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第18話 商談
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「これは、化粧品でしょうか?」
「その通りです。これは、私が調合した新作でして体に害の無い成分だけを使用している白粉です」
「現在、流通しているものとは違うのですか?」
「はい、こちらをご覧ください」
エミリアは新しい資料を提示した。
「これは、現在市場に出回ている白粉を成分分析したものです。ほとんどに水銀が含まれています」
「なるほど。これは体に有害物質だと」
「そうです。長期間にわたって使用し続けるのは危険です」
「それに比べて、こちらは人体に無害なものしか使用していないと」
ジャックが白粉を取って、手に付けている。
「ほう、よく馴染みますね。確かに従来のものとは違うようだ」
「この製造方法をお譲りしますので、アリア商会には製造販売をお任せしたいと思っていますが、いかがでしょう?」
「いくらで譲ってくれるのでしょうか?」
「逆に、いくら出しますか? これに」
その言葉にジャックは不敵に口角を上げる。
「そう来ましたか」
「私には適正な価格が分かりませんので」
この男なら、ここで足元を見るようなことはしないだろう。
「契約金で金貨100枚、売上の3割でどうでしょうか?」
「それで構いません。しかし、一つ条件があります」
「伺っても?」
「貴族だけでなく、庶民にもきちんと購入できるようにしてください」
せっかく人体に無害なものを作っても、貴族に独占されては意味がない。
美しくありたいと思っているのは、貴族や豪族だけではないのだ。
「分かりました。その条件でやらせて頂きましょう」
「では、商談成立ということで」
エミリアはその場で契約を交わす。
「こちら、製造のために必要なものです」
「ありがとうございます。さすがは、この国の筆頭宮廷医師になる方の研究結果だ。常人には思いつかないでしょう」
「お世辞は結構です。しっかり頼みますよ」
「ええ、お任せください」
それにしても、金貨100枚なんていう大金をポンと出せてしまうのだから、王都1の商会というのは伊達じゃない。
エミリアが部屋を出ると、サルヴァ殿下が居た。
「話は終わったのか?」
「ええ、商談成立です」
「そうか、それはよかったな」
そう言うと、サルヴァがジャック会長の元へと行った。
応接間にはサルヴァとジャックの2人。
「全く、殿下。いつ、あんなとんでもない拾いもんしたんですか?」
「失礼な言い方するな」
「殿下も分かってるはずだ。あのエミリア様の後ろには、俺らでは太刀打ちできないようなものが付いている」
「伝説の名医の孫娘だからな」
そんな名医を帝国は手放したのだ。
「世の中には見る目が無い人間もいるものだよ」
「全くだな」
「その通りです。これは、私が調合した新作でして体に害の無い成分だけを使用している白粉です」
「現在、流通しているものとは違うのですか?」
「はい、こちらをご覧ください」
エミリアは新しい資料を提示した。
「これは、現在市場に出回ている白粉を成分分析したものです。ほとんどに水銀が含まれています」
「なるほど。これは体に有害物質だと」
「そうです。長期間にわたって使用し続けるのは危険です」
「それに比べて、こちらは人体に無害なものしか使用していないと」
ジャックが白粉を取って、手に付けている。
「ほう、よく馴染みますね。確かに従来のものとは違うようだ」
「この製造方法をお譲りしますので、アリア商会には製造販売をお任せしたいと思っていますが、いかがでしょう?」
「いくらで譲ってくれるのでしょうか?」
「逆に、いくら出しますか? これに」
その言葉にジャックは不敵に口角を上げる。
「そう来ましたか」
「私には適正な価格が分かりませんので」
この男なら、ここで足元を見るようなことはしないだろう。
「契約金で金貨100枚、売上の3割でどうでしょうか?」
「それで構いません。しかし、一つ条件があります」
「伺っても?」
「貴族だけでなく、庶民にもきちんと購入できるようにしてください」
せっかく人体に無害なものを作っても、貴族に独占されては意味がない。
美しくありたいと思っているのは、貴族や豪族だけではないのだ。
「分かりました。その条件でやらせて頂きましょう」
「では、商談成立ということで」
エミリアはその場で契約を交わす。
「こちら、製造のために必要なものです」
「ありがとうございます。さすがは、この国の筆頭宮廷医師になる方の研究結果だ。常人には思いつかないでしょう」
「お世辞は結構です。しっかり頼みますよ」
「ええ、お任せください」
それにしても、金貨100枚なんていう大金をポンと出せてしまうのだから、王都1の商会というのは伊達じゃない。
エミリアが部屋を出ると、サルヴァ殿下が居た。
「話は終わったのか?」
「ええ、商談成立です」
「そうか、それはよかったな」
そう言うと、サルヴァがジャック会長の元へと行った。
応接間にはサルヴァとジャックの2人。
「全く、殿下。いつ、あんなとんでもない拾いもんしたんですか?」
「失礼な言い方するな」
「殿下も分かってるはずだ。あのエミリア様の後ろには、俺らでは太刀打ちできないようなものが付いている」
「伝説の名医の孫娘だからな」
そんな名医を帝国は手放したのだ。
「世の中には見る目が無い人間もいるものだよ」
「全くだな」
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