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第13話 城下へ

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「まぁまぁ、2人ともそのくらいいにしておきなさい」

 陛下がその場を収める。

「まだ、本当に邪神が復活すると決まった訳では無いのだからな」
「でも、可能性は高いかと」

 事実、邪神の祝福を受けてしまったのだから。

「まあ、そうなのだが、まだ起こるかもわからない事で喧嘩していても仕方がない。そうは思わないかね?」
「はい、すみませんでした」

 エミリアは頭を下げる。

「こちらこそ、大きな声を出してしまってすみません」
「今日はこれからどうするつもりなんだね?」

 陛下が尋ねてくる。
今日と明日は休みをもらっている。

「ちょっと街を見てみようかと思います。私はこの街に来たばかりですので」
「それなら、サルヴァと行くといい」
「お仕事はいいのですか?」
「仕事など早く終わらせてしまえばいいだけだ」

 国王の仕事を肩代わりしていたのだ。
今も相当な仕事が溜まっている事だろう。
それを早く片付けるというのだから大したものだ。

「午後からでも構わないか?」
「ええ、大丈夫です」
「では、後ほどお部屋にお迎えに行かせて頂きます」
「分かりました。では、私はこれで失礼致します」

 エミリアは頭を下げて部屋を後にする。

 応接間には陛下と王太子だけが残る。

「ワシは楽しみだよ。あの伝説の名医の孫娘が、この国でどんな事をしでかしてくれるか」
「あの方は父上の手中に収まるような器では無いと思いますけどね」
「お前もそう思うか」

 そう言って陛下は静かに笑みを浮かべた。

 ♢

 昼食を食べ終わった後、殿下が部屋を訪ねてきてくれた。
もう、今日の仕事は終わらせてきたらしい。

「お待たせ致しました」
「いえ、それより、そのお姿は?」

 殿下は綺麗な銀髪ではなく、黒髪にメガネという姿になっていた。

「変装だ。この国で銀髪は目立つからな」
「魔道具のようなものですか?」
「ああ、このメガネが髪色を変えてくれているのだ」
「さて、行きましょうか」

 エミリアは殿下と共に街へと出る。

「何か見たいものがあったのか?」
「ええ、化粧品を扱っているようなお店はありますか?」
「案内しよう。こっちだ」

 慣れた様子で街を歩いていく。
いくら髪色を変えたところで、その高貴なオーラは隠しきれていない。

「ここは、貴族の令嬢も御用達の店だから目当てなものも見つかるかもしれないぞ」
「ありがとうございます」

 殿下と共に中に入る。
そこにはさまざまな化粧品が並んでいる。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「おしろいのようなものはありますか?」
「ええ、ご用意がありますよ。こちらの店になります」
「ありがとうございます」

 エミリアは、一つひとつ手に取って見ていく。

「やっぱりそうでしたか」

 この瞬間、エミリアの懸念していたことが確信へと変わった。
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