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第十五章 終焉
第五十話 戦闘開始─弐─
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「死ねぇぇえっ!!」
魔族は自慢の腕力を肩が外れるほどの勢いで振るう。実際これに当たれば常人であれば頭が消し飛ぶことだろう。だが、振るった相手が不味かった。
「あぁん?オメーが死ねっ!!」
──ゾンッ
ジニオンは即座に斧を振り下ろし、迫り来る魔族を真っ二つにした。あまりの膂力に吹き飛ぶ肉片。これだけの威力を目の当たりにすれば、誰しもが恐怖で動けなくなる。しかし今回ばかりは違った。
「「「オオオォォオォォォッ!!!」」」
ジニオン以外の面々も魔族に対して力の差を見せつけるのだが、魔族に恐怖はない。寧ろ、一体殺される毎に憎悪の炎が燃え上がり、戦意は拍車を掛けて向上した。ビリビリと空気が震える咆哮はジニオンの口角を引き上げた。
「良いね良いねぇ!!ゾクゾクするぜぇっ!!」
全身から滾る熱き血潮に身を任せ、八大地獄の名を冠する斧”大焦熱”の力を引き出す。無骨な斧の刃先は炎を纏い、熱で真っ赤に染め上げる。斧を振るえば炎の斬撃となり、ジニオンの目の前に集まってきた魔族たちが一斉に消滅するもその足は止まらない。ジニオンは高笑いしながら、無尽蔵の体力に物を言わせて攻撃の手を止めない。死を厭わぬ攻防。
「ちょっと誰か聞いてよ!私の槍がこいつらに効かないんだけど?!もっと言えば、私の能力も効かないしさぁ!どうなってんの!?」
最初に弱音を開いたのはノーンだった。竜魔人の肉体を駆使して特に問題なく戦ってはいるようだが、地獄の槍”大叫”の防御不能のスリップダメージと恐怖を与える特異能力が通用しない。怒り狂い、殺すこと以外考えられない魔族は、精神攻撃と激痛程度なら耐えてしまうようだ。
それを聞いたロングマンはすぐさま大声を出す。
「トドット!奴らに等活の力を使え!」
地獄の杖”等活”。能力内にいる敵味方問わず体のコントロールをあべこべに変えてしまう。簡単な例で言えば足を動かそうとすれば手が動き、首を傾げようとすれば膝が曲がるなど部位毎に変化が起こり、まともに歩くことも出来なくなる。能力の効果範囲をかなり拡大することも逆に縮小することも可能だが、難点はやはり敵味方が関係なくなるところだろう。ちなみにトドットは所有者なので効力の対象外である。
「うむっ!等活よっ!!」
トドットは杖を振って力を引き出す。杖に埋め込まれた宝玉が光り輝いてトドットに迫る魔族に効力を発揮した。魔族は足がもつれて顔から思いっきり地面にダイブしている。
「そうじゃない!全体に仕掛けろ!」
ロングマンの言葉に全員が反応する。
「……え?」
「おいコラ!正気かよロングマン!!」
能力が発揮出来ずに苦戦を強いられているのはノーンだけ。大剣に身を任せて高みの見物を決め込んでいたパルスや、武器能力も特異能力も万全に使用出来るジョーカー、せっかく楽しく戦っていたジニオンには邪魔にしかならない暴挙。
トドットは躊躇なく等活を振り上げ、またも宝玉を光らせた。発動したことが分かったチームの面々は一斉に足を止め、巻き込まれても良いように身構えた。
次の瞬間、半数以上の魔族が腰砕けになったかのように地面に転がる。もぞもぞと芋虫のように動いているが、起き上がることは出来ない。倒れなかった魔族たちは元々八大地獄とは関係のない方角に走っていた連中だ。
「あぁ……クソが……暴れるんじゃなかったのかよ……」
肺からやっとのこと絞り出したような声がジニオンの心境を如実に物語っている。
「ふんっ……。やはり戦う必要などないわ。魔族どもの怒りを増幅させ、この騒動を起こした馬鹿を呼んで決着をつけようではないか」
ロングマンがジロッと見上げた先にいたのはアルテミス。ニヤニヤと笑いながら空中から降りてくる。その隣にはシャドーアイがついている。高みの見物を決め込んでいたところから魔族たちの上官であるとすぐに理解した。
『馬鹿とは失礼極まるにゃ~ロングマン。訂正を要求するにゃ』
「誰が訂正などするか馬鹿テミス……やはりお前だったか。感情を操るお前が動いたのなら、魔族どもが狂ったのも頷ける」
『ア・ル・テ・ミ・スだにゃ!!名前で弄るのは禁止だにゃ!!』
空中で地団駄を踏むような間抜けな動きを見せる。
「ならばアルテミス。お前の目的は何だ?この雑魚どもを引き連れて何とする?」
『ふふん。もちろんラルフを殺すにゃ。にゃのに何でお前らが邪魔するにゃ?不快極まるにゃ。今すぐに能力を解除しないとエライことになるにゃよ?』
「ハッハッハ!やってみろぃ!儂の能力の前にはそんな脅しは通用せんて!」
トドットは余裕そうに笑ってみせる。あとは魔力が続く限り這いつくばる魔族を殺していくだけだ。途中で解除して仲間に助けを乞うかもしれないが、トドットだけで大半は殺せる。
『後悔するにゃよ~?』
アルテミスは這いつくばる魔族に手をかざした。指をこちょこちょ四、五回動かしたと思ったら、おもむろにスッとかざした手を上にあげた。
──ザッ
音につられて魔族の方を見ると、一人立っていた。盛大に転けた同胞に眼もくれず、その目はただひたすらにロングマンたちに敵意を向けている。
「待て……奴は何で立てた?」
動きを阻害された体で難なく立っている。
『ここからが本番にゃ。神の力はこんなのも出来ちゃうのにゃ』
アルテミスが芝居がかったように両手を広げると、倒れ伏していた魔族が次々に立ち始めた。トドットはあまりの出来事から呆然としている。
『うふふ。それじゃ戦闘開始にゃっ!』
魔族は自慢の腕力を肩が外れるほどの勢いで振るう。実際これに当たれば常人であれば頭が消し飛ぶことだろう。だが、振るった相手が不味かった。
「あぁん?オメーが死ねっ!!」
──ゾンッ
ジニオンは即座に斧を振り下ろし、迫り来る魔族を真っ二つにした。あまりの膂力に吹き飛ぶ肉片。これだけの威力を目の当たりにすれば、誰しもが恐怖で動けなくなる。しかし今回ばかりは違った。
「「「オオオォォオォォォッ!!!」」」
ジニオン以外の面々も魔族に対して力の差を見せつけるのだが、魔族に恐怖はない。寧ろ、一体殺される毎に憎悪の炎が燃え上がり、戦意は拍車を掛けて向上した。ビリビリと空気が震える咆哮はジニオンの口角を引き上げた。
「良いね良いねぇ!!ゾクゾクするぜぇっ!!」
全身から滾る熱き血潮に身を任せ、八大地獄の名を冠する斧”大焦熱”の力を引き出す。無骨な斧の刃先は炎を纏い、熱で真っ赤に染め上げる。斧を振るえば炎の斬撃となり、ジニオンの目の前に集まってきた魔族たちが一斉に消滅するもその足は止まらない。ジニオンは高笑いしながら、無尽蔵の体力に物を言わせて攻撃の手を止めない。死を厭わぬ攻防。
「ちょっと誰か聞いてよ!私の槍がこいつらに効かないんだけど?!もっと言えば、私の能力も効かないしさぁ!どうなってんの!?」
最初に弱音を開いたのはノーンだった。竜魔人の肉体を駆使して特に問題なく戦ってはいるようだが、地獄の槍”大叫”の防御不能のスリップダメージと恐怖を与える特異能力が通用しない。怒り狂い、殺すこと以外考えられない魔族は、精神攻撃と激痛程度なら耐えてしまうようだ。
それを聞いたロングマンはすぐさま大声を出す。
「トドット!奴らに等活の力を使え!」
地獄の杖”等活”。能力内にいる敵味方問わず体のコントロールをあべこべに変えてしまう。簡単な例で言えば足を動かそうとすれば手が動き、首を傾げようとすれば膝が曲がるなど部位毎に変化が起こり、まともに歩くことも出来なくなる。能力の効果範囲をかなり拡大することも逆に縮小することも可能だが、難点はやはり敵味方が関係なくなるところだろう。ちなみにトドットは所有者なので効力の対象外である。
「うむっ!等活よっ!!」
トドットは杖を振って力を引き出す。杖に埋め込まれた宝玉が光り輝いてトドットに迫る魔族に効力を発揮した。魔族は足がもつれて顔から思いっきり地面にダイブしている。
「そうじゃない!全体に仕掛けろ!」
ロングマンの言葉に全員が反応する。
「……え?」
「おいコラ!正気かよロングマン!!」
能力が発揮出来ずに苦戦を強いられているのはノーンだけ。大剣に身を任せて高みの見物を決め込んでいたパルスや、武器能力も特異能力も万全に使用出来るジョーカー、せっかく楽しく戦っていたジニオンには邪魔にしかならない暴挙。
トドットは躊躇なく等活を振り上げ、またも宝玉を光らせた。発動したことが分かったチームの面々は一斉に足を止め、巻き込まれても良いように身構えた。
次の瞬間、半数以上の魔族が腰砕けになったかのように地面に転がる。もぞもぞと芋虫のように動いているが、起き上がることは出来ない。倒れなかった魔族たちは元々八大地獄とは関係のない方角に走っていた連中だ。
「あぁ……クソが……暴れるんじゃなかったのかよ……」
肺からやっとのこと絞り出したような声がジニオンの心境を如実に物語っている。
「ふんっ……。やはり戦う必要などないわ。魔族どもの怒りを増幅させ、この騒動を起こした馬鹿を呼んで決着をつけようではないか」
ロングマンがジロッと見上げた先にいたのはアルテミス。ニヤニヤと笑いながら空中から降りてくる。その隣にはシャドーアイがついている。高みの見物を決め込んでいたところから魔族たちの上官であるとすぐに理解した。
『馬鹿とは失礼極まるにゃ~ロングマン。訂正を要求するにゃ』
「誰が訂正などするか馬鹿テミス……やはりお前だったか。感情を操るお前が動いたのなら、魔族どもが狂ったのも頷ける」
『ア・ル・テ・ミ・スだにゃ!!名前で弄るのは禁止だにゃ!!』
空中で地団駄を踏むような間抜けな動きを見せる。
「ならばアルテミス。お前の目的は何だ?この雑魚どもを引き連れて何とする?」
『ふふん。もちろんラルフを殺すにゃ。にゃのに何でお前らが邪魔するにゃ?不快極まるにゃ。今すぐに能力を解除しないとエライことになるにゃよ?』
「ハッハッハ!やってみろぃ!儂の能力の前にはそんな脅しは通用せんて!」
トドットは余裕そうに笑ってみせる。あとは魔力が続く限り這いつくばる魔族を殺していくだけだ。途中で解除して仲間に助けを乞うかもしれないが、トドットだけで大半は殺せる。
『後悔するにゃよ~?』
アルテミスは這いつくばる魔族に手をかざした。指をこちょこちょ四、五回動かしたと思ったら、おもむろにスッとかざした手を上にあげた。
──ザッ
音につられて魔族の方を見ると、一人立っていた。盛大に転けた同胞に眼もくれず、その目はただひたすらにロングマンたちに敵意を向けている。
「待て……奴は何で立てた?」
動きを阻害された体で難なく立っている。
『ここからが本番にゃ。神の力はこんなのも出来ちゃうのにゃ』
アルテミスが芝居がかったように両手を広げると、倒れ伏していた魔族が次々に立ち始めた。トドットはあまりの出来事から呆然としている。
『うふふ。それじゃ戦闘開始にゃっ!』
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