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理由11 夢が叶いそうだから
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男たち三人のセンスのなさの話ももちろんいつも繰り広げているので、それらが思い出された。
「商人はお上手ですもの。騙されることはあるかもしれませんわ。ですが、あれはないですわ……。見ればわかりますでしょうに……」
「宝石付きのメリケンサック……。発注する方ってありえます? 発注受ける方も断われよって言いたくなりますよね?」
「ペットの趣味をとやかく言うつもりはございませんが、わたくしに一言の相談もなく贈りつけてくるお心が理解できませんわ。
さらにセンスのないブローチ……。メイドに『換金してもお金にならないですね』と言われましたのよ」
三人はふぅ~とため息を漏らした。
「それ―センスのなさ―も伝えられたのでよしとしましょう」
「「そうですわね」」
三人の男たちのセンスのなさは、これまではここだけの愚痴であった。幼稚なデザインのドレスも流行遅れのイヤリングも香りのキツイ香水も、自分たちへのプレゼントだったら彼らを貶めるようなことは言わず、我慢もフォローもしていた。
三人はお茶を一口飲んで落ち着いた。
「うふふ。べレナ様はマテルジ殿下のおバカさんについても言いたかったのではなくて?」
「ジゼーヌ様。意地悪ですわね。言ってしまったら流石に不敬になってしまいますわ」
拗ねた姿の可愛らしいべレナに、ジゼーヌもナナリーも微笑んでしまう。
この騒動はすべて計算されていた。婚約破棄とスザンヌの実家ローダン男爵家の内偵と連動しているのだ。王家に『待った』をかけられていたのはローダン男爵家のためである。
「計画的とはいえ、アドム王太子殿下の登場が予定より遅くてドキドキしましたね」
「その時はナナリー様がスザンヌ様を抑える予定でしたでしょう?」
「女同士ですからね。ただそうなるとサバル様が暴れたと思うのです。さすがにサバル様をお相手してスザンヌ様を拘束することは難しいですから」
そのために学生に扮した近衛騎士がべレナたちとは反対側に五名控えていた。スザンヌはそれまでは一応罪の確定していない貴族令嬢なので、男性近衛騎士が抑えつけることはできない。三人はその近衛騎士たちの存在も視認した上で断罪劇を始めている。
スザンヌを外で捕まえた後に後ろ手縛りや手刀当ては、アドム王太子とナハト第二王子がスザンヌを罪人と認定したからできたことだ。
アドムがなんとか間に合ったので、その近衛騎士たちはその役目をせずに済んだ。その後のスザンヌ逃亡の追跡はしっかりとしている。
なので、もしナハトが間に合わずともスザンヌを逃がす心配はない。ナハトが間に合わなければ、スザンヌが殺されてしまうことはありえたかもしれないが。
国王陛下は婚約破棄のことは以前から許可していたが、ローダン男爵家内偵のことがあり、彼女たちへの報告は今日になったのだ。
彼女たちは『本日昼休みに三人を断罪してよし』と朝方に連絡を受けた時点で『婚約破棄は許されるだろう』と予想できていた。
騎士団にとってはスザンヌの行動を把握しやすくするためである。
「まさか、団長殿が私の仕事まで考えてくださっていたなんて思いませんでした」
「わたくしもですわ。公爵様が、わたくしの夢をご存知だったなんて……。わたくし、感激してしまいましたわ」
婚約破棄は国王陛下により決定されていたので、モリト公爵とアシャード侯爵は二人の仕事について早々に動いていた。
「おそらく、モリト公爵夫人とのお茶会で『司書』という言葉を一度出してしまっただけですのに。それを覚えていてくださり、その一言でわたくしの心情を理解してくださったのですわ」
「そうでしたの? きっと、お茶会の情報とはそういうものなのでしょうね。
さすが、モリト公爵夫人ですわね。夫人のお茶会の人気が高いこともわかりますわ。夫人のお心遣いが素晴らしいですもの。
わたくしたちも学んでいかなくてはなりませんわね」
次期女公爵のべレナが気合いを入れた。
「お二人の夢が叶いそうで素晴らしいわ」
「「べレナ様も頑張ってくださいね!」」
「はいっ!」
べレナが嬉しそうに返事をした。べレナは『女公爵としての仕事』について言われたと思っている。
「ナナリー様……。これってべレナ様はわかっておりませんわよ……」
「私もそう思いました……」
「お二人とも。何ですの?」
「「べレナ様っ! 頑張るのはナハト第二王子殿下のことですよ!」」
台本があるかのような二人の言葉にべレナはたじろいだ。
「け、検討いたしますわ」
べレナの様子に二人は笑った。
「商人はお上手ですもの。騙されることはあるかもしれませんわ。ですが、あれはないですわ……。見ればわかりますでしょうに……」
「宝石付きのメリケンサック……。発注する方ってありえます? 発注受ける方も断われよって言いたくなりますよね?」
「ペットの趣味をとやかく言うつもりはございませんが、わたくしに一言の相談もなく贈りつけてくるお心が理解できませんわ。
さらにセンスのないブローチ……。メイドに『換金してもお金にならないですね』と言われましたのよ」
三人はふぅ~とため息を漏らした。
「それ―センスのなさ―も伝えられたのでよしとしましょう」
「「そうですわね」」
三人の男たちのセンスのなさは、これまではここだけの愚痴であった。幼稚なデザインのドレスも流行遅れのイヤリングも香りのキツイ香水も、自分たちへのプレゼントだったら彼らを貶めるようなことは言わず、我慢もフォローもしていた。
三人はお茶を一口飲んで落ち着いた。
「うふふ。べレナ様はマテルジ殿下のおバカさんについても言いたかったのではなくて?」
「ジゼーヌ様。意地悪ですわね。言ってしまったら流石に不敬になってしまいますわ」
拗ねた姿の可愛らしいべレナに、ジゼーヌもナナリーも微笑んでしまう。
この騒動はすべて計算されていた。婚約破棄とスザンヌの実家ローダン男爵家の内偵と連動しているのだ。王家に『待った』をかけられていたのはローダン男爵家のためである。
「計画的とはいえ、アドム王太子殿下の登場が予定より遅くてドキドキしましたね」
「その時はナナリー様がスザンヌ様を抑える予定でしたでしょう?」
「女同士ですからね。ただそうなるとサバル様が暴れたと思うのです。さすがにサバル様をお相手してスザンヌ様を拘束することは難しいですから」
そのために学生に扮した近衛騎士がべレナたちとは反対側に五名控えていた。スザンヌはそれまでは一応罪の確定していない貴族令嬢なので、男性近衛騎士が抑えつけることはできない。三人はその近衛騎士たちの存在も視認した上で断罪劇を始めている。
スザンヌを外で捕まえた後に後ろ手縛りや手刀当ては、アドム王太子とナハト第二王子がスザンヌを罪人と認定したからできたことだ。
アドムがなんとか間に合ったので、その近衛騎士たちはその役目をせずに済んだ。その後のスザンヌ逃亡の追跡はしっかりとしている。
なので、もしナハトが間に合わずともスザンヌを逃がす心配はない。ナハトが間に合わなければ、スザンヌが殺されてしまうことはありえたかもしれないが。
国王陛下は婚約破棄のことは以前から許可していたが、ローダン男爵家内偵のことがあり、彼女たちへの報告は今日になったのだ。
彼女たちは『本日昼休みに三人を断罪してよし』と朝方に連絡を受けた時点で『婚約破棄は許されるだろう』と予想できていた。
騎士団にとってはスザンヌの行動を把握しやすくするためである。
「まさか、団長殿が私の仕事まで考えてくださっていたなんて思いませんでした」
「わたくしもですわ。公爵様が、わたくしの夢をご存知だったなんて……。わたくし、感激してしまいましたわ」
婚約破棄は国王陛下により決定されていたので、モリト公爵とアシャード侯爵は二人の仕事について早々に動いていた。
「おそらく、モリト公爵夫人とのお茶会で『司書』という言葉を一度出してしまっただけですのに。それを覚えていてくださり、その一言でわたくしの心情を理解してくださったのですわ」
「そうでしたの? きっと、お茶会の情報とはそういうものなのでしょうね。
さすが、モリト公爵夫人ですわね。夫人のお茶会の人気が高いこともわかりますわ。夫人のお心遣いが素晴らしいですもの。
わたくしたちも学んでいかなくてはなりませんわね」
次期女公爵のべレナが気合いを入れた。
「お二人の夢が叶いそうで素晴らしいわ」
「「べレナ様も頑張ってくださいね!」」
「はいっ!」
べレナが嬉しそうに返事をした。べレナは『女公爵としての仕事』について言われたと思っている。
「ナナリー様……。これってべレナ様はわかっておりませんわよ……」
「私もそう思いました……」
「お二人とも。何ですの?」
「「べレナ様っ! 頑張るのはナハト第二王子殿下のことですよ!」」
台本があるかのような二人の言葉にべレナはたじろいだ。
「け、検討いたしますわ」
べレナの様子に二人は笑った。
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