1 / 1
唯夏
しおりを挟む
小学生の頃地元で俺はいつも3人の幼なじみと一緒に遊んでいた。
唯、浩、良和の3人と。
俺と浩、良和の3人はグループの中で紅一点の唯の事が好きだった。
でも全員他のメンバーとの仲が悪くなることを考えて言い出せずにいた。あと単に気恥ずかしかったのもあったかもしれない。
ーーそんなある夏の日の事。
◆ ◆ ◆ ◆
「お~~い!!たける~~~!!お前もこっち来いよ~~!!」
その辺りの子供達をまとめていたガキ大将の浩が自転車をこいで川原を通りすぎようとした俺に声をかけてきた。
「……何?俺まだ夏休みの宿題できてないから家に帰ってやりたいんだけど……。」
「バ~~カ!!だから今から皆で手分けしてやろうってんだろ!お前も一緒にやろうぜ!!」
「そう言うことなら乗った!!」
そして俺と浩、良和と唯は浩の家に集まってそれぞれ手分けして夏休みの宿題に取りかかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「フーッやっと終わったな!!」
浩の言葉に全員が頷く。
全くやっていない状態からのスタートだったから結構な時間が経過していた。
外を見ると既に夕陽が地平線の果てに吸い込まれようとしている。
「唯!遅くなっちゃったから送るよ!」
気取り屋の良和が唯に声をかける。
「お前が送るなら俺も唯の事送っていくもんね~~!!」
「じゃあ俺も行くよ!」
良和だけにいい格好をさせまいとすかさず浩と僕も一緒に唯を家まで送ることになった。
外に出るとミ~ンミ~ンミ~ンと蝉があちらこちらで鳴いている。
うだるような暑さの中、俺達は唯の家の方角へと歩き出した。
すると浩の家から10分程歩いた頃だろうか。
俺達は豪雨に見舞われた。
ザーーーーーッッッッ!!
突然降りだした滝のような雨に慌てて俺達は近くにある雑木林まで走って小降りになるまで木々の下で雨宿りすることにした。
◆ ◆ ◆ ◆
「雨、中々止まないね……。」
透き通るような声で唯が呟く。
「本当だよな。いつになったら止むんだろ?」
俺はそう答えて時々稲光が閃く真っ黒な空を見上げていた。
横の浩と良和もどこか不安な顔をしていたのを今でも俺はハッキリ覚えている。
その時だった。突然唯が、
「…………ッッッ!!……お腹、痛い……。」
と言って腹を押さえてその場にうずくまった。
「おい!大丈夫かよ!?」
浩が唯に問いかける。ーーと、唯を見ていた浩の視線が唯の下半身に釘付けになった。
「うわっっ!!唯っっ!お前股から血ぃ出てんじゃねぇか!!大変だっっ!!」
それは今考えると初潮の訪れだったんだろうけどその時の俺達はまだまだガキだったから誰もそうとは分からず結果、唯の下着を取って雨でもいいから流れ出た血をとりあえず洗い流そうということになった。
当然唯は激しく抵抗したけれど浩が乱暴に下着を引っ張った際後ろの木に後頭部をぶつけて気を失ってしまった。初潮で体調が悪かったことも原因だったかもしれない。
……俺達は気を失ってパンツが半ば脱げている唯の姿に興奮していたように思う。
息を荒げながら誰が先と言うこともなく3人全員でゆっくりと唯のパンツを脱がし傷の具合を確かめようと履いていたスカートを捲り上げた。
「…………何だコレ?」
浩が唯の股間を見たまま思わず漏らした。
俺も良和も余りに衝撃的な光景に何も言えずに動きが止まる。
……信じられないことに唯の股間には俺たちのよりもやや小振りな陰茎がついておりその下には控えめな割れ目が流血しながら顔を覗かせていた。
後になって知ったことだけど世界には極々稀に唯のように男女両方の性器を持って生まれてくる子供がいるらしかった。
……しかしその当時の俺たちには当然そんな難しいことは分からない。
皆パニックになって口々に喚き始めた。
「……こいつっっ、俺たちを騙してたんだなっ!!本当は男だったんだっ!」
「信じられないっ!僕は心から唯のことが好きだったのにっっ!!」
「俺だってっっ!!…………こんなウソつきは死んじゃえばいいんだっっ!!」
俺は手近に転がっていた拳大の石を苦痛に呻く唯の、その整った顔に全力で叩きつけた。
「…………ッッッ!!」
相当痛かったのだろう。それまで気を失っていた唯が目を覚ます。
「……痛いっっ!!……あれ?何で3人ともそんな怖い顔で唯の事、見るの?」
「たけるっっ、それよこせっ!!」
浩が俺の手から石をむしりとり何が起こっているのか分からず未だ呆然としている唯の顔に向かってそれをうち下ろした。
「キャァァァァッッーーーーーー!!!」
「……僕もやるよ。浩それ貸して。」
普段はクールぶっている良和もこの時ばかりは憤怒に顔を歪ませて浩から手渡された石を力一杯唯に叩きつけ始める。
「よくも今まで僕たちを騙してくれたなっっ!!このクソ野郎っ!!」
ドガッ!ドガッ!ドガッッ!!
