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第三章 勇者
第十五話 夕飯
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「なんじゃこりゃぁ!?」
ブレイドとアルルの家。そこに一泊させてもらうことになったラルフたちは、夕飯を食べる為食卓を六人で囲んでいた。
その中の揚げ物に手を出した瞬間、ラルフは驚いて思わず大声を出した。
「う、美味い!美味すぎる!!豚の肉がここまで美味いなんて…最高だな!!」
豚カツを食べて、興奮冷めやらぬ感じだ。
近くに座っていたベルフィアが怪訝な顔でラルフを見る。ラルフの左側に座っていたので、右耳を手で覆って耳のダメージをアピールする。
「うルさいわ!黙って食えんノか!?」
「おいおい…たく、ベルフィアは分かってねーな。感動は口に出すもんだぜ?そうすることでより一層、幸福になれるんだぜ!」
持論を展開し、当然の事として威張る。
ミーシャも同じ食べ物に手を伸ばし、頬張る。
「これ、おいしぃ~…ブレイドが作ったのよね?素晴らしいわ。誇るべきよ」
「そんなか?まぁ喜んでもらえて何よりだ。作ったかいがあるもんだな…」
ミーシャもラルフ同様に感動している。
ブレイドは慣れない感激ップリにタジタジだ。
その隣でガツガツ音をたてて食べるウィー。
ウィーは沢山の食べ物をお皿に盛りに盛って慌てて食べている。普段こんなに美味しいものを食す事の出来ない彼は、口一杯に幸せを頬張る。
「おいおい、飯を喉に詰まらすぞ?ゆっくり食べな」
と言って近くに飲み水を置く。
ウィーはブレイドの言った通り喉につまらせて、これまた慌てて水を飲んだ。
「ほら、言わんこっちゃない…大丈夫か?」
ウィーに優しく声をかけると、一旦落ち着いて、ブレイドや周りを見渡した。他の奴らもニコニコ笑って見ていた。自分を心配し、見守る視線を受けて、ウィーは涙が零れた。
「ちょっ…本当に大丈夫か?喉、痛かったな。お腹減ってるのは分かるけど、ゆっくり食おうな」
甲斐甲斐しく構うブレイド。ウィーは泣きながらご飯を食べ始める。アルルはそれを見て、
「あ~、ブレイドが泣かした~」
と冗談を言う。「ふざけんなっつーの」と軽くいなしながら、ワイワイ食べる一行。食事が終わる頃には、まるで一つの家族のように和やかに、自家栽培のお茶を啜っていた。
「不思議な奴らだな…」
「ん?何がだ?」
ブレイドはラルフたちを見渡し、
「この世界で、およそ存在しないチームだと思える…。魔族と人が一緒に行動し、まるで旧知の仲のように語り合う。これを不思議と言えないなら何が不思議だろうな…」
ラルフはふっと笑って「確かに」と呟く。
ベルフィアはそれこそ不思議そうな顔をして、
「それはそちノ存在そノもノじゃろ?」
と切り返した。ラルフは苦虫を噛み潰した顔でベルフィアを見る。「それ言う?」といった顔だ。
「事実じゃろうが…妾タちノ時代でさえ、混血は忌み嫌われとっタしノぅ」
歯に衣着せぬ物言いだ。いっそ清々しいが、相手の事を考えない化け物の言い分だ。アルルは”妾たちの時代”とやらが何なのか気になった。
「そんなに長い間生きてるの?」
「そちらに比べればノ。まぁ大半を棺桶ノ中で寝て過ごしとっタから、最近ノ情勢には疎いが、おおヨそ100年前はそんな感じじゃっタぞ?」
10数年しか生きていないブレイドたちには想像できない程、長く生きている。
ミーシャも頷いて同調していることから、最低でも同い年くらいだろうと思われる。魔族は全員長生きらしい。
「いや、すまんな。こいつ空気読めないからほっといてくれ。同種以外を認めない種族だから」
ラルフは手をヒラヒラさせながら、ブレイドに注意喚起する。
「…頭、叩き割ルぞい?」
多少苛立ったのか、ジトッとした眼でベルフィアはラルフを睨み付ける。
「はは…そんなに気にしてない。そんな事より寝るところを作らないとな。倉庫を片付けるからまぁ、ゆっくりしといてくれ」
ブレイドは一人椅子から立ち上がり、振り返らずに出ていった。
「ベルフィア…本当に止めてくれよなぁ…俺らは厚意で泊めさせてもらう客だぞ?失礼の無い様にするのが基本だぜ…」
「あ?」ベルフィアはラルフに対して露骨に苛立ちを見せる。
「そうね。確かにさっきのはダメだと思うわ」
ベルフィアはすっと立ち上がり、ミーシャの前に跪いた。
「はっ!大変申し訳ございません!以後、気を付けて参ります!」
臣下の礼を人前だろうと、恥ずかしげもなくやってのける。まるで忠犬の様な忠実さだ。
アルルはそれを見て、
「あなたたちの関係がいまいち分からないのよ…単なる仲間じゃないよね?」
ラルフはアルルをチラリと見て、うなだれる。
「複雑なんだよ…」
その疲れた顔に複雑さを感じたアルルは空気を読んで乾いた笑いを見せる。
その時、アスロンが動いた。
魔槍アスロンは蛇みたいに刃首をもたげて、外に注意を向ける。
「どうしたのアスロン?」
石突の所をアルルの腕に絡ませて、外に出ようと促している。
「それも不思議な武器だよなぁ。魔道具を多少なりとも見てきたが、自分で動くなんて聞いたことがないぞ?」
「まあね。おじいちゃんが生涯をかけて鍛え上げた武器なんだって。だからおじいちゃんの名前を付けてるの」
死んだ両親から聞いたと続いて重い話になる。相槌も打てず黙ってお茶をすすると、ガタッと椅子からウィーが降りた。
皆が不思議にウィーの方を見ていると、ウィーが弾かれたように家から出た。
「…なんだ?」
座ったまま見ていると、
「アルル!!外に出ろ!!」
とブレイドの声が鳴り響いた。
「なに?」
嫌な予感が駆け巡る。
食卓に残っていた四人は顔を見合わせて、誰からともなく開け放たれた玄関から出た。
そこには柵の前で呆然と立ち尽くすブレイドの姿があった。
「どうしたの?ブレイド」
「…あれ…見ろ」
ブレイドの視線の先は薄暗がりの中に向いている。しかし想像とは違ってそこには松明の明かりが点在している。というより密集して動いている。
「ありゃ大行進だな…つーかこっち来てないか?」
「ああ…確実にこっちに来ている。何でだ?」
疑問が疑問を呼ぶが、骨を鳴らす音が聞こえる。ポキポキという警戒だが軽い音で体を慣らす音が。
「今夜は久々ノ祭りノ様じゃなぁ…ふふふっ…楽しみじゃなぁ」
ベルフィアは戦闘を前にウキウキしている。
「まだそうと決まったわけじゃないだろ…」
ラルフはベルフィアのやる気に水を差す。
「いや、ラルフ。これは戦闘になるよ…」
ミーシャも冷ややかな目でその光景を見ている。
と、ウィーがこちらに向かって手を広げて何かを訴える。
「ウィー!ウィ!ウィウィ、ウィー!」
何をしゃべってるのか不明だが、しきりに慌てている。
「何じゃウィー?いい所なんじゃから、ちょっと黙って…」
「待て、ベルフィア。ウィーの慌てよう…もしかして、あの軍勢はゴブリンか?」
ウィーの必死さがラルフにはちょろっと伝わり、おそらくゴブリンではないかという見方が出た。
「何をいまさら…魔族が松明なんぞ使うか?火を灯りとして使うノは文明ノ証。ゴブリン以外に誰が徒党を組んでまでここに来ルんじゃ?」
それを言われれば確かにその通りであるが、気持ち的にはそうであってほしくない。助けたのに襲いに来るなんてありえない。
「いやでもあり得るか?感謝こそすれ、襲いに来るなんてこと…」
ブレイドはガンブレイドを引き抜き、戦闘に備える。
「そうじゃない事を祈るばかりだ…」
ブレイドとアルルの家。そこに一泊させてもらうことになったラルフたちは、夕飯を食べる為食卓を六人で囲んでいた。
その中の揚げ物に手を出した瞬間、ラルフは驚いて思わず大声を出した。
「う、美味い!美味すぎる!!豚の肉がここまで美味いなんて…最高だな!!」
豚カツを食べて、興奮冷めやらぬ感じだ。
近くに座っていたベルフィアが怪訝な顔でラルフを見る。ラルフの左側に座っていたので、右耳を手で覆って耳のダメージをアピールする。
「うルさいわ!黙って食えんノか!?」
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「これ、おいしぃ~…ブレイドが作ったのよね?素晴らしいわ。誇るべきよ」
「そんなか?まぁ喜んでもらえて何よりだ。作ったかいがあるもんだな…」
ミーシャもラルフ同様に感動している。
ブレイドは慣れない感激ップリにタジタジだ。
その隣でガツガツ音をたてて食べるウィー。
ウィーは沢山の食べ物をお皿に盛りに盛って慌てて食べている。普段こんなに美味しいものを食す事の出来ない彼は、口一杯に幸せを頬張る。
「おいおい、飯を喉に詰まらすぞ?ゆっくり食べな」
と言って近くに飲み水を置く。
ウィーはブレイドの言った通り喉につまらせて、これまた慌てて水を飲んだ。
「ほら、言わんこっちゃない…大丈夫か?」
ウィーに優しく声をかけると、一旦落ち着いて、ブレイドや周りを見渡した。他の奴らもニコニコ笑って見ていた。自分を心配し、見守る視線を受けて、ウィーは涙が零れた。
「ちょっ…本当に大丈夫か?喉、痛かったな。お腹減ってるのは分かるけど、ゆっくり食おうな」
甲斐甲斐しく構うブレイド。ウィーは泣きながらご飯を食べ始める。アルルはそれを見て、
「あ~、ブレイドが泣かした~」
と冗談を言う。「ふざけんなっつーの」と軽くいなしながら、ワイワイ食べる一行。食事が終わる頃には、まるで一つの家族のように和やかに、自家栽培のお茶を啜っていた。
「不思議な奴らだな…」
「ん?何がだ?」
ブレイドはラルフたちを見渡し、
「この世界で、およそ存在しないチームだと思える…。魔族と人が一緒に行動し、まるで旧知の仲のように語り合う。これを不思議と言えないなら何が不思議だろうな…」
ラルフはふっと笑って「確かに」と呟く。
ベルフィアはそれこそ不思議そうな顔をして、
「それはそちノ存在そノもノじゃろ?」
と切り返した。ラルフは苦虫を噛み潰した顔でベルフィアを見る。「それ言う?」といった顔だ。
「事実じゃろうが…妾タちノ時代でさえ、混血は忌み嫌われとっタしノぅ」
歯に衣着せぬ物言いだ。いっそ清々しいが、相手の事を考えない化け物の言い分だ。アルルは”妾たちの時代”とやらが何なのか気になった。
「そんなに長い間生きてるの?」
「そちらに比べればノ。まぁ大半を棺桶ノ中で寝て過ごしとっタから、最近ノ情勢には疎いが、おおヨそ100年前はそんな感じじゃっタぞ?」
10数年しか生きていないブレイドたちには想像できない程、長く生きている。
ミーシャも頷いて同調していることから、最低でも同い年くらいだろうと思われる。魔族は全員長生きらしい。
「いや、すまんな。こいつ空気読めないからほっといてくれ。同種以外を認めない種族だから」
ラルフは手をヒラヒラさせながら、ブレイドに注意喚起する。
「…頭、叩き割ルぞい?」
多少苛立ったのか、ジトッとした眼でベルフィアはラルフを睨み付ける。
「はは…そんなに気にしてない。そんな事より寝るところを作らないとな。倉庫を片付けるからまぁ、ゆっくりしといてくれ」
ブレイドは一人椅子から立ち上がり、振り返らずに出ていった。
「ベルフィア…本当に止めてくれよなぁ…俺らは厚意で泊めさせてもらう客だぞ?失礼の無い様にするのが基本だぜ…」
「あ?」ベルフィアはラルフに対して露骨に苛立ちを見せる。
「そうね。確かにさっきのはダメだと思うわ」
ベルフィアはすっと立ち上がり、ミーシャの前に跪いた。
「はっ!大変申し訳ございません!以後、気を付けて参ります!」
臣下の礼を人前だろうと、恥ずかしげもなくやってのける。まるで忠犬の様な忠実さだ。
アルルはそれを見て、
「あなたたちの関係がいまいち分からないのよ…単なる仲間じゃないよね?」
ラルフはアルルをチラリと見て、うなだれる。
「複雑なんだよ…」
その疲れた顔に複雑さを感じたアルルは空気を読んで乾いた笑いを見せる。
その時、アスロンが動いた。
魔槍アスロンは蛇みたいに刃首をもたげて、外に注意を向ける。
「どうしたのアスロン?」
石突の所をアルルの腕に絡ませて、外に出ようと促している。
「それも不思議な武器だよなぁ。魔道具を多少なりとも見てきたが、自分で動くなんて聞いたことがないぞ?」
「まあね。おじいちゃんが生涯をかけて鍛え上げた武器なんだって。だからおじいちゃんの名前を付けてるの」
死んだ両親から聞いたと続いて重い話になる。相槌も打てず黙ってお茶をすすると、ガタッと椅子からウィーが降りた。
皆が不思議にウィーの方を見ていると、ウィーが弾かれたように家から出た。
「…なんだ?」
座ったまま見ていると、
「アルル!!外に出ろ!!」
とブレイドの声が鳴り響いた。
「なに?」
嫌な予感が駆け巡る。
食卓に残っていた四人は顔を見合わせて、誰からともなく開け放たれた玄関から出た。
そこには柵の前で呆然と立ち尽くすブレイドの姿があった。
「どうしたの?ブレイド」
「…あれ…見ろ」
ブレイドの視線の先は薄暗がりの中に向いている。しかし想像とは違ってそこには松明の明かりが点在している。というより密集して動いている。
「ありゃ大行進だな…つーかこっち来てないか?」
「ああ…確実にこっちに来ている。何でだ?」
疑問が疑問を呼ぶが、骨を鳴らす音が聞こえる。ポキポキという警戒だが軽い音で体を慣らす音が。
「今夜は久々ノ祭りノ様じゃなぁ…ふふふっ…楽しみじゃなぁ」
ベルフィアは戦闘を前にウキウキしている。
「まだそうと決まったわけじゃないだろ…」
ラルフはベルフィアのやる気に水を差す。
「いや、ラルフ。これは戦闘になるよ…」
ミーシャも冷ややかな目でその光景を見ている。
と、ウィーがこちらに向かって手を広げて何かを訴える。
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何をしゃべってるのか不明だが、しきりに慌てている。
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「待て、ベルフィア。ウィーの慌てよう…もしかして、あの軍勢はゴブリンか?」
ウィーの必死さがラルフにはちょろっと伝わり、おそらくゴブリンではないかという見方が出た。
「何をいまさら…魔族が松明なんぞ使うか?火を灯りとして使うノは文明ノ証。ゴブリン以外に誰が徒党を組んでまでここに来ルんじゃ?」
それを言われれば確かにその通りであるが、気持ち的にはそうであってほしくない。助けたのに襲いに来るなんてありえない。
「いやでもあり得るか?感謝こそすれ、襲いに来るなんてこと…」
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