爵が問い詰める。
「「「二年ほど一緒の外出はしておりません」」」
男子生徒の親たちはパカンと口を開ける。そんな金額的には小さな話で家が傾くわけがないという事実より、息子が婚約者を蔑ろにしていたという事実の方が重い。
「それに、息子さんだけでなく、ご家族も婚姻を望んでいらっしゃらないようですし」
「何をおっしゃいますか。私は嫁いで来てくれることを楽しみにしておりましたよ」
ボイド公爵は悲しげに元婚約者のご令嬢を見た。ご令嬢はニッコリと笑う。
「五年前の婚約初期から、公爵夫人はわたくしの顔を見たくないと必ず玄関で追い返されましたが?」
「まさ、まさか……」
ボイド公爵は夫人の顔を見ると夫人は真っ青になって震えていた。
「私の妻は異国人ですからな。確かに娘の肌の色は少しばかり黄色みがかっています。
ですが、私にとって愛しい妻とそっくりな娘は目に入れても痛くない」
ルワン家当主は愛しげに娘の腰を抱いた。まだまだ少数ではあるが、この国も異国人を娶る者が増えてきている。政略結婚として隣国の貴族と婚姻している者もいる。
63
お気に入りに追加
677
あなたにおすすめの小説
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
努力をしらぬもの、ゆえに婚約破棄であったとある記録
志位斗 茂家波
ファンタジー
それは起きてしまった。
相手の努力を知らぬ愚か者の手によって。
だが、どうすることもできず、ここに記すのみ。
……よくある婚約破棄物。大まかに分かりやすく、テンプレ形式です。興味があればぜひどうぞ。
破滅を逃れようとした、悪役令嬢のお話
志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥その恋愛ゲームは、一見するとただの乙女ゲームの一つだろう。
けれども、何故かどの選択肢を選んだとしても、確実に悪役令嬢が破滅する。
そんなものに、何故かわたくしは転生してしまい‥‥‥いえ、絶望するのは早いでしょう。
そう、頑張れば多分、どうにかできますもの!!
これは、とある悪役令嬢に転生してしまった少女の話である‥‥‥‥
―――――――
(なお、この小説自体は作者の作品「帰らずの森のある騒動記」中の「とある悪魔の記録Ver.2その1~6」を大幅に簡略したうえで、この悪役令嬢視点でお送りしています。細かい流れなどを見たいのであれば、どちらもどうぞ)
ネット小説の悪役令嬢になってしまった……
菜花
ファンタジー
赤塚千冬は事故に巻き込まれて転生してしまう。けれど転生した先は直前まで読んでいた小説の悪役令嬢セレスティアだった……! 選択式の小説だったけど、ヒロインの子がセレスティアを選ばない限り死ぬまで幽閉され続けるキャラじゃない!いや待てよ、まだ本編は始まってない。始まる前に幽閉フラグを折ればいいのよ――!
冷遇された聖女の結末のセルフパロのようなものです。
詳しくは該当作を見てね!
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる