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第28話 愉悦            ※9月24日加筆

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 けれど次第に、ただ仲良くなるだけでは満足出来なくなった。

 ユーミリアを拒絶する貴族令嬢達の顔が歪む瞬間を、もっと見てみたいと思うようになったのだ。
 あれは、気持ち良かった。その為には、もっともっと、自分に夢中にさせなければいけない。

 母に相談してみると、具体的な方法を教えてくれた。

 ターゲットの男の子に「私を好きになって」と強く願いながら視線を絡ませ、上目遣いに微笑んで話しかけるといいとアドバイスをしてくれる。

「いいかい? やり過ぎるんじゃないよ。こう、さりげなくやるんだ」

「う~ん……こうかな? 上目遣いでまぶたをパチパチっと……」

「あははっ、いいじゃないか! さすが売れっ子だったあたしの娘だ。こっちの才能もありそうだね。上手く出来てるよ。これでお高く止まったお貴族達を悔しがらせてやんな!」

「うん、母さん!」

 そして母の教え通りにすると、婚約者よりもユーミリアを大切にしてくれる子が出てきた。

 初めは失敗する事もあったけれど、回数を重ねるうちに我ながら上手に出来るようになったと思う。

 まるで物語のヒロインなったかのように、自分の思い通りに動く人達。

 楽しくて、ゲーム感覚で男の子を落としては、普段の姿からは想像出来ないくらい感情的になって泣きわめく令嬢達を見て愉悦に浸った。



 成長するにつれて、元娼婦である母親から異性を誘惑する手法をも学んだ彼女は、色事に不馴れで初心うぶな貴族の青年達を、息を吸うように自然に惑わすことができるようになっていく。

 その頃には自分の魅力を把握し、効果的な見せ方というものが分かるようになっていたのだ。

 何とか彼女の気を引こうと必死になる彼らをみるのは、とても面白かった。



 お気に入りの殿方を複数侍らせ、彼らから愛を囁かれる。

 可愛らしくねだれば、高価な貢ぎ物を競うようにして贈ってくれる。

 不作法を窘める令嬢達が鬱陶しかったけれど、傷ついたように顔を伏せ、肩を震わせて涙を流すだけで、殿方は簡単にいいなりになった。
 ユーミリアを庇い、嫌みを言う婚約者の令嬢を責め立てるのを見ると、暗い愉悦が沸き起こってゾクゾクした。


 そんな生活に夢中になって、もっともっとと欲しくなり、令嬢達から次々と男を奪ってやった。
 相手に婚約者がいようと知らないふりをして無邪気に話しかけ、可憐で愛らしく見える笑顔を振りまき、甘言を囁いては誘惑した。
 節度ある親しさを持って接する貴族令嬢を、出し抜くことなど簡単だった。

 まずは同じような身分の者を足掛かりにして、徐々に上の身分の青年達に乗り換えて行く。

 何て簡単で楽しいんだろう……ユーミリアは笑いが止まらなかった。




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