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第97話 尋問
しおりを挟む――そして今日も、長時間の尋問が始まる。
男性だといつまた彼女の毒牙にかかるか分からないため、食事などの世話だけではなく尋問もすべて女騎士が行っているのだが……。
「弁解の余地があるのなら聞こうか、ユーミリア」
「……」
繰り返し同じ質問をされた後、黙秘し続ける彼女にいつもとは別の問いかけをされた。
しかしユーミリアは肩をピクリと跳ね上げ反応しただけで、固く口を引き結び答えない。
尋問官に敬称無しで名を呼ばれる度に、平民落ちして貴族の特権を奪われたことを思い知らされるのだ。
もう少しで貴族女性としての最高の地位……王家の一員になれる王子妃という地位を手に入れる寸前だった彼女にとっては、耐え難い屈辱だった。
俯いたまま、湧き上がる怒りに体を震わせる。
「どうした。何時まで黙秘を続けるつもりだっ。釈明はなしということでいいのか?」
「己の罪を認めるんだな?」
固い声で続けて詰問していると、ゆっくりと彼女は顔を上げた。
「私はっ、何もしていないっ」
「魅了魔法を使ったんだろう?」
「何もしてないったらっ。知らないものを何度聞いても無駄よ!」
そう叫ぶと、息を荒くしながら恨みのこもった目で尋問官を睨みつける。
後ろ手に椅子に縛り付けられ、朝からずっと詰問されているというのに感心するほど全く挫けていない様子だ。
「冤罪だって言ってんの! 何度も言わせないでよっ、バカなの!?」
怒りを押さえきれないのか、眉を逆立て噛みついてくる。
「……っ、貴様!?」
「言葉が過ぎるぞっ、口を慎め!」
「何よ!? 私はただっ、幸せになりたかっただけっ。そのために自分の出来る事をしただけだわっ。それの何がいけないのよ!!」
泣き落としが通用しないことをここ数日で学習したのか、今はもう嘘泣きをすることもない。
目を怒らせて怒鳴り散らす様は、とても以前のような愛らしく可憐な美少女には見えなかった。
「私は王子妃になるのっ。そしていずれは王妃になる女なのよっ。こんなことしていいと思ってんの!? 早く解放しなさいよ!!」
「ふんっ。全く反省していないようだな」
ギラギラとした本性も野心も隠さずにぶつけてくる囚人をみて、苦々しげに吐き捨てる。
「だが、いくら言い逃れをしようとも無駄だ。貴様の罪は重い。一生、死ぬまでここからは出られはないさ」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ、邪魔しないでよぉ――!!!」
狂ったように喚く彼女に、これ以上まともな会話は望めないと判断したのか、尋問官はため息をつくと片手を上げてみせた。今日の分は終わりという合図だ。
「……囚人を部屋に戻せ」
「はっ」
「止めてっ。触らないでよ! いやぁっ、離しなさいってば!!」
激しく抵抗するものの、魔力を封じられたユーミリアはただのか弱い女性だ。女騎士に抵抗するすべはない。力づくで元の牢に戻されたのだった。
最低限の食事と水しか与えられず、厳しく尋問される日々。
飢えと乾きが彼女を苛み、悔しくて、悔しくて頭が沸騰しそうだった。
(私をこんな辛くて惨めな状況に追い込んだ、あの公爵令嬢っ。絶対に許さないんだからっ。きっと……きっと復讐してやるわ!!)
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