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45 第一王子「姉は協力してくれたぞ」
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ラオルドの王位についてや新公爵についての悩みを聞いたムーガは年齢の合うヴィエナを作戦の肝である恋人役に抜擢しピンク頭の仮想男爵家の令嬢にした。ピンクさんの完成である。
ドリテンとソナハスが調べればすぐに怪しいとわかるほどピンクさんの爵位はメッキだったのだ。もし二人が調査をしてメッキだとバレた場合には、ラオルドがそんな女に騙された愚王子として継承権を放棄し田舎に引っ込む予定でいた。もちろん、二人にはそれなりの役職を与えて。
実際に優秀である元側近たちはヴィエナの出自が怪しいので離れるべきだという手紙を寄越している。
ドリテンとソナハスはラオルドの期待には答えられずエーティルの公爵家で再教育されることになるのだが、それは後日のことである。
ピンクさんの送致は早々に決定しそれに合わせてその翌日にはラオルドも城を出た。
そしてムーガがラオルドが使っていた家屋をヴィエナの隠れ家にするつもりでいたところにまさかラオルドがヴィエナを迎えにやってきたのだ。
ラオルドとヴィエナにムーガが色恋に疎いことを指摘されたじろいでいたところにムーガへさらなる爆弾が落とされた。
「リタは俺たちのことに積極的に協力してくれたぞ。
あはははは!」
「えー! あれを協力的って言うんですかぁ?」
ヴィエナは目をキョトキョトさせて驚いたがまた知らぬ話にムーガは硬直したままであった。
「俺を強くしようというのは協力以外ないじゃないか。リタが協力したのはエーティル嬢の図らいも大きいのだろうな」
主の名前が出て目をむくムーガの様子に吹き出したラオルドは過日のエーティルとの茶会を思い出していた。
「それに、俺の想いがヴィーに伝わったのもリタのおかげだしな。俺はカッコ悪いけど」
ラオルドが照れ隠しに頬をかく。
「ラオはカッコいいです!」
ムーガの放心を他所に二人のラブラブモードは全開だ。
〰️ 〰️ 〰️
エーティルとラオルドの茶会の席はピンクさんとラオルドが親しくなって数ヶ月しても続けられていた。表面上はラオルドは王位を諦めていないことにしておくためである。
「公爵様は未だにいらしているようですわね。強要や嫌味などで殿下は傷ついていらっしゃいませんか?」
ノンバルダがラオルドの部屋に突撃して暴言に近い苦言の数々を吐いていたことはエーティルの耳にも入っていた。
「ふふふ。それなら一発で解消しました。これも作戦のおかげです」
「まあ。そうでしたの」
「ええ。ウェルシェの噂を聞きつけてすぐさま乗り込んで来ました。その時の荒れ具合は物凄くて、ノンバルダに怪我を負わせずに宥められるかと不安になったのですが、ムーガから助言された魔法の一言で見事解決です」
「何をおっしゃいましたの?」
「『ウェルシェを側妃にするつもりだ』」
ラオルドは胸を張って役者のように振る舞った。
「うふふ。なるほど」
「するとノンバルダは『男はそれくらいでないとな』なんて言っておりました」
口の右端だけを上げて目には優越感を乗せた表情を作ったラオルドはノンバルダのマネのつもりなのだろう。
「うふふ。さすがに従兄弟殿。雰囲気は出ておりますわね。
確かに側妃を持たれるということは王位に着くと同意ですもの。喜ばれるはずだわ」
エーティルが笑みを深めラオルドは首を傾げた。
「ですが、殿下はあの子を本当に伴侶になさるおつもりなのではありませんの?」
ラオルドが傾げた首のままで瞠目したことでエーティルは本当に楽しそうに笑った。
ラオルドは恥ずかしさと罪悪感で顔を赤くしてシドロモドロになる。
「あ……エーティル嬢……俺は……そのぉ……。
どうしてわかったのですか?」
『恋する二人が見つめ合う姿を見ればすぐにわかる』とは言われているが、作戦とはいえラオルドとピンクさんが戯れているところにエーティルが現れるわけがない。
エーティルはそれを目撃すれば立場上無視をするわけにはいかないので、嫌味を言うか嫉妬をするか、いや、無視をしても何かしらの醜聞になりかねない。
そんな作戦をムーガが立てるわけがない。
ドリテンとソナハスが調べればすぐに怪しいとわかるほどピンクさんの爵位はメッキだったのだ。もし二人が調査をしてメッキだとバレた場合には、ラオルドがそんな女に騙された愚王子として継承権を放棄し田舎に引っ込む予定でいた。もちろん、二人にはそれなりの役職を与えて。
実際に優秀である元側近たちはヴィエナの出自が怪しいので離れるべきだという手紙を寄越している。
ドリテンとソナハスはラオルドの期待には答えられずエーティルの公爵家で再教育されることになるのだが、それは後日のことである。
ピンクさんの送致は早々に決定しそれに合わせてその翌日にはラオルドも城を出た。
そしてムーガがラオルドが使っていた家屋をヴィエナの隠れ家にするつもりでいたところにまさかラオルドがヴィエナを迎えにやってきたのだ。
ラオルドとヴィエナにムーガが色恋に疎いことを指摘されたじろいでいたところにムーガへさらなる爆弾が落とされた。
「リタは俺たちのことに積極的に協力してくれたぞ。
あはははは!」
「えー! あれを協力的って言うんですかぁ?」
ヴィエナは目をキョトキョトさせて驚いたがまた知らぬ話にムーガは硬直したままであった。
「俺を強くしようというのは協力以外ないじゃないか。リタが協力したのはエーティル嬢の図らいも大きいのだろうな」
主の名前が出て目をむくムーガの様子に吹き出したラオルドは過日のエーティルとの茶会を思い出していた。
「それに、俺の想いがヴィーに伝わったのもリタのおかげだしな。俺はカッコ悪いけど」
ラオルドが照れ隠しに頬をかく。
「ラオはカッコいいです!」
ムーガの放心を他所に二人のラブラブモードは全開だ。
〰️ 〰️ 〰️
エーティルとラオルドの茶会の席はピンクさんとラオルドが親しくなって数ヶ月しても続けられていた。表面上はラオルドは王位を諦めていないことにしておくためである。
「公爵様は未だにいらしているようですわね。強要や嫌味などで殿下は傷ついていらっしゃいませんか?」
ノンバルダがラオルドの部屋に突撃して暴言に近い苦言の数々を吐いていたことはエーティルの耳にも入っていた。
「ふふふ。それなら一発で解消しました。これも作戦のおかげです」
「まあ。そうでしたの」
「ええ。ウェルシェの噂を聞きつけてすぐさま乗り込んで来ました。その時の荒れ具合は物凄くて、ノンバルダに怪我を負わせずに宥められるかと不安になったのですが、ムーガから助言された魔法の一言で見事解決です」
「何をおっしゃいましたの?」
「『ウェルシェを側妃にするつもりだ』」
ラオルドは胸を張って役者のように振る舞った。
「うふふ。なるほど」
「するとノンバルダは『男はそれくらいでないとな』なんて言っておりました」
口の右端だけを上げて目には優越感を乗せた表情を作ったラオルドはノンバルダのマネのつもりなのだろう。
「うふふ。さすがに従兄弟殿。雰囲気は出ておりますわね。
確かに側妃を持たれるということは王位に着くと同意ですもの。喜ばれるはずだわ」
エーティルが笑みを深めラオルドは首を傾げた。
「ですが、殿下はあの子を本当に伴侶になさるおつもりなのではありませんの?」
ラオルドが傾げた首のままで瞠目したことでエーティルは本当に楽しそうに笑った。
ラオルドは恥ずかしさと罪悪感で顔を赤くしてシドロモドロになる。
「あ……エーティル嬢……俺は……そのぉ……。
どうしてわかったのですか?」
『恋する二人が見つめ合う姿を見ればすぐにわかる』とは言われているが、作戦とはいえラオルドとピンクさんが戯れているところにエーティルが現れるわけがない。
エーティルはそれを目撃すれば立場上無視をするわけにはいかないので、嫌味を言うか嫉妬をするか、いや、無視をしても何かしらの醜聞になりかねない。
そんな作戦をムーガが立てるわけがない。
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