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三章
三十五話 先輩として出来ること
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「リディアちゃんに今の力が現れたのは、一ヶ月前からなんですか?」
「はい。あの子は面倒見のいい子で、下の子たちがケガをすると『痛いの痛いの飛んでけ!』とよくおまじないをしていたんです。今まではただの気休めに過ぎないおまじないだったのに、一ヶ月ほど前から本当に傷や病を癒せるようになったのです」
「一ヶ月前か……アリーシャ、何か思い当たる節はないか?」
「そうですね……私がアストラ帝国に来たのは、二ヶ月ほど前です。それから毎日アストラ帝国で祈りを捧げるようになりました。すると帝国内で女神の恩恵が発現するようになったと聞いています。今まで聖女適性のある少女は、ルイン王国周辺でばかり出ていました。それは聖女がルイン王国にいたからだと思います。しかし今回、アストラ帝国に移ったことで、アストラ帝国周辺で聖女適性のある少女が現れるようになったのかも……」
「なるほど、そういえばルイン王国の神殿は、聖女がいなくなった事で女神の加護が弱まったという話も聞くな」
「えっ、そうなのですか!?」
「ああ。……いや、その話は後にしよう。とにかく、今の話で納得がいった。恐らく女神の加護が聖女適性のある少女に吸収され、それが癒しの力として発現しているのだろう。アリーシャがいる帝都に近いレノーア村の娘に兆候が表れたのも納得だ。……ご両親、それにリディア。ゆくゆくはリディアを次の聖女候補として召し上げたいのだが……」
「私どもは構いませんわ。むしろありがたいくらいで」
「そうそう、娘が聖女様になるなんて光栄ですものね! リディちゃんはどう?」
「私は別に、それで構わないけど……。でもお母さんやお父さんの仕事は?」
「大丈夫だよ。レノーア村の人たちはみんな家族のようなものだから、助け合ってやっていけるよ。それに下の子たちも大きくなっているし、リディちゃんが心配するような事なんてないのよ」
「そうだぞ、リディア。それに父さんと母さんは、リディアが自分の才能を活かして、大勢の人を助けて幸せになってくれる方がずっと嬉しいんだ」
「お父さん、お母さん……うん、分かった! じゃあ私、次の聖女になるね!」
「ありがとう、リディア。これからもよろしくね」
「うんっ! アリーシャ様!」
アリーシャはリディアの頭を撫でる。リディアは目を細めて喜んだ。
こうしてリディアは、新たなる聖女候補となった。
「聖女候補といっても、今すぐリディアを連れていくわけではないから、その点は安心してほしい。こちらも教会と協力して受け入れの準備を進める。恐らく二、三ヶ月は必要となるだろう。それまではレノーア村で家族と一緒に過ごすといい」
「はーいっ!!」
リディアは両手をあげて返事をした。
元気いっぱいの仕草が微笑ましくて、アリーシャはくすりと笑った。
その後、アリーシャとハイラルは村人たちに見送られて、馬車に乗り込みレノーア村を出る。
「アリーシャ、今回は助かった。ありがとう」
「いえ、私も聖女としてやるべき事をやっただけですから」
「謙遜する必要はない。アリーシャのおかげで次の聖女候補が見つかったんだ。それに新しい発見もあったはずだ。アリーシャが指導すれば、リディアはきっと素晴らしい聖女になれるだろう」
「ありがとうございます」
そう言ってもらえると素直に嬉しかった。
「ところで、リディアちゃんはルイン王国の神殿で聖女教育を受けさせるのですか?」
「いいや、帝国で世話をするつもりだ。ルイン王国の大神殿ほどの存在感はないが、帝国内にも女神教の『東方教会』がある。今の神殿に聖女を送るのは危険だ。アリーシャが神殿でどんな仕打ちを受けたのかを考えれば、ルイン王国に送るという選択肢はない」
「ありがとうございます、ハイラル様。では、リディアちゃんは『東方教会』で聖女教育を受ける事になるんですね」
「俺はそのつもりで考えている。だが聖女を迎え入れるとなると、皇帝陛下や大司教にも了承を得て準備を進める必要があるだろう。そうだ、アリーシャ。お前はまだ東方教会の大司教に面会していなかったな」
「そうですね」
まずは帝国の生活に馴染むのが最優先だったのと、女神教にいい思い出がなかったので、しばらく教会から遠ざかっていた。
「ちょうどいい、この機会に会ってみるといい。予定は俺の方で調整しよう」
「分かりました。お願いします」
「よし、そうと決まればさっそく手配するとするか」
「はい」
そうしてアリーシャは、アストラ帝国の『東方教会』へと向かう事になった。
「はい。あの子は面倒見のいい子で、下の子たちがケガをすると『痛いの痛いの飛んでけ!』とよくおまじないをしていたんです。今まではただの気休めに過ぎないおまじないだったのに、一ヶ月ほど前から本当に傷や病を癒せるようになったのです」
「一ヶ月前か……アリーシャ、何か思い当たる節はないか?」
「そうですね……私がアストラ帝国に来たのは、二ヶ月ほど前です。それから毎日アストラ帝国で祈りを捧げるようになりました。すると帝国内で女神の恩恵が発現するようになったと聞いています。今まで聖女適性のある少女は、ルイン王国周辺でばかり出ていました。それは聖女がルイン王国にいたからだと思います。しかし今回、アストラ帝国に移ったことで、アストラ帝国周辺で聖女適性のある少女が現れるようになったのかも……」
「なるほど、そういえばルイン王国の神殿は、聖女がいなくなった事で女神の加護が弱まったという話も聞くな」
「えっ、そうなのですか!?」
「ああ。……いや、その話は後にしよう。とにかく、今の話で納得がいった。恐らく女神の加護が聖女適性のある少女に吸収され、それが癒しの力として発現しているのだろう。アリーシャがいる帝都に近いレノーア村の娘に兆候が表れたのも納得だ。……ご両親、それにリディア。ゆくゆくはリディアを次の聖女候補として召し上げたいのだが……」
「私どもは構いませんわ。むしろありがたいくらいで」
「そうそう、娘が聖女様になるなんて光栄ですものね! リディちゃんはどう?」
「私は別に、それで構わないけど……。でもお母さんやお父さんの仕事は?」
「大丈夫だよ。レノーア村の人たちはみんな家族のようなものだから、助け合ってやっていけるよ。それに下の子たちも大きくなっているし、リディちゃんが心配するような事なんてないのよ」
「そうだぞ、リディア。それに父さんと母さんは、リディアが自分の才能を活かして、大勢の人を助けて幸せになってくれる方がずっと嬉しいんだ」
「お父さん、お母さん……うん、分かった! じゃあ私、次の聖女になるね!」
「ありがとう、リディア。これからもよろしくね」
「うんっ! アリーシャ様!」
アリーシャはリディアの頭を撫でる。リディアは目を細めて喜んだ。
こうしてリディアは、新たなる聖女候補となった。
「聖女候補といっても、今すぐリディアを連れていくわけではないから、その点は安心してほしい。こちらも教会と協力して受け入れの準備を進める。恐らく二、三ヶ月は必要となるだろう。それまではレノーア村で家族と一緒に過ごすといい」
「はーいっ!!」
リディアは両手をあげて返事をした。
元気いっぱいの仕草が微笑ましくて、アリーシャはくすりと笑った。
その後、アリーシャとハイラルは村人たちに見送られて、馬車に乗り込みレノーア村を出る。
「アリーシャ、今回は助かった。ありがとう」
「いえ、私も聖女としてやるべき事をやっただけですから」
「謙遜する必要はない。アリーシャのおかげで次の聖女候補が見つかったんだ。それに新しい発見もあったはずだ。アリーシャが指導すれば、リディアはきっと素晴らしい聖女になれるだろう」
「ありがとうございます」
そう言ってもらえると素直に嬉しかった。
「ところで、リディアちゃんはルイン王国の神殿で聖女教育を受けさせるのですか?」
「いいや、帝国で世話をするつもりだ。ルイン王国の大神殿ほどの存在感はないが、帝国内にも女神教の『東方教会』がある。今の神殿に聖女を送るのは危険だ。アリーシャが神殿でどんな仕打ちを受けたのかを考えれば、ルイン王国に送るという選択肢はない」
「ありがとうございます、ハイラル様。では、リディアちゃんは『東方教会』で聖女教育を受ける事になるんですね」
「俺はそのつもりで考えている。だが聖女を迎え入れるとなると、皇帝陛下や大司教にも了承を得て準備を進める必要があるだろう。そうだ、アリーシャ。お前はまだ東方教会の大司教に面会していなかったな」
「そうですね」
まずは帝国の生活に馴染むのが最優先だったのと、女神教にいい思い出がなかったので、しばらく教会から遠ざかっていた。
「ちょうどいい、この機会に会ってみるといい。予定は俺の方で調整しよう」
「分かりました。お願いします」
「よし、そうと決まればさっそく手配するとするか」
「はい」
そうしてアリーシャは、アストラ帝国の『東方教会』へと向かう事になった。
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