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第十五章 終焉

第二十七話 絶対に逃さない

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 アンチフィールド。
 この世界の理に干渉し、あらゆる力を無力化する。

 ゼアルの特異能力”ジャッジメント”に酷似した力だが、ジャッジメントは特異能力を阻害出来ず、アンチフィールドは出入りを遮断出来ない。魔力依存なのか体力依存なのかでもハッキリと違ってくるが、今回最も重要なのはエレクトラの力を制限することのなのでジャッジメントよりもアンチフィールドで正解だと言える。

「……ってことは俺の小さな異次元ポケットディメンションもここじゃ使用出来ないってことか?」

「特異能力の制限化に居る者全てが対象なのでそうなりますね」

「超常ノ存在にアスロンノルールを押し付けて使用出来ない様にさせとルんじゃぞ?もしこれでそちが使用出来タらそノ差は一体何なんじゃ?」

 ベルフィアの懸念。もし神の中にも階級があり、それによっては阻害されないというのであればサトリは必然的にエレクトラより上になってしまう。
 だがそんなことはなく、特異能力と呼ばれる別枠の力が誰に限らず使用不可となる。これにはアンノウンも歩も困ったようにお互いを確認しあっていた。疑問と困惑は八大地獄の中でも起こっている。ノーンが声をあげた。

「は?どんな魔法よ?特異能力は無敵じゃなかったっての?」

「そのようだな。この世界の住人と一線を画す力も結局は規定内。こうして防がれる程度の脆い力だったというわけだな……」

 ロングマンの卑下するような物言いに素直に肯定出来ない仲間たち。そんな中、パルスだけは違う感想を抱いていた。

「……チャンスね……」

 そう言うとエレクトラを見据える。今まで天地がひっくり返っても勝てなかった敵が弱体化している。ここしか無いとも言えるほどの素晴らしい機会。

「待てよ、殺したからって何になる?奴らは……神は死なねぇんだぞ?」

 ジニオンの正論に一瞬時が止まったような空気になる。自分たちの自由を求めて戦っていた八大地獄。昔彼らは神殺しを目標に掲げていたが、神は肉体が滅んでも死にはしないことに行き着き、八大地獄の名を冠する最強の武器”阿鼻”の特異能力で永久に閉じ込めることを画策した。
 しかしその能力はラルフによってあっさりと破られたため、再考を余儀なくされた。何も思いつかぬまま時間だけが過ぎ、未だ解決には至っていない。ここで殺したからといって、また日を置いて現れるだけだ。

「……それでも……第一歩よ」

 パルスは決意を固めたように鋼の意思で藤堂を見た。

「外せってか?俺ぁ下請けみたいなもんでなぁ、雇い主に了承してもらわなきゃ解放なんざ出来ねぇんだよな。いやぁ惜しいなぁ、あんたらに託しゃ何とかなりそうだけどなぁ。実に惜しい」

 悔しいアピールしながらも外す気のない藤堂。解放したとこで良いことは無さそうだと判断してのことだ。ラルフもパルスに関しては悪い気はしていないのだが、他の連中が軒並み危険だと認識している。背後から切ってくるのは普通にありそうなので束縛は妥当。
 猫の手も借りたくなるほどどうしようもない状態ならいざ知らず、今この場で解き放てば保身のために寝返る可能性まである。この危機的な状況で手を貸したとあれば、それを出汁にした交渉に乗り出せる。
 ユピテルの時にとりあえず神の側に着いた連中に信用信頼はない。

『チッ!!』

 エレクトラは背中を向けて走り出す。この赤い空間に居るから力が使えないのだ。ならばこの魔法の外に出られれば何も問題はなく仕切り直せる。ならばプライドなどかなぐり捨てられる。

「魔障壁だ!魔障壁を張れ!!この中に奴を閉じ込めろ!!」

 ラルフの言葉にベルフィアとエレノアが反応する。ベルフィアは魔力を薄い板状に引き伸ばし、エレクトラを切り裂く勢いで飛ばす。その殺気に反応しているのか、エレクトラは上手いこと避けつつ外に向けて走る。

「うふふっ、私から逃げられるとでも思っているのぉ?」

 エレノアの体からバチバチと電流が走る。瞬時に捕まえようと一歩前に出たその時「あっ」と何かに気づいたような顔をする。足を止めたのと同時に電流も止まり、エレクトラを負うのを辞めた。

「おいおい、エレノア!何をやって……!?」

 ラルフはエレノアの突然の停止に焦りを隠せない。でも次の瞬間にその行動の意味を理解した。

 ──ズンッ

 エレクトラはアンチフィールドの効果範囲ギリギリの場所に、陣取る様に現れた存在を視認して足を止める。

「よくも派手にぶっ飛ばしてくれたわね……次はこっちの番だよ」

『み、みなごろし……!?』

 あれだけ飛ばしたのに、もう帰ってきたのかと驚きが隠せない。そこまではまだ良い。エレクトラの発した言葉は不適切だった。ラルフも気づいたように「あっ」と発してしまう。

 ムカッ

 信じられないほどぶっ飛ばされて、帰ってきたらこの世で一番嫌っていた二つ名で呼ばれる。流石のミーシャも我慢の限界だった。

「私は……その名前が嫌いだ!!」
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