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第101話 天災のような女
しおりを挟むロバート王子達に出会う前、ユーミリアは彼らと繋ぎを取れる人材を探して手当たり次第に男達を渡り歩いていた時期があった。
その時にたまたま、マリエッタの元婚約者で同じ近衛騎士のギャレット・ファルターに目を付けたのだという。
声を掛けられたギャレットは他の男達と同じように、たちまちのうちにユーミリアの虜になってしまう。
しかし結局、ロバート王子やその側近達とは年齢も離れており直接面識が無かったため橋渡しができず、それ以上の利用価値を見いだせなかった彼女に無情にもさっさと捨てられる。
その後、魅了が解けて正気を取り戻した時にはすでに、二人の信頼関係は修復出来ないまでに壊れており婚約はやむなく解消されたのだ。
全く、恋人や婚約者を持つ女性にとっては歩く天災のような女である。彼女の進行方向に偶然いたマリエッタ達は、不運だったとしか言いようがない。
そしてその際二人は顔を合わせ、言葉を交わしていたにもかかわらず、ユーミリアの方は全く覚えていなかったのだ。
尋問官として現れたマリエッタを見ても、無反応だったことからもわかるだろう。その事が余計に彼女を苛立たせるのだが……。
――身近なところに因縁の相手がいたものである。
結婚秒読みだった婚約者に裏切られ、微妙なお年頃なのと本人自身の問題もあって次の縁談もなく……今もずっと傷付いている隊長を相手に、何てことを言うんだとレイラとシンディの顔が引きつる。
そんな二人の気持ちも知らず、おしゃべりが大好きなリリィは怒涛のように持論を捲し立てた。
「近衛全体の中でも指折りの強さと美しさを持つ分隊長でさえ、彼女の前では通じなかったんですよね? アンドレア様だってそう……警護を担当させて頂いた時、間近で拝見してこんなに綺麗な人がこの世にいるんだって思って。それなのに第一王子殿下はあの女に乗り換えたんですよ! 信じられないことに! 私の婚約者なんてチョロいですからね、もうイチコロですよっ。彼が誘惑される前に捕まってくれて本当に良かったです。私も婚約破棄されちゃうとこでした。私の中で彼女は、絶対に側にいて欲しくない女ランキングぶっちぎりの一位ですね!」
言いたいことを言い切ってスッキリと満足げなリリィ。
彼女は考えることが苦手な脳筋なので、先程からの深刻な雰囲気に耐えられなかったらしい。
身内しかいない気楽さもあって本音をぶっちゃけてしまったようなのだが、言っている内容が非常にまずかった。
――先輩二人の顔から、サァーっと血の気が引いた。
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