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第100話 因縁 後編

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「ふむ? となると考えられるのは二つ。既存の魔道具では未知の魔法なため計測できない可能性と、ただ単に彼女が人を煽動し操る術……操作術に優れていると言う可能性……この二つが濃厚ですが?」

「うわぁ……シンディ先輩、その推察が当たりならドン引きですよぉ……」

 リリィが怯んだようにそう言って、底知れない彼女の不気味さに鳥肌が立ってしまったらしい腕を摩る。

「我々も知らないうちに、計測器でも測れないものに思考を誘導されているかもしれないなんて……厄介さが倍増するじゃないですかっ」


「まだそれと決まった訳じゃないがな、何しろ黙秘の一点張りだ。口を開いたとしても捜査とは関係のないことしか言わん」

 マリエッタ・ソルジュ分隊長が、やれやれとため息をつく。

 部下達の推察は彼女の考えとも一致し、的を得ていると思ったからだ。


「一通り聞かせてもらったが、囚人は儚げな見た目に似合わず随分と強かな女だ。尋問には時間がかかるだろうが、皆、頑張ってもらいたい。この件は早く自白させないと、被害を被った貴族達からの突き上げがありそうだからな」

「介入してくると厄介ですね……恨んでいる者も多いでしょうし」

「それだけのことをしてきたんだ。仕方がないだろう。事の真相を明らかにしないと、被害者等の気が収まらないだろうしな」

 頭が痛いと思いながらも分隊長と副長がその時の対応について、具体的に打ち合わせをしようとしていたその時、空気を読まないことで有名な部下が爆弾を落とした。


「さすが分隊長っ、実感がこもってますね! !」

「……っ!?」

 リリーが能天気にもそう宣った直後、マリエッタの怒気がぶわっと膨れ上がり、ピシィィィィィ――っと室内の空気が凍った。


 冷気が可視化できるんじゃないかと思えるほど強烈で、鈍感なところもあるリリィ以外、全員の背筋がぞわっと粟立つ。


(( リリィさん、それ関連は禁句だって教えたばっかりでしょうが!?))


 レイラとシンディの声にならない悲鳴が重なり、二人の脳内だけに響き渡った。

 だが残念ながら、一番聞いて欲しいリリィには一切伝わっていない。

 きょとんとした顔でこっちを見ている後輩に、自分が何を言ったのか切実に自覚して欲しいと二人の先輩は思ったのだった。



 ――つまりは尋問官を務めたマリエッタ・ソルジュ分隊長と囚人であるユーミリアの間にある割りと深刻な因縁というのはこの事であった。


 彼女も婚約者を奪われたうちの一人、被害者だったのである。




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