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第68話 サーカス団
しおりを挟むこの時点で、彼の受け止められる許容量を越えていた。
これまではただ、決められた道を歩んで来ればよかったリアンは、ランシェル王子と同じく突発的な出来事の対処には弱いのだ。
もうこれ以上、何も聞きたくない……全てを投げ出して耳を塞いでしまいたい気分だった。
しかし、ここで投げ出すことは許されない。
ダフネの追及は続いている。
「リアン様は、その情報をお持ちのはずですわ」
「え?」
「宰相であるお父様から折に触れ、色んな事を聞いておられるでしょう?」
「ええ。勿論です」
「その情報は何のためです? 側近として、殿下をお守りするために必要だから……ですわよね?」
「……つまり、今までに聞いた情報の欠片を繋ぎ合わせれば正解を導き出せる……ということですか」
「ええ、その通りでしてよ」
そう言ってダフネは頷くが、サリーナと結びつくのがどれなのか、リアンには咄嗟に判断がつかない。
「残念ながら私にはどれを指しているのか……分からない」
「……仕方のない方ですわね」
肩を落として言いにくそうに告げた彼に、ダフネはため息をつきたくなるのを飲み込んでリアンにも分かるように噛み砕いて説明する。
「先程、ボートン子爵令嬢がブローチの入手先を自白しましたでしょう? サーカス団の道化師から譲られたと?」
「確かにそう言っていました。しかし、道化師のような者が何を知っているというのです?」
リアンの常識では、サーカス団にいるのは学も身分もない寄せ集めの者達だ。
魅了の魔道具を作れるような専門の知識を持ち合わせている者などいないはず。
「それでも、少なくともブローチの効果は知っていたはずです。彼女の魅了魔法の魔道具に関する知識は彼から伝えられたものでしょう?」
「それは……そうかも知れません」
ダフネの指摘に、渋々認めた。
「だとしたら、少しおかしいとは思われませんか?」
「え?」
「魅了の魔法がかかった高価な魔道具なら大金で売れるはず。それをせず、一介の少女にタダで譲り渡すなど、疑ってくれといっているようなものではありませんか」
「……あっ!?」
言われてみれば確かにおかしい、とリアンも気づいた。
――この国を件のサーカス団体が訪れるのは毎年のことだ。
周辺の国々を定期的に巡回していて、この国ではいつも二ヶ月程かけて各地を転々と回っている。今では市民の娯楽として定着し、知名度も高い。
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