50 / 77
第49話 愛すべき日常。
しおりを挟む
あれから、メレーヌは泣いていた。
御影さんからもらった『日常』に溶け込む事が出来たのは凄く嬉しかった。
しかし、あの時、また売られるかもしれないという絶望感は言葉には出来なかった。
『私はそういう運命なのかな』
そうまでも思った。
だから、ひたすらに御影の腕の中で泣いた。
御影は黙ってメレーヌを抱きしめ、頭を撫でた。
メレーヌは元はいい所のお嬢様で何ひとつ不自由なく生活していた。
しかし、父親のやっていた店は潰れ、父は失踪。
メレーヌとメレーヌの母には多額の借金だけがのしかかった。
「借りたもんは返す。常識だろ?」
「あと、一週間待ってください。必ず、必ず返しますから」
必死に頭を下げる母の姿は今でも目に焼き付いている。
「返さねぇなら、娘に体で払ってもらうぞ?」
「そ、それだけは勘弁してください」
しかし、母の願い叶わず、メレーヌは奴隷として売り飛ばされ、娼館で働かされた。
「君、可愛いね」
「何でこんな所で働いてるの?」
毎日同じように、好きでもない男性のお相手をする。
『もう、辞めたい……』
そう思っていたが、そんな生活が三年ほど続いた。
三年後、やっとの思いで借金を全額返済した。
『これで、辞められる』
メレーヌは奴隷からも娼婦からも解放された。
「これからどうしよう……」
解放されたはいいが、このままだと、生活も苦しくなる。
寮は引き払ったし、貯金も無い。
まさに、一文無しだった。
「あ、ギルドに行けば仕事紹介してもらえるかも」
一抹の期待を胸にメレーヌはギルドへと向かった。
「お仕事のお探しですね」
受付のお姉さんは境遇を話すと凄く親身になってくれた。
「普段なら紹介しないんですけど、ここなんてどうでしょう?」
「メイド喫茶セルヴァント?」
「そうです。最強賢者様の経営しているお店よ。御影さんも貴女ならきっと気にいると思うわ」
そう言ってお姉さんは御影さんのお屋敷までの地図と紹介状を書いてくれた。
「最強賢者様、怖い人なのかな」
そんな事を考えながら、トボトボとお屋敷までの道のりを歩いた。
「ここか……広い」
ベルを鳴らすと執事さんが出てきて、紹介状を見せると中に招き入れてくれた。
「こちらで少々お待ち下さい。旦那様を呼んで参ります」
そう言って執事さんが出て数分、扉が開いた。
「初めてまして。叢雲御影です。ノエラさんからの紹介かな?」
『これが最強賢者様?若くてイケメン……』
そんな事を心の中で思った。
「は、はい、受付のお姉さんから、御影さんなら雇ってくれるかもと言われて来ました」
娼館で働かされた事を話すと一瞬苦い顔をされたが、すぐに笑顔に戻った。
「君、採用!」
「え!?」
メレーヌは何を基準に自分が採用されたのかも分からなかった。
「君、可愛いから採用なの。異論は認めないよ」
「そんな理由でいいんですか?」
思わず笑ってしまった。
「やっぱり、女の子は笑ってないとね。可愛いは正義なんだよ」
御影さんは右手を差し出した。
「これからよろしくな。メレーヌ」
「はい、こちらこそ」
御影さんは雇ってくれるだけで無く、住む所提供してくれた。
杏さんやクラリスさんといった友達も出来た。
自分が日常に溶け込む事が凄く嬉しくて、メレーヌは御影に心から感謝した。
『一生、この方について行こう』
そう心に誓いながら。
御影さんからもらった『日常』に溶け込む事が出来たのは凄く嬉しかった。
しかし、あの時、また売られるかもしれないという絶望感は言葉には出来なかった。
『私はそういう運命なのかな』
そうまでも思った。
だから、ひたすらに御影の腕の中で泣いた。
御影は黙ってメレーヌを抱きしめ、頭を撫でた。
メレーヌは元はいい所のお嬢様で何ひとつ不自由なく生活していた。
しかし、父親のやっていた店は潰れ、父は失踪。
メレーヌとメレーヌの母には多額の借金だけがのしかかった。
「借りたもんは返す。常識だろ?」
「あと、一週間待ってください。必ず、必ず返しますから」
必死に頭を下げる母の姿は今でも目に焼き付いている。
「返さねぇなら、娘に体で払ってもらうぞ?」
「そ、それだけは勘弁してください」
しかし、母の願い叶わず、メレーヌは奴隷として売り飛ばされ、娼館で働かされた。
「君、可愛いね」
「何でこんな所で働いてるの?」
毎日同じように、好きでもない男性のお相手をする。
『もう、辞めたい……』
そう思っていたが、そんな生活が三年ほど続いた。
三年後、やっとの思いで借金を全額返済した。
『これで、辞められる』
メレーヌは奴隷からも娼婦からも解放された。
「これからどうしよう……」
解放されたはいいが、このままだと、生活も苦しくなる。
寮は引き払ったし、貯金も無い。
まさに、一文無しだった。
「あ、ギルドに行けば仕事紹介してもらえるかも」
一抹の期待を胸にメレーヌはギルドへと向かった。
「お仕事のお探しですね」
受付のお姉さんは境遇を話すと凄く親身になってくれた。
「普段なら紹介しないんですけど、ここなんてどうでしょう?」
「メイド喫茶セルヴァント?」
「そうです。最強賢者様の経営しているお店よ。御影さんも貴女ならきっと気にいると思うわ」
そう言ってお姉さんは御影さんのお屋敷までの地図と紹介状を書いてくれた。
「最強賢者様、怖い人なのかな」
そんな事を考えながら、トボトボとお屋敷までの道のりを歩いた。
「ここか……広い」
ベルを鳴らすと執事さんが出てきて、紹介状を見せると中に招き入れてくれた。
「こちらで少々お待ち下さい。旦那様を呼んで参ります」
そう言って執事さんが出て数分、扉が開いた。
「初めてまして。叢雲御影です。ノエラさんからの紹介かな?」
『これが最強賢者様?若くてイケメン……』
そんな事を心の中で思った。
「は、はい、受付のお姉さんから、御影さんなら雇ってくれるかもと言われて来ました」
娼館で働かされた事を話すと一瞬苦い顔をされたが、すぐに笑顔に戻った。
「君、採用!」
「え!?」
メレーヌは何を基準に自分が採用されたのかも分からなかった。
「君、可愛いから採用なの。異論は認めないよ」
「そんな理由でいいんですか?」
思わず笑ってしまった。
「やっぱり、女の子は笑ってないとね。可愛いは正義なんだよ」
御影さんは右手を差し出した。
「これからよろしくな。メレーヌ」
「はい、こちらこそ」
御影さんは雇ってくれるだけで無く、住む所提供してくれた。
杏さんやクラリスさんといった友達も出来た。
自分が日常に溶け込む事が凄く嬉しくて、メレーヌは御影に心から感謝した。
『一生、この方について行こう』
そう心に誓いながら。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界ライフの楽しみ方
呑兵衛和尚
ファンタジー
それはよくあるファンタジー小説みたいな出来事だった。
ラノベ好きの調理師である俺【水無瀬真央《ミナセ・マオ》】と、同じく友人の接骨医にしてボディビルダーの【三三矢善《サミヤ・ゼン》】は、この信じられない現実に戸惑っていた。
俺たち二人は、創造神とかいう神様に選ばれて異世界に転生することになってしまったのだが、神様が言うには、本当なら選ばれて転生するのは俺か善のどちらか一人だけだったらしい。
ちょっとした神様の手違いで、俺たち二人が同時に異世界に転生してしまった。
しかもだ、一人で転生するところが二人になったので、加護は半分ずつってどういうことだよ!!
神様との交渉の結果、それほど強くないチートスキルを俺たちは授かった。
ネットゲームで使っていた自分のキャラクターのデータを神様が読み取り、それを異世界でも使えるようにしてくれたらしい。
『オンラインゲームのアバターに変化する能力』
『どんな敵でも、そこそこなんとか勝てる能力』
アバター変更後のスキルとかも使えるので、それなりには異世界でも通用しそうではある。
ということで、俺達は神様から与えられた【魂の修練】というものを終わらせなくてはならない。
終わったら元の世界、元の時間に帰れるということだが。
それだけを告げて神様はスッと消えてしまった。
「神様、【魂の修練】って一体何?」
そう聞きたかったが、俺達の転生は開始された。
しかも一緒に落ちた相棒は、まったく別の場所に落ちてしまったらしい。
おいおい、これからどうなるんだ俺達。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる