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14 公爵令嬢「お労しいわ」
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団長はチラリと家族の様子を見た。
「三日だけやる。三日後の朝、俺の仲間の最後のメンバーがこの街を出る。本気ならそいつらと王都に来い。まずは心配性な家族と話をしな」
団長を始めとした数名はシスターを連れて今日にも街を出ると男爵に説明していた。商団の残りはこの街での商談を終わらせてから出立する予定になっているそうだ。
家族を泣き落としたリタは三日後その街を出た。
その商団は商団のフリをした一個部隊で団長と思しき男は当時の第三師団第二部隊隊長であったムーガである。商団のフリをしているのは国を巡回して貴族の不正調査や野盗討伐などを行うためである。第三師団第二部隊はそういう分野を得意としている。
リタは男の子たちに負けていないと豪語するだけあって運動神経もよく戦闘センスも抜群であった。女性故に得意とするものは暗器や関節技や相手の力を利用する体術であるが剣や槍もそこそこ強い。
隊員たちはリタの変幻自在な体術についていけずなかなか勝てない。特に貴族出身の者たちは幼い頃から剣や槍を主に訓練してきているので新人のケイルやヨハンでは敵うわけがないのだ。
リタはそのシスターの事件で男は金で無理矢理女をものにしようとする獣だという考えが根底に染み着いてしまい男を好むことはできなくなっていた。仲間たちのことは男と見なしていないので問題なく交流することはできる。
そして優しく聡明なエーティルに幼き頃に大好きだったシスターを重ねている自覚もあるがエーティルを知れば知るほどエーティルにハマってしまった。ムーガでさえリタに配置換えとは言えないと思っている。
そんなリタであるのでエーティルのためにカスタードプリンを確保に走ることなど当然すぎて朝飯前である。
プディングカップのままカスタードプリンが置かれている美しい皿をお茶を淹れたメイドがエーティルの前に置いた。
本来高位貴族に出すのならカップから皿にあけフルーツやクリームを飾ったりするものだがカラメルソースとの絶妙なハーモニーを楽しみたいエーティルはカップのまま食べることを好んでいる。
お皿を持ち上げゆっくりとスプーンを差し入れる。
「んーーー! 美味しい! どんなテクニックなのかしら? 我が家の料理長ではこの味は出ないのよ」
「王城の料理長も極秘にしていてこのカスタードプリンを担当する料理人と二人だけしか知らないそうなのですよ」
メイドがエーティルの嬉しそうな顔に思わず綻んで話をする。
そこへサナが入室してきた。
「どうだったの?」
エーティルがサナに報告を促せばサナは一度頭を下げて挨拶をして報告を始めた。
「随分と落ち着きを取り戻し、取り戻しすぎて父親であるご当主との対面を希望しております」
サナはムーガとともに側近二人の様子を見に行っていた。
「それが叶うことはないでしょうね」
「はい。ムーガ様がそれも踏まえ国王陛下にご報告へ赴いておられます」
サナはリタとは違いメイドでありご令嬢であるという口調である。
サナは戦闘を得意とする子爵家の一員である。自我が目覚める前から戦闘に関する英才教育を受け王家に仇なす者たちの排除を決まり事として育ってきた。血筋的な才能はもちろん持っているが努力も桁外れだ。つまり戦闘においてエリート中のエリートだ。
姉は現在の王妃陛下の専属護衛を務めておりサナは未来の王妃陛下の専属護衛になる気満々である。
エーティルはこの一族の王家への貢献と忠誠心を心から信頼している。
「そう。ムーガのことだから父親たちの身柄拘束と尋問の許可をもらうつもりなのかもしれないわね」
「はい。国王陛下のご許可をいただく前から部隊の編成命令を出しておりました」
「国王陛下も頷く以外に無いわね。ラオルド第一王子殿下のことであるから心労もおありになられるでしょうし、お労しいわ」
「問題解決に向かったことはいつかご心労を和らげるものと存じます」
「そうね。そうなってほしいわね」
エーティルは国王陛下のお顔を浮かべ悲しげに微笑した。
「三日だけやる。三日後の朝、俺の仲間の最後のメンバーがこの街を出る。本気ならそいつらと王都に来い。まずは心配性な家族と話をしな」
団長を始めとした数名はシスターを連れて今日にも街を出ると男爵に説明していた。商団の残りはこの街での商談を終わらせてから出立する予定になっているそうだ。
家族を泣き落としたリタは三日後その街を出た。
その商団は商団のフリをした一個部隊で団長と思しき男は当時の第三師団第二部隊隊長であったムーガである。商団のフリをしているのは国を巡回して貴族の不正調査や野盗討伐などを行うためである。第三師団第二部隊はそういう分野を得意としている。
リタは男の子たちに負けていないと豪語するだけあって運動神経もよく戦闘センスも抜群であった。女性故に得意とするものは暗器や関節技や相手の力を利用する体術であるが剣や槍もそこそこ強い。
隊員たちはリタの変幻自在な体術についていけずなかなか勝てない。特に貴族出身の者たちは幼い頃から剣や槍を主に訓練してきているので新人のケイルやヨハンでは敵うわけがないのだ。
リタはそのシスターの事件で男は金で無理矢理女をものにしようとする獣だという考えが根底に染み着いてしまい男を好むことはできなくなっていた。仲間たちのことは男と見なしていないので問題なく交流することはできる。
そして優しく聡明なエーティルに幼き頃に大好きだったシスターを重ねている自覚もあるがエーティルを知れば知るほどエーティルにハマってしまった。ムーガでさえリタに配置換えとは言えないと思っている。
そんなリタであるのでエーティルのためにカスタードプリンを確保に走ることなど当然すぎて朝飯前である。
プディングカップのままカスタードプリンが置かれている美しい皿をお茶を淹れたメイドがエーティルの前に置いた。
本来高位貴族に出すのならカップから皿にあけフルーツやクリームを飾ったりするものだがカラメルソースとの絶妙なハーモニーを楽しみたいエーティルはカップのまま食べることを好んでいる。
お皿を持ち上げゆっくりとスプーンを差し入れる。
「んーーー! 美味しい! どんなテクニックなのかしら? 我が家の料理長ではこの味は出ないのよ」
「王城の料理長も極秘にしていてこのカスタードプリンを担当する料理人と二人だけしか知らないそうなのですよ」
メイドがエーティルの嬉しそうな顔に思わず綻んで話をする。
そこへサナが入室してきた。
「どうだったの?」
エーティルがサナに報告を促せばサナは一度頭を下げて挨拶をして報告を始めた。
「随分と落ち着きを取り戻し、取り戻しすぎて父親であるご当主との対面を希望しております」
サナはムーガとともに側近二人の様子を見に行っていた。
「それが叶うことはないでしょうね」
「はい。ムーガ様がそれも踏まえ国王陛下にご報告へ赴いておられます」
サナはリタとは違いメイドでありご令嬢であるという口調である。
サナは戦闘を得意とする子爵家の一員である。自我が目覚める前から戦闘に関する英才教育を受け王家に仇なす者たちの排除を決まり事として育ってきた。血筋的な才能はもちろん持っているが努力も桁外れだ。つまり戦闘においてエリート中のエリートだ。
姉は現在の王妃陛下の専属護衛を務めておりサナは未来の王妃陛下の専属護衛になる気満々である。
エーティルはこの一族の王家への貢献と忠誠心を心から信頼している。
「そう。ムーガのことだから父親たちの身柄拘束と尋問の許可をもらうつもりなのかもしれないわね」
「はい。国王陛下のご許可をいただく前から部隊の編成命令を出しておりました」
「国王陛下も頷く以外に無いわね。ラオルド第一王子殿下のことであるから心労もおありになられるでしょうし、お労しいわ」
「問題解決に向かったことはいつかご心労を和らげるものと存じます」
「そうね。そうなってほしいわね」
エーティルは国王陛下のお顔を浮かべ悲しげに微笑した。
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