上 下
15 / 19

第15話 討伐作戦開始

しおりを挟む
 翌日から、王国の北側へと向かう。
悪魔の祝福の討伐作戦に参加するのは、王宮聖騎士団、魔道師団と有志で集まったBランク以上の冒険者たちだ。

 王都にも戦力は残しておかないと、いざという時に困るので、最低限の戦力は残し、あとは全て悪魔の祝福の魔獣討伐チームに振っていく。

「アリーセ、おはよう。昨日はよく寝れましたか?」
「はい、ちゃんと寝たので魔力もバッチリです!」

 王宮の庭には騎士団と魔道士団の馬車が7台停車していた。
アリーセは白衣をドレスの上から羽織っている。

「それならよかった。そろそろ出発になります。アリーセは私と同じ馬車に乗ってください」
「分かりました」

 ダイン様の手を借りて、アリーセは馬車に乗り込む。
ここから、魔獣が大量発生している、北側までは半日ほどかかる。
今日の夕方には到着するという計算だ。

「では、出発する!」

 ダインの声で、馬車が連なって出発する。
馬車はゆっくりと動き始めた。

 ダインはアリーセの隣の席に座っている。

「緊張していますか?」
「まあ、少し」
「大丈夫。この剣がある限り、あなたに魔獣の攻撃は届くことはありません」

 ダインがアリーセの震える手を握った。

「ありがとうございます」
「まだ、時間がかかりますから休んでいてください。本番は明日です」

 学者の計算によれば、明日が悪魔の祝福の当日だという。
今日は魔獣の出現予定の場所から一番近い街で一泊する予定だ。

 馬車は順調に進んでいく。
途中、休憩を挟んで談笑する。

「アリーセさんの治癒術はすごいんだ! こんなデカい傷も跡形もなく消えちまったんだからよ」
「僕も折れた骨を治してもらいましたけど、あんな治癒精霊術は初めてです」
「アリーセさんが居れば百人力よ!」
 
 アリーセが以前助けた騎士たちから、賞賛の声が上がる。

「ふふふ、ありがとうございます」
「なにしろ、アリーセさんは美人さんだからなぁ。団長が羨ましいっすよ」
「彼女に手を出したら殺すぞ」

 ダインがドスの効いた声で言った。

「団長、声がマジすぎますって。愛されてますねー」
「うんうん、団長がこんなんなっちゃうとはねぇ」
「なんて、プロポーズされたんですか?」

 騎士団の人たちから質問責めされる。

「それはまあ、カッコいいこと言ってましたっかね」

 アリーセはニコッと笑って言った。
休憩を終えて、馬車はまた進み始める。

「騎士団の連中とも馴染めているようで良かった」

 隣に座るダインが言った。

「そうですね。治癒するのにも信頼関係があった方がいいですから」

 どこの誰かもわからない人間に怪我の治療をされるのは、少なからず不安が残るものである。
アリーセはその不安要素をできるだけ取り除いておきたかったのだ。

「さすがは、陛下が認めた治癒師だな」

 そして、日が傾いてきた頃、目的の街に到着したのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~

サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――

【完結】虐げられてきた侯爵令嬢は、聖女になったら神様にだけは愛されています〜神は気まぐれとご存知ない?それは残念でした〜

葉桜鹿乃
恋愛
アナスタシアは18歳の若さで聖女として顕現した。 聖女・アナスタシアとなる前はアナスタシア・リュークス侯爵令嬢。婚約者は第三王子のヴィル・ド・ノルネイア。 王子と結婚するのだからと厳しい教育と度を超えた躾の中で育ってきた。 アナスタシアはヴィルとの婚約を「聖女になったのだから」という理由で破棄されるが、元々ヴィルはアナスタシアの妹であるヴェロニカと浮気しており、両親もそれを歓迎していた事を知る。 聖女となっても、静謐なはずの神殿で嫌がらせを受ける日々。 どこにいても嫌われる、と思いながら、聖女の責務は重い。逃げ出そうとしても王侯貴族にほとんど監禁される形で、祈りの塔に閉じ込められて神に祈りを捧げ続け……そしたら神が顕現してきた?! 虐げられた聖女の、神様の溺愛とえこひいきによる、国をも傾かせるざまぁからの溺愛物語。 ※HOT1位ありがとうございます!(12/4) ※恋愛1位ありがとうございます!(12/5) ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義にて連載開始しました。改稿版として内容に加筆修正しています。

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~

サイコちゃん
恋愛
聖人ヴィンスの運命の番である聖女ウルティアは発見した時すでに壊れていた。発狂へ導いた犯人は彼女の妹システィアである。天才宮廷魔術師クレイグの手を借り、ヴィンスは復讐を誓う。姉ウルティアが奪われた全てを奪い返し、与えられた苦痛全てを返してやるのだ――

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます

天宮有
恋愛
 聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。  それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。  公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。  島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。  その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。  私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

処理中です...