そう言って半狂乱になりながら唯の顔に何度も石を叩きつける良和の顔はいつの間にか涙でグシャグシャになっていた。
「……畜生!!……畜生!!……畜生!!!」
「おいっ!!止めろっ!!本当に死んじゃうだろっっ!!」
不意に我に帰った俺はなおも石をうち下ろす良和を後ろから羽交い締めにした。
「……おい。唯……。おいっっ!!唯、起きろっっ!!」
浩が俺達にボコボコにされた顔でグッタリとしている唯の両肩に手をかけて前後に揺さぶり声をかける。
…………しかし彼女はもう二度と動くことはなかった……。
……ゴロゴロゴロゴロッッ!
ドーーーンッッ!!
……どこかで雷の落ちる音がする。
……相も変わらず土砂降り雨の中俺達は初めて人を殺してしまった。
◆ ◆ ◆ ◆
……あれから近くの人が唯の死体を発見してすぐに警察が捜査にやって来た。
けれど余りに土砂降りだったものだから唯を殺した犯人に結び付くような証拠は何も見つからなかったらしい。やがて警察も引き上げていった。
……俺達は殺人者なのに逮捕されずのうのうと生き永らえてしまった。
……風の噂では浩は高校卒業後精神を病んで今は隔離病棟に軟禁されているらしい。
良和は罪の意識に耐えきれず中学の頃に校舎から飛び降りて自殺してしまった。
……そして俺はーーーーーーーーーー。
唯、浩、良和の3人と。
俺と浩、良和の3人はグループの中で紅一点の唯の事が好きだった。
でも全員他のメンバーとの仲が悪くなることを考えて言い出せずにいた。あと単に気恥ずかしかったのもあったかもしれない。
ーーそんなある夏の日の事。
◆ ◆ ◆ ◆
「お~~い!!たける~~~!!お前もこっち来いよ~~!!」
その辺りの子供達をまとめていたガキ大将の浩が自転車をこいで川原を通りすぎようとした俺に声をかけてきた。
「……何?俺まだ夏休みの宿題できてないから家に帰ってやりたいんだけど……。」
「バ~~カ!!だから今から皆で手分けしてやろうってんだろ!お前も一緒にやろうぜ!!」
「そう言うことなら乗った!!」
そして俺と浩、良和と唯は浩の家に集まってそれぞれ手分けして夏休みの宿題に取りかかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「フーッやっと終わったな!!」
浩の言葉に全員が頷く。
全くやっていない状態からのスタートだったから結構な時間が経過していた。
外を見ると既に夕陽が地平線の果てに吸い込まれようとしている。
「唯!遅くなっちゃったから送るよ!」
気取り屋の良和が唯に声をかける。
「お前が送るなら俺も唯の事送っていくもんね~~!!」
「じゃあ俺も行くよ!」
良和だけにいい格好をさせまいとすかさず浩と僕も一緒に唯を家まで送ることになった。
外に出るとミ~ンミ~ンミ~ンと蝉があちらこちらで鳴いている。
うだるような暑さの中、俺達は唯の家の方角へと歩き出した。
すると浩の家から10分程歩いた頃だろうか。
俺達は豪雨に見舞われた。
ザーーーーーッッッッ!!
