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第12話 初依頼

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「そして、これは別件何だが、アリーセさんに頼みたいことがある」

 一呼吸置いて陛下が切り出した。

「はい、何でしょうか?」
「実は今、王国の北側に魔獣の群れが近づいていると報告を受けた。その数、1万」
「本当なんですか!?」
「残念ながら本当だ」

 数年に一度、魔獣が大量に発生する日がある。
それを人々は悪魔の祝福と呼んだ。

「もしかして、悪魔の祝福ですか?」
「知っているのか」
「ええ、聞いたことある程度ですけど」

 悪魔の祝福を抑えるのに、今まで何人もの犠牲を払って来た。
まだ若い騎士たちが王国のために命を落としているのだ。

「そこで私からのお願いだ。アリーセさんも現場に行ってくれないだろうか? 君の治癒の力ならなら犠牲を抑えることができるかもしれん」
「待ってください!」

 アリーセが反応するよりも先に、ダイン様が反応した。

「陛下、あまりにも危険すぎます。そんな、魔獣だらけの場所に彼女を送るなんて」
「お前が守ればいい。お前は惚れた女も守れんような柔な男じゃないと思うが」

 陛下がニヤッとした表情を浮かべた。

「ダイン様も行くんですよね?」
「はい、そうですね。これでも王国の騎士団長ですから」
「なら、私も行きます! この力が、誰かの役に立つなら使いたいんです!」

 この時、ダインは思った。
アリーセは、強いんじゃない……捨て身なんだと。

 今まで誰にも大切にされて来なかったから、誰かに大切にされるということを知らないんだ。

「あなたは、もっと自分を大切にした方がいい」

 アリーセはダインに抱きしめられる。

「でも、ダイン様が大怪我しても私なら治せます。私も行かせてください」
「アリーセがそこまで言うなら。一緒に行こうか。あなたのことはこの命に変えてでも守ると誓いましょう」

 そう言って、さらにきつく抱きしめられる。

「私、命を粗末にする方は嫌いですよ」
「はは、これは参ったな」

 ダインの顔に再び笑顔が戻る。

「オッホン!」

 陛下が咳払いする。

「2人とも、私も居ること忘れてない?」
「失礼しました」

 ダインはアリーセを解放する。

「そういうのは、帰ってからやってくれ。私からの話は以上だ」
「わかりました」
「詳しい討伐作戦についてはダインに聞いてくれ」
 
 陛下の話が終わると、王宮内にあるアリーセの仕事部屋へと案内してくれた。

「こちら、ご自由にお使いください」

 王宮の従者はそう言うと下がる。

「かなりいいい部屋ですね」

 作業用の机にソファー、本棚、医療関係の本、ポーションや医療セットなどが置かれていた。
ここから必要なものを買い足したりしても問題ないそうだ。

 宮廷治癒師、すごい高待遇だ。

「アリーセさん、今日は帰って討伐作戦について話しましょうか。勤務は明日からということで」
「わかりました」

 アリーセはダインと共に王宮を後にするのであった。
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