61 / 151
第六十話 食事会
しおりを挟む
案内されたのは豪華なホテルのビュッフェコーナーだった。
沢山食べるだろうことを考慮してか、好きなものが分からないので好きなものを取れることを考慮してか、あるいはそのどちらも理由に入ってそうな選択だった。
「なんだこれは?凄くうまそうだな!」「なんか楽しみ~」
ヤシャはその豪華さに舌を巻きつつよだれが出る。マレフィアも自分で取りに行く方式は初めてなのでワクワクしていた。
「喜んでいただけて何よりです」
自分たちの席に案内され、荷物を置くと滝澤が口を開く。
「それではお皿を取って、好きなものを取りましょう。菊池は席で待っていなさい」
「承知いたしました」
菊池は滝澤の命令に即答し、席に座る。
菊池がいつもの調子が戻って来た事に満足している。
「あ、そうだ。ポイ子も座って待ってろ」
「え?何でですか?」
ポイ子は本気のきょとん顔で春田に抗議する。言わずもがな彼女はポイズンスライム。万が一、食中毒がこの会場内で起こればホテルに多額の損害を与えてしまう。毒物が検出されれば、単なる食中毒で済まず、テロと報道される可能性も少なくない上、また魔法を使っての隠ぺい工作を図らなければならない。
「菊池が待ちますからポイ子さんもどうぞ」
「わーい」子供っぽく可愛く振舞う。本人も毒をばらまきたいわけではない事くらい分かっているが、この見た目に騙されては痛い目を見る。
春田たちを伴ってお皿が積み上げられた場所に行く。
「なるほど。この盆を持って皿の上に食べ物を置いていく方式か」
「そうだ。食べ物の前にはそれぞれ取るものが設置してあるから、専用の器具で皿に盛って行くんだ」
後ろにいるポイ子に振り向き。春田のお盆に皿を二つ乗っけた。
「こっちがポイ子の皿。んで、こっちが俺の皿だ」
「取ってくれるんですか?」
ポイ子は感激している。
「いいか?絶対食料に触るなよ?トングもお箸もおたまとかの専用器具にも触るな。お前が触ったら何もかもお終いだ。欲しいものがあれば俺に全部言え」
「はい!」元気のいい返事でニコニコ嬉しそうになった。
「おい聖也。甘やかすな。自分の物は自分に取らせるのが……」といった所でマレフィアから小突かれる。
「ポイ子ンの種族は?」
それを聞いた時、嫉妬の気持ちが失速し、理解が追い付く。
「如何されました?」
「何でもないよ。とっとと取ろうぜ」
………
ヤシャの前にはたくさんの皿が詰み上がっていた。
「これは……予想をはるかに超えますね……」
滝澤も驚きの食事量だった。そして、取ったおかずは全て残さず、骨だろうが殻だろうが口に放り込んではバリバリボリボリ食べられる物は全てなくなる。ハマグリの酒蒸しを貝の殻ごと行こうとした時は流石に止めたが、「骨も殻も変わらん」と豪快に全部いった。
「む……無茶苦茶だ……」
これには菊池もドン引き。
「あー……気にしないでくれ。こいつ体頑丈だからレスラーとかの類と思ってくれたら当てはまるかな?」
「凄い体格の良い方ですものね。なのに引き締まっているのは鍛えられているのでしょうか?」
お皿をウェイターに片づけてもらっている間にヤシャが一息つく。
「まぁそうだな。生半可ではここまで鍛え上げられないぞ?私も実は結構努力してこの力を手に入れたんだ」
袖をまくり上げ、力こぶを見せる。「はぁ~」と感心する滝澤に、ふふんと得意気になり意気揚々と話始める。
「何より大事なのは諦めず邁進する事だな。自分の目標を定め、そこを目指して日々精進だ」
人生の先輩風を吹かす。だが、相応の成果を見せられれば、菊池もヤシャの筋肉には脱帽する。
自身の1.5倍はありそうな力瘤は女性にしては筋肉が付きすぎともいえる。常人では到達しえない領域に立っている彼女は生まれ育ちが他と明らかに違うのだろうと教えられた。傲岸不遜でお嬢様に悪影響を与えかねない彼女は認めたくないが本物だ。
「菊地よ。そう凹むのではない。種族の違いこそお前たち人間と私を隔てる壁ではあるが、お前も強くなれる」
「しゅ?」ヤシャは鬼であり、人間とは隔絶した差がある。言いたいことは分かるが、現在のヤシャは人間に見えるよう魔法で弄っている。自分で正体をバラしていくのは馬鹿である。
「ヤシャっちは体の作りが違うから~、この子の言ってることは聞き流して~」
ヤシャも自分で言ったことは間違いがあったと感じ、席を立って新しい食べ物を取りに行った。
「まだ食うのか……」
誤魔化しでホテルの食料を食いつくしてしまいそうだ…。
沢山食べるだろうことを考慮してか、好きなものが分からないので好きなものを取れることを考慮してか、あるいはそのどちらも理由に入ってそうな選択だった。
「なんだこれは?凄くうまそうだな!」「なんか楽しみ~」
ヤシャはその豪華さに舌を巻きつつよだれが出る。マレフィアも自分で取りに行く方式は初めてなのでワクワクしていた。
「喜んでいただけて何よりです」
自分たちの席に案内され、荷物を置くと滝澤が口を開く。
「それではお皿を取って、好きなものを取りましょう。菊池は席で待っていなさい」
「承知いたしました」
菊池は滝澤の命令に即答し、席に座る。
菊池がいつもの調子が戻って来た事に満足している。
「あ、そうだ。ポイ子も座って待ってろ」
「え?何でですか?」
ポイ子は本気のきょとん顔で春田に抗議する。言わずもがな彼女はポイズンスライム。万が一、食中毒がこの会場内で起こればホテルに多額の損害を与えてしまう。毒物が検出されれば、単なる食中毒で済まず、テロと報道される可能性も少なくない上、また魔法を使っての隠ぺい工作を図らなければならない。
「菊池が待ちますからポイ子さんもどうぞ」
「わーい」子供っぽく可愛く振舞う。本人も毒をばらまきたいわけではない事くらい分かっているが、この見た目に騙されては痛い目を見る。
春田たちを伴ってお皿が積み上げられた場所に行く。
「なるほど。この盆を持って皿の上に食べ物を置いていく方式か」
「そうだ。食べ物の前にはそれぞれ取るものが設置してあるから、専用の器具で皿に盛って行くんだ」
後ろにいるポイ子に振り向き。春田のお盆に皿を二つ乗っけた。
「こっちがポイ子の皿。んで、こっちが俺の皿だ」
「取ってくれるんですか?」
ポイ子は感激している。
「いいか?絶対食料に触るなよ?トングもお箸もおたまとかの専用器具にも触るな。お前が触ったら何もかもお終いだ。欲しいものがあれば俺に全部言え」
「はい!」元気のいい返事でニコニコ嬉しそうになった。
「おい聖也。甘やかすな。自分の物は自分に取らせるのが……」といった所でマレフィアから小突かれる。
「ポイ子ンの種族は?」
それを聞いた時、嫉妬の気持ちが失速し、理解が追い付く。
「如何されました?」
「何でもないよ。とっとと取ろうぜ」
………
ヤシャの前にはたくさんの皿が詰み上がっていた。
「これは……予想をはるかに超えますね……」
滝澤も驚きの食事量だった。そして、取ったおかずは全て残さず、骨だろうが殻だろうが口に放り込んではバリバリボリボリ食べられる物は全てなくなる。ハマグリの酒蒸しを貝の殻ごと行こうとした時は流石に止めたが、「骨も殻も変わらん」と豪快に全部いった。
「む……無茶苦茶だ……」
これには菊池もドン引き。
「あー……気にしないでくれ。こいつ体頑丈だからレスラーとかの類と思ってくれたら当てはまるかな?」
「凄い体格の良い方ですものね。なのに引き締まっているのは鍛えられているのでしょうか?」
お皿をウェイターに片づけてもらっている間にヤシャが一息つく。
「まぁそうだな。生半可ではここまで鍛え上げられないぞ?私も実は結構努力してこの力を手に入れたんだ」
袖をまくり上げ、力こぶを見せる。「はぁ~」と感心する滝澤に、ふふんと得意気になり意気揚々と話始める。
「何より大事なのは諦めず邁進する事だな。自分の目標を定め、そこを目指して日々精進だ」
人生の先輩風を吹かす。だが、相応の成果を見せられれば、菊池もヤシャの筋肉には脱帽する。
自身の1.5倍はありそうな力瘤は女性にしては筋肉が付きすぎともいえる。常人では到達しえない領域に立っている彼女は生まれ育ちが他と明らかに違うのだろうと教えられた。傲岸不遜でお嬢様に悪影響を与えかねない彼女は認めたくないが本物だ。
「菊地よ。そう凹むのではない。種族の違いこそお前たち人間と私を隔てる壁ではあるが、お前も強くなれる」
「しゅ?」ヤシャは鬼であり、人間とは隔絶した差がある。言いたいことは分かるが、現在のヤシャは人間に見えるよう魔法で弄っている。自分で正体をバラしていくのは馬鹿である。
「ヤシャっちは体の作りが違うから~、この子の言ってることは聞き流して~」
ヤシャも自分で言ったことは間違いがあったと感じ、席を立って新しい食べ物を取りに行った。
「まだ食うのか……」
誤魔化しでホテルの食料を食いつくしてしまいそうだ…。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる