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第106話 残骸の中で

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 片手間にリリィの捨て身の攻撃をあっさりと片付けたマリエッタはその直後……。

 残りの椅子をカジっと掴むと、他の備品に向かってブンブン投擲し出したのだ!


「ひぃっ、危なっ。前に進めんっ」

「わ、わ、わわっ、わぁっ」


 最初の一撃で机が簡単に壊れてしまい、鬱憤を晴らし足りなかったのだろう。まだまだ暴れる気満々の様子。



 そんな中、レイラ達が高価な魔道具に辿り着こうと、木片が飛び散る危険地帯を、必死に前進しようとするも……。


「許さないんだからぁ――!!」


 バキバキバキッ、グシャッ――――――!!


「「あああああっ――――!!」」


 やっぱりマリエッタの熱い思いには勝てず、後手に回ることとなり……。

 恨みのこもった投擲は、的確に高価な魔道具に直撃し、何もかもを綺麗さっぱり吹っ飛ばしたのだった。



「ま、間に合わなかった……」

 ガクリっと肩を落とす副長達。

「あああぁ、備品が粉々にぃぃっ」

「うわぁ、派手にやらかしちゃいましたね。分隊長、よほど鬱憤が溜まっていたんでしょう……」

「しみじみ感心している場合かっ。どうするんだよっ、これ!?」

 レイラが叫ぶ。

 結局、高価な魔道具の数々は一つも守れなかったのだ。

「……また、経理部に怒られますね」

「なぁ、今月に入って何回目だっけ?」

「そんなの恐ろしくて、一々覚えていません」

「絶対、給料カットの案件だよ、これっ」

「はぁ、高価な魔道具が絡んでますしねぇ。それだけで済めばいいですけど……」

「うわぁぁぁ、現実逃避したい……」

 部下達が頭を抱えて嘆く。


 そんな打ちひしがれた彼女達をよそに、マリエッタ・ソルジュ分隊長は随分とスッキリした顔をしていた。

 一通り暴れて気が済んだようだ。


 ――まあ、あれだけ暴れてまだ足りないと言われても困るが。


「皆、許せっ。悪かったな!」

「ぶ、分隊長……」

「いやもう自分でも衝動が押さえきれなくてっ。だかもう落ち着いたから大丈夫だ!」

 そう言って満面の笑みで胸を張る。

「それはそれは……しかしですね、分隊長?」

「ん? なんだ?」

「……この惨状をご覧になってもまだよかったと言えますか!」

「むっ」

 一人だけ晴れやかな表情のマリエッタを、副長がじとっと睨む。

「いつも、言ってますよね……? どうしても暴れるなら何もないところで暴れてくださいって!」

「あ、うん。いや、そ、そうだなっ?」

「高価な魔道具がいっぱいあったんですよぉっ、この尋問室は! どうするんですか、全部ぶっ壊しちゃって!?」

「今回こそ本当にやばいですって、分隊長!」

「う、う~ん?」

 部下達に詰め寄られたマリエッタは困った顔をして一瞬考え込んだものの、すぐにパッと表情を明るくした。

「いいこと思い付いた!」

 自信ありげの分隊長を胡散臭そうに見つめる副長。これまでの経験から考えると期待はできないが、一応聞いてみる。

「……ほう、どのような?」

「経理部長の好きなドリンズのケーキを差し入れするんだよ。好きな物を食べれば気も緩むだろう? そしたら審査も甘くなって、許してくれるんじゃないかなって……どう思う?」

「「「絶対無理ですっ!!」」」

 彼女の提案は、部下達によって思いっきり否定されたのだった。




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