19 / 718
第一章 出会い
第十八話 それぞれの思惑
しおりを挟む
ベルフィアは人狼との戦いにおいてかなり有利に事を運んでいた。
というのも先程から人狼の基本能力を高めに考えて攻撃を繰り出していたが、どうも強いのは一点血掌で胸をついたあの一匹と隊長と呼ばれるこの一匹の二匹だけのようだ。
まだいたのかもしれないが、その悉くをミーシャが瞬殺したので、定かではない。
雑魚は身体強化の三発ほどで沈んだので下級魔族よりは強いのだろうが大したことはない。三対一だった戦闘を早めに一対一に持ち込めたのはベルフィアとしては大きかった。
だがここから戦闘は遅々として進まず焦りを感じることになる。隊長だけは、能力が一つ、いや二つは上だったからだ。
じりじりと身を焼くような、しかし見ようによっては芸術とさえいえる素晴らしい戦いが繰り広げられている。
爪で突けばそれをいなし、返す拳を繰り出せば空いた手で受け流す。蹴りが飛べば、蹴りで返し。大ぶりの攻撃は紙一重で避ける。特殊技能を使えばそれを打ち消し、致命傷を避ける。
一進一退の攻防は、ともすれば演武のように華麗に映る。示し合わせたような技の応酬はいつまでも続くと思われた。が、隊長とベルフィアにとってこの状況はすぐにでも終わらせたい戦闘だった。
隊長はすぐにでも撤退したい。ベルフィアはミーシャに不甲斐ない姿をさらし続けるわけにはいかない。
早期決着をつけたい両者の思惑は拮抗してしまった能力が邪魔をして終わらない戦闘を続ける羽目になっていた。
ベルフィアと人狼が必殺の一撃で打ち合い、ガギンッという鋼鉄同士をぶつけた音が辺りに響いたあと、一度間合いを開け戦闘体勢のまま向かい合う。
「貴様…何者ダ?タダノ女デハナイナ…」
「そちこそ、タだノ人狼ではあルまい?純血統種ノ人狼かノぅ?」
「馬鹿ニシテイルノカ?我ラハ全テ純血ダ」
「ふっふ!それにしては能力に差があルヨうじゃが?一体どこで何をまちがっタらこうなるんじゃ?」
ベルフィアが三発程度で死んだ人狼を指差しケラケラ笑いながら、侮辱する。隊長は苛立ちを覚える。一族を馬鹿にされるのは腹に据えかねた。
しかし挑発に乗るのは愚作、実力が拮抗している現状で無闇に飛び込めば返り討ちに会う。
ベルフィアも簡単に挑発に乗らない敵に、苛立ちを覚える。自分が不死身と言われたこの肉体でなければ四度目の激突で命を絶たれている。
こちらの攻撃は全てかすり傷、必殺の間合いを悉く外してくる。それにしては必殺の一撃を、悉く入れてくる。
ただの反応速度だけだと、追い付けない技術において人狼はベルフィアを上回っている。実践経験の差が段違いだった。
死の驚異がほとんど無いから、避けることを忘れているせいでもあるが、これは言い訳である。
ミーシャは二人の戦いを興味深そうに見ていた。
人狼の戦い方はよく言えば堅実、悪く言えば花がない。典型的なモンクタイプの戦闘方法。フェイントと数々の戦闘で培われたであろう体捌きを駆使して隙を見つけては渾身の一撃を叩き込む。
対してベルフィアは変幻自在の動きを見せるが、踏み込んだ必殺の一撃に関しては直線的になる。確実に急所を狙っていくその姿勢は魔獣そのもの。しかしそれゆえに行動がパターン化しているところがあり、その隙を身体能力で補っている。弱者には強いが、実力が拮抗する者には途端に弱い。
ベルフィアは回復能力に助けられ、人狼はベルフィアのパターン化した攻撃方法に助けられていた。
戦闘中に気づいていたが改めて思う、この勝負ジリ貧になれば、間違いなくベルフィアが勝利する。体力が続く限りでしか戦えないモンクタイプの人狼。ベルフィアの再生能力を遅らせる様な特殊技がない限り勝ち目はない。
人狼がいつ切り札を切るのか、それが楽しみだった。
「いつまでそうしとルつもりじゃ?はヨう来んかい」
ミーシャとベルフィアの視線を外す、その方法を考えていた人狼は動けずにいた。
ベルフィアを殺すことは早々に諦めている。再生能力が異常だからだ。攻撃を加えたそばから再生する。まるで映像の巻き戻しのように現実味を帯びない再生方法にしっぽを巻いて逃げたい気持ちばかりが頭の中でぐるぐる回っていた。
と、その時、足元にコロコロと小さな黒い玉が転がってきた。人狼もベルフィアも見たことがある玉。効能もこの目で見たが、なぜ今ここにあるのか二人とも理解できずにいた。一瞬戦闘も忘れその玉に釘付けになる。
ボフッという音とともに煙がその場に吹き上がる。
「「煙幕!?」」
「!」
突然の煙に虚を突かれる二人と一柱。こんな小賢しい真似をするのは一人しかいない。
「ラルフ!!何ノ真似じゃ!!?」
ベルフィアは後ろを振り向く、それに釣られてミーシャも後ろを振り向いてしまうが誰もいない。
人狼は今がチャンスと脱兎のごとく逃げ出す。
「逃がすかぁ!!」
ベルフィアは追いかけるため煙に向かって突撃する。
そこに投げナイフが4本ベルフィアの胸部に刺さる。
だが関係なしとそのまま来る。
さらにでかいダガーがベルフィアの頭に投げつけられた。煙から急に出てきたダガーを避けきれず、右目に直撃しその重量と右目の喪失でノックバックして後ろに倒れてしまう。
体を起こすと煙が晴れだす。そのころには完全に見失ってしまった。
ダガーを右目から引き抜き、そのまま握りつぶす。
当然のように右目はダガーを抜いた矢先に復活していた。
「…ラァルゥフゥ…」
苛立ちからいつもの余裕が消え般若の形相で名前を吐き出す。
「あぁーっ!」
城内から大声が聞こえる。改めて目をやるとそこには、左手をかばってヒョコヒョコ動くラルフがいた。
「お前なんてことしやがる!俺の愛用の武器だぞ!」
「ラルフゥ…おんどりゃぁぁ…」
ベルフィアは血管を浮かせ、ラルフを睨み付ける。ラルフはその様子に心底震えるが、ミーシャはベルフィアの目の前に立ち、手を出して行動を制する。上位者に出てこられたら感情を殺すほかない。ベルフィアは興奮しながらも立ち尽くす。
「ラルフ…どういうことだ?あれらはお前の武器だろう?」
そのセリフには「事と次第によっては…」という言葉が隠されていた。発言を間違えれば殺されるかもしれない。
「取られたんだよ!人狼の生き残りが城内に入ってきやがったんだ!戦闘になったが、この通り腕を折られちまった!」
「え!折れたのか?大丈夫かラルフ…」
ミーシャはラルフに安否を確認する。
ベルフィアはこの一連の動きに我慢が利かなくなった。
「待ってください魔王様!無事じゃないにしろ何故こやつは生きとルんですか!?懐をまさぐられルほど接近を許しタんですヨ!?」
その言葉は納得の一言だった。敵である人狼が脆弱な人間を生かすほどお優しい種族なのか?
「ふむ一理あるな、どうだラルフ?」
お奉行様のような物言いに少し困惑するラルフだったが、ミーシャを納得させればこの場が収まる事に気づく。今まさにベルフィアが示してくれた。
「そいつはしょうがないだろ…殺されかけたんだ。何とか許してもらうために武器を放棄する他なかったんだ」
ラルフは続けて発言する。
「それにベルフィアが追い詰めてたやつを助けるために飛び出していきやがったからこそ助かったんだ。仲間を助けるために時間がなかったのも俺の命のつなぎに一役買ったってとこだろうぜ」
ラルフの発言を要約するとすべて運が絡んだ結果と言う事だ。ラルフの戦闘を見てない以上、真偽を確かめる方法はない。
それに武器の放棄に関してはミーシャに脅された時
同じことをしたので、ミーシャには納得できることだった。
「…仕方ない、ラルフは弱いからな」
「魔王様!?」
ラルフの勝利である。ミーシャがラルフに甘いのも考慮してもこのような杜撰な結果になった事実に、ベルフィアは呆気にとられる。
「しかしなラルフ、いくら弱いとはいえ限度があるぞ。少しは鍛えたらいいんじゃないか?」
「まぁ…な」
下級悪魔にすら勝てない一般人レベルのラルフに中級悪魔を殺せというのは酷な話だが、話を合わせておく。
「くぅあああ!!」
ボギャッ
ベルフィアがムカついて木に八つ当たりをしている。
太い幹は軽々と折れてその威力を如実に表している。
それもそのはず、ミーシャが自分に味方をしないことはもちろんの事、ラルフが人狼の逃亡の機会を生んでしまった事は事実だ。
それに自分が助かるためだけにあの人狼を全回復させたのもそうだ。その件に関しては二人は知る由もないのでラルフ個人の問題だが、影の戦犯ラルフは命の危機は、一応去ったと安堵した。
と同時に不味い状況になったことはぬぐえない。事も在ろうにミーシャが生きていることを知られたのは痛い。
「魔王様はラルフに甘すぎルと思うノですが…」
「悪い?」
「いえ…しかし、裏切られてからでは遅いことだけ肝に銘じておいてください…すでに考慮済みとは存じますが…あえていわせていタだきます」
ミーシャはフンッと鼻で笑い、そっぽを向く。傲岸不遜といった態度だが、(そうなったらいやだな…)という思いが心で渦巻いた。
ミーシャは信じていた家臣の裏切りから、心のよりどころを求めていたのだ。そのことに気づいてしまったせいでベルフィアの目をまともに見られなかった。
「その時はその時だ。脆弱な人間に何ができるんだ?」
そんな心の機微を知られたくなかったミーシャは
ベルフィアに強気に出る。ベルフィアは目を伏せ、それ以上の追及はしない。
「…どうすっかなー…これから…」
ラルフは誰にも聞かれることのない独り言で天を仰いだ。
というのも先程から人狼の基本能力を高めに考えて攻撃を繰り出していたが、どうも強いのは一点血掌で胸をついたあの一匹と隊長と呼ばれるこの一匹の二匹だけのようだ。
まだいたのかもしれないが、その悉くをミーシャが瞬殺したので、定かではない。
雑魚は身体強化の三発ほどで沈んだので下級魔族よりは強いのだろうが大したことはない。三対一だった戦闘を早めに一対一に持ち込めたのはベルフィアとしては大きかった。
だがここから戦闘は遅々として進まず焦りを感じることになる。隊長だけは、能力が一つ、いや二つは上だったからだ。
じりじりと身を焼くような、しかし見ようによっては芸術とさえいえる素晴らしい戦いが繰り広げられている。
爪で突けばそれをいなし、返す拳を繰り出せば空いた手で受け流す。蹴りが飛べば、蹴りで返し。大ぶりの攻撃は紙一重で避ける。特殊技能を使えばそれを打ち消し、致命傷を避ける。
一進一退の攻防は、ともすれば演武のように華麗に映る。示し合わせたような技の応酬はいつまでも続くと思われた。が、隊長とベルフィアにとってこの状況はすぐにでも終わらせたい戦闘だった。
隊長はすぐにでも撤退したい。ベルフィアはミーシャに不甲斐ない姿をさらし続けるわけにはいかない。
早期決着をつけたい両者の思惑は拮抗してしまった能力が邪魔をして終わらない戦闘を続ける羽目になっていた。
ベルフィアと人狼が必殺の一撃で打ち合い、ガギンッという鋼鉄同士をぶつけた音が辺りに響いたあと、一度間合いを開け戦闘体勢のまま向かい合う。
「貴様…何者ダ?タダノ女デハナイナ…」
「そちこそ、タだノ人狼ではあルまい?純血統種ノ人狼かノぅ?」
「馬鹿ニシテイルノカ?我ラハ全テ純血ダ」
「ふっふ!それにしては能力に差があルヨうじゃが?一体どこで何をまちがっタらこうなるんじゃ?」
ベルフィアが三発程度で死んだ人狼を指差しケラケラ笑いながら、侮辱する。隊長は苛立ちを覚える。一族を馬鹿にされるのは腹に据えかねた。
しかし挑発に乗るのは愚作、実力が拮抗している現状で無闇に飛び込めば返り討ちに会う。
ベルフィアも簡単に挑発に乗らない敵に、苛立ちを覚える。自分が不死身と言われたこの肉体でなければ四度目の激突で命を絶たれている。
こちらの攻撃は全てかすり傷、必殺の間合いを悉く外してくる。それにしては必殺の一撃を、悉く入れてくる。
ただの反応速度だけだと、追い付けない技術において人狼はベルフィアを上回っている。実践経験の差が段違いだった。
死の驚異がほとんど無いから、避けることを忘れているせいでもあるが、これは言い訳である。
ミーシャは二人の戦いを興味深そうに見ていた。
人狼の戦い方はよく言えば堅実、悪く言えば花がない。典型的なモンクタイプの戦闘方法。フェイントと数々の戦闘で培われたであろう体捌きを駆使して隙を見つけては渾身の一撃を叩き込む。
対してベルフィアは変幻自在の動きを見せるが、踏み込んだ必殺の一撃に関しては直線的になる。確実に急所を狙っていくその姿勢は魔獣そのもの。しかしそれゆえに行動がパターン化しているところがあり、その隙を身体能力で補っている。弱者には強いが、実力が拮抗する者には途端に弱い。
ベルフィアは回復能力に助けられ、人狼はベルフィアのパターン化した攻撃方法に助けられていた。
戦闘中に気づいていたが改めて思う、この勝負ジリ貧になれば、間違いなくベルフィアが勝利する。体力が続く限りでしか戦えないモンクタイプの人狼。ベルフィアの再生能力を遅らせる様な特殊技がない限り勝ち目はない。
人狼がいつ切り札を切るのか、それが楽しみだった。
「いつまでそうしとルつもりじゃ?はヨう来んかい」
ミーシャとベルフィアの視線を外す、その方法を考えていた人狼は動けずにいた。
ベルフィアを殺すことは早々に諦めている。再生能力が異常だからだ。攻撃を加えたそばから再生する。まるで映像の巻き戻しのように現実味を帯びない再生方法にしっぽを巻いて逃げたい気持ちばかりが頭の中でぐるぐる回っていた。
と、その時、足元にコロコロと小さな黒い玉が転がってきた。人狼もベルフィアも見たことがある玉。効能もこの目で見たが、なぜ今ここにあるのか二人とも理解できずにいた。一瞬戦闘も忘れその玉に釘付けになる。
ボフッという音とともに煙がその場に吹き上がる。
「「煙幕!?」」
「!」
突然の煙に虚を突かれる二人と一柱。こんな小賢しい真似をするのは一人しかいない。
「ラルフ!!何ノ真似じゃ!!?」
ベルフィアは後ろを振り向く、それに釣られてミーシャも後ろを振り向いてしまうが誰もいない。
人狼は今がチャンスと脱兎のごとく逃げ出す。
「逃がすかぁ!!」
ベルフィアは追いかけるため煙に向かって突撃する。
そこに投げナイフが4本ベルフィアの胸部に刺さる。
だが関係なしとそのまま来る。
さらにでかいダガーがベルフィアの頭に投げつけられた。煙から急に出てきたダガーを避けきれず、右目に直撃しその重量と右目の喪失でノックバックして後ろに倒れてしまう。
体を起こすと煙が晴れだす。そのころには完全に見失ってしまった。
ダガーを右目から引き抜き、そのまま握りつぶす。
当然のように右目はダガーを抜いた矢先に復活していた。
「…ラァルゥフゥ…」
苛立ちからいつもの余裕が消え般若の形相で名前を吐き出す。
「あぁーっ!」
城内から大声が聞こえる。改めて目をやるとそこには、左手をかばってヒョコヒョコ動くラルフがいた。
「お前なんてことしやがる!俺の愛用の武器だぞ!」
「ラルフゥ…おんどりゃぁぁ…」
ベルフィアは血管を浮かせ、ラルフを睨み付ける。ラルフはその様子に心底震えるが、ミーシャはベルフィアの目の前に立ち、手を出して行動を制する。上位者に出てこられたら感情を殺すほかない。ベルフィアは興奮しながらも立ち尽くす。
「ラルフ…どういうことだ?あれらはお前の武器だろう?」
そのセリフには「事と次第によっては…」という言葉が隠されていた。発言を間違えれば殺されるかもしれない。
「取られたんだよ!人狼の生き残りが城内に入ってきやがったんだ!戦闘になったが、この通り腕を折られちまった!」
「え!折れたのか?大丈夫かラルフ…」
ミーシャはラルフに安否を確認する。
ベルフィアはこの一連の動きに我慢が利かなくなった。
「待ってください魔王様!無事じゃないにしろ何故こやつは生きとルんですか!?懐をまさぐられルほど接近を許しタんですヨ!?」
その言葉は納得の一言だった。敵である人狼が脆弱な人間を生かすほどお優しい種族なのか?
「ふむ一理あるな、どうだラルフ?」
お奉行様のような物言いに少し困惑するラルフだったが、ミーシャを納得させればこの場が収まる事に気づく。今まさにベルフィアが示してくれた。
「そいつはしょうがないだろ…殺されかけたんだ。何とか許してもらうために武器を放棄する他なかったんだ」
ラルフは続けて発言する。
「それにベルフィアが追い詰めてたやつを助けるために飛び出していきやがったからこそ助かったんだ。仲間を助けるために時間がなかったのも俺の命のつなぎに一役買ったってとこだろうぜ」
ラルフの発言を要約するとすべて運が絡んだ結果と言う事だ。ラルフの戦闘を見てない以上、真偽を確かめる方法はない。
それに武器の放棄に関してはミーシャに脅された時
同じことをしたので、ミーシャには納得できることだった。
「…仕方ない、ラルフは弱いからな」
「魔王様!?」
ラルフの勝利である。ミーシャがラルフに甘いのも考慮してもこのような杜撰な結果になった事実に、ベルフィアは呆気にとられる。
「しかしなラルフ、いくら弱いとはいえ限度があるぞ。少しは鍛えたらいいんじゃないか?」
「まぁ…な」
下級悪魔にすら勝てない一般人レベルのラルフに中級悪魔を殺せというのは酷な話だが、話を合わせておく。
「くぅあああ!!」
ボギャッ
ベルフィアがムカついて木に八つ当たりをしている。
太い幹は軽々と折れてその威力を如実に表している。
それもそのはず、ミーシャが自分に味方をしないことはもちろんの事、ラルフが人狼の逃亡の機会を生んでしまった事は事実だ。
それに自分が助かるためだけにあの人狼を全回復させたのもそうだ。その件に関しては二人は知る由もないのでラルフ個人の問題だが、影の戦犯ラルフは命の危機は、一応去ったと安堵した。
と同時に不味い状況になったことはぬぐえない。事も在ろうにミーシャが生きていることを知られたのは痛い。
「魔王様はラルフに甘すぎルと思うノですが…」
「悪い?」
「いえ…しかし、裏切られてからでは遅いことだけ肝に銘じておいてください…すでに考慮済みとは存じますが…あえていわせていタだきます」
ミーシャはフンッと鼻で笑い、そっぽを向く。傲岸不遜といった態度だが、(そうなったらいやだな…)という思いが心で渦巻いた。
ミーシャは信じていた家臣の裏切りから、心のよりどころを求めていたのだ。そのことに気づいてしまったせいでベルフィアの目をまともに見られなかった。
「その時はその時だ。脆弱な人間に何ができるんだ?」
そんな心の機微を知られたくなかったミーシャは
ベルフィアに強気に出る。ベルフィアは目を伏せ、それ以上の追及はしない。
「…どうすっかなー…これから…」
ラルフは誰にも聞かれることのない独り言で天を仰いだ。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる