565 / 718
第十四章 驚天動地
第十七話 神様からのお願い
しおりを挟む
イミーナとアスロンの薄暗い取り引きとは逆に、大広間でまったりしていたラルフたち。黒影の奪還を経て、次なる目的地へ思いを馳せる最中、サトリがラルフの頭に語り掛ける。
『パパ……パパ……聞こえますか?』
「それ辞めろって!」
ガタッと立ち上がって抗議する。サトリも大概しつこい。何度言われてもラルフの神経を逆なでしようと擦り続ける。
ラルフにとってはいつも通りのツッコミではあったが、みんなの目が丸くなって自分を見ているのに気づく。頭の中で響いた声は、即ち周りには聞こえてすらいない。それに気づくのに若干時間がかかったが、ラルフは取り乱すことなく答える。
「……いや、サトリが頭の中で話しかけてきたんだよ。みんなの前に出てくりゃ良いのに、わざわざ俺だけに話しかけんだもんなぁ」
「サトリって、あのエッチぃ格好した人?確か神様だよね?」
アンノウンが即座に反応してくれる。それによってみんなの顔に納得の色が見えた。これなら万が一恥ずかしい奇行に走っても、サトリのせいってことで許してくれそうだ。
『ふふっ、イケない人。娘を道具に使うなんて……』
(だから辞めろってば……良いから出てこいよ、話なら面と向かってしよう)
このままでは完全に独り言になってしまう。サトリが話しかけているのだと周りが分かってくれていても、恥ずかしいし、変な目で見られたくはない。
『申し訳ございません。恥ずかしい思いをさせたかったわけではないのですが……』
(嘘だぁ……)
ラルフは知っている。サトリという神がどういう性格をしているのか、ふわっとだが理解している。一応謝罪をしているが、まったりして正常な判断が出来ない頃合いを見計らったことは明らか。言葉で取り繕っても、嬉しそうな口調が隠しきれない悪戯っ子の雰囲気を醸し出している。
そうして呆れ返っているラルフの目の前に突如光が収束し始めた。サトリ出現の兆候に注目が集まる。
『参りました。あなたには隠せませんねぇ……』
光を纏って現れた下着に透けるほど薄い布を身につけた髪の異様に長い女性。美人で妖艶な空気を出しつつも神々しい姿に感嘆の声が漏れる。
「全く、もっと普通に声をかけろよ。つーかその格好はいつ見ても刺激が強すぎるな……出来れば着替えてくれないか?ここには初心な青少年がいるんだからな?」
ブレイドと歩はまだ十代。性に盛んで奔放な歳に、こんな美女を目の当たりにしたら直立では立っていられないだろう。
ブレイドはアルルで見飽きているだろうから、もしかしたら大丈夫かもしれないが、歩はそうはいかない。エルフの巫女の肢体にぞっこんだった時もあったが、これほど豊満な体を前に、我慢など出来ないだろう。
『?……あなたはそうは思わないのですか?』
「俺は……あっ!や、辞めろ!!考えさせるな!バカ!!」
相手の心の中が覗けるサトリに隠し事は出来ない。せめて肉体で抵抗するのが、ラルフに唯一出来ることなのだ。
無意味。全くの無意味。
「おい!もう本当に良いから、本題に移れよ!」
これ以上の恥を上塗りしないように急かす。すると、先ほどまで笑顔が眩しかった彼女の顔から表情が消える。
『はい……実はちょっとしたピンチでして……』
サトリの曇り顔は貴重だ。何事にも余裕で対応する彼女から出た初めての弱みとも取れる。
「ピンチ?」
『ええ……私の生み出した守護獣、ケルベロスが今深刻なダメージを負っています。彼らを助けて欲しいのです』
「おいおい……ケルベロスは最強の生物の代表格だろ?そんな魔獣がなんでダメージなんて……一体誰がそんなことを?」
ラルフの頭の中にはケルベロスに対して攻勢を仕掛けられそうな戦士たちがぐるぐると回る。しかし、いずれもどうしてケルベロスを襲うのかの説明づけは出来ない。理由まで言及出来ないが、あくまで”これだけの実力者なら”と注釈が入る。
『相手は八大地獄です。ロングマンを筆頭としたゴロツキ集団……』
「え、何?八大地獄が?あいつらは神様たちが操ってたんじゃなかったっけ?」
『当初の目的は私たちに絶対服従の都合の良い組織、しかし期待とは裏腹に、蓋を開ければ現実は好き勝手暴れまわる戦闘狂の集まり。今回のケルベロス襲撃に至っても、唐突すぎて狙いが分かりません。そしてそんなことを言っている場合でもない。早急に手を打たねばならない事案なのです』
サトリの必死な喋りでラルフの重い腰が動いた。
「行ってみるか。その場所に」
正直あまり乗り気はしない。だが、仲間のためだと無碍には出来ない。
一行はケルベロス救出のために、ハーフリングの村を目指す。待ち受けるは八大地獄。最後に生き残るのは誰か?
『パパ……パパ……聞こえますか?』
「それ辞めろって!」
ガタッと立ち上がって抗議する。サトリも大概しつこい。何度言われてもラルフの神経を逆なでしようと擦り続ける。
ラルフにとってはいつも通りのツッコミではあったが、みんなの目が丸くなって自分を見ているのに気づく。頭の中で響いた声は、即ち周りには聞こえてすらいない。それに気づくのに若干時間がかかったが、ラルフは取り乱すことなく答える。
「……いや、サトリが頭の中で話しかけてきたんだよ。みんなの前に出てくりゃ良いのに、わざわざ俺だけに話しかけんだもんなぁ」
「サトリって、あのエッチぃ格好した人?確か神様だよね?」
アンノウンが即座に反応してくれる。それによってみんなの顔に納得の色が見えた。これなら万が一恥ずかしい奇行に走っても、サトリのせいってことで許してくれそうだ。
『ふふっ、イケない人。娘を道具に使うなんて……』
(だから辞めろってば……良いから出てこいよ、話なら面と向かってしよう)
このままでは完全に独り言になってしまう。サトリが話しかけているのだと周りが分かってくれていても、恥ずかしいし、変な目で見られたくはない。
『申し訳ございません。恥ずかしい思いをさせたかったわけではないのですが……』
(嘘だぁ……)
ラルフは知っている。サトリという神がどういう性格をしているのか、ふわっとだが理解している。一応謝罪をしているが、まったりして正常な判断が出来ない頃合いを見計らったことは明らか。言葉で取り繕っても、嬉しそうな口調が隠しきれない悪戯っ子の雰囲気を醸し出している。
そうして呆れ返っているラルフの目の前に突如光が収束し始めた。サトリ出現の兆候に注目が集まる。
『参りました。あなたには隠せませんねぇ……』
光を纏って現れた下着に透けるほど薄い布を身につけた髪の異様に長い女性。美人で妖艶な空気を出しつつも神々しい姿に感嘆の声が漏れる。
「全く、もっと普通に声をかけろよ。つーかその格好はいつ見ても刺激が強すぎるな……出来れば着替えてくれないか?ここには初心な青少年がいるんだからな?」
ブレイドと歩はまだ十代。性に盛んで奔放な歳に、こんな美女を目の当たりにしたら直立では立っていられないだろう。
ブレイドはアルルで見飽きているだろうから、もしかしたら大丈夫かもしれないが、歩はそうはいかない。エルフの巫女の肢体にぞっこんだった時もあったが、これほど豊満な体を前に、我慢など出来ないだろう。
『?……あなたはそうは思わないのですか?』
「俺は……あっ!や、辞めろ!!考えさせるな!バカ!!」
相手の心の中が覗けるサトリに隠し事は出来ない。せめて肉体で抵抗するのが、ラルフに唯一出来ることなのだ。
無意味。全くの無意味。
「おい!もう本当に良いから、本題に移れよ!」
これ以上の恥を上塗りしないように急かす。すると、先ほどまで笑顔が眩しかった彼女の顔から表情が消える。
『はい……実はちょっとしたピンチでして……』
サトリの曇り顔は貴重だ。何事にも余裕で対応する彼女から出た初めての弱みとも取れる。
「ピンチ?」
『ええ……私の生み出した守護獣、ケルベロスが今深刻なダメージを負っています。彼らを助けて欲しいのです』
「おいおい……ケルベロスは最強の生物の代表格だろ?そんな魔獣がなんでダメージなんて……一体誰がそんなことを?」
ラルフの頭の中にはケルベロスに対して攻勢を仕掛けられそうな戦士たちがぐるぐると回る。しかし、いずれもどうしてケルベロスを襲うのかの説明づけは出来ない。理由まで言及出来ないが、あくまで”これだけの実力者なら”と注釈が入る。
『相手は八大地獄です。ロングマンを筆頭としたゴロツキ集団……』
「え、何?八大地獄が?あいつらは神様たちが操ってたんじゃなかったっけ?」
『当初の目的は私たちに絶対服従の都合の良い組織、しかし期待とは裏腹に、蓋を開ければ現実は好き勝手暴れまわる戦闘狂の集まり。今回のケルベロス襲撃に至っても、唐突すぎて狙いが分かりません。そしてそんなことを言っている場合でもない。早急に手を打たねばならない事案なのです』
サトリの必死な喋りでラルフの重い腰が動いた。
「行ってみるか。その場所に」
正直あまり乗り気はしない。だが、仲間のためだと無碍には出来ない。
一行はケルベロス救出のために、ハーフリングの村を目指す。待ち受けるは八大地獄。最後に生き残るのは誰か?
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる