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第十四章 驚天動地

第十話 頑なな態度

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「何ですかそれ……?」

 イミーナはミーシャの言葉に半笑いになる。「真実を話すまでは殺さない」とは、まさに冗談のような話だ。

「私の”真実”は既にお伝えしました。全ては権力を得るため、蒼玉を利用して目の上のたんこぶを取り除こうとしただけのこと……」

「じゃあグラジャラクに早々に見切りをつけて退散したのは?自分の国でしょ?」

「元はあなたの国ですよミーシャ。あなたが攻めて来て劣勢を強いられた。あの場で命を落とすくらいなら、逃げて別の国で再起を図ることを選択したまで。……もう良いでしょう?あなたの言う納得とは私への決めつけに過ぎません。これ以上は無意味であると理解していただきたい」

 頑なな態度で、これ以上は話さないとでも言いたげに口を固く閉じる。その意思が伝わったのか、ミーシャはため息をついた。

「そう……別に良いよ。なら殺さないだけだし」

 ミーシャは踵を返した。扉に手をかけた時、イミーナが勢いよく立ち上がる。

「っ!!……後悔しますよ?私の手に掛かり、あなたはまた死にかけることになるのです!私を生かしておけば、いずれ必ず!私にその機会は訪れる!!忘れないことですね!!」

「ふんっ……そうなったら返り討ちよ」

 勝気を取り戻したイミーナにミーシャは不敵な笑みを返す。その後すぐに退室し、部屋にはイミーナの鼻息の荒さだけが残った。全く意に介さないミーシャの態度にイミーナは苛立ちを募らせる。

(冷静すぎる。ミーシャとは思えないほど理路整然としていた……。蒼玉が行なった記憶の巻き戻し……あれのせいでミーシャが変な知恵をつけたのでは?)

 思えば、完全に記憶が消えていたはずなのに、どうしてまた復活しているのか?単純な話、蒼玉の特異能力が記憶処理に関しては未熟だったのでは無いだろうか?と考えざるを得ない。蒼玉が死んだ今、真実は闇の中だが、それくらいしか思い当たる節がない。

(いや、ラルフのせいか?あの時、ミーシャは何かの力で一時姿をくらませていた。ラルフが何かをしでかした可能性があるか……)

 草臥れたハットのシルエットが、目の前でぼんやり浮かんで来るようだ。ヒューマンで、明らかに弱いあの男が、ミーシャと共に名を轟かせている。白の騎士団の連中がミーシャと絡んでいるならまだ分かるが、一介の盗賊風情が王族を相手取ってタメ口で話し合っているのだから、これこそ信じられないところだ。

「いつの日か、あれとも決着をつけなければならない時が来る。その時を逃さないように、今後はしっかり気をつけていかねば……」

 気持ちを新たに決意表明を心で果たしていると、ドアの音がまた鳴った。しかも今度のは無遠慮にノックもせずにズカズカと入り込んできた。草臥れたハットが印象的な男は、名前をラルフと言った。

「よぉ!イミーナ!元気してたか?」



 ミーシャは気丈に振る舞っていた姿勢を崩して、隣の部屋で待つラルフの元へと向かった。その部屋にはアスロンとラルフ、そしてベルフィアの姿があった。

「お疲れ。やっぱし手強いなイミーナは」

 先の会話を聞いていたような言葉。隣の部屋だからと声が聞こえて来るほど壁は薄くない。どころか、隣人トラブルを避けるためにも部屋はどれも防音仕様である。アスロンの粋な計らいで要塞は飛躍的に住みやすい場所となっている。
 では何故聞こえたのかと問われれば、監視カメラと言うべきもので一部始終を観ていたのだ。浮かんだホログラムには、イミーナが顎に手を当てて悩んでいるのが見えた。

「もう一声って感じだな……よし!俺が見てくるぜ!」

「ラルフが?」

 おもむろに立ち上がるラルフをハラハラドキドキ見つめる。

「ふんっ……ミーシャ様でさえ出来なかっタ イミーナ とノ和解。それを取り持とうと言うノか?」

「ああ、まぁ……怒らせるのは得意なんでね」

 ラルフはそう言うと待機所を後にする。そのまま間髪入れずに扉を開けた。
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