暴虐の果て

たじ

文字の大きさ
上 下
2 / 45

第2話

しおりを挟む
 11月8日?時刻?
 …目覚めたそこは6畳ほどの小部屋で、私はロープで椅子に縛り付けられている。

 目の前にはスチール机があり、その上にデスクトップパソコンが一台。

 画面にはただ一言、「あなたの存在意義を教えてください。」黒の背景に白抜きでそう表示されている。

 天井近くの通風口からわずかに風が流れ込んでいる。ひとしきり、ロープがほどけないか試したが、全くほどける様子はない。

 「マキ!マキ!」大声で彼女の名を呼んだが、しかし誰の応答もなく、部屋の中は薄暗く、パソコンの光が唯一の光源となっている。

 ……確か気を失う直前に、甘い匂いを感じたような……。あれは一種の麻酔だったのだろうか。

 手足を椅子に縛り付けられている為、身じろぎ一つ出来ない。一体、誰が何の目的で私をこんな所に監禁したのだろうか。

 そして、恋人のマキはどうしたのだろう?色々考えるうちに、急に眠気に襲われ……私の意識は再び闇に沈んだ。 


11月9日(?)時刻午前(?)
 カタカタ。カタカタカタ。何処か機械的な音が間断なく響いてくる。

 私は不安を覚える。鍋だ!鍋が沸騰しようとしている!私は慌てて2時の方向にあるキッチンへと向かう。

 鍋には、何か黒いものが浮かんでおり、湯気の中、眼を凝らすと、そこにはー。

 「起床!起床!!」何処からか人が叫ぶような声が聞こえる。相変わらず、私はロープで縛り付けられており、身動き一つ出来ない。

 「起床!起床!!」叫ぶような大音量のその声は何処か歪んでいて、まるでテープレコーダーに吹き込んだものをボリューム一杯に再生させたもののように聞こえる。

 ……しばらくすると、その大きな声はフッと聞こえなくなった。

 昨日とは違い、部屋の中は蛍光灯が灯り、パソコンの電源は落ちている。

 そして、机の上には皿に乗った食パン一切れと、コップに注がれた一杯の水。そういえば、昨日から何も食べていない。腹ペコだった。

 私は手が使えないので、犬のように食パンをくわえ、水に浸して食べた。ふと、皿を割って、その欠片でロープを切れないか、と思いついた。

 後ろ手で縛られてはいるが、なんとかなりそうだ。5分、10分と格闘した結果、なんとか手足のロープを切断することに成功した。

 しかし、ーこの部屋には扉がない!?そんなバカな!

 まさか、と思って見上げると、通風口はずっと上まで続いており、そこからここまで下ろされたであろう事が推測できた。

 通風口のサイズは、ちょうど、1m×1.5mといった所だろうか。上から頑丈な鉄格子の蓋がされており、机の上に乗って押し上げようとしたところ、ぴくりとも動かなかった。

 念の為、隠し扉などが存在する可能性を考えて、壁や床をこずき回してみたが、そんなギミックはなさそうだった。
 
 
 
 
しおりを挟む

処理中です...