突然降りだした滝のような雨に慌てて俺達は近くにある雑木林まで走って小降りになるまで木々の下で雨宿りすることにした。
◆ ◆ ◆ ◆
「雨、中々止まないね……。」
透き通るような声で唯が呟く。
「本当だよな。いつになったら止むんだろ?」
俺はそう答えて時々稲光が閃く真っ黒な空を見上げていた。
横の浩と良和もどこか不安な顔をしていたのを今でも俺はハッキリ覚えている。
その時だった。突然唯が、
「…………ッッッ!!……お腹、痛い……。」
と言って腹を押さえてその場にうずくまった。
「おい!大丈夫かよ!?」
浩が唯に問いかける。ーーと、唯を見ていた浩の視線が唯の下半身に釘付けになった。
「うわっっ!!唯っっ!お前股から血ぃ出てんじゃねぇか!!大変だっっ!!」
それは今考えると初潮の訪れだったんだろうけどその時の俺達はまだまだガキだったから誰もそうとは分からず結果、唯の下着を取って雨でもいいから流れ出た血をとりあえず洗い流そうということになった。
当然唯は激しく抵抗したけれど浩が乱暴に下着を引っ張った際後ろの木に後頭部をぶつけて気を失ってしまった。初潮で体調が悪かったことも原因だったかもしれない。
……俺達は気を失ってパンツが半ば脱げている唯の姿に興奮していたように思う。
息を荒げながら誰が先と言うこともなく3人全員でゆっくりと唯のパンツを脱がし傷の具合を確かめようと履いていたスカートを捲り上げた。
「…………何だコレ?」
浩が唯の股間を見たまま思わず漏らした。
俺も良和も余りに衝撃的な光景に何も言えずに動きが止まる。
……信じられないことに唯の股間には俺たちのよりもやや小振りな陰茎がついておりその下には控えめな割れ目が流血しながら顔を覗かせていた。
後になって知ったことだけど世界には極々稀に唯のように男女両方の性器を持って生まれてくる子供がいるらしかった。
……しかしその当時の俺たちには当然そんな難しいことは分からない。
皆パニックになって口々に喚き始めた。
「……こいつっっ、俺たちを騙してたんだなっ!!本当は男だったんだっ!」
「信じられないっ!僕は心から唯のことが好きだったのにっっ!!」
「俺だってっっ!!…………こんなウソつきは死んじゃえばいいんだっっ!!」
俺は手近に転がっていた拳大の石を苦痛に呻く唯の、その整った顔に全力で叩きつけた。
「…………ッッッ!!」
相当痛かったのだろう。それまで気を失っていた唯が目を覚ます。
「……痛いっっ!!……あれ?何で3人ともそんな怖い顔で唯の事、見るの?」
「たけるっっ、それよこせっ!!」
浩が俺の手から石をむしりとり何が起こっているのか分からず未だ呆然としている唯の顔に向かってそれをうち下ろした。
「キャァァァァッッーーーーーー!!!」
「……僕もやるよ。浩それ貸して。」
普段はクールぶっている良和もこの時ばかりは憤怒に顔を歪ませて浩から手渡された石を力一杯唯に叩きつけ始める。
「よくも今まで僕たちを騙してくれたなっっ!!このクソ野郎っ!!」
ドガッ!ドガッ!ドガッッ!!
そう言って半狂乱になりながら唯の顔に何度も石を叩きつける良和の顔はいつの間にか涙でグシャグシャになっていた。
「……畜生!!……畜生!!……畜生!!!」
「おいっ!!止めろっ!!本当に死んじゃうだろっっ!!」
不意に我に帰った俺はなおも石をうち下ろす良和を後ろから羽交い締めにした。
「……おい。唯……。おいっっ!!唯、起きろっっ!!」
浩が俺達にボコボコにされた顔でグッタリとしている唯の両肩に手をかけて前後に揺さぶり声をかける。
…………しかし彼女はもう二度と動くことはなかった……。
……ゴロゴロゴロゴロッッ!
ドーーーンッッ!!
……どこかで雷の落ちる音がする。
……相も変わらず土砂降り雨の中俺達は初めて人を殺してしまった。
◆ ◆ ◆ ◆
……あれから近くの人が唯の死体を発見してすぐに警察が捜査にやって来た。
けれど余りに土砂降りだったものだから唯を殺した犯人に結び付くような証拠は何も見つからなかったらしい。やがて警察も引き上げていった。
……俺達は殺人者なのに逮捕されずのうのうと生き永らえてしまった。
……風の噂では浩は高校卒業後精神を病んで今は隔離病棟に軟禁されているらしい。
良和は罪の意識に耐えきれず中学の頃に校舎から飛び降りて自殺してしまった。
……そして俺はーーーーーーーーーー。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私の優しいお父さん
有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。
少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。
昔、私に何があったんだろう。
お母さんは、どうしちゃったんだろう。
お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。
いつか、思い出す日が来るのかな。
思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。
月明かりの儀式
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、幼馴染でありながら、ある日、神秘的な洋館の探検に挑むことに決めた。洋館には、過去の住人たちの悲劇が秘められており、特に「月明かりの間」と呼ばれる部屋には不気味な伝説があった。二人はその場所で、古い肖像画や日記を通じて、禁断の儀式とそれに伴う呪いの存在を知る。
儀式を再現することで過去の住人たちを解放できるかもしれないと考えた葉羽は、仲間の彩由美と共に儀式を行うことを決意する。しかし、儀式の最中に影たちが現れ、彼らは過去の記憶を映し出しながら、真実を求めて叫ぶ。過去の住人たちの苦しみと後悔が明らかになる中、二人はその思いを受け止め、解放を目指す。
果たして、葉羽と彩由美は過去の悲劇を乗り越え、住人たちを解放することができるのか。そして、彼ら自身の運命はどうなるのか。月明かりの下で繰り広げられる、謎と感動の物語が展開されていく。
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
駒込の七不思議
中村音音(なかむらねおん)
ミステリー
地元のSNSで気になったこと・モノをエッセイふうに書いている。そんな流れの中で、駒込の七不思議を書いてみない? というご提案をいただいた。
7話で完結する駒込のミステリー。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
虚像のゆりかご
新菜いに
ミステリー
フリーターの青年・八尾《やお》が気が付いた時、足元には死体が転がっていた。
見知らぬ場所、誰かも分からない死体――混乱しながらもどういう経緯でこうなったのか記憶を呼び起こそうとするが、気絶させられていたのか全く何も思い出せない。
しかも自分の手には大量の血を拭き取ったような跡があり、はたから見たら八尾自身が人を殺したのかと思われる状況。
誰かが自分を殺人犯に仕立て上げようとしている――そう気付いた時、怪しげな女が姿を現した。
意味の分からないことばかり自分に言ってくる女。
徐々に明らかになる死体の素性。
案の定八尾の元にやってきた警察。
無実の罪を着せられないためには、自分で真犯人を見つけるしかない。
八尾は行動を起こすことを決意するが、また新たな死体が見つかり……
※動物が殺される描写があります。苦手な方はご注意ください。
※登場する施設の中には架空のものもあります。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
©2022 新菜いに
【完結】縁因-えんいんー 第7回ホラー・ミステリー大賞奨励賞受賞
衿乃 光希
ミステリー
高校で、女子高生二人による殺人未遂事件が発生。
子供を亡くし、自宅療養中だった週刊誌の記者芙季子は、真相と動機に惹かれ仕事復帰する。
二人が抱える問題。親が抱える問題。芙季子と夫との問題。
たくさんの問題を抱えながら、それでも生きていく。
実際にある地名・職業・業界をモデルにさせて頂いておりますが、フィクションです。
R-15は念のためです。
第7回ホラー・ミステリー大賞にて9位で終了、奨励賞を頂きました。
皆さま、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる